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【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第10回「ビートルズ? 手塚治虫? 「これ押さえときな」論!!」

今回は、「別マガ」6月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第10回「ビートルズ? 手塚治虫? 「これ押さえときな」論!!」を大公開!

 

別マガ異色のエッセイ連載、第10回―!
ショウ年マンガ

音楽家ヤマモトショウの自由研究
第10回「ビートルズ? 手塚治虫? 「これ押さえときな」論!!」

■Spotify爆誕から早20年!

 少し前ですが、ついにハロプロの楽曲がすべてサブスク解禁され、話題になりました。これで国内で「事務所単位でサブスクにまったくない」という楽曲はほとんどなくなったような印象です(といってもまだまだ解禁してほしいアーティストの楽曲はありますが)。
 そもそも「解禁」というのも少し変な言葉で、今まで「禁じて」いたのか、という感じですよね。今時、リアルタイムで活動しているアーティストでサブスクに出さない理由はまったくわからないので、とにかく全部聴けるようになるのが理想だろうとは思います。
 ただ、ちょっと困った問題も出てきました。自分は現在アイドルの仕事をしていながらも、元々アイドルが好きだったわけでもありません。アイドルの世界ではハロプロを通ってきている人が多いんですが、自分は有名曲以外はほとんど聴いてなかったんですね。それでもこれまでは「サブスクにないんで」ということで通っていたというか、許されていたのですが、こうなってはその言い訳も通りません。
 ということで、解禁されてから一か月ほどはなるべくたくさんの楽曲を聴いてきたわけです。思ったことは色々ありますが、総じていうならば、元々知っていた大名曲たちのすごさを改めて思い知らされた、という感じです。3000曲以上楽曲があり、その中で何曲も誰もがぱっと思い浮かぶものがあるっていうのは、とんでもないことですよね。

 

■全おじさんに告ぐ! 「定番教」注意報!

 さて、ハロプロもそうなのですが、音楽をやっていたり、携わっていたりすると、他にも「これは聴いておかないと」と言われるような【定番】が存在しているような気がします。
 その最たる例はやはりビートルズです。「ビートルズは聴いておけ」「ビートルズを聴いてないなんて人生損している」「ビートルズは現代のすべての音楽の基本になっている」そんなようなことを(主におじさんから)人生で一度も言われたことがないミュージシャンはいないんじゃないでしょうか。
 ちなみに僕は、こういうことをおじさんたちから言われすぎて元々ビートルズに抵抗があった、というようなアーティストにも会ったことがあります。でもその人も後にはビートルズが好きになっていました。ちなみに僕も大好きですし、「ビートルズが現代の音楽の基礎になっている」というのは、少々大袈裟ではあるものの、ある程度間違いない話だとは思います。
 マンガの世界ではどうなんでしょうか。同じような影響力があるとすれば、やはり手塚治虫先生の話になるような気はします。先ほどのおじさん発言を手塚先生に置き換えたら、なんとなく想像がつくのではないでしょうか。実際、今のマンガの基礎をつくったのは間違いないですよね。かといって、「マンガを語るなら絶対に読め」とまで言われたら、抵抗があるようにも思います。
 同じように芸術作品について語る時(まさにこのようなエッセイを書いていると必ず)、「〇〇という作品を鑑賞しないで、その分野を語るなど言語道断だ」といったようなことを言われたりするわけです。怖いですよね。
 どの分野でもそうだと思うのですが、一応音楽を仕事にしている者として折角なのでこの機会に申し上げておくと、実際音楽をやる上で「これを聴いておかなければいけない」というようなものは特に存在しないと思います。そのような意見のどれもが基本的にはその発言をしている人にとってのルーツや好みの域を出ません。

 

■全ては繫がる!? 定番との付き合い方

 ただ、一方でこれも間違いなく言えると思うのですが、今作られているあらゆる音楽において「まったく完全にオリジナルなもの」というものも存在しません。どんなものも過去のなんらかの音楽に影響を受けています。誰からも何からも影響を受けずに人が「音楽だ」と認識できるものをつくることはできないわけです。そうなると、例えば自分が「好きだ」と思った音楽について、少し深掘りしてみようと思った時に必ずそのルーツもポイントになってくるわけです。
 例えば僕は高校生の頃に、アジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の『君繋ファイブエム』というアルバムを聴いてファンになりました。最初のうちは普通に聴いていただけなんですが、後にいくつか気づくことがありました。例えば、このアルバムには「N.G.S」という曲があるのですが、これはどうやら「ナンバーガールシンドローム」というタイトルの略らしい、ということがわかるわけです。そうなるとナンバーガールって何? って話になり、これはアジカンも大きく影響を受けたNUMBER GIRLというバンドのことなんですね。そうなると、こんないい曲のタイトルに名前が出てくるそのバンドを聴いてみようか、ということになります(僕の場合は最終的にそのNUMBER GIRLからより大きな影響を受け、同じレコード会社からデビューすることになりました)。
 他にも『君繋ファイブエム』には「E」という曲があって、これも何気なく聴いている好きな楽曲でした。しばらく後に洋楽のアルバムを聴いていたら「なんかこのギターソロ聴いたことある気がする」ということあって、よくよく聴くとアジカンの「E」のフレーズとかなり近いもの、つまりオマージュなんですね。
 実はこの曲はOasisの「Live Forever」という超有名曲で、もちろんアジカンよりも前の世代(アジカンも大きな影響を受けていると思います)ですし、たぶん前述のようなおじさんたちには「お前オアシスも知らないのか」と怒られるような出来事だと思います。そうはいっても事実として、僕はOasisよりも先にアジカンを知って、そこからそのルーツを遡ることになりました。実際にこれがきっかけでOasisもよく聴くようになりましたし、今度はそうするとOasisがいかにビートルズから影響を受けているかということもわかるわけです。ビートルズに関しても、中学校の頃に校内放送でよく聴いていたな、という記憶しかなかったのですが、ここで改めて聴くと、後続に大きな影響を与えていたんだということがわかって非常に刺激的な体験でした。
 というように、別に「これを聴かなければいけない」ということで聴いているわけではなくて、自分がいいと思ったものが実は繫がっていたり、影響を受けていたりするというような事実は、単純にそのことに興味があればいつの間にかたどり着いていたりするわけなんです。むしろ、そうやっていつの間にかたどりついてしまうからこそ「歴史的名作」なんですよね。
 しかし一方で、例えばビートルズを聴いて「なんか古く感じる」というようなこともありえることだと思います。僕はミステリー小説が好きで自分でも書いているんですが、おすすめを聞かれたりするときに少し躊躇することがあります。というのも、基本的にクリスティやクイーンのような所謂古典的な名作を読むのが良いと思うんですが、そこで使われているトリックってもはや「スタンダード」になりすぎていて、最近のミステリーを読んだ人にとっては読む順序を間違えると物足りなく感じる可能性もあるんですよね。ミステリーは一度使われたトリックは2度と使えないので、この傾向がより強くなります。でも、そういった名作を読んでいた方が、逆に現代のミステリーがいかにそれらを踏まえて、ギリギリの綱渡りでアイデアやネタが被らないように生まれている名作か、そしてその世界にいくつかの重要な「お約束」があることもわかると思います。こういったことを知りながら楽しむことができるのも、現代の創作物の楽しみ方の一つだとは思います。
 ってことで、あまり周りの目は気にせず、サブスクが解禁されたらとりあえず聴いてみるというのは、今を生きている人の特権として楽しく受け入れれば良いんじゃないかなと思ってます。

 

月の担当編集
「これ読んでないの?」って言ってくる先輩たちは怖かったけど、おかげで面白いマンガを知れたので感謝!

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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