
今回は、「別マガ」5月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第9回「漫画界の謎に迫る!? 「連載派・単行本派」論!!」を大公開!
●別マガ異色のエッセイ連載、第9回―!
ショウ年マンガ
音楽家ヤマモトショウの自由研究
第9回 漫画界の謎に迫る!? 「連載派・単行本派」論!!」
■単行本派へのネタバレは注意!
マンガをたくさん読みたい、マンガが大好き、という人に出会うと嬉しくて話が弾んでしまうものですが、そういった人の多くはやはり連載で最新話を読んでいることが多いと思います。僕は今もほとんどのマンガ雑誌を毎週(毎月)定期購読しているのですが、マンガ好きの中でも「単行本」派の方も結構いるのではないでしょうか。僕は好きなマンガに関しては「単行本も買う派」(連載を毎週連載誌で読んだ上に、単行本が出た時にはそれも買う)なのですが、どうしても単行本だけを読んでいる方とはズレがあるので、話をしていてもネタバレになってしまわないかと悩ましい時があります。
ところで、この話って「音楽をアルバムで聴くか、シングルで聴くか」みたいな話とちょっと似ている気がしませんか? シングルは連載、アルバムは単行本、といったように喩えてしまうのはあまりにも単純化しすぎな気もしますが、今回は無理やりそういう話をしてみようと思います。
そもそも、今は音楽のアルバムという概念がわからない世代すら存在しているようです。たしかに、サブスクで音楽を聴いていると、「楽曲を十曲程度まとめているもの」というのはあまり意味のないもので、それにあたるのはせいぜいプレイリストでしょうか。プレイリストは自分で好きな曲をいれて作ることもできるので、結局「聞きたい曲を集めたもの」ということになります。
アルバムは、アーティストやレーベルが意味をもって複数の曲を並べている場合もあれば、その時期に作った曲をまとめて収録してある場合もあります。いずれにしても、それは販売する側が意図を持って複数の曲を入れたひとつのパッケージです。
アルバムで聴くのが好きだ、と言う人の多くは、おそらくこのアーティストの意匠を楽しみたいということが大きいでしょう。僕も、この曲が来たら次はこれだよな、と必ず思い出される曲の並びがあります。かなり久々にLUNA SEAのライブを見に行ったときに、ちょうど一曲目がLOVELESS、二曲目がROSIERで『MOTHER』というアルバムの曲順通りだったのでかなりテンションが上がりました。
マンガの場合はストーリーマンガなら、基本的に連載順に一話から読むのが普通だとは思うので、単行本派の場合はやはり「まとめて読みたい」という理由が大きいですよね。なんなら「完結してから読みたい」という人もいるくらいだと思うのですが、大きなストーリーの節目までは一気に読んでしまいたいとか、とにかく連載で毎週となると次が気になりすぎるというのは、もちろん大いに理解できます。
■漫画業界最大の謎に切り込むーッ!!
ところで、理屈で考えてみるとちょっと不思議なことがあります。基本的に単行本が売れるマンガというのは、連載自体の人気があるようなのですが、「連載で多くの人が読んでいるのなら、単行本って売れなくなるんじゃないか」と思いませんか?
音楽の世界では、少し前にこんな定説がありました。CDの発売前にサブスクで配信リリースをしてしまうと、CDが売れなくなってしまうという考えです。つまり「CDを買うのは音楽を聴くためであり、それがサブスクで聴けるのであればわざわざCDを買う必要はない」と考える人が多い、と考えられていたということでしょう。
音楽の場合、基本的には同じ音源データが用いられているので、CDで聴いてもダウンロードして聴いてもサブスクで聴いても、同じ音楽を聴いていることには変わりはありません(などということをあまりにも単純化して書くと、だいたい音楽関係者が烈火の如く〈主に劣化について〉怒ることになるのですが、今回はその議論はやめておきましょう。とりあえず言えることは、音源の違いよりもそれを再生するコンポやパソコン、そしてそれに付随するスピーカーなどの差の方が明らかに大きいということです)。少なくとも以前は、売る側にとってみればCDの方が明らかに利益率が高かったので(今はどうなのかと言われると、これもなかなか難しい議論になるので今回は割愛しますが、少なくとも年々事情は変わってきています)、CDが売れなくなる、という結論はまずいことになります。そこで、アルバムをサブスクでリリースする際は一部をサブスクでは聞けずに、CDでのみ聴けるようにしていたり、サブスクのリリースをCDの発売より後にするなどしていました。
さて、今となってはこの説を信じている人は正直ほとんどいないと思います。CDはある種のグッズとなっており、「音楽を聴く」という目的のためだけにCDを買う人は逆にほとんどいなくなっているからです。ですから、サブスクに出したからといってCDを買う・買わないとはあまり関係がない、あるいはサブスクになければそもそもそのアーティストを知ることもないので、応援行為としてCD購入にもつながらない、と考えるほうが現代的です。
マンガの場合は、単行本化にあたって連載の原稿から修正が行われることもよくあると聞きます。絵やセリフに細かい修正が入ることはもちろん、大きく描き直されるような部分もあるのでしょう。これは版が変わるときになされる場合もあるとは思いますが、音楽では通常こういった修正はありません。その他にも、単行本にはおまけのページがあったりしますね(連載時の編集のあおり文がないのはちょっと寂しかったりもしますが)。
限定コンテンツの存在だけでも単行本を買う理由にはなると思いますが、CDと同じように「応援」という意味合いも含まれるのかもしれません。先日編集の方と打ち合わせをしていて、言われてみればそうだよなと思ったことがあったのですが、音楽は「再生数」がアーティストの収入に直結しますが、マンガの「閲覧数」は一般的にはそうではないですよね。でも単行本の発行部数はダイレクトに収益になると思うので、ここは確実に「応援」にはなっていると思います。連載で好きになった作品を単行本を買って応援するのが、古くからある漫画の売れ方の一つの形なのでしょう。
最初に書いたように、僕も好きなマンガは「連載」「単行本」どちらも購入しているのですが、僕の場合は「もう一度読みたい」という部分も大いに影響しています。連載誌を毎回取り出してきて、その作品だけもう一度読み直すのは大変なので(というか思わず他のマンガも読んでしまいますし、それが楽しくて止まらなかったりもしてしまうので)、もう一回読むなと思ったら必ず単行本を買っています。以前、音楽系のアーティストの応援方法として一番いいのは「CDをできるだけ買った上で、サブスクの再生を無音でずっとループし続けて再生数を稼ぐ」ことだという言説が話題になったのですが、これもまったく的外れではないのかもしれません。
■【結論】人それぞれの漫画・音楽の楽しみ方
第三の派閥として、アニメでストーリーを追っている方もいらっしゃいます。続きが気になる、と言いながらもあえてその原作マンガを読んだりはしないというパターンもあります。僕からするとかなり不思議に思ってしまうのですが、しかし例えば音楽でも「ライブで聴くまで絶対に新作を音源で聴かない」というポリシーを持った方もいるので、楽しみ方というのは本当に人それぞれだなと考えれば、これくらいは普通なのかもしれません。
音楽では「ベストアルバム」というシングル曲やヒット曲だけを集めたものがあります。今となってはサブスクでいくらでも「ベストアルバム」的なものを自分でプレイリスト化できるので、あまり意味はないかもしれませんが、かつてはベストアルバムがアルバム売り上げの上位を占めていました。多くの人が求めた結果が「ヒット曲」なわけですから、それを集めたものが売れるのは当然かもしれません。前に『名探偵コナン』の「黒の組織関連の話だけをまとめた特別版」を見かけたことがあるのですが、これはもしかしてある種のベストアルバムだったんでしょうか。いや、でも普通のアルバムにしか入ってない曲にこそ、自分のお気に入りが見つかったりするものなんですよね。
4月の担当編集
6か月の息子にOASISを聴かせてます。リアム派な気がします。
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!
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