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【騙されたと思って1本!!】「別マガ」ムービーガイド 『ぼくらの葬列』朝霧ユウキ先生&担当が選んだムービー編

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今月は『ぼくらの葬列』が絶好調の朝霧ユウキ先生と担当の詫摩くん。ホラーが大好きな朝霧先生と、実話が大好きな担当詫摩くんの推薦映画とは!? 2人が推薦してくれた映画に関連した、編集部オススメの映画もおもしろいのでぜひチェックしてみてくださ~い!

 

●TITLE『黒い家』
この人間には心がない!?

 今月最初の推薦者は『ぼくらの葬列』の朝霧ユウキ先生。担当によると先生はホラー映画が大好きとのこと。最初の持ち込み作品もゴリゴリのホラーだったとか。そんな朝霧先生が選んだ最初の映画は『黒い家』。貴志祐介の同名のホラー小説の映画化である。監督は森田芳光監督。
 保険会社で保険金の査定業務を担当する青年、若槻(内野聖陽)に不気味な問い合わせの電話がくる。相手は女。“自殺した場合、保険金は出るの?”。
 顧客の菰田重徳(西村雅彦)から呼び出された若槻は、重徳の家で彼の妻、幸子(大竹しのぶ)の連れ子が首吊り自殺により死亡しているのを発見する。子供には保険金がかけられていた。第一発見者となってしまった若槻だが、保険会社はこの自殺に疑いを持つ。契約の内容が不自然だったからである。しかも菰田には、障害給付金目当てに、故意に自分の指を切断した過去があった。
 子供の自殺から間もなく、菰田幸子が保険金はまだかと若槻のところへやってくる。子供を亡くしたばかりの母親とは思えない鮮やかな黄色いサマーセーターを着た幸子の表情はうつろで、感情を読み取ることができない。すぐに支払いはできないと説明する岩槻。するとその日を境に、夫の重徳が保険金の支払いを求めて毎日事務所にやってくるようになる。彼の様子は傍目にもおかしく、自分の指を嚙み切ろうとすることも。
 重徳が保険金目当てに子供を殺したのではないかと疑う若槻は、菰田家と保険の契約を結んだ当時の外務員に聞き込みをする。そこで若槻は菰田夫婦の過去を知り……。
 読者のみなさんは、人間らしい心を持たない人間が、この世に存在すると思いますか? 良心を持たず、自分の欲望のためなら殺人でもなんでもいとわない人間。
 この映画に登場する犯罪心理学者は言う“自分の欲望を満たすためなら犯罪すら躊躇わない人間がいるんです”。この映画は不運にもそんな恐ろしい人間に遭遇してしまった普通の人の恐怖を描いている。
 タイトルにある“黒い家”ではいったい何が行われていたのか? そして心を持たない人間は誰だったのか?
 さて、現実に良心もなく、自分の欲望のまま殺人を犯す人間が存在することは知られているが、そんな人間がモデルとなって登場する映画も多々ある。アクション映画の名作『ダーティハリー』の犯人スコルピオは、“ゾディアック事件”(ゾディアックと名乗る人物が、若いカップルを次々に殺害した事件。未解決)のゾディアックがモデル。この事件を追う人々を描いた『ゾディアック』(デヴィッド・フィンチャー監督)なんてのもある。
『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督も『殺人の追憶』という映画で、華城連続殺人事件にインスパイアされた快楽殺人者を登場させている。邦画では埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにした『冷たい熱帯魚』の殺人者が超怖い! どうやらクリエーターは、このような題材に惹かれるらしい。というか、恐怖を体現する存在がクリエーターの創造力を刺激するのかも。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『ゾディアック』
こんな劇場型犯罪が実話だってことにビックリ!

 

『黒い家』

発売中
DVD:3080円(税込)
発売・販売元:KADOKAWA

 

●TITLE『グエムル 漢江の怪物』
韓国で生まれたモンスター映画の傑作!

 ホラー大好き朝霧先生、推薦作2本目は『グエムル 漢江の怪物』。ホラー要素も兼ね備えた傑作モンスタームービーだ! 監督は先ほども話題に出たポン・ジュノ監督。
 韓国ソウルの中心を東西に流れる巨大な河・漢江に、突如正体不明の巨大モンスターが現れ、人々を恐怖に陥れる! 自然や環境を考えない人間がモンスターを生みだし、しっぺ返しを食らうというモンスター映画王道のストーリー。『ゴジラ』や『ジュラシック・パーク』(モンスターじゃなくて恐竜だけど)もそうだったよね。
 2000年、駐韓米軍第8部隊ヨンサン基地内の慰安室から大量に流されたホルムアルデヒド。案の定その2年後に漢江で魚釣りをしていた釣り人が不思議な魚を発見する。これがSNS全盛期の今だったら、その画像で大騒ぎになるところだが、時代はまだそこまでいってない。そしてその4年後。漢江に飛び込んで自殺しようとするどっかの社長が黒く大きな影を水中に見る。自殺を止めようとする社員に“おめでたい奴らだ”とつぶやき飛び込む。その水面が揺れタイトルが浮かびあがってくる。摑みはOK!
 休日の漢江の河原は賑やかだ。そこに突然現れる巨大な怪物(ナマズとカエルを足して2で割ってトカゲの尻尾とプレデターの口元を加えていっちょ上がり的な怪物)! いやはや、この手の映画でこんなに早く怪物が登場する映画も珍しい(普通はもっともったいぶるでしょ)。それも真っ昼間である(CGにお金がかかりそう)。さすがアジアが誇るポン・ジュノ監督。大胆な演出だ!
 怪物に襲われる人々。阿鼻叫喚の地獄絵図の中、怪物は河川敷で露天を営むパク一家の娘ヒョンソを捕らえそのまま水中へ!
 多くの犠牲者とともにヒョンソも死んだと思われたが、ヒョンソの父親カンドゥの携帯電話に彼女からの着信が!? だが、致死のウイルスの宿主と思われる怪物と接触したことで、カンドゥ一家は病院に監禁されていた! それでもカンドゥは弟、妹、父親と力を合わせ、怪物に捕らわれたヒョンソを救うため、病院を脱走! 政府に追われながら、一家は怪物の棲む漢江に向かうのだが……!?
 恐ろしい怪物の巣に閉じ込められたヒョンソ、追われながらも彼女を助けるため奔走する家族。2つの戦いが並行して描かれ、緊張感とシニカルな笑いで味付けされたこの物語は怒濤の最終決戦まで突き進む! これぞモンスター映画の傑作である!

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『トレマーズ』
笑いが勝ってるが、れっきとしたモンスター映画。なかなかです!

 

『グエムル 漢江の怪物 HDエディション』

発売中
ブルーレイ:6380円(税込)
発売元:ピカンテサーカス
発売協力:ディメンション
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
©2006 Chungeorahm Film. All rights reserved.

 

●TITLE『エルヴィス』
キング・オブ・ロックンロールの輝きと闇

 今月2人めの推薦者は、朝霧ユウキ先生の担当、詫摩くん。彼は実話を基にした映画が好きなのだそう。推薦作1作目は『エルヴィス』。監督は華やかな作風で有名なバズ・ラーマン監督。
 あのビートルズも大ファンだったというスーパースター中のスーパースター、エルヴィス・プレスリーの半生を、実話を基に描いた作品だ。
 1人の若者が夢中になってレコードを聞いている。時代はまだ黒人差別が当然の時代。“黒人音楽だろう”という問いに若者は答える“彼は白人だ”。その答えに驚いた音楽プロモーターのトム・パーカー大佐(トム・ハンクス)は、彼が出演するというフェスに向かう。そこには大勢の観客を前に怖気づいている繊細そうな若者がいた。だがいったんステージに立つと……脂ぎった髪に女のような化粧を施したこの青年は激しく腰を動かしながら絶唱する。見ていた娘たちはたまらず悲鳴とも聞こえる歓声をあげてしまう。これを目撃した大佐は直感する。“彼は禁断の果実の味だ。かつてない出し物だ!”。
 彼の名はエルヴィス・プレスリー(オースティン・バトラー)。貧しい家に生まれ、黒人地区の白人用住宅で育ち、黒人音楽のブルースと教会のゴスペルを糧としてきた青年だ。
 映画はこの無名の青年がキング・オブ・ロックンロールと呼ばれ、42歳という若さで亡くなるまでを描いている。
 独特の唱法から、保守的な大人たちに“骨盤エルヴィス”“黒人の尻の白人”と見下され、“欲情と性的倒錯の罪”に問われ、軍隊に入らないと刑務所行きと政府に脅され、悪徳マネージャーとの契約に縛られ……と、波乱万丈というか、無間地獄的な半生。これがほぼ事実だというのだから驚きだ。
 味方である愛する家族も、母親はアルコールに溺れて亡くなってしまうし、父親や親戚たちはエルヴィスの稼ぐお金だけが頼りという情けない状態。結婚しても、無茶な生活がたたって離婚。愛する娘(=リサ・マリー・プレスリー のちにキング・オブ・ポップ、マイケル・ジャクソンと結婚する)とも離れ離れに。しかも専属マネージャーであるトム・パーカー大佐は、自分がエルヴィスを作ったと豪語しながら、彼の生み出す音楽を全く理解しておらず、エルヴィスを利用するだけ利用していたのだ。そのうえ身分を詐称しており、実はアメリカ人でもなかったというとんでもなさ! 光り輝くスターの裏側は、闇に覆われていたのだった。
 42歳の若さで亡くなったエルヴィス。死因は処方薬の誤用による不整脈と公式に発表された。


▼編集部オススメ、もう1本!
『AMY エイミー』
27歳で死去したイギリスの歌手エイミー・ワインハウスのドキュメンタリー。

 

『エルヴィス』

発売・デジタル配信中
ブルーレイ:2619円(税込)
DVD:1572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
©2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 

●TITLE『ハウス・オブ・グッチ』
世界的ブランド創業者一家の驚くべきスキャンダル!

 詫摩くん推薦作2本目は『ハウス・オブ・グッチ』。これまた実話が基になっている作品だ。監督はリドリー・スコット監督。
“事実は小説より奇なり”などと言うが、まさにその通りと言えるのがこの映画。
 世界的ファッションブランド「グッチ」の創業者グッチ家の経営権争いと、その中で起きた3代目の経営者マウリツィオ・グッチ殺害事件を描いている。ファッションのことはよく知らない人でもグッチの名前は聞いたことがあるはず。でも、その創業者一族のスキャンダル、それも殺人事件をみなさんは知ってました?
 映画冒頭“その名はかくも魅惑的な響きを持つ。富の代名詞であり、スタイルやパワーそのもの。それは呪われた家名でもある。トスカーナ地方の一族の名…”と囁くのはパトリツィア・グッチ(レディ・ガガ)である。
 運送会社の社長の娘パトリツィアは、パーティでマウリツィオ(アダム・ドライバー)と出会う。彼が有名ブランド、グッチ家の御曹司であることを知ったパトリツィアは猛アタック。ボンボンのマウリツィオは、強い押しにあっさり陥落する。とは言ってもマウリツィオの父親ロドルフォ・グッチ(ジェレミー・アイアンズ)はこの交際に反対する。パトリツィアは美しい、だがグッチ家の嫁にはふさわしくないというのだ。
 最近よく富裕層という言葉を聞くが、ヨーロッパの富裕層というのは、日本人の考える富裕層とは桁が違う。マウリツィオの実家にはクリムトの名画“アデーレ”(『黄金のアデーレ 名画の帰還』という映画もあるくらいの有名な名画)が飾られ、美しい庭園があり、まるで美術館のような家だ。タワマンではちょっとかなわない。富める者とそれに従う者は全然違うのだ。しかしマウリツィオは父親の反対を押し切って結婚。彼はパトリツィアの実家の運送業を手伝うことにする。肉体労働などしたことのなさそうなマウリツィオなのだが、あんがいこんな生活もいいもんだと、幸せな日々を送っていた。ところがマウリツィオの叔父アルド・グッチ(アル・パチーノ)の誕生会に呼ばれたことから、パトリツィアに変化が訪れる。アルドから結婚祝いに贈られた航空券でニューヨークを訪ねた2人。アルドはニューヨークでグッチの経営をしている。そこでの華やかな生活にすっかり心を奪われたパトリツィアは、マウリツィオにグッチのビジネスに参加すべきと迫る。そんな時、グッチの株式の50%を保有するマウリツィオの父ロドルフォが死亡したことから……。
 野心満々の妻と彼女を満足させたい夫。身内同士の経営権を巡る醜い争い。ついには殺人にまで及んだグッチ家のスキャンダル。ファッション業界の裏側も垣間見ることのできる“小説より奇なり”な映画である。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『シングルマン』
グッチのデザイナーだったトム・フォード(映画にも登場)初監督作。スタイリッシュです!

 

『ハウス・オブ・グッチ』

発売中
ブルーレイ:2075円(税込)
DVD:1572円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
©2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.
※本商品は、今後、権利が移動する可能性があります。

 

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kc.kodansha.co.jp

 

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