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『ヒットマン』特別企画 敏腕テレビプロデューサーに聞くヒットの極意! 後編

『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』の敏腕テレビプロデューサー・加地倫三氏に瀬尾先生がインタビューしました。

 

エンターテイメントが多様化する中、ヒットを連発する仕掛け人は何を考えているのか。

テレビ業界の旗手が目指す「意外過ぎるゴール」とは――?

『ヒットマン』の瀬尾先生がその極意に迫る!

 

前編はコチラ☆

加地倫三さんと瀬尾公治先生

加地倫三

テレビ朝日の演出兼エグゼクティブプロデューサー。

『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』などのヒットバラエティ番組を数多く担当する敏腕プロデューサーで、加地が起用した芸人は売れるとも言われている。

2019年春から始まる『テレビ千鳥』も手掛ける。

  • ・『アメトーーク!』毎週木曜日 23:20~
  • ・『ロンドンハーツ』毎週火曜日 23:20~(2019年4月より)

「企画」ではなく「人」ありき

瀬尾先生:

マンガでは新連載を始めるときに「どんな内容にしようか」という企画の部分がかなり重要なのですが、加地さんは新番組をはじめる際に意識していることはありますか?

 

加地さん:

意識していることではありませんが、僕はどちらかと言えば「人」で番組を考えるタイプなので、自分がその人を好きかどうかは重視しているようです。だからなのか、内容よりもメインキャストの名前がつく番組タイトルが多いんですよ。

 

瀬尾先生:

『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』もそうですね。

 

加地さん:

今度も『テレビ千鳥』ですからね。僕にとっての原動力は「この人達と仕事したい!」という気持ちなので、「こういうVTRを観て……」とか「ここでクイズが出て……」みたいな企画先行型にはあまり魅力を感じません。

チームとしてやりたいんですよね。それは演者さんだけではなく裏方のスタッフも含めて。

 

瀬尾先生:

ということは、演者さんの一番いい味を引き出すような番組作りを意識されているということですか?

 

加地さん:

その通りです。MCもゲストも、みんなが面白く見えるような番組が理想です。そのためには演者のことをより深く知らなければいけません。

幸い、僕自身は人見知りするタイプではないので、積極的にコミュニケーションをとるようにしています。

 

瀬尾先生:

まさに信頼関係ですね。では仕事以外の場所でも一緒にいることが多いのですか? たとえば飲みに行ったりだとか……。

 

加地さん:

飲みに行くことももちろんあります。打ち合わせのときにも、仕事の話だけじゃなく雑談もするように意識しています。

雑談の中で「何を面白がるのか、本当はどんなことをやりたいタイプなのか」など、感覚のすり合わせをしていくイメージです。

あ、でも雨上がり(雨上がり決死隊)とロンブー(ロンドンブーツ1号2号)はもう付き合いも長いので、「はいはい、今日はこんな感じね」「わかりましたー」という軽い感じでも意思疎通は問題ありません(笑)。

加地倫三さん

瀬尾先生:

打ち合わせ中の雑談、わかります。僕も担当編集者との打ち合わせは、半分以上雑談ですね。最近ハマっていることの話だったり、ドラマの話だったり、社会問題のようなかたい話だったり……。

 

加地さん:

そんなことまで! やっぱりマンガ家と編集者のタッグ感ってすごいね。お互いの信頼感が半端ないというか。

 

瀬尾先生:

今も隣に担当がいるので変な感じですが(笑)。

 

加地さん:

お互いを理解することってとても大事ですよ。よく若いスタッフに「その芸人さんのことをよく知らないといけない」と言っています。

それは、プロフィールを頭にいれておけということではなくて、「どういうお笑いが得意か、また苦手か」、「どんなタイプの人を組み合わせると力を発揮するのか」、「ひな壇ではどの席に座らせるとよいのか」など、特性のような部分を知っておけよ、ということです。

これは本当に重要で、その理解の数が多ければ多いほど、番組を作った時にはいいものができる。

たとえば、ある芸人さんの「カンペを出してしまうと途端にスタッフの気持ちを気にしすぎて自分の良さが出なくなってしまう」という特性を知っていれば、出すタイミングは変わるし、出さずに好きなようにやらせて、あとは編集でなんとかするとか、いろんな対応ができるはずです。

 

瀬尾先生:

そんなところまで意識されているんですね!

 

加地さん:

そうすると、おのずと演者が生き生きとし始めるんです。そういう収録ができたら番組は絶対に面白くなります。

 

瀬尾先生:

加地さんの手掛ける番組が面白い理由の一端が見えた気がしました。

みんなを巻き込む力 

瀬尾先生:

番組スタッフの大人数のチームをまとめるのって大変じゃないですか? 全員に同じ方向を向かせるなんて、マンガ家の僕には考えられない……(笑)。

チーム感を大切にする加地さんならではの工夫があれば教えてください。

 

加地さん:

そうですね。単純なことですが、お揃いのスタッフTシャツを作ってみたことはありました。同じものを着ているだけで仲間意識はグッと高まりますよ!

 

瀬尾先生:

なるほど、いいですね。僕たちも作りますか『ヒットマン』Tシャ…

 

担当:

絶対に嫌です!! 恥ずかしくて社内で着られないですよ!!

(一同爆笑)

 

加地さん:

あとは、新年会をするようにしています。演者さんはもちろん、ディレクター、AD、カメラマンさん、音声さん、照明さん、美術さん、編集さん、ミキサーさん、音効さん、ロケバスドライバーさん、他にもたくさん……、番組に関わる全ての人を集めて百人規模で開催するんです。

 

瀬尾先生:

すごいですね!

 

加地さん:

技術さんと編集さんとか、お互い現場が違うので、同じ番組スタッフなのに普段なかなか会わない方もいたりして、交流できる機会があるだけでおのずと良いチームになっていきます。

MCや常連の芸人さんが挨拶すると盛り上がったり、僕がスピーチすると真剣なまなざしで聞いてくれたり。そういうのってすごくモチベーションになるんですよ。

 

瀬尾先生:

最高のチームですね。

 

加地さん:

結局、1人だと何もできないんです。この仕事って。僕がいくら頑張ったって、番組を放送することはできない。

だからこそ大切にすべきはチームですし、「番組のためだったら何でもやりますよ!」と助けてもらえるような関係性を築いていければいいなと思っています。

加地倫三さん

瀬尾先生:

チームとしてのまとまりは、僕たちの一番苦手とするところかもしれません。マンガ関係の人たちは基本的に人見知りなので、打ち上げとかパーティとかに参加しても知り合いとしか喋れないんです(笑)。

 

加地さん:

それはもったいない! 絶対喋ったほうがいいですし、新年会もやったほうがいいですよ。作品にはマンガ家さんと編集者さん以外にも関わっている方いますよね?

 

瀬尾先生:

デザイナーさんとか、単行本の担当者とか、営業さんとかでしょうか。

 

加地さん:

まだ3月ですし、その人たちをみんな集めて、新年会を開催すべきです! 瀬尾さんが「一杯どうぞ」ってビール注ぐだけで全然違うと思いますよ。

 

瀬尾先生:

僕たちには全くなかった発想です。(担当編集者の方を向いて)『ヒットマン』チームも周りを巻き込んでいきましょう!

 

加地さん:

『ヒットマン』でもテレビの話を出してくださいね。主人公の担当作がドラマ化して、そのキャストがバラエティ番組に番宣で出るみたいな。そうすれば、バラエティ番組のプロデューサーである僕も絡めます(笑)。

 

瀬尾先生:

それもいいかもしれません(笑)。今日はネタをたくさんもらったので、今後の展開も面白くできそうです!

 

加地さん:

こちらこそ、とても新鮮でした。

 

瀬尾先生:

最後に、マガジン読者に向けて一言お願いします。

 

加地さん:

マンガだけじゃなく、たまにはテレビも観てください! 『アメトーーク!』『ロンドンハーツ』『テレビ千鳥』をよろしくお願いします!

 

瀬尾先生:

本日はありがとうございました。

 

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