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「あのタッグに聞いてみた!」 瀬尾公治先生が”あの名作”を作ったマンガ家・編集者タッグにインタビュー! 『はじめの一歩』編(前編)

6月20日より連載がスタートする漫画編集部が舞台の漫画『ヒットマン』の瀬尾公治先生が、名作を作った漫画家・編集者タッグにインタビューする「あのタッグに聞いてみた」がスタート。

 

第一回目である今回は、1989年から連載が開始され、2018年6月現在で121巻を発刊する国民的人気ボクシング漫画『はじめの一歩』の作者・森川ジョージ先生と、『はじめの一歩』立ち上げの立役者である編集者・野内雅宏氏(現・一迅社取締役社長)に話を聞いた。

 

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(写真左:野内氏 写真右:森川先生) 

 

瀬尾公治先生(以下、瀬尾):今回はお忙しいなか、ありがとうございます。本当に、伝説的なお二人なので、少し緊張していますが、よろしくお願いいたします。

 

森川ジョージ先生(以下、森川):いやいや、やめてよ。僕で緊張することないですよ。

 

瀬尾:いや、それはすごくしますよ……(笑)。まず、はじめにお伺いしたいのが、お二人の出会いについて、です。

 

森川:僕は、15歳で初めて講談社に自分の漫画を持ち込んだんですが、野内さんは最初の担当ではなかったんです。でも、編集部に通ったり何度か会ったりするうちに「あの人は絶対仕事が出来る」と確信して、5年後に当時の担当が変わるタイミングで自分で野内さんを指名したんですよ。

 

野内雅宏氏(以下、野内):仕事が出来るかは分からないけど、仕事熱心だった時期ではありますね(笑)。彼の最初の持ち込みの時「リーゼントで顔に怪我をした少年が持ち込みに来た、しかも漫画がすごくうまい」っていう話を編集部内で聞いて、その時からすごく興味はありました。

 

瀬尾:怪我……ですか。

 

森川:そう。その日、不良に絡まれちゃって。持ち込みする漫画を守らなきゃいけないから(笑)。

 

野内:そして、顔中傷だらけ(笑)。でも、当時は、学園青春ものみたいなものを描いていたよね、リーゼントでコワモテの少年が(笑)。

 

森川:そうそう(笑)

 

野内:でも、当時から、キャラクターに元気とか明るさとか、生命力があってすごく良かったんです。

 

瀬尾:野内さんが森川先生の担当になって、最初に編集として思ったことはなんでしたか?

 

野内:あの年齢にしては絵は本当に上手かったけど、『週刊少年マガジン』の本誌で突き抜けて人気を取るには、絵柄や表現が少し幼いかな?とは思っていました。成長は必要だなって。しかも、当時の編集長の要求は本当に厳しくて、とにかくハイレベルなものを求めてきたから、成長させつつ、そのハードルを越えないといけないと思っていて……。

 

森川:野内さんはね、最初に「あなたの絵は通用しません」って言ってきたんですよ。

 

野内:作家さんに絵を変えましょう、っていうのは、本当に勇気がいることで。アイデンティティを否定することですから。でも、このままだと連載を勝ち取れないと思っていたので、緊張しながらも言ったことを覚えています。

 

森川:漫画家っていうのは、自分の絵が好きですからね。僕の知り合いも野内さんが担当だったんだけど、それを言われて辞めちゃった人もいて。でも僕は、それを聞いて、売れるなら全然変えよう、と思ってすぐに変えました。野内さんが、目を変えてみよう、って言われたので、その場で本当にたくさんの目を描いていって。たくさん描きすぎて、最後グリグリと描いていたら真っ黒な目になって。それでその目を見た野内さんが、これで行こうってなって。これが一歩の目ですね。

 

 

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瀬尾:あの、力強い目ですね。

 

野内:森川先生は、怖いイメージがある方ですが、本当に素直な方で。こうしましょう、っていうと、すぐに直してくれる。編集者である僕を、全面的に信頼してくれていたんです。

 

森川:僕は負けず嫌いですから、野内さんに負けたくない、っていうか、野内さんを認めさせたいっていう気持ちでずっと仕事をしてきたんです。ネームを否定されることだってありましたけど、それはそのネームを描いていた期間の僕を全否定されるってことで。本当に腹が立つけど(笑)。でも、野内さんが『はじめの一歩』の一番初めの読者なんですよね。だから、その野内さんが微妙な反応をしたら、きっと読者もそういう反応をするんだろうなって思うから、野内さんが納得するまで描き直して。

 

瀬尾:本当に、すごい信頼感ですね。そうしたら、お二人は喧嘩、というか衝突することはなかったんでしょうか。

 

森川:喧嘩っていうか、僕が一方的に腹を立てることは多かったと思いますね。文句ばっか言って、ならお前がやれよっていう(笑)。でも、文句というか、意見をするのが編集者の仕事なんだと思うんですけどね。でも、やっぱり漫画家からすると、絵やストーリーのことを分かってないって思うこともあるじゃないですか。

 

瀬尾:そう……ですね(笑)。

 

森川:ストーリーを作る必要はもちろん無いんだけど、面白いか面白く無いかを、ちゃんとジャッジしてほしいんですよね。

 

野内:編集者もすごく悩むんですよ。新しい漫画のネームを、二人で何度も打ち合わせを繰り返して、絶対に面白くなったと思って編集会議に出したのに通らないこともあって。それが続いた時は、信頼関係が崩れかけているな、と感じたこともありましたね。

 

森川:だって、ネームを描いてる間って、僕たち漫画家は無職じゃないですか。それで追い詰められているけど、編集者のことを全面的に信頼して、打ち合わせで指摘されたことはすぐに描き直して。これ以上直すのは無理っていうようなネームを何度も二人で繰り返し直して。それで、通らない。通ったとしても打ち切り。そうなると、もう本当どうしたらいいんだと途方にくれてしまいますよね。

 

瀬尾:そんな風に揺らいだ信頼関係を、お二人はどう持ち直したんですか?

 

ーー揺らいだ信頼関係。そんなとき、打ち合わせで森川先生と野内編集の間で交わされた会話とは…? 後編に続きます。

 

後編は瀬尾先生の新連載『ヒットマン』が開始する6月20日(水)公開予定です!お楽しみに!

 

(大原絵理香)