新人漫画家さん必見!! 今回は、第113回新人漫画賞締め切り前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『盤上のオリオン』の新川直司先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
多彩なヒットメーカーが語る漫画の作り方!!
『盤上のオリオン』新川直司先生に聞く!
読者の心を動かすを生み出す極意!!
「週マガ」にて『盤上のオリオン』を大好評連載中の新川直司先生に電撃取材! 新川先生の漫画について語っていただきました!
新川直司先生Profile
2007年、月刊少年マガジンにて『冷たい校舎の時は止まる』(原作:辻村深月)のコミカライズにて連載デビュー。その後は、『四月は君の嘘』や『さよなら私のクラマー』(ともに月刊少年マガジン)を連載。現在、週刊少年マガジンにて『盤上のオリオン』を大好評連載中!!
●極意1
題材の引き出しを増やす!
――漫画家を目指したきっかけは何ですか?
元々漫画が大好きで、大学時代はたくさん漫画を買って、部屋にこもって延々と読んでいました。漫画家を目指したきっかけは、大学で漫研に入っている人に出会って、漫画を描くという選択肢を知ったことです。その上で、当時は多人数で働くのは自信がなく、一人でできる漫画家になろうと思いました。ちなみに、一人でできる、とは今は全く思っていません(笑)。意外に人との関わりも多いですし、コミュニケーション能力も必要です。
――その後、月刊少年マガジンの新人賞を獲得され、連載を目指すことになったと思います。その時期のことを教えてください。
僕はアシスタント経験がなく、漫画において師匠と呼べる人はいません。なので、当時の担当編集さんに漫画のいろはを教えてもらいました。特に印象的な教えは、少年誌は青年誌と比べて、より分かりやすさが求められる、ということです。少年誌というのは、本当に万人が理解できないといけません。読者が分かる物語でなければ、面白いか面白くないかを判断してもらう土俵にすら立てないからです。
――『さよならフットボール』『さよなら私のクラマー』では女子サッカー、『四月は君の嘘』ではクラシック、『盤上のオリオン』では将棋と、様々な題材を扱ってきたと思いますが、それはどのように決めてきましたか?
『さよならフットボール』『さよなら私のクラマー』の女子サッカーについては、澤穂希選手のドキュメンタリー番組を見て感銘を受け、選んだ題材です。サッカーは元々好きなので、いつでも描けるのですが、サッカーばかり描くのはよくないかなと。色々なものに触れて引き出しを増やし、その中から描きたい絵が見つかったものを、題材に選んでいます。
『四月は君の嘘』は、バイオリンを弾く女の子を描きたいと思ったことから始まりました。最初は、男の子もバイオリンを弾く物語だったのですが、二人ともバイオリンでは見栄えが良くないと思い、片方はピアノにしました。
『盤上のオリオン』については、新連載について打ち合わせをする中で、担当編集さんが将棋を提案してくれました。そうしたら、もう一人の担当編集さんがバーでチェスを指した話をしていて、バーで将棋を指すシーンはそこから着想を得ました。
▲担当編集さんが見た光景から生まれたアイデア。
――今まで触れてこなかったジャンルについては、取材や下調べをたくさんしてから描かれますか?
取材は行っています。特に将棋は、伝統的な部分など、知らずに描いてはリアリティを損なってしまうことがいっぱいありました。勉強をしたり、色々お話を聞いたりした上で、棋士の方にも監修をお願いしています。
しかし、最近は、少年漫画は題材について詳しくなくてもいいのではないかと思うこともあります。常識が邪魔してしまって、発想の飛躍が難しいことがあるからです。(『四月は君の嘘』の)クラシックの時、伴奏が飛び入り参加で行うというシーンを描きました。本当はルール的にはダメだったのですが、僕はそれを知らなかったので描くことができて、おかげで面白くできたのかなと思います。
●極意2
キャラクターには哲学を!
――1から作品を生み出そうとする時に、最初にどういうところから決めていきますか?
やっぱりキャラですかね。哲学を持っているキャラはストーリーを引っ張ってくれます。キャラがこうだと、ストーリーはこうじゃないとおかしいよね、といったように物語が自然と定まってくれますね。
――『盤上のオリオン』の場合はどうでしたか?
まず、うまくいかない男の子を描こうとしました。バーで強い棋士に会うという話の中で、最初はどん底に落とした方がいいなと思い、17連敗という設定を作りました。でもこの子は、物語として本当は強くないといけない。なんで弱かったのかという話になり、おじいちゃんが死んだからなど、外的要因を足していきました。
▲這い上がるためにどん底に落ちる主人公。
――作品の中で、悩んでいる男の子が前を向いていく姿が印象的だと思います。
ずっと落ち続けるのは良くないですが、どこかで障害は与えた方がいいと思います。障害を乗り越えてこそ少年漫画だと思いますし、乗り越えた時に物語として気持ちいい場面が来るので。
――新川先生の作品では、主人公が他の登場人物に大きな影響を与えたり、逆に大きな影響を受けたりするなど、登場人物同士の関わり合いが印象深いです。他者に与える影響というものはテーマとして持っているのでしょうか?
そうですね。人間は人と会って何かが変わると思っています。逆に僕は環境で変わるとはあまり思っていません。影響し合って、支え合って、人は人と会って成長するものだと思います。人と会って、トラブルも起こりますが。トラブルって大体、人との関わり合いのなかで起こりますから(笑)。
何より、そっちの方が漫画として面白いと思います。例えば、大自然に行って僕は変わったと言うよりも、人間が出会って、誰かがそばにいて、影響を受けた、と言った方が物語として面白いです。
●極意3
コミカルなシーンを使いこなせ!
――新川先生の作品は、人の死などのシリアスなシーンも多いと思いますが、作品全体はコミカルな印象を受けます。シリアスなシーンとコミカルなシーンの使い分けについてお聞かせください。
くすっとしてもらえればいいな、ぐらいに思っています。 真面目なシーンが続いたら、コミカルなシーンを挟むという意識です。10代の子たちの会話で真面目な話ばかりすることはあまりないと思っています。ふざけあったりもするし、そういうシーンが入った方がいいのではないかなと思っています。
▲シリアスなシーンだけでなくコミカルなシーンも。
――技術的な面でコミカルなシーンとシリアスなシーンで変えているものはありますか?
コマ割りは考えています。コミカルなシーンでは、小さいコマを使ったり、横長のコマを使って分かりやくしたりしています。シリアスなシーンでは縦長のコマを結構使います。説明が下手なので、シリアスなシーンはコマを縦に切って、迫力というか、少し違和感を出すという意図があります。
●極意4
青春とは、期間限定だ!
――キャリアを重ねるごとに自分が10代だった頃から離れていくと思います。その中でずっと等身大の若者を描き続ける秘訣はありますか?
今の若い子たちの生態はあまり理解していないかもしれません。それよりは、誰しもが経験したであろう、普遍的な若さを意識しています。
――普遍的な若い頃のシーンとはどのようなイメージですか?
例えばイベントとかですかね。バレンタインとかクリスマスとか、卒業式とか、それはみんな経験するじゃないですか。デートでもいいですし、先輩とのバイトの帰り道とか、そういうものは普遍的かなと思います。
――恋愛、努力、葛藤など青春を構成する要素はたくさんありますが、新川先生にとって、「青春」とは何でしょうか?
難しい質問ですね……。青春を構成する要素はたくさんありますが、必ず必要な要素はないと思います。例えば、『盤上のオリオン』では、主人公と同世代の棋士が4人いまして、恋愛要素なんかは入れていませんが、彼女たちは「青春してるな」と思います。
うーん、そういう意味では、「青春」って「期間」のことなんですかね。期間限定にすることによって、日常が青春に変わる。限られた期間の中で一生懸命やる姿が青春なのかもしれない。ゴールが決まっているので、全力疾走なわけですよね。
だから、アルバイトで海の家にみんなと泊まり込みで働いたというのも青春かなと思いますし、将棋の奨励会も青春だし、高校生活も青春だと思います。
▲先輩との帰り道での一コマ。これぞ青春!
●極意5
「若さ」を最大限に利用せよ!
――今振り返って、昔こんなことをしておけばよかったなと思うことはありますか?
アシスタントをしておけばよかったなと思います。 僕はアシスタント経験がなくて、パースなどの基礎がなっていないので、背景が人任せになってしまっています。あとは、ネームは一生懸命描いたほうがいいです。僕はネームの段階で絵をしっかり描きこんでいたので、そこで画力が上がったのかなと思っています。
――最後に新人作家さんに向けてメッセージをお願いいたします。
やっぱり若い時は「俺がすごいんだぞ」というのを見せたいと思うじゃないですか。それを最大限に利用してください。好きに描いて、面白いものを描けば載せてもらえると思います。そして、人気が出ればそのジャンルが開拓されるので、思う存分描いてください!
――本日はありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました!
『盤上のオリオン』は「週マガ」で大好評連載中!
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第113回新人漫画賞
特別審査員はマガポケにて『WIND BREAKER』連載中のにいさとる先生!!
締め切りは2024年9月30日当日消印有効! ご応募お待ちしております!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!