「週刊少年マガジン」編集者・高長が、ゆるゆると語る編集部員ブログがスタート!
「担当編者ってそもそもなんだ?」「打ち合わせって何をするの?」「どんな漫画を描けばいいかわからない」ーーそんな疑問にお答えする全6回のブログ記事第4弾。
意外と知らない“漫画が出来るまで“のこぼれ話もあるかも…!?
※本記事の内容は編集部員個人の見解です
「描きたいもの」の落とし穴
お疲れ様です、担当の高長です。
今回は質問箱にとても良い質問をいただきましたので
それについてお話ししようかと思います。
漫画家さんが描きたいものと世の中から求められるもの……とても興味深い部分ですね。実際、僕が編集者になった10数年前あたりから、漫画は題材やジャンル、雑誌のカラーより「あなたの描きたいものをぶつけてください!」と募集されるようになりました。
僕自身もその価値観に従って仕事をしてきましたし、間違っているとは今も思いません。…ただ、たくさんの作家さんと一緒に仕事をし、その考えに触れるうちに”あること”に気付くようになりました。
描きたいものと描けるものは違う。
…というケースが結構多いのです。同時に「生まれ持っての性格と、生きる上で身に着けた性格は異なる」というのも感じるようになりました。結論から言うと、人は「ないものねだり」をする生き物なんだ、ということです。
例えば僕はマンガでいうと努力型で、逆境に負けたり文句を言ったりせずこつこつひたむきに頑張る主人公が好きです。さて実際はというと、恥ずかしながら僕は「努力」が大嫌いです。逆境が迫ってきたらすぐ文句言っちゃいますしなるべく避ける方向に動きます。うーん自分で書いていて恥ずかしい…
「好きなマンガ」って、その「ないものねだり」、言い換えれば「憧れ」が色濃く反映されていると思います。なので「描きたいもの=自分が好きなマンガ」と設定していると、理想と現実にギャップがあって苦しむんですね。いただいた質問は、それに近いように感じました。
そういう時こそ編集者の出番で、傍から見る役割が存分に発揮されます。
好きなマンガや映画、憧れのキャラクターなどたくさん聞いたこと(内側の情報)とともに、その人自身の性格や、周りからだとどう映るか、どんな経験をしてきたかなど(外側の情報)と併せて、作家さん自身がどういう人で自分のことをどう思っているのか、なぜ好きなマンガやキャラクターに憧れるのかを見つめるようにしています。
そこから出てくるアイデアにこそ、作家さんの個性や持ち味が詰まっている場合が多いです。
もちろん、描きたいものと描けるものが同じ方もいらっしゃいます!
描きたいものを捨てろ、という話ではないのでご安心くださいね。
※本記事は高長がnoteで公開したものを転載しています