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〜漫画家を目指すキミに贈る〜漫画家(プロ)への花道 大久保篤先生に聞く!! キミだけの世界の描き方

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週刊少年マガジンに掲載された

漫画家(プロ)への花道を特別に大公開!!

 

今回は、2016年43号に掲載された特別企画をお届けします!

 

 

大久保篤先生に聞く!!

キミだけの世界の描き方

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今回は、週刊少年マガジンで『炎炎ノ消防隊』を連載中の大久保篤先生に、新人賞受賞作の中も約4割という圧倒的な割合を占める“ファンタジー漫画”に関して、他の投稿者と差をつける、キャラクターや世界観の作り方を教わりました!!

 

個性豊かな漫画を描きたいアナタ!!

 

必読です!!

 

 

大久保篤

 

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2001年に第3回エニックス21世紀マンガ大賞を受賞。「月刊少年ガンガン」にて『一善の骨』でデビュー。後に同誌にて『ソウルイーター』を連載。

現在は、本誌にて『炎炎ノ消防隊」を連載中。

 

 

f:id:magazine_pocket:20181018153839j:plain世界観は〝連想ゲーム〟で作り出せ!

 

ーー大久保先生は、自分の作品世界をどのようにして作っているのですか?

 

大久保先生(以下、大久保):基本的には、一つ、二つのコンセプトから、連想ゲーム のように要素を肉付けすることで世界観を作っています。

 

やっぱり漠然と何かをやろうと思っても、なかなか難しいと思うんです。

 

だから、自分のやりたいコンセプトから、少しずつ世界を膨らませていくのが一番の近道だと思っています。

 

 

ーー最初のコンセプトはどうやって決めているのですか?

 

大久保:僕は、自分の好きなもので、よく知られたものであり、そしてまだ誰も目をつけていないものを選ぶようにしています。

 

コンセプトを決める際に大切にしているのは、〝誰もやらなかったこと〟を選ぶのではなく、〝誰も気付かなかったこと〟を選ぶことです。

 

〝思いつくけどやる意味がないから、誰もやらなかったこと〟をやったところで、面白味は生まれません。

 

皆が知っているのに、まだ誰もその魅力に気づかないものを探すよう、意識するといいと思います。

 

 

ーー単に奇抜なテーマを選ぶだけではダメなのですね。

 

大久保:奇をてらっただけのコンセプトでは、話を理解しづらくするだけですし、作品の世界に対する共感も得にくくなってしまいます。

 

『炎炎ノ消防隊』においても、コンセプトの一つは〝消防隊〟という、誰もが知っている身近な存在です。

 

消防士をモチーフにしたファンタジー漫画はまだないな、という新規性も意識しつつ、こうしたなじみ深さも大切だと思います。

 

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誰でも知ってる〝消防隊〟。コンセプトはなじみ深さも大切だ!!

 

ーーコンセプトが決まったら、次はどのようにして世界観を広げるのでしょうか?

 

大久保:連想ゲームのように、関連する要素をつけ足していくことで世界観を膨らませています。

 

例えば『ソウルイーター』のときには、〝死神たちが主人公〟というコンセプトをまず最初に考えました。掲載当時、味方側が死神の漫画は見当たらなかったと思うんです。

 

そして、その舞台となる町は強い死神が管理してるから〝デスシティ〟。

 

強そうな国といったら〝アメリカ〟。

 

アメリカのラスベガスを想像していたから、〝砂漠の真ん中にある〟設定……といった連想で世界を作り上げていきました。

 

『炎炎ノ消防隊』のレトロな世界観も、〝消防隊〟というコンセプトから、消防隊といえば、〝炎と煙〟、炎と煙の似合う世界といえば〝スチームパンク〟……という連想で生まれています。

 

 

ーー連想によって、無理なく設定を膨らませているのですね。それではキャラクターは、どう作っているのですか?

 

大久保:キャラクターの設定も連想ゲームから生まれることが多いですね。

 

『炎炎ノ消防隊』主人公のシンラもそうです。

 

彼の場合、最初に〝恐ろしい笑みを浮かべる〟というクセを考え、そこから〝悪魔をモチーフにした主人公〟というコンセプトが生まれました。

 

とはいえ、主人公だから、やっぱり〝いい子〟。

 

〝いい子〟だから〝ヒーローになりたい〟。

 

そんな流れで生まれたキャラクターです。

 

また、キャラクターに合った世界設定を想像していく順番で、キャラクターの個性を出しながら、さらに世界観を広げていくこともあります。

 

『ソウルイーター』のキッドも、最強の死神の息子なので〝完璧なキャラ〟というコンセプトから 〝完璧主義者〟、だから〝几帳面で神経質〟、と、設定が生まれています。

 

〝シンメトリーが好き〟というのは、神経質さをわかりやすく表現するためのアイディアです。

 

のちにキッドが登場する、ピラミッドが舞台のストーリーができたのも、シンメトリーは左右対称、左右対称な建築物が多いのは〝エジプト〟。

 

それなら舞台は〝ピラミッド〟にしよう、という発想でした。

 

 

f:id:magazine_pocket:20181018154136j:plain二つの視点を使い分けよう!

 

ーーそうしたアイディアを発想するため、普段工夫されて いることなどはありますか?

 

大久保:何かものを見るとき、まずはそれを好きになるよう心がけています。

 

否定的にものを見るよりも、肯定的に見た方が、学べることが多いと思うんです。

 

「なんでこうなってるの?」と疑問に思ったとき、否定的に見ていると「ここが嫌いだ!」で終わってしまいます。

 

ところが、肯定的に見ていると、「こういう面白さを表現したかったのかな?」という風に考えられるようになるんです。

 

そういった気付きは、今まで知らなかった手法を理解し、表現や発想の幅を増やすことに繋がると思います。

 

 

ーーそうやって、〝好き〟を蓄積していくことが大事なんですね。

 

大久保:そうですね。

 

でも、その逆のパターンがアイディアに繋がることもあります。

 

例えば、既に世に出ている考え方があって、時には、あえてそれを否定するような視点で発想し、新しいアイディアを出す方法もあると思うんです。

 

既存のアイディアを理解した上で、あえてそれをズラしていく、〝ヒネクレ〟た発想と言いますか。

 

 

ーー具体的にはどういったものですか?

 

大久保:『炎炎ノ消防隊』にも〝ヒネクレ〟た発想は盛り込まれています。

 

例えば、能力バトル漫画はこの世にたくさんあるけれど、一つの能力しか出てこないバトルというものはほとんど見ません。

 

ここで〝ヒネクレ〟た視点を持つことで、逆に「全員同じことしかできない能力バトルが作れたらいいな。そのなかで個性を出せたら逆に面白いものになるんじゃないかな」という発想が生まれました。

 

これが『炎炎ノ消防隊』のコンセプトの一つである〝炎属性だけの能力 バトル〟をやってみたいと思った理由です。

 

ちなみに、タマキの〝ラッキースケべられ〟という設定も、同様の発想から生まれたものです。

 

当時〝ラッキースケベ〟という言葉や展開をよく聞くようになったので、その逆のリアクションをやってみようと思ったんです。

 

 

ーー肯定的な視点と、ヒネクレた視点、両方が必要なのですね。

 

大久保:そう思います。

 

先程のシンラの〝緊張すると笑ってしまう〟クセは、ニヤッとした悪人顔を善人がやったら面白いな、という〝ヒネクレ〟でもあるのですが、彼のジト目やイーッとした歯は、僕が好きなモチーフなんです。

 

シンラのキャラクターは、言ってみれば、僕の〝好き〟と〝ヒネクレ〟の詰め合わせと言えるかもしれません。

 

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緊張すると笑っちゃう!!シンラのクセは工夫の賜物。

 

 

f:id:magazine_pocket:20181018154231j:plain〝絵〟で世界を描くためには〝シルエット〟を工夫しろ!!

 

ーー新人時代、ファンタジーの世界を描くためにしていた練習などはありますか?

 

大久保:実は、僕はもともとデザイナー志望だったので、模写などはあまりしたことがなく、写実的な正確さよりもデザインとしてのカッコ良さを模索していた記憶があります。

 

服のシワなどに関しても、リアルな位置に描きこむよりも「せっかく漫画なんだから、カッコよく見えるところに入れればいいじゃん」という感じで。

 

今でも、シルエットがカッコいいポーズを描くため、人体構造のある程度の破綻はあえて無視することもしばしばあります。

 

僕がファンタジー漫画を描こうと思ったのは、こういったデザインへの寛容さ、ライブ感がある絵を描けるということも大きいです。

 

とはいえ、好きな絵だけを描いていても人気は取れませんから、こうした僕の好きなデザイン的な絵柄に、読者の目を意識した見やすさやキャッチーさなども研究して、絵柄を作っていく努力をしていました。

 

 

ーー読者にとっての「見やすさ」を作る上で大切にしていることはありますか?

 

大久保:「見やすさ」は作品世界の「わかりやすさ」と言いかえてもいいかもしれません。

 

せっかく描きたいものを見つけても、読者にわかりやすく伝わらなければもったいないです。

 

僕はデザインの専門家ではありませんが、そのために漫画においてのデザインで大切にしていることは〝シルエット〟と、〝パッと見の特徴〟と、〝構図〟を意識することです。

 

例えば、お話した『炎炎ノ消防隊』の世界観に盛り込んでいるスチームパンク的な構造物は、一言で言うと〝無駄〟が多いシルエットになっています。

 

スチームパンクの世界をよく観察すると、あらゆる機器に、必要のない取っ手や部品、不思議な突起物などがついていることに気付きます。

 

それらの構造物によって生まれる、掃除が大変そうな(笑)ごちゃごちゃしたシルエットが、スチームパンクの〝らしさ〟。

 

こうしたシルエットの特徴を考え、自分のデザインに落とし込みます。

 

次に、パッと見でも読者にイメージが伝わる特徴を付けることを意識します。

 

新人大会の演習場(下図)は、シルエットを工夫したスチームパンク的な建物に、舞台が「東京である」ことを意識して、 和風な漢字の看板を目立つように取りつけました。

 

このようにしてデザインができたら、一目見てその全体像や特徴がわかる、カッコよさよりも見やすさを優先した構図で、コマに描いていくことを大切にしています。

 

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〝シルエット〟で一目瞭然!!読者に伝わる特徴を見抜け!!

 

 

f:id:magazine_pocket:20181018154309j:plain現実を見て、考え抜け!

 

ーー最後に、漫画を描くうえで最も大切なことは何でしょうか?

 

大久保:一番大切なのは、現実をよく見ることだと思います。スポーツでも人でも、アンテナを広げて現実をしっかり観察する。

 

漫画やアニメは、作家が魅力的に思った現実世界の一部分を独自の発想で切り抜いて作った世界ですから、漫画だけを見ていたら自分だけの世界を作ることはできません。

 

現実から自分が好きな部分を自分で切り抜くことで、初めて創作性が生まれると思います。

 

出会った人の面白い性格やクセなどは、キャラクター作りに活かせることも多いです。

 

そうして出会った人や物事の面白さや本質について、「何でなんだろう?」と自分で考えてみてほしいと思います。

 

今はインターネットで調べれば、何でもすぐに答えがわかってしまいますが、それは思考の停止と言えるかもしれません。漫画は自分だけの発想を読者に読んでもらうもの。

 

自分で考え、たとえ間違っていてもいいから答えを想像する習慣を大切にするといいと思いますし、僕もそう心がけています。

 

 

(※この記事は週刊少年マガジン2016年43号に収録されたものです)

 

  

▼『炎炎ノ消防隊』第1話がWEBでも読める!


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(終わり)