今年で60周年の「週刊少年マガジン」の歴史を振り返る本連載。
○○年前のマガジンはどんな雑誌だったのか、どんな作品が載っていたのか……今回は、1993年のマガジンを紹介します!
現在でも人気のある『金田一少年の事件簿』が表紙を飾る
1993年28号の表紙は、『金田一少年の事件簿』。
原作を天樹征丸先生と金成陽三郎先生が、漫画をさとうふみや先生が担当した「週刊少年マガジン」を代表する作品のひとつ。
今号から25年以上経っている現在でも、『金田一37歳の事件簿』と『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』が連載されているほど、長く愛されている作品でもあります。
今号では、はじめはファイル4、学園七不思議殺人事件に巻き込まれています。
本作の魅力は、漫画内で証拠がすべて描かれていたこと。
犯人も現れているため、誌面では読者が推理し犯人を当てる「真相当てクイズ」のキャンペーンが組まれていました。
ちなみに1981年号に続いてグラビアがありませんでした……
巻頭特集は大ヒットしたパロディ映画『ホットショット2』
本作は、チャーリーシーンさん主演のパロディ映画。
91年にトップガンをパロディにした1が公開され、大ヒットを記録。
2では、今年五作目が公開?と噂されているランボーを中心にしたパロディ映画。
このワンシーンは、ランボー3で爆弾をつけた弓矢で攻撃ヘリを破壊するシーンのパロディですね。
『ターミネーター2』や『氷の微笑』など当時のヒット作をパロディにするほか、実在するあの有名人までパロディにしてしまう「ちょっと危険な作品」でもありました。
見開き2ページで、見どころを特集。
ビデオやオリジナルTシャツのほか、米海軍用のサングラスなども用意したプレゼントキャンペーンも。
目を引いたのがアンケートプレゼント。
スーパーファミコンや録画再生ビデオデッキ、CDラジカセ、スウォッチ、テレホンカードなど、当時の人気アイテムを集めていました。
90年に発売されたスーパーファミコンは少しずつシェアを拡大。
92年から爆発的に発売ソフトが増えました。
今号が出たころは一週間に数本の新作が発売されるほど。
93年は『スターフォックス』のほか、現在でも新作が出ている『聖剣伝説2』、『メタルマックス2』のシリーズ人気を決定づけた1本が発売された年でもありました。
そしてビデオデッキは当時の人気家電のひとつ。
現在はDVDやYoutube、インターネットストリーミングサービスなどが一般的になりましたが、当時はお弁当箱サイズのビデオテープに映像を記録し再生するのが一般的でした。
視聴者が投稿したハプニングビデオやオモシロ映像を集めたテレビ番組が人気を集めるほか、レンタルビデオのシステムが変わり、爆発的にレンタルビデオ店が増えていった時期でもあり、ビデオデッキは一家に一台ある家電でした。
レンタルビデオ屋さんで「テープを巻き戻してから返して下さい」と怒られたのが懐かしいです。
一冊で「アツい!」から「美味しい!」まで
さて、目次を見てみます。
『金田一少年の事件簿』のほか、『将太の寿司』、『特攻の拓』、『カメレオン』、『BOYS BE…』『シュート』などなど、「週マガ」を代表するタイトルがずらり。
現在でも連載が続いている人気漫画『はじめの一歩』も当時はすでに連載が始まっていました。
40Pのボリュームで掲載されていたのは、前々号の26号から連載開始した井上正治先生の『マラソンマン』。
かつては日本陸上界を背負って立つと期待されたマラソン選手だったが、落ちぶれて酒びたりになっている父親に再起してもらおうと、親子二人三脚で世界に挑んでいく。
第二部では、陸上の世界へ返り咲き世界の舞台で戦った父の情熱を受け継ぎ、息子もマラソンの世界へ飛び込んでいく。
井上先生の二作目となった本作は、「マラソン」をテーマに父と子の成長を描いたアツい大作。97年まで連載され、単行本は全19巻。
当時は前年に行われたバルセロナオリンピックで有森裕子選手が銀メダルを獲得したほか、早稲田大学に所属していた渡辺康幸選手が箱根駅伝で快走を見せるなどマラソン人気が高まっていた時期でした。
後にドラマ、アニメにもなった寺沢大介先生の『将太の寿司』。
寺沢先生は前作『ミスター味っ子』でデビュー。
同作は「美味しい!」の表現が凄まじく、特に味皇のリアクションは数多くのアニメ、漫画作品でパロディやオマージュされました。
『将太の寿司』ではより繊細に料理、食材の魅力、人々の表情、感情を描き出し、『ミスター味っ子』とはまた違う「美味しい!」を見せて人気を獲得していました。
白黒なのに、この豪華さ、繊細さ。
原稿を書きながら「明日はちらし寿司を食べよう」と思ってしまったほど。
「週マガ」を代表する不良漫画目白押し!
藤沢とおる先生の『湘南純愛組!』。
このあと『GTO』へと繋がっていきます。
「待ってんぜ いつでもよ」と返しているのは鬼塚英吉。
このあと、まさかセンコーになるとは本人も思っていなかったかも。
そして、佐木飛朗斗先生と所十三先生の『特攻の拓』。
ヘタレだった主人公が「強くなりたい」という思いから、不良校に転校。
流れに乗って暴走族の一員になっていく。
本作には数多くのバイクが登場し、「特攻の拓を読んでバイクの知識を得た」という読者も多かったのではないでしょうか。
“吹き出し”に“強調”が多かったのも本作の魅力のひとつ。
ヤンキー独特の“イントネーション”がダイレクトに伝わってきます。
メンチ切ってるシーンはリアリティあって恐かった……
加瀬あつし先生の『カメレオン』など、「週マガ」を代表する不良漫画が3本も連載されていました。
純愛、スポーツ、医療など様々なジャンルの漫画を掲載
「純愛」をテーマにしているイタバシマサヒロ先生と玉越博幸先生による『BOYS BE…』は、電話ボックスのエピソード。
「家だと親がうるさいから電話ボックスに来たのに…」とぼやく主人公といつも先に電話ボックスを使っている女の子。
最初は反発しあいますが、だんだんと顔なじみになっていき……
最近はすっかり見かけなくなりましたが、1993年当時、携帯電話は一部のビジネスマンしか持っていなかった珍しいもの。
外出時に連絡を取りたい場合は、そこら中にある電話ボックスを利用していました。
アンケートプレゼントにもあったテレホンカードは、電話ボックスで利用できたプリペイドカードです。
好きな人に「親が出たらどうしよう」なんてドキドキしながら電話した時代でもありました。
そして「女の子(男の子)から電話よ!」と大声で言われる恥ずかしさに耐える時代でもありました。
刃森尊先生の『破壊王ノリタカ!』。
臆病で卑屈でひ弱なノリタカがキックボクシングと出会い、強敵に立ちむかっていく。ボコボコにされながらも勝ちに徹する姿に力をもらった読者も多かったのではないでしょうか。
そして、最後に紹介するのは真船一雄先生の『スーパードクターK』。
国際レベルの執刀能力を持ちながら、行方をくらました天才医師西城カズヤ(K)。
医療の技術だけではなく、人の心にも迫り、人を救っていく。
今号では、怪我に悩まされていたボクサーを癒やすため、セコンド資格をとってまで付き添うなど、Kらしいエピソードを掲載。
1993年のマガジンは、崩れてしまった家族を立て直そうとする父と子、劣勢でありながらもチームで協力して挑戦していこうとする将太たち。仲間を助けようと奮闘する鮎川、電話ボックスで出会った二人など、人と人の距離を近くに感じさせる号でした。
約420ページ、定価は200円。
最新のマガジン(2019年30号)は441ページ、300円です!
次回は、チャーリーシーンさんが生まれた1965年のマガジンです!