今年で60周年の「週刊少年マガジン」の歴史を振り返る本連載。
○○年前のマガジンはどんな雑誌だったのか、どんな作品が載っていたのか……今回は、1981年のマガジンを紹介します!
81年はボクシングが大人気!
1981年27号の表紙は、大和田夏希先生の『タフネス大地』。
「ボクシングをやりたい!」と北海道から上京した主人公、雪山大地が猛トレーニングを乗り越えてチャンピオンを目指していく。
大和田先生ご自身も「漫画家になるぞ!」と上京し、「少年マガジン」創刊期の名作『巨人の星』を描いた川崎のぼる先生や、あの手塚治虫先生の下で漫画を学びました。
大地はまさに大和田先生ご自身だったのかもしれません。
巻頭はアニメ映画『あしたのジョー2』の特集。
梶原一騎先生、ちばてつや先生による『あしたのジョー』は現代でもファンが多いボクシング漫画の名作中の名作。
連載は73年、アニメも71年に終了しましたが、年々高まるボクシング人気に応えるように80年から第二期のアニメが放映。81年にはアニメ映画も公開されました。
当時、ボクシングがどれほど人気だったのか……
いまではバラエティ番組でお馴染みのガッツ石松さんは70年代の日本ボクシング界を支えた元プロボクサー。「ガッツポーズ」は、石松さんが勝利したときに両手を挙げて喜びを表現したポーズから生まれた言葉という有名な説もありますね。
そして、81年はあの具志堅用高さんが14度目のチャンピオン防衛を果たし、引退を表明した年でもあり、俳優やタレントとして人気のある赤井英和さんもプロデビューし「浪速のロッキー」として活躍していた年でした。
余談ですが、80年生まれの筆者の下の名前は矢吹丈からもらっています。
スポーツファンではなかった両親でさえ子どもの名前で拝借するほど、ボクシング、『あしたのジョー』の人気が高かったことがうかがえます。
アニメ映画の撮影現場が詳しく紹介されていました。
現在では、漫画もアニメもパソコンを使って描くことが増えていますが、当時はすべてが手作業。キャラクターたちの動きも一枚一枚描いていました。
ちょっと気になったのが「ダベリング」。
「ダベる」は当時から一般的に使われている言葉だったんですね。
独特なテンポ、スピード感があるギャグ漫画たち
村生ミオ先生の『胸騒ぎの放課後』は、ジャニーズ事務所のひかる一平さんや東山紀之さん主演で、ドラマ化、映画化もされたラブコメディ。
知佳の下着を見て、鼻血を出しながら倒れていく一平。
現在はあまり見かけない表現ですが面白いですね。
第17回新人漫画賞に入選したもとはしまさひで先生の『コンポラ先生』も独特なスピード感を持つギャグ漫画。
四コマだけでぐるぐる話が展開していって、読んでいて気持ちいいです。
沼よしのぶ先生の『WAOO! ツトム』。
「ツトムのとこいこーと思ってたの。テニスいこーーよ ねぇいくよネ」
「よしいこーーっ」
ものすごく早い!
ひらつか清先生の『なんとなくクリキントン』は、最初から最後までハイスピードでギャグが続きます。
どのギャグ漫画も1ページに3〜4個のギャグが詰まっていて、展開が早く、笑いと不思議なすがすがしさがありました。
釣りやゴルフなど大人向けの漫画も豊富
世界でも人気があった矢口高雄先生の釣り漫画『釣りキチ三平』。
釣りを熱狂的に愛する主人公三平が世界中の釣り人、魚たちに挑戦していきます。
矢口先生も熱狂的な釣りファンで、登場する魚たちのほとんどが矢口先生ご自身が釣り上げたことがあったそうです。
釣りかたも先生が研究に研究を重ねて、当時はまだ珍しい方法も丁寧に解説していたため、釣りファンだけではなく「釣りに興味がある」と言う読者の心も掴んだ「少年マガジン」名作のひとつでした。
水島新司先生が『ドカベン』の連載を終えたあと、「少年マガジン」で連載をはじめたのが『光の小次郎』。
希望球団ではなかったことからドラフト1位指名を蹴って、「浪人」状態に入っていた豪腕投手の新田小次郎。球界の”制度”へ挑戦していく小次郎を描いた異色の野球漫画でした。
そして、ちばてつや先生のゴルフ漫画『あした天気になあれ』。
81年から91年までの長期連載作で、単行本は52巻。
あの藤子不二雄A先生の『プロゴルファー猿』と、日本のゴルフ人気を引っ張った作品です。
1981年のマガジンは、ギャグ漫画やプロレスなど少年の心を掴む作品だけではなく、問題を提起するような大人向けの漫画も数多く掲載。ボクシングや釣り、ゴルフなど、読者が実際に観戦、挑戦してみたくなるような名作が多い、時代を牽引する雑誌でした。345ページ、定価は180円。
最新のマガジン(2019年27号)は457ページ、300円です!
次回は、フリーエージェント制を導入して日本プロ野球界が大きく変化していった1993年のマガジンです!