今年で60周年の「週刊少年マガジン」の歴史を振り返る本連載。
○○年前のマガジンはどんな雑誌だったのか、どんな作品が載っていたのか……今回は、1973年のマガジンを紹介します!
あの大御所たちが勢揃いした時代
1973年24号の表紙は、梶原一騎先生とながやす巧先生の『愛と誠』。
財閥令嬢の早乙女愛を助けたばかりに顔に傷を負い、それが原因で不良となり家族まで離散してしまった大賀誠。
原因となった愛に反発する誠だが、献身的に支えてくれる愛に少しずつ心を開いていく。純愛、青春漫画の名作中の名作。
あの誰でも聞いたことがある「きみのためなら死ねる」は本作の名台詞のひとつ。
愛に一途な気持ちを向ける岩清水弘が、愛へ送った手紙に綴った一文でした。
ちなみにグラビアはアグネスチャンさん。
前年に発売した「ひなげしの花」は大ヒットを記録。
香港から来た歌手として大人気でした。
1973年24号の「週刊少年マガジン」に掲載されていたのは…?
さて、目次を見てみましょう。
あのトキワ荘に住んでいた大御所に次ぐ大御所…
タイトルも『天才バカボン』に『デビルマン』、『空手バカ一代』、『あしたのジョー』など、漫画好きじゃなくても耳にしたことがあるタイトルばかりでした。
当時はまだ漫画雑誌が多くなかったのもありますがこれは豪華!
これは漫画誌ではなく、漫画“史”だ!
赤塚不二夫先生の『天才バカボン』は説明不要のギャグ漫画。
最初にどかんと見開きでタイトルが入ります。
と思ったら、これはなんと一コマ目!
赤塚先生曰く「実物大漫画に挑戦した」そうです。
途中から通常通りのコマになっていますが、最後のコマで「大きいコマをとりすぎて、さいごは苦労しました」と反省文が入っていました。
赤塚先生の人柄が垣間見えます。
そして永井豪先生の『デビルマン』。
現代の感覚で読んでもグロ描写が凄い!
いまでもアニメ化や映画化などが行われていますが、連載は1972年25号から1973年の26号までの一年だけ。単行本も5巻ですが、当時の読者に大きなインパクトを与えた作品だったことが読んでみてよくわかりました。
そして高森朝雄先生とちばてつや先生の『あしたのジョー』。
連載は本号の前月に終了。
ベストバウトを集めてスポーツ新聞記事風にまとめていてとてもかっこいいです。
漫画と読み物を組み合わせた構成に感動しました。
読み物でも、“あの”が勢揃い!
読み物ページには、あの極真空手を生み出した大山倍達さんのコラムがありました。
つのだじろう先生が描く連載漫画「空手バカ一代」は大山さんの伝記的な作品。
空手の強さを広めようと、大山さんが世界中の強者と戦う姿を描いています。
コラムは大山さんの強さへのこだわり、源が詰まっていて読み応えがあります。
本号では「親を大事にすること」が如何に強さにつながるのかを解説されていました。
挿し絵も二色なのにダイナミックですね。
音楽情報を見つけました。
森昌子さんは、あのONE OKE ROCKのTakaさんとMY FIRST STORYのHiroさんのお母さん。
当時アイドルとして歌に映画に活躍していた森さんは、数年後に演歌歌手へ転身。
2000年代に芸能界に復帰、女優として活動し、今年3月に引退されました。
巻頭では、スペースシャトルの特集が組まれていました。
1972年末、アメリカが月面着陸を成功させて、1973年は世界中が宇宙に注目していました。
宇宙基地建設の材料や探査機、人工衛星を運ぶ役目を担う「輸送機」としてスペースシャトルの開発計画を立ち上げます。それまでは宇宙船は使い捨て。スペースシャトルは「再利用できる(再度打ちあげられる)こと」を目的にしており、打ち上げから着陸までの流れと仕組みを「少年マガジン」で詳しく解説しました。
当時はwikipediaなんてありません。
読者はこうした雑誌や新聞、テレビから世界で起きていることを見つけていました。
1973年のマガジンからは、強く”時代”を感じさせられました。
現在でも有名な大御所の先生たちや著名人が集まり、まるでカルチャー雑誌のようです。全部で293ページ、定価は100円ですが、いま同じかたがたを集めて一冊作ったら100ページで3,000円でも「安い!」と思っちゃいます。
ちなみに現代の大御所たちが集まる最新のマガジン(2019年26号)は489ページ、300円です!
次回は、スペースシャトルが初めて打ち上げられた1981年の「週刊少年マガジン」です!