新人漫画家さん必見!! 今回は、第111回新人漫画賞締め切り直前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『生徒会にも穴はある!』のむちまろ先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
読者を虜にするちょっとエッチなキャラ漫画の描き方!!
『生徒会にも穴はある!』のむちまろ先生に聞く!
デビューまでの軌跡とキャラクターの個性を引き出す極意!!
週刊少年マガジンにて『生徒会にも穴はある!』を大好評連載中のむちまろ先生に全力取材! デビューへの軌跡から魅力的なキャラクターの描き方まで全てを語る!
むちまろ先生Profile
2020年『世が夜なら!』(マガジンポケット)でデビュー。現在、週刊少年マガジンにて『生徒会にも穴はある!』を連載中。単行本4巻絶賛発売中!
●極意一
アドバイスを恐れない!
――さっそくなのですが、漫画家になろうと思ったきっかけは何だったのですか?
むちまろ:
これ正直に言っていいのかわからないんですけど、ひらつかさん(担当編集)に誘っていただいたことが一番のきっかけですね。
――そうなんですか!?
むちまろ:
はい。それまでは、趣味でイラストを描いて投稿したり、細々と絵を描く活動はしていたのですが、自分がまさか週刊連載の漫画家になるなんて想像もしてなかったです。
――編集者から声がかかってから、すぐに挑戦してみようとなったのですか?
むちまろ:
私がなれるわけないと思っていたので、どうしようかと悩みました。でも、ひらつかさんがすごく熱意をもって誘ってくださったこともあって、挑戦してみようと決意しました。
――何か心を動かされた言葉などはありましたか?
むちまろ:
「絵が武器になる、絵だけで勝てる」という言葉が印象に残っています。すごくうれしかったですし、そこまで言ってくださるのであればと……!! 漫画家を目指すきっかけだったと思います。
――むちまろ先生は新人賞などを経験されていないと伺ったのですが、そうした賞に興味はなかったのですか?
むちまろ:
興味はすごくありました。しかし、ひらつかさんが挑戦しなくてもいいとおっしゃったので、結局挑戦はしませんでした。理由はひらつかさんに聞いていただけたらと(笑)。
――そうだったんですね。それでは、ここからは担当編集のひらつかさんにもインタビューに参加していただきます。なぜ、挑戦しなくてもいいと考えたのですか?
ひらつか:
はじめまして、担当編集のひらつかです! むちまろ先生の場合は、目指すべき作品のニュアンスが早くからはっきりしていましたから。その作品をやるにあたっては実力的にも新人賞を経由せず乗り切れるという判断でした。ただ、これはあくまでむちまろ先生の場合は……ということで、やりたい作品をじっくり探したり、今の実力で描けるものよりも大きな作品を目指したりする際は、新人賞は経由した方がいいと思います。物語の構成力や画力の向上、複数の人からの意見の吸収など、新人賞には多くのメリットがあると思いますので。
――ありがとうございます。そのまま続いて、連載を始めてからについてなのですが、漫画を連載する中で、嬉しかったことはありますか?
むちまろ:
やっぱり読者の皆さまの声ですね! 最初は、自分の作品を読んでくれる方が存在する……という実感をなかなか持てなかったんです。でも、あるとき「塾とか学校とか嫌なことだらけだけど『生徒会にも穴はある!』(以下『生徒会~』)を読んだから今日も頑張れる」といった趣旨の、学生さんのポストを見る機会があったんです。自分がそのポストをすると思ったら、相当好きじゃないとできないなと思って……。こんな私でも、人をこんな風に救うことができるんだって、めちゃくちゃ感動しました。
――そうだったんですね。では、逆に、連載される中での苦労があれば教えていただきたいです。
むちまろ:
前作(『世が夜なら!』)の時とかは、なかなか原稿を一定のペースで仕上げることができなくて、その時は本当に苦労しました。
▲むちまろ先生の前作『世が夜なら!』
――その原因は何かあったんですか?
むちまろ:
ネームが全然完成させられなかったのが一番大きかったと思います。以前は自分でネームを描いたあと、それがつまらなく思えてしまって、「こんなものは見せられない」と、何日も経ってしまうことが多かったんです。そして、原稿をする時間が無くなって……。
――そうだったんですね。しかし、『生徒会~』では安定して連載を続けられていると思いますが、なにか変化したきっかけがあったのですか?
むちまろ:
ひらつかさんから、「もっと編集者を頼っていいんですよ」と言っていただいて、それからはどんなに面白くないと思えたとしても、まずは提出して、相談しながら作品を作るようにしました。
ひらつか:
たしかにそうでしたね……!! この、「こんなもの見せられない」という状態は、多くの作家さんが経験されているような気がします。でも、それを感じるべき相手は読者の皆様のはずで、編集者ではないと思います。編集者は、あくまで一緒に作品を作る仲間ですから。二人で考えれば、困っている部分の解決策も二倍思いつきますし、実は悩んでいたことが重要なことではなかったという結論も二倍早く出ますので!
むちまろ:
そうですね。私自身、頼ることをためらわなくなってから、かなり上手く回っている気がします! 新人作家の方々も困ったら遠慮せず、担当さんに相談してください!
●極意二
「エロは道具」と考える
――ではここからはむちまろ先生の描く作品についてお話を伺いたいと思います。まず、作品のジャンルについて、前作も含め、ちょっとエッチなコメディマンガを描かれていると思うのですが、そうしたジャンルを描いている理由は何かあるのですか?
むちまろ:
もともと、そういったものが好きだったというのが一番の理由だと思います。それしか私には描けないだけかもですが……(笑)。でも、ただ単純にエッチな絵や漫画を描きたいという事ではないと思っています。そのことについて、以前ひらつかさんとの打ち合わせの中ですごくしっくりくる言葉があって、それが「エロは道具」というものです。
――それはどういうことですか?
むちまろ:
エロのためのエロではなく、エッチな展開はキャラクターの可愛いところや個性を引き出すためのものであるという感覚です。私はエッチなシーンでこそ見えるキャラクターの性格だったり表情があると感じていて、それを見せたい、ひいては同じ感情を抱いてほしいと思っていたら、今のジャンルに行き着いたような気がします。
――なるほど! 具体的に気をつけていることはあるんですか?
むちまろ:
例えばですが……近いお話ですと、『生徒会~』42話で会長が悶々とするシーンがあると思います。そのシーンを女の子が悶々するのはとてもエッチだ!! と思って描くと、どう悶々とするシーンを見せるかに集中してしまって青年誌向きになってしまいます。でも、会長というキャラクターのことを考えて、「会長ならこんなことが起きたら悶々としちゃうよね、だから悶々としても仕方ないよね」と思って描くとエロいシーンではなく、会長というキャラクターの個性を理解できるシーンになります。つまり、シチュエーション優先じゃなく、キャラクター優先で描いたエロは、読者の皆様がキャラクター漫画の中のワンシーンとして受け取りやすいということです。描写は青年誌寄りとなっても、伝わるものはキャラクターの個性なので、少年誌の中の描写となりやすいわけです。ひらつかさん曰く。
▲エッチなシーンもキャラらしさを表現
●極意三
キャラクターを理解する
――むちまろさんの描くキャラクターは、すごくいい表情をしているキャラクターばかりだと思います。特に、『生徒会~』33話で、こまろちゃんが寂しそうに笑っているシーンは本当に感動しました。そうした豊かな表情を描くために気を付けていることや工夫していることはありますか?
ひらつか:
確かにむちまろ先生は表情の引き出しが、とにかく広いというか、深いというかすごいですよね。
むちまろ:
工夫しているとかいうつもりはなかったんですけど、そうですね……恥ずかしそうな顔なら、もっともっと恥ずかしそうな顔はないか……って思って推敲しまくっちゃっているかもしれないですね。さっき仰ってくださった「こまろちゃんが寂しそうに笑ってる」というのもそうですが……。このシーンで、こういう思いで動いてたら、こまろちゃんならこういう顔になるんだろうな……という自分の中のイメージを作って、めちゃくちゃ時間をかけて、ぐりぐり動かしてそれに近付ける作業はしていた記憶があります。調整しながら、「なんとかなれーッ」って感じで(笑)。
▲感情を想像し、生まれた笑顔
ひらつか:
たしかにむちまろ先生はキャラに対しての感情移入能力がとても高い気がします。キャラクターの状況と感情をこちらから提案した時も、その感情に沿った素晴らしい表情が原稿でドンピシャで描かれているので、いつも感動しますね!
むちまろ:
恐縮です……!!
ひらつか:
だからこまろちゃんの悲しい表情がすごく良いのは、その悲しい気分にむちまろ先生が共感して、その心情をリアルに表現してくださってるから……なのかも?
●極意四
「間」と「目線」で流れを作る
――『生徒会~』では四コマと普通の漫画が併用されている形式をとっていると思うのですが、そうしたコマ割りでどのようなことを気を付けていますか?
むちまろ:
普通の漫画のコマ割りだと、ほんとにその都度その都度なんですが、一番最後まで気にしているのは「間」かもしれないですね。
――「間」というのは?
むちまろ:
「ここに一拍あった方が自分の気分が乗る」とか、気分良く読めるというか、リズムみたいなものを気にしています。吹き出しの位置とかもコマ割りの延長線上だと思うんですけど。読んでいて目線の邪魔にならないように配置したりしています。
ひらつか:
むちまろ先生、目線の誘導本当に上手ですよね。そういう知識ってどこから得たんですか?
むちまろ:
連載をするとなった時に、勉強しなきゃいけないと思って、いろんな漫画を読んだんです。その時にこのコマ割りいいなとか、この吹き出しの位置すごく見やすいなって思ったものから学んでいた気がします。
――具体的にどんな漫画を読まれていたんですか?
むちまろ:
そうですね。沢山の作品にお世話になりましたが、石黒正数先生の『それでも町は廻っている』や五十嵐正邦先生の『川柳少女』、あずまきよひこ先生の『あずまんが大王』などが特に記憶に残っています。
――ほかにも画面構成などで意識されていることはあるんですか?
むちまろ:
見開きでの構図被りを避けるように意識しています。あとは、ひとつひとつのコマにも、なんとか見どころを作ろうと努力しています。コマの中で伝えないといけない情報を伝えることを優先しつつ、可能な限り、良い絵を入れられたらと考えて作画しています。
――最後に、連載を目指す人にメッセージやアドバイスなどをいただきたいです。
むちまろ:
ここまでの会話と被ってしまうかもですが……。自分が考えたキャラを大切にしてほしいです! これは私が今作を通して学んだことなのですが、作者が面白いストーリーやネタを思いつけなくても、登場しているキャラクターが助けてくれることが連載ではよくあります。キャラクターを一人の人間だと思って扱っていると、いいことあるかも……という話かもしれません。
―本日は、ありがとうございました!
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第111回新人漫画賞
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