新人漫画家さん必見!! 今回は、第109回新人漫画賞締め切り直前特別企画の漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」第1弾を大公開! 『ガチアクタ』の裏那圭先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
アクション・ファンタジーの新進気鋭なプロフェッショナル
『ガチアクタ』裏那圭先生に聞く!
圧倒的画力とセンス!!
隅々まで「カッコいい」、漫画作りの極意!!
第1弾は、今マガジンで最もトガった漫画『ガチアクタ』。「とにかくカッコいい!」と話題が沸騰し、「次にくるマンガ大賞」にノミネートした。瞬く間に読者を虜にしていく裏那先生を直撃取材!!
裏那圭先生Profile
広島県出身。2018年3月期MGP入選(『脳枷』)。その後、2019年の第103回新人漫画賞入選(『獅鬼童』)。大久保篤先生のもとで『炎炎ノ消防隊』アシスタント経験を経て、2022年2月より週刊少年マガジンにて『ガチアクタ』を連載中。
●極意その壱
構図は「描きやすさ」に逃げない!
――迫力のある、魅力的なコマの演出で意識していることはなんですか?
ありきたりの顔を描かないようにしています。例えば、斜め横からのアングルの左向いた顔。一番描きやすい絵だから本当によく見ますが、自分はなるべく描きません。たとえ左を向いた顔でも微妙に角度を変えたり、ありがちな構図になったとしても表情で普通にならないようにしています。
アクションシーンも同じだと思います。アニメや映画のアクションシーンをよく参考にしているんですが、「このアクションかっこよかったな」と思ったシーンをそのまま描いたら面白くない。自分なりの構図も欲しいですし、極力見ずに色々アングルを変えて描いています。それでアングルがわからなかったら、実際に自分でジャンプするところを写真に撮ったり、可動式フィギュアを使ったりして、変な構図を考えます。
▲襲いかかる敵の髪・腕の隙間から主人公ルドが見えるという、斬新かつ迫力満点の構図!
――だから『ガチアクタ』は見たことない構図ばっかりなんですね(笑)。どうしたら難しい構図で人物を描けるようになるのでしょうか?
やっぱり人体を把握しておく必要はあります。デッサンしろとまでは言わないけど、骨がどこにあって、こう腕を折ったら皮はこういう形になるとか、しっかり想像することが不可欠です。ある程度人体を把握できるようになるまでは、ひたすら描くのがいいんじゃないかな。最初は、下から見たら足はどう見えるのかとかわからない。それこそ写真を撮って参考にしながら、ひたすら描くしかないと思います。今では結構自分流に動かせるようになったから、そこまで見なくてもよくなりました。
――読みやすい漫画にするために意識していることはありますか?
描き込むところとそうでないところを分けることです。全部びっしり描いていたら、うるさくなるので。
どれくらい描き込むかは、シーンの空気感で決めています。戦闘終わったから悲しげな空気にしよう、じゃあそういう空気感を出すために見せ場じゃない地味なシーンでもここは描き込もう、という感じです。逆に描き込まないシーンも決めます。そして、一番描き込みたいところは最初に、一番描き込まないところは最後に、描いていっています。
まあそれでも「今回ごちゃごちゃしてるなー…」という時はあるので、まだまだ進化が必要だと自分でも思っています(笑)。
●極意その弐
画力アップの秘訣は、練習しないこと!
――絵はどのように練習していましたか?
学生の頃は好きな漫画の模写をしていました。でもそれだと一向にオリジナルの絵ができません。なので、実際の人物や写真を見ながら描いていました。近くに座っていた女の人の手がめちゃめちゃ綺麗だなと思った時とか、勝手にこっそりスケッチしてました(笑)。あとは、ペンで一発描きです。迷い線が減るので、時間短縮の練習にもなります。
でもやっぱり一番いいのは、練習だと思わないこと。好きなものを描くことです。例えば、「こんな絵を描きたいな」と思ったものが、人物の上半身の絵だったとします。そこで手の関節の描き方がわからなければ、その時に見て描いて覚えればいいんです。
練習するぞ練習するぞと思って描いているとあまり楽しくないじゃないですか。好きなものを描く過程で、必要なスキルがあればその都度習得していけばいいと思います。繰り返しているうちに、気がつけば上手くなっているんじゃないかな。
●極意その参
キャラクターの内面をしっかり拾う!
――主人公のルドは怒ったり照れたり、色々な面があって魅力的です。どうやって生まれたんですか?
元々はクールであまり感情の起伏がないキャラだったと思います。でも、ルドは子供だから成長途中なんだって気づいてから、自分の小さい頃を投影するようになりました。良かれと思ってしたのに怒られた経験とか。コミュニケーションって最初から上手くいくわけないので、結構子供らしくしていいのかなって思いました。そうしてから、人間味が出てきたと思います。
――キャラクターや服のデザイン、とてもかっこいいです。どうやって作っているんですか?
まず服は、所属組織とキャラの性格の掛け合わせです。組織ごとに服の違いを出したくて、衣装を統一させています。そこからキャラクターごとに服をアレンジしています。このキャラはこういう着崩し方をしそうだな、こういう戦闘をするから腕の部分は布少ないんだろうな、と想像しながら決めていますね。例えばザンカは、お坊ちゃんだからスタイリッシュに服を着そうだと思いました。和のイメージがあるので、和でスタイリッシュで掃除屋の服に合わせたもの、というふうにかたどっていきました。
キャラデザは昔から好きで、昔描いたのを流用することもあります。オリジナルキャラは小学生のときから描いていました。
――小学生から! その頃から漫画家になりたいと思っていたんですか?
そうです。でも中学の時、お前は馬鹿だから無理と言われて「あ、無理なんだ」と諦めたことがあるんです。美容の学校に進学し、「美容師になる」とか言って東京に出たんですけど、入学して1か月でなんか違うってなって(笑)。やっぱり漫画家になろうと思いました。
――デビュー前はどんな目標を持って漫画家を目指していましたか? それとも、好きなものを描くという感じでしょうか?
そうですね。売れる売れないの世界だから、あえてそれに囚われないようにしていました。楽しく描いていたら、読者も楽しめるんじゃないかな。第一に自分が楽しんで、自分が思っていることを漫画で描いて、それによって読者も楽しめたり共感できたりすればいいな、と思っています。
ただ、自分も焦っていた時もあります。でも早く連載したかったら、いっぱいネーム描くとか行動に現れていたと思うんですが、そうはならなかった(笑)。やっぱり楽しく描く方に、天秤が傾いていたんだと思います。
▲つま先から頭までカッコいい! 美容に携わっていた経験から、髪へのこだわりも強い。
●極意その肆
どんなことでも、「心の叫び」を漫画にぶつける!
――連載開始前に、どれくらい物語は決まっているんですか?
最後こうしたいってところまでは考えています。最後までしっかり考えているの、自分の作品の中でも『ガチアクタ』が初めてですが(笑)。あとはこんな敵描きたいとか、こんな場所描きたいとか、部分的にはイメージがあります。
読み切りを描いていた時はオチを考えるのが苦手でした。かっこいいところを描きたい気持ちが先行してしまい、「あ、オチどうしよう」ってなっていました。
――連載と読み切りの違いはなんでしょうか?
テーマのサイズだと思います。一番最初に描いた読み切り『脳枷』は、その時働いていたところの上司が超ムカつくって思いから始まったんです。「お前はほんと何もできねぇな」とずっと言ってくる上司への、「やればできるんだよぉぉ!!」っていう怒りを描きました。あれは上司に突っかかっている漫画です(笑)。
読み切りは、どんなに小さなことでも思っていることをぶつけたらいいんじゃないかな。一方で連載は、そういう小さいテーマを節々にもっていく感じです。
自分の実力不足でもありますが、読み切りは尺が短くて、「もっと描きたかったのに」と不完全燃焼になっていました。連載は「次描けばいいか」と思えるからありがたいです。キャラもいっぱい描きたいですし。
▲実は、当時の上司への文句だったようだ。2018年3月期MGP入選作品『脳枷』。裏那先生の初投稿作にあたる。漫画アプリ「マガポケ」で無料公開中!
●極意その伍
「うんこ」を描く!
――週刊連載、やはり大変ですか?
大変だけど、大久保さんができていたんだからできる、という気持ちがどこかにあります。失礼な意味ではなくて(笑)、あれだけ余裕で描いている人がいるんだからできないことはないはず、と励みにしています。
最初、死ぬんじゃないかって構えすぎていたからか、思ったよりなんとかなっていますね。全く描く気にならない時期もあったのですが、初心を思い返したら「やっぱり楽しい」って思えて、また描けるようになりました。
――もし新人作家さんが描けなくなったら、おすすめしたいことは?
今描いている漫画と関係ないものを描くことです。自分が描けないときは“クリーチャー”を描いていました。本当に自分勝手に、手が動くままに気持ち悪いものを描いて、「よし気持ち悪いの描けた」って。そのあと人物描いたら、すごく美しく描けた気になりました(笑)。
『ガチアクタ』の原稿の端っこに、よくうんこを描いているのも同じです。ちょっと遊び心を思い出すこと、あとはやっぱり寝ることをおすすめします。
▲週刊連載の怒濤のスケジュールの中でも、忘れてはいけないのが「遊び心」。裏那先生は背景にうんこを忍ばせているという。あなたは見つけられるか?
――最後にプロを目指す新人漫画家さんへ一言お願いします!
肩に力入れすぎず、楽しいと思うものを描いてください!
評価も気になると思います。自分もそうでした。でもやっぱり、自分が描きたくて楽しく描いたものをいいって言ってくれる人がいるからこそ、めちゃくちゃ嬉しいんですよね。だから、好きなものを描くのが一番です。画力はいくらでも後からついてくると思います。
――本日はお忙しい中、ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました。若輩者が失礼しました。
『ガチアクタ』は週刊少年マガジンで大好評連載中!
▼1話無料試し読みはコチラから!
第109回新人漫画賞
特別審査委員長は鈴木央先生!!
締め切りは2022年9月30日必着! お忘れなく!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!