今回は、第108回新人漫画賞締め切り直前特別企画の漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」第3弾を大公開! 『カノジョも彼女』のヒロユキ先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
ヒロユキ先生に聞く!
『アホガール』から『カノジョも彼女』へ
「変えた事と変えなかった事」から見る漫画の極意!!
3号連続特別インタビュー企画のラストを飾るのはヒロユキ先生! コメディ漫画『アホガール』の連載終了から一転、現在はラブコメ漫画の『カノジョも彼女』を連載中と大きく作品テーマを転換したものの、両作ともTVアニメ化を果たすなどの大ヒット! 今回はそんな2作品の間で「変えた事と変えなかった事」を伺いつつ、新人漫画家さんに向けたヒロユキ先生流漫画術をお聞きしました!
ヒロユキ先生Profile
1982年生まれ、石川県出身。2004年、『ドージンワーク』(芳文社)でデビュー。その後、『マンガ家さんとアシスタントさんと』(スクウェア・エニックス)などを経て、2012年「週刊少年マガジン」にて『アホガール』の連載が開始し、2017年に完結。2020年14号より同誌にて、『カノジョも彼女』を連載中。
●漫画術①「絵」
漫画の入り口は絵柄
――『アホガール』から『カノジョも彼女』へと作品テーマを転換する中で“変えた事”はありましたか?
絵柄は意識的に変えていますね。イメージ的には『アホガール』の絵柄がすっぴんだとすれば、『カノジョも彼女』の女の子たちは化粧をしている感じです。この根本には、「読者からどういう風に見える絵を描くか」ということを意識しています。つまり今は、『カノジョも彼女』の絵がラブコメに見えるかどうかということを常に意識して絵を描いています。
――なるほど。ラブコメに見えることのために、「化粧」という意識を持たれているんですね!
そうですね。こうした絵柄の意識はすごく大切だと思います。読者にとって漫画の入り口は“絵”なので。読んでみようと思うか、自分がこの漫画の対象読者なのかどうかを判断するのは大抵絵柄なんですよ。僕も子どもの頃に“絵柄”が自分に合わないと思って読み逃した名作などがあって……でも大人になってから読んでみたらやっぱりすごく面白くて(笑)。そんな経験があったので、「読まれないことで損をしたくない」という意識は強く持っていますね。
▲恋する乙女の絵。ヒロユキ先生「読者にも恋してもらえる絵柄を意識しています。」
――『カノジョも彼女』を描き始めるまでに、ラブコメの絵の研究などはされたのですか?
人気のラブコメ作品を模写したりトレースをしてみたりしました。『アホガール』の絵と線の差を見比べてみて、こういうところに線を入れているんだなとか、「なるほどな~」と思いながらやってました(笑)。
新人の作家さんにも模写とかトレースはおすすめです! 自分の絵との差がすごく分かりやすいですし、学べることがたくさんあると思います。
●漫画術②「ネーム」
「分かる」の先に「伝わる」がある
――『アホガール』の初めは4コマ漫画でしたが、途中からはそれを止め、『カノジョも彼女』でもいわゆる普通のコマ割りをされていますが、ネームの際に“変えた事”はありましたか?
ベースになっている土台は変えていません。僕の中では、漫画は「分かる」という段階と「伝わる」という段階に隔たりがあると感じていて、物語の中でキャラクターの感情が「伝わる」演出で描く意識は変わらず持っています。「あの人が好き」と言葉で書いてあっても、「どれくらい好きなのか」が伝わらないと作中では使えないんですよ。
――1話毎のネームでも「伝わる」ために工夫されていることはありますか?
これは新人作家さんが描く読み切りでも通じる意識かと思いますが、僕は毎話の導入ページで「今回この人はこういう気持ちをこんな風に持っています」を必ず描くようにしています。そしてその気持ちに準じた行動をしているんです。やってることは「分かる」けど、その理由が「伝わらない」。これはなんか面白くないしつまんないんですよね。だから、キャラクターの気持ちが読者に伝わっているかどうかは毎回慎重に確認しながら描いています。
▲ドキドキだけど、好きな人のために気合を入れる!(冒頭)
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▲彼氏のためなら手段を選ばない!(中盤)
●漫画術③「キャラクター」
キャラクターは価値観の代弁者
――これまでの質問とは逆に、“変えなかった事”について教えていただけないでしょうか?
キャラクター創りですかね。どの登場キャラクターにも僕の価値観が少なからず入っているんです。例えば『カノジョも彼女』のミリカは、動画配信者ですが谷間を見せて登録者を稼ぐという一見「ダサい」ことをしています。でも僕はこの泥臭さにすごく共感しながら描いていて……僕も正攻法では漫画家になれなかったものですから(笑)。
▲正攻法ではないが目的に愚直な姿を魅力的に描いている。
――ヒロユキ先生との共通部分をキャラクターに乗せて魅力を創っているんですね。
もう少し具体的に話すと、例えば僕に「勉強したくない」という気持ちがあったとして、それをただ口で言っても「いやしろよ!」ってなるだけじゃないですか(笑)。でもそれを、こういうキャラクターがどんなシチュエーションでどういう言い方をしたら興味深い「勉強したくない」に見えるのかっていうのを探すんですよ。自分の価値観をキャラクターを通してどういう風に表現すると興味を持ってもらえるかということは色々考えながら描いています。
●漫画術④「テーマ」
妄想の熱量がテーマを決める
――新人作家さんの中には描く作品のテーマに悩んでいる方が多くいます。そんな方たちに向けてアドバイスをください!
日ごろから「自分は何に悩んでいるのか」を考えてみて下さい。先ほどの話と一緒になりますが、自分の価値観をどういう風に見せたら興味深く見えるかをまず考えて、テーマを考えるのはその先なんです。
『アホガール』のよしことあっくんは、僕の中の「自由に生きたい」という気持ちと、でも「手堅く堅実に働かないと」という気持ちを二分割して生まれた二人なんです。これって僕の人生の一大テーマだったんですよね(笑)。当時の僕はこの二人が漫才をしている描写が思い付きやすかったからコメディ漫画になったんです。でもこれって他の漫画にもできるんですよ。受験漫画でもファンタジー漫画でも……。
価値観を考えた先に、作品テーマを選ぶのはアイディアの生まれやすさだと思います。キャラクターの行動のバリエーションが思い付き、アイディアの妄想がたくさん膨らむのが“向いている”テーマなんだと思います。僕は異性との関わりについての妄想が膨らみやすかったから、『カノジョも彼女』というラブコメを描いていますし。
まずは「自分の考えていること」を見直してみて、それを出力する妄想の熱量が高いジャンルが適している漫画なんだと思います。
▲『アホガール』より。自由奔放な女子と現実主義な男子のコメディシーン。
――本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!
『カノジョも彼女』は週刊少年マガジンで大好評連載中!
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第108回新人漫画賞
特別審査委員長は金城宗幸先生&ノ村優介先生!!
締め切りは2022年3月31日必着! お忘れなく!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!