今回は、第108回新人漫画賞締め切り直前特別企画の漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」第1弾を大公開! 『黙示録の四騎士』の鈴木央先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
ファンタジー漫画のプロフェッショナル鈴木央先生に聞く!
読者を誘うキャラ創出の極意!!
3号連続特別インタビューのトップバッターは鈴木央先生! 連載を終えた今もなお、世界中を熱狂させ続けているファンタジー漫画『七つの大罪』に続き、現在『黙示録の四騎士』を大好評連載中! 今回はそんな、読者を惹き込むファンタジー作品を生み出し続ける鈴木央先生に、新人作家たちが抱くギモンをブツけちゃいました!
鈴木央先生Profile
福島県出身。1994年、『Revenge』がホップ☆ステップ賞(集英社)で佳作を受賞し、デビュー。2012年45号~2020年17号の間、「週刊少年マガジン」にて『七つの大罪』を連載。2021年9号より同誌にて、その正統続編譚となる『黙示録の四騎士』を連載中。過去代表作に、『ライジングインパクト』『ブリザードアクセル』『金剛番長』等。
●極意その壱
説明は端折り、絵は端折らない
新人漫画家からのギモン①
オリジナルの世界観は、どのくらい説明すればいいの?
――説明的だと退屈な一方、説明不足だと分かりづらくなってしまいますが、世界観説明の際に意識されていることはありますか?
オリジナリティというのは、固有の用語や設定から生まれると思いがちですが、私はキャラクターにこそ、オリジナリティが宿ると思っています。「この漫画が好き!」と読者が言う時、「この世界観が好き!」よりも「このキャラクターが好き!」という意味の方が大半だと感じるといいますか。設定というのは説明書でしかありません。むしろ可能な限り説明は省いて、その分キャラクターを見せることに注力して欲しいです。
▲『黙示録の四騎士』1話冒頭より抜粋。最小限の説明で、キャラクターと世界観を伝えている。
――何かオリジナル要素を説明しなければならない時は、いかがでしょうか?
そういった時は、極力「汎用的な言葉」を使うようにしています。自分の場合「魔神」「女神」といった、童話や神話でも馴染みのある言葉なら、読者も受け入れやすいと思います。そこで完全に独自の言葉を出してしまうと、読者に取っつきにくい印象を与えてしまいかねません。
街並みや生活感といった世界観の情報については、せっかく漫画ですから、ぜひ絵で見せてあげて欲しいですね。
▲汎用的な名称にすることで、分かりやすくしている。
●極意その弐
漫画は一人では描けない
新人漫画家からのギモン②
オリジナリティのあるキャラクター作りのコツは?
――先ほどの質問でキャラクターが大事とのことでしたが、他にないキャラクターを作る上で、大事なことは何でしょうか?
オリジナリティのあるキャラクターというのは、作家自身の経験からしか生まれないと思います。漫画や映画から着想を得たキャラクターだと、どこか見たことのあるような印象になってしまいます。逆に、自分の知り合いは誰も知らないわけですから、家族、友人、そうした身近な存在から憧れの人の中で、「こんなキャラクター、みんなに見せたい!」と思える面を見つけて、少し極端に味付けして描いてみると良いかもしれません。実際、私の漫画の中にも、嫁さんや担当編集といった、身近な人がモチーフのキャラクターは沢山います(笑)。
結局のところ、漫画は一人では描けません。色々な人と交流することは、とても大事だと思います。
――そのように着想を得たキャラクターの魅力を、作中で引き出すにはどうすれば良いのでしょう?
同じ状況に置かれた際に、それぞれが違う反応を示すのがキャラクターです。岩が転がってきた場合に、逃げるか、しゃがむか、押し返すか、叫んで立ち尽くすだけか。こうしたリアクションの違いを引き出せるような仕掛けやシチュエーションを投入して、感情豊かに動かしてあげられると良いのではないでしょうか。
▲新しい服をまとった際、三者三様のリアクションでキャラクターが見える。
●極意その参
初めから全て正解を引こうとしてはならない
新人漫画家からのギモン③
ネームに詰まったらどうすればいい?
――新人時代、ネームに詰まることはありましたか?
私は新人時代、45P程度の読み切りを毎週4~5本、担当編集に見せに行っていました。打ち合わせ後にご飯に連れていってもらっていたのですが、当時お金がなく、ネームがないとご飯が食べられなかったので、詰まっている余裕はなかったですね(笑)。
――すごい生産力ですね…‼ ではネームで詰まることは一切なかったのでしょうか。
詰まらないというよりも、詰まっていてもしょうがない、という感じですかね。何が掲載に至るかなんて分からないので、とにかく思ったことは全部描いて、すぐに見せに行っていました。自分の中では手応えを感じていても、担当編集には「違うんだよなあ。じゃあ飯行こうか」と、全く響かずなこともしょっちゅうでしたしね(笑)。
もし展開の方向性で迷っているのであれば、全てのパターンを描いて持っていけばいいと思いますし、何かミスしたとしても、次のネームでは同じことを繰り返さなかったりします。マイナスになることなんてそうそうありません。初めから全て正解を引こうとせず、修正も一から直すくらいの心づもりで、経験を積んでいって欲しいです。その上で本当に詰まってしまった時は、担当編集に素直に相談すればいいと思います。学校のテストじゃないので、何より楽しんで描いて欲しいですね。
●極意その肆
ファンタジーだから大事というものは、実はない
新人漫画家からのギモン④
新人時代にやって良かったことは?
――特にファンタジー漫画作りに役立った取り組みについて、伺えればと思います。
ファンタジー以外の漫画をいっぱい描いたことですね。新人時代、ファンタジー漫画ばかり描いていたのですが、中々上手くいかずに悩んでいた時、担当編集に現実モノを描いてみることを提案されて、ファンタジー以外も描き始めました。この経験がなかったら、今漫画家になれていないと思います。
――具体的にはどのように役立ったのでしょうか?
キャラクターを描くことについて理解する上で、一番勉強になりました。現実モノには基本的に設定がありません。スポーツとかも、既に決まったルールがあります。そうなると、もうキャラクターを深掘りして描いてあげるしかありません。ファンタジーだと世界観や設定に沿って動かしているだけで、キャラクターを描けた気になりがちですが、そうした要素を取っ払って描いてみたことで、キャラクターの本質が理解できた気がします。
――なるほど。その経験が先ほどの、キャラクターを見せることこそ重要、とのお話にも繋がるわけですね。
そうですね。ファンタジーだから一番大事というものは、実はほとんどないと思います。もしファンタジーを描きたいけど詰まっているという方がいたら、ラブコメでも、学園モノでも、スポーツでも、何でも構わないので、現実が舞台の作品を描いてみるのもアリだと思います。
▲キャラ作りについて、鈴木央「日常世界にキャラクターを移しても、楽しそうかどうか」
●自分の描いた物語で、楽しんでもらえる
新人漫画家からのギモン⑤
生まれ変わっても漫画家になりたい?
――ぜひとも正直なご意見を聞かせて下さい!
他にやりたいこともないので、漫画家になっているんじゃないでしょうか(笑)。
――鈴木央先生にとっての、漫画家の醍醐味は何でしょうか?
担当編集だったり、読者からのファンレターだったりから、反応をもらえることです。自分が描いたもので楽しんでもらえる、「この展開サイコ―!」って言ってもらえる瞬間が、一番楽しいですね。担当編集を驚かせるために、打ち合わせの内容から展開を変えて、原稿を仕上げちゃうこともあります(笑)。
――本日はお忙しい中、ありがとうございました!
こちらこそ、ありがとうございました。
『黙示録の四騎士』は週刊少年マガジンで大好評連載中!
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第108回新人漫画賞
特別審査委員長は金城宗幸先生&ノ村優介先生!!
締め切りは2022年3月31日必着! お忘れなく!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!