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【スーパー人生相談企画】『爆音伝説カブラギ』原作者・佐木飛朗斗先生の「楽譜の無い道」最終回を大公開!!

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『特攻の拓』、『爆音伝説カブラギ』、『[R-16]R』などの原作者である佐木飛朗斗先生。『爆音伝説カブラギ』の単行本16~19巻に収録された、佐木飛朗斗先生が送る特別人生相談企画 「楽譜の無い道」全6回をマガポケで大公開しちゃいます!
今回は、最終回をお届け! ”強い生き物“に成ろうとする少年たちを描いてきた先生が、読者の悩みに応えます!!

 

キミが 特攻 ぶっこ めッ! 悩みを 特攻 ぶっこ めッ!!
■「楽譜の無い道」最終回 

 連載開始と同時に大反響を巻き起こした、作家・原作家である佐木飛朗斗先生の超人生相談企画も今回で最終回! その大トリを飾るスーパーゲストが参戦!? まさかの森川ジョージ先生が登場だ!!

 

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◎イラスト/東直輝


【初出】
マガジンSPECIAL 2016年 No.5
[2016年4月20日(水)発売号]掲載

 

今回のお悩み:男の座標ってなんですか!?

 

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「週刊少年マガジン」で『はじめの一歩』を連載中!
森川ジョージ先生登場!!!

 

佐木飛朗斗先生:

「男の座標」。う〜ん‥少し困りました(笑)。おそらく森川さんは、2015年夏のイベント「マガジン学園」(下記のコラム参照)の大喜利に於いて、会場に大写しにされた編集部フジカワ君の写真に対し、「彼は何をしに来たのか?」という設問に、私が「男の座標を語りに来た」と解答した事から、この質問をされたのだと推察します。
実は、私が若い作家や編集者、またはデザイナーの皆さん、そして弟子達にお話しするのは、「男の座標」ではありません。正しくは、「座標を指し示せ!」です(笑)。編集者のフジカワ君が、この言葉に強い印象を持ち、夏以前、この人生相談の企画書を私に持参してくれた時、彼の考案した仮の表題が「男の座標」であったのです。
マガジン学園の時点で、私はこの企画の表題を「楽譜の無い道」とすでに決めていましたが、森川さんも良く識るフジカワ君の笑顔が大写しにされた瞬間、私は彼の考案した表題を使い、「男の座標を語りに来た」と解答した訳です。つまりフジカワ君に対しては、「その表題を忘れてはいないよ?」と伝えると同時に、観客席の皆さんには、フジカワ君の笑顔と「男の座標」という言葉の響鳴を楽しんでいただけると考えた訳です。

 


「「男の座標」。う~ん‥少し困りました(笑)。実は、私が若い作家や編集者、またはデザイナーの皆さん、そして弟子達にお話しするのは、「男の座標」ではありません。正しくは、「座標を指し示せ!」です(笑)。」


 

 

前述の理由から、今回は「座標を指し示せ!」について、お応えさせていただきます。
まず、この言葉通り、座標を指し示す事に、男も女もありません。そして、私自身この言葉の具現化に尽力して参りましたが、依然、「精進不足の頑固爺」です(笑)。これはあらゆる生業、および男女の区別無く、そう望む方に「それ」を目指して欲しいという「私の願い」です。特に、私達、作家や漫画家の様に、作品を世に発表する方や、またあらゆる芸術、音楽、建築に携わる方等に目指していただきたいと願っています。私の感得し易い分野を並べてしまいましたが‥(笑)。もちろん政治や経済、あらゆる分野で目指す事が可能です。
では、「座標を指し示せ!」とは、「何」を目指す事なのか? それは作品をはじめ、世に発表する記録、あるいは創造物を、意志の力と精神の威力とも呼ぶべき強い確信をもって、人間世界に文化と歴史の一部として時空を超え存在させる事です。
何だかとても大げさな話となってしまいましたが、例えば、私達作家や漫画家が、その作品に於いて、唯一無二を証明する事は、それ自体に己の全精神力を傾け、自らの性能を限界まで炸裂させなければ不可能であると感じます。いや、そうまでしても、証明する事は能わぬのかもしれない。また、証明する事と、証明し続ける事は、完全に別次元の事であり、そして、それを資本主義に変換するという事は、ある意味相反する次元ですらある事を、長くこの世界に於いて作品を描き続けて来られた森川さんならば、よくご存じの事と思います。
作品が文化と歴史の一部に成り得る様願うのは、私が若い頃、偉大な先達の作品に育ててもらったと感じる様に、もし、どこかの書店やコンビニで、私の作品を目にした読者の皆さんが、あの頃の私の様に、作品を楽しみ、同時に何事かを感得していただければ、と願っているからです。
多くの場合、人生とは困難なものです。今日を生き、明日の生活を計り、人は逡巡します(もちろん私もです)。
そんな時、ふと目にした作品が、一瞬でも読者の現実の困難を忘れさせ、また読み終えた時には、現実の困難に立ち向かえる力を養えるような、「人生の術であり人生の糧」と成り得るような作品をして「座標を指し示す」事を果たしていると言えるでしょう。

 


「座標を指し示す事に、男も女もありません。これは、そう望む方に「それ」を目指して欲しいという「私の願い」です。」


 

 

同時に、作品という世界の中に於いて、登場人物が「座標を指し示す」事や、物語を含む作品そのものが「座標を指し示す」事も可能であると確信しています。
作品という世界に於いて、「誰でもあるが、誰でもなく、何処にでも居るが、何処にも居ない」、これが創造するものの存在であるならば、作品世界の一人に、また登場する人物達の群像劇に、そして物語に、「それ」を具現化する事は、決して不可能ではないと感じるからです。
話が多重構造の様相を帯びて来てしまいましたが、ロックスターであったデビッド・ボウイが、「ジギー・スターダスト」を「演じた」のは、この様な意図であったのではないかと推察します。
けれども、創造者の生き様と作品が一貫性や同義性を有する事が全てではありません。私の概念では、生き様と作品が別次元であろうと、完全に相反していようと、「座標を指し示す」事は可能です。それも、作者と作品を響鳴させる事によってです。いずれにしても、私はまだまだ精進不足ですが(笑)。
森川さんは四半世紀を超えて、『はじめの一歩』という熱い、そして素晴らしい作品の連載を持続させ存在させ続けています。これはまさしく、唯一無二のボクシング漫画であり、また、多くの世代の読者を持ち、資本主義にも変換し続けている名作である事は、疑う余地の無い事実だと思います。
そして、森川さんはボクシングジムを経営なさっているとの由。まさに、現実の生き様と創造する世界の一貫性と同義性を証明し、「座標を指し示す」事を果たされていると感じます。
同じ漫画の世界に存在する者として、また一ファンとして、これからも週刊少年マガジンの「総番」であり、「首将」として疾走し続けて欲しいと願っています。
また、盃を酌み交わしながらでも、お話ししましょう(笑)。

 


「読み終えた時には、「人生の術であり人生の糧」と成り得るような作品をして「座標を指し示す」事を果たしていると言えるでしょう。」


 

 

■コラム
「マガジン学園」とは!?

2015年8月8日に東京都内の大学を借りて行われた、週刊少年マガジン、マガジンSPECIAL、別冊少年マガジンの3誌合同読者感謝イベント。本文中で佐木先生が取り上げているのは、この日講堂で行われた特別講義での「イラスト大喜利」の一コマ。「部屋に入って来たフジカワ君。いったい何の話をしに来た?」というお題に対して、佐木先生が「男の座標を語りに来た!!」と答えたことに由来する。

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■佐木飛朗斗 今月の 音葉 おとは 言楽 げんがく

●リヒャルト・ワーグナー(1813─1883)
『ニーベルングの指輪』

ジェイムズ・レヴァイン指揮 
メトロポリタン歌劇場管弦楽団(1989、1990)

 

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※画像は、ワーグナー:楽劇「ヴァルキューレ」

 

●ワーグナー:楽劇「ラインの黄金」
●ワーグナー:楽劇「ヴァルキューレ」
●ワーグナー:楽劇「ジークフリート」
●ワーグナー:楽劇「神々の黄昏」
(すべてDVD)

◎ユニバーサル ミュージック ジャパン

 

私にとって、音楽と言葉のまさに究極の形態、楽劇『ニーベルングの指輪』です。1849年、ザクセン王国に起こった共和主義運動に身を投じ、政治犯として亡命、逃亡生活の中で、彼はこの長大なオペラを書き上げます。多くの楽劇を残したワーグナーですが、特徴的なのは、その脚本も作曲者である彼が書いたものであるという事です。
ヨーロッパを転々としながらも、贅沢を好み、借財を重ね、女性遍歴も華麗な彼は、最後には一国の王をパトロンとして、劇場まで建設します。それが現在も残るバイロイト祝祭劇場であり、ワーグナーは、この『ニーベルングの指輪』の終幕、『神々の黄昏』で劇場に火を放つ演出を構想していた、と伝えられています。
彼の生き様と、オペラの中を貫く思想は強調され、あるいは相反し、悲劇を炸裂してゆきます。明晰と蒙昧、愛と憎悪、壮麗と醜怪、地底と天空、戦争と平和、英雄と道化、王と奴隷、これらの対位に加え、台詞(歌詞)の深さと辛辣さ。夫と妻、兄と妹、父と子、そして天敵。どの登場人物の会話や行動も感得するものが多く、創造者であるワーグナーの強烈な意志の力と精神の威力を思わずにはいられません。物語は神々の世界の終焉と、英雄の誕生と死を顕し、全四部作、15時間を超えるこの超大作は、オーケストラや歌い手、そして観客さえも、その力を試されているかのようです。そして全編に溢れる美しく強烈な示導動機を伴った音楽。『ニーベルングの指輪』は、リヒャルト・ワーグナーの生き様と合わせて、さらに響鳴し、まさしく個人的には、人類史上最も強烈に「座標を指し示す」作品の一つです。

 

 

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