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「デジタル作画は漫画の世界をどう変えている?」③<初心者~初級者編・前編>: お金がない者への救世主・板タブ

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「デジタル作画は漫画の世界をどう変えている?」<基礎編・前編>:『週マガ』連載陣の3分の1がフルデジ派! - マガポケベース

「デジタル作画は世界をどう変えている?」<基礎編・後編>:今までのトーン指示の間に自分で貼れちゃう! - マガポケベース

 

 マガポケベース読者の皆様、あけましておめでとうございます!

 

 2017年末から始まったデジタル作画フューチャー企画も3本目。今回はデジタル作画について、お金の面から見ていきましょう。

 

 デジタル作画において最もついてまわる問題といえば、初期投資がアナログ作画に比べてかなりかかってしまう点です。

 

 もちろん、2010年頃から導入のハードルはずいぶんと低くなりました。大手家電量販店では板タブ+画像制作ソフト2年保証セットが1万円前後で並んでおり、あとはPCさえあれば始められてしまいます。

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家電量販店のペンタブコーナー

 

 一方で「より手描き感を」「もっと画面を広く」など性能を突き詰めていくと、液タブに30万円以上、相応のスペックを備えたPC&モニターに30万円以上、とかなりの高額が必要な場合も出てきます(※板タブ・液タブの違いについては第1回<基礎編・前編>を参照)。

 

 Gペンからトーンまで必要最低限のアナログ画材がそろった入門セット「なかよし 最強まんが家シリーズ 本格プロ仕様セット」は、1組3000円ほど。60万円もあればアナログ作画人生を200回以上スタートできちゃいます。

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 初期投資に数十万もかけて「デジタル作画は肌にあわなかった」となってはつらすぎるので、自分の適正を知る意味でも、安価な板タブからデジタル作画を始める人は多いです。

 

秋葉原のある家電量販店のペンタブ売り場店員も「ぶっちゃけクレームが怖いので初心者には1万円前後の板タブセットを勧めています」と笑っていました。清々しかったです。

 

 デジタル作画連載、今回の<初級編>ではデジタル作画の初心者に向け、低予算で始められる板タブをメインとしたデジタル作画ツールを紹介していきます。

 

 ●ワコム一強の板タブ市場 どのタイプを選ぶか

 正直、漫画家の画像制作ソフトはセルシス「CLIP STUDIO PAINT」シリーズが大多数、PCはもともと持っているもの使う人が多いといった具合。初期費用の額面を左右するのはペンタブになってきます。

 

 ペンタブを選ぶときに重要なのは、次の3つのポイント。

 

・ペンタブにかけられる予算はどれくらいか

・手描き感を求めるか

・携帯性をとるか入力画面の広さをとるか

 

 板タブは1万円~5万円くらいと安いけど手描き感から遠く、液タブは安くても8万円前後からと高いけど手描き感に近い、と一長一短あることは連載第1回で説明したとおりです。一方で両者とも共通して、「手描き感」「入力画面の広さ」のグレードが値段に応じて上がってきます。

 

 

 その手描き感を左右する最大要素が「筆圧感知機能」

 

 タブレットに加わるペンの力の強弱を読み取る機能のことで、搭載していれば筆圧を強めるとソフト上で線が太く、色が濃くなり、弱めると細く薄くなります。「筆圧感知レベル」が高いほど読み取りの精度も増し、手描きに近い感覚でデジタル作画ができるように。最近だと最安価のペンタブでもだいたい1024レベルはあります。

 

 ペン入力を読み取ってくれる画面の広さも重要です。

 

 入力画面が狭いほどペンタブ本体は小さくなり、カバンに入れて喫茶店で作業して、と持ち運びしやすくなる利点がありますが、ドローイングするにはなかなか窮屈。特に板タブだと手元で小さくペンを動かしてもモニター(ソフト)上では大きく動くので、微細なペン遣いを必要とします。描きやすさを選ぶなら入力画面が広いほうが楽でしょう。

 

 これら3つに基づいてどの製品にするか決めることになりますが、国内で板タブを買う場合は、必然的にワコム製一択となってきます。

 

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ワコム公式サイト

 

 ワコムはペンタブ業界で世界シェア約9割を誇る日本企業。液タブは外資の低価格製品やAppleのiPad Proなど競争相手が増えてきましたが、板タブはワコムが特許を取得しているのもあって日本市場を独占しています。

 秋葉原の大手家電量販店を3店周ったところ、ワコム製以外は2点しか見つかりませんでした。とはいえ他社製品と価格面で大した開きはなく、性能・保証面を考えるとワコム製のコスパが断然上なので、消費者にとって大きな不都合はありません。

 

 2017年12月時点で一番手が出しやすいワコム製板タブが「Intuos」シリーズ。最小の「Small」サイズは筆圧感知レベルが最高2048、入力画面が152×95ミリ。クリスタのダウンロード版2年保証、漫画制作ガイドブックなどを付けた「Intuos COMIC」セットは、1万円前後です。

 

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「Intuos」のSmallサイズと「Intuos COMIC」(ワコム公式サイトより)

 

 過去の似たような入門セットと比べると、2012年にワコムから発売された「Bamboo Comicスターターパック」は、筆圧感知レベル1024の板タブ「Bamboo Comic」に、期間限定ソフトとガイドブックを付けて1万3000円前後。どれだけ板タブに手が出しやすくなったかわかるでしょう。

 

 さらにスペックを上げると、「Intuos」シリーズのハイエンドモデル「Intuos Pro」は筆圧検知レベルが8192、「Large」サイズが入力画面311×216ミリで5万円前後といったところです。

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 ワコム製板タブは、8年前に購入したものを今でも現役でバリバリ使っている――といった声も少なくありません。

 

売り場で使い心地を確かめつつ、長く付き合っていく相棒ならぬ“相タブ”を選んでいきましょう。

 

 

1月7日更新の<後編>へ続く!