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【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第2回「見たり! “かわいい”の正体!!」

今回は、「別マガ」10月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第2回「見たり! “かわいい”の正体!!」を大公開!

 

別マガ異色のエッセイ連載、第2回―!
ショウ年マンガ

音楽家ヤマモトショウの自由研究
第2回「見たり! “かわいい”の正体!!」

かわいいって、なんですか?

 僕は「世界で一番かわいい音楽をつくる」を掲げて音楽を作っています。音楽の世界では「かわいい」の専門家だとは思っているのですが、それでも日々「かわいいって何?」ということがわかったり、わからなかったりを繰り返しています。

 よくよく思い出してみると、僕が最初にクリエイティブな「かわいい」を意識したのは鳥山明先生の『Dr.スランプ』でした。といっても、最初に触れたのはアニメとして放送されていた『Dr.スランプ アラレちゃん』を通してです。『Dr.スランプ』は全編最高にかわいいマンガだと思いますが、ある意味唯一かわいくないかもしれないのがタイトルだと感じています。その点、アニメでタイトルに「アラレちゃん」をいれたのは大正解だったように思います。アニメのOP「ワイワイワールド」も最高にかわいいです。

 なんといっても、鳥山先生が描く物の造形に心を奪われました。例えば鳥山先生の作品には、よくゴジラやガメラを模した怪獣が出てくるんですが、これが確実に「ゴジラだ」とわかる絵であるのにもかかわらず、ゴジラを単に小さくしたりソフトに描いたりしたのとは違う、独特のデフォルメがなされているんですよね。車や飛行機などのメカも、写実的でありつつ、デフォルメ感も抜群でめちゃくちゃかわいい。鳥山先生の描く物はどれも「かわいい」「かっこいい」を両方持っていて、最高のデザインだと思います。もちろん、キャラクターの造形も超かわいいです。よく言われることですが、アラレちゃんの登場によって「メガネの女の子がかわいい」という新たな方向性が生まれたという話もありますよね。

 

一番かわいいのは、鳥山先生ご本人!?

 ただ、「一番かわいいのは、実は鳥山先生ご自身なのでは…?」と僕は思ったりしています。どういうことかと言うと、鳥山先生は「恋愛を具体的に描かない」ところがあるのではないか、と考察しています。というか、実際『Dr.スランプ』にはほとんど恋愛シーンはないんですが、にもかかわらず多くの人にとって作中のいくつかのカップリングの成立過程は、すごく印象的なんじゃないかと思います。『Dr.スランプ』はこの手の一話完結ギャグマンガでは当時異例な「現実の経過時間とマンガ内の経過時間が同じ」タイプで、連載の5年弱で、アラレちゃんが中学二年生から高校三年生まで時間が経過します。その間にいくつかの恋愛が進行して、結婚があったり、カップルが生まれたりとあるんですが、これが鳥山先生の照れ隠しなのか、あまりその中身が具体的には描かれないんですよね。そのサッパリとした感じが僕は大好きで、この作品の「かわいさ」に繫がっているようにも思います。恋愛って、「恋愛のためにかわいくなったり」ということはありますが、実際の心の動きそのものとか、現実はそんなに「かわいくない」ものだと思うので、実はこの辺のバランスが重要だったりしますよね。漫画の中で扱う際にも先生方のキャラクターが出るのかな?と想像しました。ごく稀に入る恋愛描写にファンが引き込まれる感覚は、『ドラゴンボール』にも引き継がれているかもしれません。

▲裏表紙の別案。こっちも結構かわいいと思うんですが。

 

かわいいキャラクターはかわいい曲を生む!

 逆に恋愛をもっと明確に描いたうえで「かわいい」のハードルを超えてくる作品もいくつかあります。ラブコメといえば、僕はやはり高橋留美子先生の作品(るーみっく作品)を思い浮かべます。全作品全ページかわいいんですが、特にエポックメイキングな「かわいい」キャラクターといえば、僕の中の1位は「うる星やつら」のラムちゃんです。世界一かわいい曲をつくると言っている僕も「ラムのラブソング」は超えられないかも…といつも思っています。ラムちゃんというキャラがあるからこそ生まれた、最高のかわいいソングです。ちなみに、るーみっく作品関連では、『らんま1/2』のアニメ主題歌「じゃじゃ馬にさせないで」も楽曲をチームで考えるときによく名前があがります。曲のテーマもかわいいんですが、やはりらんま達のかわいさがあっての完成度なのだろうなと思います。

 先ほど「恋愛は実際のところそんなにかわいくない」と書いたのですが、僕はまさにそこを「実際になさそうでありそうな、かわいい恋愛」として描かれているところが、るーみっく作品の唯一無二なかわいさの理由なんじゃないかと考えています。“恋愛のデフォルメ”とでも言うのでしょうか。もちろん設定は現実にはありえないことばかりなんですが、その設定の上で展開している人間関係は、めちゃくちゃ現実にありそうなんですよね。「自分もこの状況になったらこう思っちゃうかも」「男の子(女の子)って、こう思ってるのかも」と思わせるような描写のオンパレードです。この辺りの天才的なバランスが、かわいさを生んでいるようにも思います。

 

FRUITS ZIPPER『かがみ』を本人解説!!

 アイドルソングの歌詞にも、キャラクターや出来事のリアリティが必要だと考えています。“歌詞内主人公”の恋愛などを描くわけですが、僕は「女性としての恋愛」をしたことがないので、当然すべて想像するしかないわけです(もちろん映画やドラマ、小説、そしてマンガで読んだものが確実に影響してきます)。その時に重要視しているのが、その歌詞がどの程度のリアリティを持っているかということ。「かわいい」と感じる対象は、現実離れした完璧さや、実現不可能性を持っているようなものではなくて、むしろどちらかといえば「こういうの、身近にもありそう」と思うものであるように、僕は思うのです。

 自分の手掛けた歌詞を例に出すと、FRUITS ZIPPERの『かがみ』という楽曲の中では、「22時から2時は寝るのがよくて、18時以降は食べない方がいいです」という歌詞が出てきます。その直後、メロディから外れたちょっとリアルなセリフ的トーンで「いや無理です」とメンバーが歌うところがあります。この微妙に具体的な、ありそうでない、しかしなさそうである、というリアリティラインがかわいさに繫がっている…という気がしています。

 若干話は逸れますが、楽曲とアーティストの個性は切っても切り離せない関係にあると思います。アイドルは「恋愛禁止」というルールがあったり、ルールがなくてもそう思われている部分があるので、恋愛以外のキャラクター部分のディテールが勝負ポイントで、ここに厚みがないと楽曲にリアリティが生まれないともいえるんです。

 鳥山先生や高橋先生のことを考えたことで、僕のライフワークともいえる「かわいい」に関する考察が進んだように思います。他にも「かわいい」で切り取ることができるマンガもたくさんあって、思い出してみると人生のいろいろな場面で「かわいい」に助けられたり、自分の作品のヒントになっていたりします。僕も「世界で一番かわいい曲を作る」作家として、今後もこのかわいいの源泉となりそうな漫画作品については、積極的に摂取していきたいと思います。

 

9月の担当編集
僕の最強かわいいソングは、小倉優子さんの『オンナのコ♡オトコのコ』。
小学校年生の時に沢近愛理に脳みそを焼かれました!

 

次回 「音楽マンガ論」 につづく!

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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