「見ないでよ、絶対っ……!」
川中康嗣先生が描く『お願い、脱がシて。』は、人類と尿意との戦いを描いたバトル“パンツ”ファンタジー。
呪われてパンツが脱げなくなってしまった女子、唯一脱がせられるのは解呪の右手を持つ主人公、神手だけ。尿意と羞恥心に女子たちは勝てるのか!? と現役の医師さんに真面目に尋ねてみました。
今回は、この作品についてうかがたいのですが……
今回は事前調査をするまでもない。
最初から質問を投げてみました。
今回も、筆者の友人で、世界的に希少な分野を扱っている現役の医師さん。
また「専門分野ではないですが医学書を読みながらですみません」と前置きした上でコメントいただきました。
−−『お願い脱がシて。』という漫画で、パンツが脱げなくなる呪いにかかってしまった女子たちが尿意と恥ずかしさを我慢するのですが……
医師さん:
なるほど、恥ずかしさのほうは複雑ですので回答しづらいですが尿意でしたらご説明できます。
排尿関係は男女で体の構造がかなり違います。
解剖学の情報もまじえて説明していきましょう。
−−尿意を感じているとき、身体では何が起きているのでしょうか
医師さん:
「尿意」とは何なのか。
端的に言ってしまうと「膀胱からの救難要請」です。
膀胱に尿がある程度溜まると、膀胱の壁には「伸ばされる」という刺激が加わり始めます。
この刺激が脊髄の腰の部分にある仙髄排尿中枢に伝わって、そこから大脳に飛んでくるシグナルが「尿意」の正体。
腎臓は膀胱の都合はお構いなしに尿を作り続けて送ってくるので、「そろそろ排尿してくれないとマズいから助けてくれー」と膀胱が言ってるのだと思っていただければいいと思います。
−−なるほど、それでは尿意を我慢しているときは、どんなことが起きているんですか?
医師さん:
人体の働きには、腕を曲げるなど意識的に行うものや、心臓の収縮のように無意識で行うものがあります。
そして、呼吸やまばたきは「意識的に介入できるが、あまり好き勝手されると困るもの」。抗えないような強い感覚で体が意識を強制的に動かそうとするんです。
排尿もその1つ。
「尿意を我慢する」というのは、その強い感覚に耐える行為に当たります。
もちろん、排尿は呼吸などよりはだいぶ意識に任されていて、呼吸と比べると耐えるのも容易。
最初にお話しししたように男女で身体の構造はだいぶ異なり、男性と比べて女性ははるかに漏らしやすい構造なんです。
それは、膀胱から外に繋がる尿道の違いです。
男性の場合、長く曲がった尿道(約20cm)を持っている上、膀胱のすぐ下でそこそこ固さのある前立腺がクリップのように尿道を押さえています。
だから、尿道の抵抗が強い。男性の排尿トラブルの多くは「尿が漏れる」ではなく「尿が出にくい」です。
一方、女性は尿道が下向きまっすぐで短い(約5cm)上に、尿道を押さえる前立腺の代わりに膀胱に上からもたれかかる子宮があって、しかも膀胱の出口を塞ぐ尿道括約筋が男性よりも弱い。
パンパンの水風船を男性より弱い小さな筋肉だけで支えてるような状況なので、そりゃあ漏れます。うっかりしてもしなくても漏れてしまうんです。女性がトイレに並んでいるのは化粧直しをしているだけじゃありません。
作中の女の子がうろたえてる事情は理解してあげてください。
男性の感覚では少々大袈裟に見えるかもしれませんが、女性の「漏れそう」は結構な緊急事態なんです。
人類はどこまで尿意と戦えるのか?
−−人はどこまで尿意を我慢できるのでしょうか
医師さん:
まず尿意がどれくらいで出始めるかですが、成人だと大体200mlくらいの尿が溜まると尿意を感じ始めます。
膀胱の最大容量は個人差が結構ありますが、目安としては500ml前後なので、実は容量的には結構な余裕があります。
平素からよく我慢してる人は膀胱が伸びて大きくなるので、中には1000ml以上貯められるという人も。
人前でトイレに行けない高貴な婦人がよくなってたということで、そういう大きくなった膀胱には「貴婦人膀胱」という俗称があります。
膀胱は、我々が社会的に死なないで済むように早めに報告して、「無理だ」となっても現場対応を頑張る偉いやつなんです。
−−「我慢し続けると膀胱炎になる」とはよく聞きますが。
医師さん:
これはちょっと勘違いされているところなんですが、排尿を我慢するのは膀胱炎を起こしやすくする原因のひとつであって、我慢した=膀胱炎になるわけではありません。
膀胱炎というのは膀胱の中で細菌が繁殖して炎症を起こしてしまう病気ですが、尿は「汚い」というイメージに反して基本的に無菌なんですよ。
我々医師の間では「血液は尿よりはるかに汚い」とも言われているほどです。
他人の血液から伝染する病気は幾らでもありますが、尿から感染する病気というのを少なくとも私は聞いたことがありません。
−−尿が実は綺麗だ、というのは意外でした。でしたら、なぜ「我慢すると膀胱炎になる」と言われるんですか?
医師さん:
実は「我慢する」も原因となり得るからです。
膀胱炎を起こすのは尿道を通じて入ってきた雑菌。
頻繁に排尿していれば、多少入ってきた雑菌も尿とともに体外に出ていきます。
でも、我慢をしていると膀胱に侵入され、繁殖されてしまいます。
だから「尿意を我慢し続けると膀胱炎になる」。
−−なるほど、ちなみに膀胱炎ってどんな症状が出るんですか?
医師さん:
膀胱炎は医学的にはあまり重大ではない方の病気ですが、膀胱炎を起こすと膀胱の壁が炎症で刺激されます。
つまり、本来は尿が溜まった時に出るはずの尿意シグナルが四六時中出てしまい、常に尿意と戦わないといけない。大変不愉快な状態になりますし、時に腎炎に発展することもあるのでできるだけ防ぎたいところ。
なお、ここでも男女差が問題になって、女性は男性より尿道が短くて雑菌が入りやすく膀胱炎を起こしやすい。
体の構造的には女性の方が我慢しにくいはずなんですが、社会的事情から我慢しがちなのは女性なので、学校であれ職場であれ、女性がトイレをあまり我慢しないで済むような環境を意識して作る必要があるのかなと思います。
−−なるほど、今回は思わぬ気付きがありました。
医師さん:
最後に、これは医師としてお伝えしたいこと。
今回お話しした泌尿器科のことですけど、どうも世の中には「泌尿器科=男性器」というイメージがあるのか、女性の患者さんが受診しにくいと聞きます。
泌尿器科では女医さんが偏見を受けたりすることもあるようなんです。
でも、泌尿器で男女差が明確なのは膀胱よりもあとの部分だけですし、男性器は生殖器としてはともかく、泌尿器としての機能は「ただの延長ホース」同然なので、そういう偏見がなくなり、「恥ずかしい」と思わずに受診しやすくなると嬉しいです。
−−ありがとうございました。
彼女とドライブに行く、買い物や食事に行く。
「ちょっとトイレに」と待たされたることがありますが、なるほど、「そういうことだったのか」と気付きになりました。
医師さんも「社会的事情から我慢しがちなのは女性」と話してくれましたが、男性のほうが我慢しやすいということを覚えておけば、女性がトイレに行っているのをイライラ待つなんてできませんね。
「ただの延長ホース」なんですね……
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