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【騙されたと思って1本!!】「別マガ」ムービーガイド 『彼氏時々彼女』ムサヲ先生&担当が選んだムービー編

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今月は、「別マガ」7月号表紙&巻頭カラー新連載『彼氏時々彼女』のムサヲ先生と、担当者の吉村くん。ムサヲ先生の推薦作が意外! でも、よく考えたらそうでもないのかな。読者のみなさんはどう思う? 2人が推薦してくれた映画に関連した編集部オススメの映画もおもしろいのでぜひチェックしてみてくださ~い!

 

●TITLE『PLAN 75』
観るのは辛いが、それでも価値あり!

 7月号最初の推薦者は、表紙&巻頭カラーを飾った『彼氏時々彼女』のムサヲ先生。推薦作1本目は『PLAN 75』。“良い意味で2度と観たくない作品”とはムサヲ先生の感想。映画を観てない人には“?”だが、映画観賞後なら思わず納得してしまう感想である。『PLAN 75』は日本の近未来を描いた作品だ。
 静かなピアノ曲が流れるなか、突然の銃声が響く! 若者が高齢者施設を銃撃するという衝撃シーンから映画は始まる。高齢化社会に絶望した若者の犯行だ。犯行後、若者は自ら命を断つ。その後、ある制度が国会で可決される。『PLAN 75』である。75歳から生死を選択できるという制度だ。早い話が75歳以上の高齢者に、生き続けますか、それとも安楽死しますかと究極の選択を迫る制度である。お金持ちで、思いやりのある家族がいれば長生きも悪くないが、お金もなく、頼れる親族もいない孤独な老人は?
この作品は4人の登場人物の目から見た“PLAN75”である。
 ミチ(倍賞千恵子)は、78歳。夫とは死別し、身内はいない。仕事はホテルの客室掃除。『PLAN 75』に直面する老人である。
 ヒロム(磯村勇斗)は、困窮する老人たちに死を推奨する役所の、申請窓口の担当者だ。
 瑶子(河合優実)は“PLAN 75”のサポート業務を担当するコールセンターで働く若い女性だ。
 マリア(ステファニー・アリアン)は身寄りのない高齢者の世話をする出稼ぎ外国人労働者である。
 物語は“PLAN 75”に関わるこの4人の苦悩と悲しみを静かに、丁寧に描いていく。
 仕事を失い、住む場所を失ったミチは、役所の相談窓口に行く。生活保護を勧める役人に“もう少し頑張れるんじゃないかと思う”と言って断るミチ。今までもなんとか自分でやってきた自負心があるのだ。だが、歳と共にそれも失われていく。
 ヒロムが担当する窓口に、行方知れずだった叔父が現れ“PLAN 75”を申請する。老人たちに優しく費用のかからない合同プランを説明する彼も、叔父に接して彼の過去を知ると動揺を隠せない。
 死を選んだ老人たちの話し相手が仕事の瑶子は、ミチの昔話や彼女の優しさを知るとやはり平静ではいられない。
 貧しい国から娘の治療費を稼ぐため日本にやってきたマリアは、豊かだと信じていた国の孤独な老人たちの現状に悲しみを覚える。
 どうにもならない老い。それをこのような形で観るのは、老人はもとより若者にとっても辛いものだ。だが若者が子供の未来だとすれば、忘れがちだが、若者の未来は老人である。“良い意味で2度と観たくない”というムサヲ先生は、“PLAN 75”のような制度が生まれるような世界は否定したいのだと思う。だが、それでもこの映画を観る価値はある。自分が望む人生や世界を考える機会になるから。そしてそれが早川千絵監督の意図するところなのではないだろうか。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『わたしを離さないで』
こちらも肉体と精神に関する辛いお話。原作はカズオ・イシグロ。

 

『PLAN75』

発売中
DVD:4400円(税込)
ブルーレイ:5500円(税込)
発売元:ハピネットファントム・スタジオ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング

 

●TITLE『望み』
キミだったら、何を望む?

 ムサヲ先生、推薦作2本目は『望み』。こちらも『PLAN75』と同じくヘビーな作品だ。ムサヲ先生の映画の好みは予想に反して(つい恋愛モノかと)ハートにガツンとくる作品だったのですね。
 建築士の父親・石川一登(堤真一)、フリー校正者の母親・貴代美(石田ゆり子)、高校生の兄・規士(岡田健史)、中学生の妹・雅(清原果耶)からなる石川家は、傍目からは幸せそのものに見える家族である。父親・一登の設計したおしゃれで機能的な家に住み、理解のある両親の下で兄妹は何不自由ない生活を送っている。そんな石川家に影を落としているのが、最近の規士の生活態度だ。
 サッカー選手を目指し部活に励んでいた規士だったが、試合中に膝を痛め部活をやめて以来、無断外泊をするようになったのだ。
 そんな息子を、目標を失った若者の一時的な反抗と考えた両親は、心配しながらも責めるようなことはしなかった。
 そんなある日、規士の同級生が殺害されたというニュースが飛び込む。規士が帰っていないことを心配する一登と貴代美が、警察へ連絡しようかと迷っていた矢先のことだ。
 2人が警察へ行くまでもなく、刑事2人が石川家にやってくる。何も聞かされないまま、刑事たちが聞いてくるのは息子・規士の近況や様子ばかりである。
 殺人現場で2人の少年が逃げたという目撃談が発表されると、世間の目は一気に石川家に向けられる。幸せな家族が一転し、加害者の家族に。連日のマスコミ攻勢、近所の冷たい目、見知らぬ人たちの攻撃にさらされ、確かな証拠もないまま、世間から有罪判決を受ける石川一家。
 固い絆で結ばれているように見えた家族だったが、行方不明となっている規士に対する“望み”は三者三様である。母親は、息子が加害者でもいい、生きていてほしい。父親は、息子が無実であってほしい。妹は密かに兄に被害者であってほしい。だがそれらの心の裏には、息子が加害者であったなら、自分は耐えられないことが母親には分かっており、息子が無実であれば、社会から貶められることはないと考える父親がおり、自分の未来に傷をつけたくない妹がいるのである。
 その後、物語は意外な展開を見せるが、それは観てのお楽しみ。原作が『犯人に告ぐ』、『検察側の罪人』で知られる雫井脩介のベストセラー作品の映画化ならではだ。
 日々、伝えられるニュースの被害者と加害者。関係のない人にとって、それは単純な善と悪であるが、人はもっと複雑な存在だ。『PLAN75』も『望み』も、自分以外の他者という存在に深く迫った衝撃作と言えるのではないだろうか。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『検察側の罪人』
雫井脩介原作映画をもう1本。

 

『望み Blu-ray 豪華版(特典DVD付)』

発売中
ブルーレイ:6380円(税込)
発売・販売元:KADOKAWA

 

●TITLE『愛しのローズマリー』
キミは女性の何を見る?

 7月号の推薦者2人目はムサヲ先生担当の吉村くん。1本目は『愛しのローズマリー』だ。監督は過激でおバカな映画を得意とするファレリー兄弟。
 最近よく耳にする言葉“ルッキズム(外見至上主義)”。乱暴に言ってしまうと、人は外見が全て。これを聞いて大抵の人は“いやいや、そうは言っても、人間中身が大事じゃね”と言うだろう。だがそれは果たして本音なのか?
 幼い頃聞いた父親の遺言がトラウマになり、美女ばかりを追いかけるハル(ジャック・ブラック)。その悪癖さえなければいいヤツで、職場の仲間からも好かれている男である。問題なのは“外見だけで女を選ぶな”と意見されても“基準が高いのはいけないことか”と猛反論するところ。とは言うものの“どんな基準だ! 美女を追うほどキミはハンサムじゃない”などと言う友人には、観客だって“じゃあ、ハンサムじゃないと美女に選ばれないのか”と反論したくなる。外見というのはなかなか手強いものなのだ。
 そんなある日、有名なカウンセラーと一緒に故障したエレベーターに閉じ込められたハル。2人で話すうちにハルが女性を上辺だけでしか見ていないことに気づいたカウンセラーは呆れるものの、ハルが悪い人間ではないことにも気づき“キミはいいヤツだ。キミにだけ特別に……”と、ある暗示をハルにかける。すると……、なぜかいろんな場所で美女とうまくいくようになるのだ! 夢のような状況にご機嫌なハルだったが、周囲の友人たちは不可解な反応を示すばかり。なぜなら、彼には美女に見える女性たちは、第三者から見ると、なんと言うか、美女というには程遠い女性たちばかりなのである。なんとカウンセラーの暗示でハルは心の美しい女性が美しく見えるようになっていたのだ!?
 そしてついにハルは運命の女性と出会う! 病院のボランティアで病気の子供たちの面倒を見るローズマリー(グウィネス・パルトロー)である。ハルの目には超美形の彼女だが、第三者から見ると体重は軽く100キロ超えの巨体。レストランに行くとほぼイスは壊れるし、(ハルから見て)細い身体にも拘らずめっちゃ力持ちである。ところがローズマリーがハルの勤める投資銀行の社長令嬢だったことから、話は微妙なことに。ローズマリーの父親はハルを野心的な男とみなし、友人たちは彼を最低だと怒る。果たしてハルの恋の行方は……!?
 誰もがわかっている“大事なのは心”。でも気になるのは“外見”。ちなみにローズマリーを演じたグウィネス・パルトローが、太ったローズマリーの姿で歩き回ったところ、かなり辛い目にあったそうである。なんだかなあ。だからと言ってハルの親友が主張するように“美女は愉快じゃないし、優しくないぞ!”って、美女=性格悪しと言うのもね。みなさん、どう思います? おっと、この映画は笑えてホロっとさせるいい映画ですよ。念のため。 


▼編集部オススメ、もう1本!
『メリーに首ったけ』
ファレリー兄弟監督作をもう1本。お下劣ですが爆笑間違いなし!

 

『愛しのローズマリー』

ディズニープラスで「スター」配信中
© 2023 Twentieth Century Fox Film Corporation.
 All Rights Reserved.

 

●TITLE『ターミナル』
巨匠と名優がタッグを組んだ心温まる物語。

 吉村くん、推薦作2本目は『ターミナル』。巨匠スピルバーグ監督作にして、名優トム・ハンクス主演のヒューマンドラマだ!
 ニューヨーク、ジョン・F・ケネディ国際空港の税関で入国手続きの列に並ぶクラコウジア人のビクター・ナボルスキー(トム・ハンクス)。ところがその彼に災難が降りかかる! なんと母国クラコウジアでクーデターが起き、政府が消滅。パスポートは無効に、入国ビザは取り消しになってしまう。アメリカへの入国もできないし、母国に帰ることもできない。空港に勤務する国境警備局主任フランク・ディクソン(スタンリー・トゥッチ)に言わせるとビクターは“法の隙間”に落ち込んでしまったのである。
 英語が分からないビクターは、事情も飲み込めないまま、国際線の乗り継ぎロビーで待つように言われる。だが、クーデターのような大事がすぐ収まることなどなく、ビクターは空港で何か月も暮らす羽目に!?
 ビクターのサバイバル能力がスゴイ! 持参したクラコウジア語に翻訳されたガイドブックに、オリジナルの英語版ガイドブックを照らし合わせて英単語を学習。ヒアリングはTVニュース。旅客用のカート返却で小銭を稼ぎ、器用さを買われターミナルの内装業を請け負うように!? さらに人の良いビクターは、空港で働く人々と仲良くなっていく。だがこれを面白く思わない男がいた。国境警備局主任フランクである。ビクターを入国させることも出来ず、拘束する権利もない彼は、なんとかビクターを空港から追い出そうとするのだが……。
 ターミナルには様々な人が働いている。やってくる人もいれば、去っていく人もいる。誰かを待つ人もいれば、何かから逃れようとする人もいる。映画はビクターとターミナルに集まる人々との交流を、愛情を込めユーモラスに描いていく。ターミナルで働く移民たちとの友情や不倫から逃げられないキャビンアテンダントとの短い恋に泣かされる。そもそもなぜビクターはアメリカ、それもニューヨークへやってきのか?
 クラコウジアは架空の国で、トム・ハンクス演じるビクターが喋るクラコウジア語はなんとトム・ハンクスのアドリブなのだそう。そのうえ舞台は狭い空港内のみ。それでも観る者は映画に引き込まれてしまう。さすが巨匠と名優のタッグである。
 ちなみに空港に長期滞在(!?)した人は現実にいたらしい。この作品の元になった難民証明書類を紛失したイラン人男性がフランスの空港に、日本人男性がロシアの空港に、中国人男性が成田空港に長期滞在したのだそう。みんないろいろあったんだろうね。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
スピルバーグ&ハンクスの映画をもう1本!

 

『ターミナル』

発売中
ブルーレイ:2075円(税込)
DVD:1572円(税込)
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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