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別マガ ムービーガイド『騙されたと思って1本!!』〜中村力斗先生編〜

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別冊少年マガジンで大人気連載中のコラム

『別マガ ムービーガイド』を大公開!!

 

週マガ編集部の映画担当が、漫画家さんや編集部員のオススメ映画を聞いて、それを紹介するコーナー!

 

今回は、2018年7月号に掲載された中村力斗先生編をお届けします!

 

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名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。

 

紹介された映画が気に入ったら、オマケで編集部のオススメのもう1本もご覧くださ〜い!!

 

 

今回の推薦者は、『超能力少女も手に負えない!』の作者、中村力斗先生だ!!(実子ちゃん、かわいい!!)

 

先生推薦の1本目は

 

『鍵泥棒のメソッド』

  

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ハート・ウォーミングなコメディである。 

 

中村先生、なかなかの映画通と見た!!

 

お好きな映画は?と聞いて、コメディ(オシャレだったり、ブラックなコメディじゃなくて、ハート・ウォーミングなコメディに限る)を最初に挙げるお方は、映画通が多いのだ。(個人的な経験からの発言です)

 

映画はいわゆる入れ替わりモノ。

 

ただし、男女や親子の、心と身体が入れ替わっちゃうといった、マジカルな話ではなく、単なる身分詐称・なりすまし系な話である。

 

 

物語は3人の男女によって展開していく。

 

売れない役者である桜井(堺雅人)は、トホホ感満載のダメ男。

 

おんぼろアパートで首つり自殺を試みるものの、失敗。やる気を失った(どんなやる気だ)彼は、財布に入っている全財産が1142円と銭湯のタダ券であることを確認すると、

 

〝しょうがない風呂でも行くか〟

 

同じ頃、凄腕の殺し屋コンドウこと山崎(香川照之)は、どっかの社長をナイフで手際よく始末したばかり。返り血がちょこっと手首に付いちゃったが、車の窓から銭湯の煙突が見えたもんだから、こちらも

 

〝風呂でも行くか〟

 

偶然、銭湯で一緒になった桜井とコンドウ。

 

ところがコンドウが足元に転がってきた石鹸(桜井のせい)で派手にスっ転んだことからお互いの運命が入れ替わる!?

 

というか、コンドウのロッカーの鍵を手にした桜井が、勝手に彼の荷物をもってっちゃっただけだが。

 

ところが病院に担ぎ込まれたコンドウはなんと強く頭を打ったことから記憶喪失になり、荷物(本当は桜井のモノ)から、自分が桜井という男だと思い込む。

 

さて、もう一人の登場人物だが、水嶋香苗(広末涼子)は、職場で

 

〝私、結婚することにしました〟

 

〝お相手は?〟

 

〝まだ、決まってません。これから探すのでご協力お願いします。希望は健康で努力家の方〟

 

などと宣言する、なんでもスケジュール通りにこなすのが信条の女性雑誌編集長だ。

 

 

3人とも微妙にヘンなのだが、そんなことに構わず話は進む。

 

桜井は山崎(コンドウは殺し屋の時の名前)の高級車に乗り、大金の入った財布から、借金を返してまわる。

 

昔の彼女が結婚すると聞き、号泣(やっぱダメ男)

 

山崎の様子を見に病院に行くものの、彼が記憶喪失と知り、ちゃっかり彼の高級マンションへ。そこで彼の裏の顔を知ることになる。しかもそこへ殺しの依頼が!?

 

いっぽう山崎は、すっかり自分が桜井だと思い込み、退院すると、桜井のアパートに向かおうとする。

 

その時に、病院の入り口で出会ったのが、父親の見舞いに来ていた香苗だ。

 

心細そうにしている山崎をおんぼろアパートまで送った香苗は、なんとなく山崎が気になってくる。

 

ここから話は、どんどんとんでもない方向に進むのだが、それはここでは言わない。

(だってこの映画に関しては、ネタバレしたくないだもん!!)

 

 

よく人の気持ちになって考えろと言われるが、そんなこと言われたって他人はしょせん他人。分かるはずないじゃん。

 

ところがその他人になってみると、意外なことに自分のことが分かってくるのだ。

 

他者からの視点で見ると、

 

自分て……。あんがい悪くないんじゃない。

 

そんなふうに思えてくる映画なのだ。

 

落ち込んだとき、ぜひ観てほしい。ちなみに映画のオチも最高だ!!

 

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中村先生2本目の推薦作は

 

『クラッシュ』

 

こちらは群像劇である。

 

群像劇。なにやら難しげな響きだが、超おおざっぱに説明すると、

 

ある特定の場所で(この映画の場合はロサンゼルス)、登場人物(多数)それぞれの物語が同時進行する。

 

と言った感じである。(う〜ん、分かりづらっ!)

 

 

この映画の舞台であるロサンゼルスは不思議な街で、どこが不思議かと言うと、歩いている人がいない。

 

住民はどこへ行くにも車。もちろん観光客が集まるようなところでは、人は歩くのだけど、基本、移動は車。500mくらいの距離でもである。(ホントの話)

 

そんな人とのふれあいがない街に住むのは、多種多様な人種と階層の人々である。

 

彼らは、不寛容で差別的で、お互いへの理解がない。

 

 

冒頭、ある殺人事件の現場近くで、交通事故を起こした2人が罵りあっている。韓国人とヒスパニック系の女性だ。

 

〝このメキシコ人のせいよ!〟

(実はメキシコ人ではない)

 

〝アジア人に追突された!〟

(いや、アジア人て、ここは国名を言おうよ)

 

 

レストランから出てきた黒人2人組。

 

1人はレストランでのウエイトレスの態度に文句を言っている。

 

〝注文は待たされるし、コーヒーのサービスは白人より少ない!! 差別だ〟

 

〝でも、彼女は黒人だよ〟

 

ともう1人。

 

そしていきなり2人は白人カップルの車をカージャックするのだ!?

 

 

車を盗まれたのは白人の検事とその妻。

 

〝検事が強盗に車を奪われたとマスコミに騒がれてみろ。しかもなぜ犯人は黒人なんだ〟

 

選挙前の彼は、黒人票を失いたくない。

 

あげく

 

〝そうだ! 黒人に勲章をやってそれを写真に撮ろう。キャンパーを助けた消防士がいたな〟

 

〝彼はイラク人です〟

 

と秘書

 

〝イラク人? 黒人に見えたぞ〟(おいおい)

 

彼の妻は、家の鍵を付け替えさせているが、錠前屋がメキシコ人なので不安になり、新たに鍵を付け替えようとする。家のメイドはメキシコ人である。

 

 

自分たちの店を何者かによって荒らされた中東系の夫婦は

 

〝アラブ人に間違えられた。私たちはペルシャ人なのに〟(そう言われても……)

 

だがその前日、ドアに鍵を付けるためにやって来たメキシコ人 の錠前屋から、ドアを修理するように注意されたにもかかわらず、メキシコ人のいう事は信用できない。

 

どうせ金目当てだろうとドアをそのままにしたために店に侵入されたのだ。

(どこまで信用ないんだメキシコ人!)

 

 

冒頭の殺人事件を担当する黒人の刑事は、母親の電話に、自分の同僚でありガールフレンドのことをメキシコ人と言うが、彼女は

 

〝父はプエルトリコ人で、母はエルサルバドル人よ。メキシコ人じゃないわ!!〟

 

ともう何が何だか……。

 

 

他にも人種差別主義の白人警官。その警官にセクハラされる黒人女性と、その場にいたにもかかわらず黙ってやり過ごそうとするテレビプロデューサーの夫。

 

いやな話ばかりである。

 

だが、映画が進むにつれ、登場人物たちのバックグラウンドが分かってくると……、ことはそれほど単純ではないことに気づく。

 

人種によって、誠実さや善良さに違いがあるわけではない。愛することも同じである。

 

登場人物の1人、黒人の警官がつぶやく、

 

〝人はぶつかり合う。でもロサンゼルスでは心がぶつかりあうことはない。でも、本当はぶつかって何かを実感したいんだ〟

 

深く、正しい映画である。

 

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(※この記事は別冊少年マガジン2018年7月号に収録されたものです)

 

 

中村力斗先生の作品がWEBでも読める!

▼『超能力少女も手に負えない!』第1話

 ▼『ヘッポコ勇者に戦略を』第1話

pocket.shonenmagazine.com

   

 

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(終わり)