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〜漫画家を目指すキミに贈る〜漫画家(プロ)への花道 安田剛士先生に聞く 読者の目を惹く画面作りの極意!!

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週刊少年マガジンに掲載された

漫画家(プロ)への花道を特別に大公開!!

 

今回は、2016年44号に掲載された特別企画をお届けします!

 

 

安田剛士先生に聞く

 

読者の目を惹く

画面作りの極意!!

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今回は、TVアニメも大好評放送中『DAYS』を連載中の安田剛士先生に〝読者の目を惹く画面作り〟というテーマで新人作家さんへのアドバイスをお聞きしたいと思います!

 

 

安田剛士

 

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第67回新人漫画賞・入選を『Over Drive』(読み切り版)で受賞しデビュー。

その後『Over Drive」(連載版)や『振り向くな君は』などの連載を経て、現在は『DAYS』を好評連載中! TVアニメも絶賛放送中!

 

 

 

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 「瞬間のリアリティ」を切り取り臨場感を作りだせ!

 

ーー安田先生が『DAYS』の試合中における描写で心がけている点があれば教えてください。

 

安田先生(以下、安田):一連の動作の〝瞬間のリアリティを切り取る〟ことを意識して描いています。

 

例えば、ある選手が別の選手にパスを出すシーンを描く時、注意するのはパスを「受ける」側の選手の動きや体勢。

 

さらに言うとパスを受ける直前の姿勢が大事。

 

選手が次の動作にスムーズに移れるのか、逆にもたついてしまうのか、その時点での体勢に大きく依存してきます。

 

瞬間のリアリティを切り取り、細部まで嘘を付かずに描写する。そうやって、試合の〝リアルタイム感〟を演出するよう心がけています。

 

 

ーーリアルタイム感を出すことで、どういった効果が画面上に現れるのでしょうか?

 

安田:スタジアムで実際に観戦しているような臨場感が生まれ、一連のシーンや出来事に説得力が増すと思います。

 

先ほどのパスの受け手の話で言うと、「しっかりと準備体勢に入っている絵」を描いておくことで、「上手くパスを受ける→チャンスにつながる」という流れを過剰な説明なしで表せる。

 

ある結果に至るための根拠となる瞬間を切り取って描くことで、読者の方も違和感を覚えることなく場面を追うことが出来ると思うんです。

 

 

ーーなるほど。「瞬間を切り取った絵」と聞くと、単行本15巻の水樹がロングシュートを放った場面(※画像①)が思い浮かぶのですが、このシーンでも同じようなことを意識されたのでしょうか?

 

安田:そうですね! シュートに関する動作は、特に自分でもこだわって描いているところです。

 

これは個人的な好みでもあるんですが、ボールを蹴り終わった選手がシュートを撃っている体勢のまま動かない、というのが我慢ならなくて(笑)。

 

シュートを撃っている瞬間、シュートを撃ち終わった瞬間には、それぞれ別のモーションがあるはずで、決して同じ体勢にはならないんです。

 

跡り終えたボールがこの位置にある時、この画面上の映像はその瞬間を表すものであってほしい。

 

そう思って、このシーンでは、「ボールを蹴り終わった水樹が反動で浮いている」という絵を採用しました。

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画像①:単行本15巻58P・59Pより

水樹がシュートを撃ち終えた「瞬間」を切り取った一枚。ボールを蹴った後の姿勢を描くことでリアルタイム感を演出している!

 

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安田:試合中の選手を描く際には、録画した試合の映像をひたすらストップ&再生し、「カッコいい!」と思ったポーズが見つかるまでそれを繰り返します。

 

当たり前かもしれませんが『DAYS』は高校サッカーが題材なので、資料としては完成されたプロのアスリートの映像よりも、選手として発展途上である高校生の方が参考になります。

 

身体の軸のブレから躍動感などが生まれる分、リアリティが出せますしね。

 

 

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見開きには「意外性」を持たせよ!!

 

ーー画面にインパクトを与える技法というと〝見開き〟が思い浮かびますが、 先生が見開き絵を描く時に気を付けている点があれば教えてください。

 

安田:それほど特別なことではないかもしれませんが、見開きを入れる際は、「意外性」を重視するようにはしています。

 

実力のある選手が実力通りのプレーをするシーンや順当に主人公が活躍するシーンなど、「当然見開きでしょう」というところをそのまま見開きにしても、読者には普通の大きい絵としてしか受け入れられない気がしていて。

 

そういった場面よりは「え!ここを!?」という感じの意外性のあるシーンを見開きにすることが多いです。

 

なんでしょう、〝びっくり見開き〟とでも言うんですかね。

 

 

ーーなるほど、〝びっくり見開き〟ですか。具体的にはどのような効果があるのでしょうか?

 

安田:単純に、読者の心を掴むことが出来るのかなと。

 

何かに驚くということは、心が動かされているということ。

 

つまり「感動」の一つだと思うんですよね。

 

 

ーー最近の『DAYS』の見開きでは、本誌39号で生方の手をつくしが払ったシーン(※画像②)に驚かされました。

 

安田:そのシーンもびっくり見開きの一つですね。

 

この絵で気を付けたのは、つくしの動きを〝準備されていないもの〟として描くこと。

 

見開きに意外性を持たせるためには、「ここから何かやるぞ!」みたいな感じをなるべく出さないことも重要だと思っています。

 

直前の予備動作を削ぎ落とすというか。そうすることで、見開き絵が本来持っている画面のインパクトを最大限に引き出し、読者の方の予想を超えることが出来る気がします。

 

僕の中で見開きを入れるということは、2ページ分のコスト、つまり本来入れられたはずの情報量を支払っている感覚に近い。

 

ある意味リスクを負っているので、それに見合った効果を出せないと見開きをやる意味はないのかなと思っています。

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画像②:本誌39号P443〜445より(単行本19巻収録予定)

生方の手をつくしが払うシーン。つくしが普段温厚でること、つくしの「予備動作」を省いたことが相まって、意外性のある見開きになっている!

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単行本9巻114・115Pより

安田先生にとって印象深い見開きの一つがこちら。雑誌掲載時に「この流れ、この絵で2ページを持たせられる作家さんはなかなかいない」と編集長に褒められたとのこと。

 

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安田:この回は増ページでいつもより2ページ多かったので、思い切って描くことが出来ました。今見ると、腰のひねり 方と弾道が噛み合っていない気がしますけど(笑)。

 

 

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「密集した絵」と「全体を見渡す絵」を使い分ける!

 

ーー選手の位置関係など、画面上の情報整理で心がけている点はありますか?

 

安田:ピッチ全体を見渡す絵を要所要所で入れるようにしています。

 

ここで重要なのは、真上・真横からではなく、斜め上からのアングルで描くこと。

 

テレビのサッカー中継を観ると、大体斜め上からのアングルじゃないですか。これって、その角度から観るのが一番ピッチの状況を理解しやすいからなんですよね。

 

誰がどこにいるのか、ピッチで何が起こっているのか、読む側にとって状況を整理しやすい画面にするために斜め上からの構図を使っています。

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単行本17巻166Pより

ピッチの全景は斜め上からのアングルを使う!

  

ーーそれとは反対に、選手同士が激しく競り合うアップの絵も『DAYS』では目を惹きます。そちらに関して意識していることはありますか?

 

安田:競り合いの激しさ・迫力を出すためにコマの密集感を高めるようにしています。

 

画面いっぱいギチギチに選手の絵を入れてボールとキャラ以外の要素を排除することで、コマの中での密集度・密着度を演出する。単行本16巻のこの絵(※画像③)なんかもそうですね。

 

担当さんに「ガツンとした絵を入れてください!」と言われて描いた一枚です(笑)。

 

結果的にコマの中での密集度・密着度が高まり、競り合いの激しさを演出できたかなと。

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画像③:単行本16巻55Pより

画面いっぱいに二人を描き、余分な要素を排除した一枚。全身を使い激しく競り合っている様子がばちばち伝わってくる!

 

ーー安田先生は「密集した絵」と「全体を見渡す絵」の二つを使い分けているのですね。

 

安田:そうですね。やはり、その二つのバランスが大事なのかなと。

 

迫力を求めてアップの絵をひたすら描いていても、ただ見づらいだけの漫画になってしまうので、一定のペースで全体を俯瞰するような絵を入れるべきだと思います。

 

サッカーに限らずどんなジャンルの漫画であっても、本を開いた左右2ページの中に一つくらいは、登場人物がどこにいるのか分かるようなコマを入れておく。

 

そうすることで読み手も混乱せずに情報を整理することが可能になり、それが〝読みやすさ〟に繋がります。

 

それが確立された時に初めて、アップの迫力ある絵が効果的になり、読者の目を惹くのかなと。

 

 

新人作家さんへメッセージをお願いします!

 

安田:とにかく原稿を完成させてほしいです。

 

描いている最中に悩んだり、「もう無理だ!」と思うかもしれませんが、やはり一番大切なのは一つの作品を描き上げるということだと思います。

 

原稿が出来上がったら、持ち込み、もしくは賞に投稿してください。きっと編集者が的確なアドバイスをくれるはずです。

 

僕も初めて持ち込んだ頃は、「右から左へ描く」という決まりすら知りませんでした(笑)。

 

そんな僕も、担当さんと打ち合わせをして、ひたすらネームを作ってきた結果、こうして連載をしています。

 

もちろん大変なこともありますが、本当に面白いんですよ、漫画を描くのって。

 

ですから描く前、賞に出す前に諦めたりせず、まずは一作描き上げ、ぜひ新人賞に投稿して頂ければと思います!

 

 

(※この記事は週刊少年マガジン2016年44号に収録されたものです)

 

 

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▼安田剛士先生の作品がWEBでも読める!

・『DAYS』第1話

・『DAYS外伝』第一章①

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(終わり)