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人が死ぬ理由は5つある!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

世界中にヤマタノオロチ伝説!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

 三回目となる今回も『巨竜戦記』の本田真吾先生が「古事記」と「日本書紀」について知見のある松本直樹教授にインタビュー!

 

さらに、『巨竜戦記』1巻発売を記念した豪華プレゼント情報も公開しちゃいます!

 

美人を選んで死ぬことになった!?

人が死ぬ理由は5つある!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

本田先生:
松本先生、またまたありがとうございます! 前回のお話の最後にあった「死の起源神話」について詳しく教えてもらえたらと思います。

 

『巨竜戦記』も登場する人々が死んでしまう物語ですが、昔の人々は「人間はなぜ死んでしまう」と考えていたのでしょうか。

 

松本教授:
まずは選択型の典型でもある、『古事記』における死の起源からお話ししましょう。

 

アマテラスの子孫である天皇(天孫)はなぜ死んでしまうのか。地上に降臨したアマテラスの孫であるニニギに対して、オオヤマツミという山の神が、二人の娘を嫁がせようとしました。姉の名はイワナガヒメ、妹の名はコノハナノサクヤビメです。

 

しかし、ニニギは姿の醜いイワナガヒメを帰してしまい、美しいコノハナノサクヤビメだけを妻にしました。実はこの姉妹、妹のコノハナノサクヤビメは桜の花のような繁栄の象徴で、姉のイワナガヒメは岩のような長寿の象徴として嫁いだのですが、イワナガヒメが送り返されてしまったことで、ニニギの子孫の天皇が短命になったと書かれています。

 

世界における死の起源神話

本田先生:
ニニギが美人しか嫁にしたくなかったせいで、短命になってしまったということなのですね……。

 

その選択型神話というのはどういったものなのでしょうか。ペルセウス・アンドロメダ型神話のように、世界に似た形の神話があるということですか。

 

松本教授:
世界中に伝わっていた死の起源神話としては、処罰型、対立型、選択型、代償型、伝令型の5つの型が有名です。選択型は先ほどのコノハナノサクヤビメと同じ型で、バナナタイプとも言います。

 

◆選択型 

普遍のものと儚いもの、人は後者を選択したため、死ぬことになったという話です。インドネシアの神話では神が与えてくれた石とバナナのうち、人は石を拒否してバナナだけを食し、以来、石のように永遠に生きられず、バナナのように儚く滅びることになったと言われています。

 

本田先生:
なるほど、それでバナナタイプなんですね。

 

松本教授:
その他にも、

◆処罰型 

神の教えに反した罰として、死が与えられたというもの。こちらは「エデンの園の禁断の果実」などが有名ですね。

 

◆対立型

人の命は永遠であるべきだという神と、人は死ぬべきだという神が討論して、後者が勝利するもの。『古事記』にもイザナキとイザナミで似た場面が存在します。フィジーなどに伝承があります。

 

◆代償型 

何らかの重要なものを手に入れた代わりに、死がもたらされたという話。インドの神話では人の死は火を獲得した代償であるとされています。

 

◆伝令型 

初め、神は「人は永遠に生きるべきだ」とカメレオンに伝えるよう命じ、後に気が変わり「人は死ぬべきだ」とトカゲを使者に命じると、トカゲが先に人間界に着いたために人の死が決定してしまったという話など。こちらはアフリカに例が見られます。

 

といった感じですね。

 

人々はこうして死に向き合った!

本田先生:

地域によって傾向があるのも面白いですね。昔の人々が死の起源について、どのように考えていたのかはわかってきました。

 

ただ、それだけで人々は死を受け入れられたのでしょうか。現代の人でさえ死ぬのは怖いですし、どうしていたのか気になるのですが……。

 

松本教授:
生と死は循環するという考えが昔からありました。女神が死んで、その死体から食用植物が誕生したという神話があります。インドネシアの女神の名前からハイヌウェレ型神話と呼ばれていますが、『古事記』にも同じ型の神話があります。㆒つの死が新しい命を誕生させるという思想が読み取れますね。また、他界観にもそのことが伺えます。

 

例えば、沖縄や奄美では、海の彼方にニライカナイという世界があって、そこは祖霊の国、命の源郷であり、人は死ぬと再びそこに帰っていくという信仰があります。我々現代人だって、いつか生まれ変わることがあるかも知れないとか、死後の世界があるような感覚で、死を受け入れようとしているのかも知れません。自然科学で説明できることだけが、人にとっての真実ではないように思えてきますね。

 

本田先生:

なるほど、生と死の循環ですか。確かに現代の我々も、死については科学的な事実ではなく、精神世界に拠り所を求めている感じはありますもんね。今回のお話も、とても参考になりそうです。松本先生、ありがとうございました!

 

松本教授:
三回にわたって歴史ガイドを担当させていただきました。神話のこと、『古事記』のこと、精神世界のことなど読者の皆さまに知っていただく機会になれば幸いです。

 

記念すべき単行本『巨竜戦記』第㆒巻の刊行、本当におめでとうございます。これからも長く愛され続ける作品であるように応援しています!

 

世界中にヤマタノオロチ伝説!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

松本直樹
早稲田大学 教育学部 教授
【主な著書】
『古事記神話論』(2003年、新典社) 『出雲国風土記注釈』(2007年、新典社) 『神話で読みとく古代日本 古事記-日本書紀-風土記』(2016年、ちくま新書) 『わくわく日本書紀すごろく』(監修)(2016年、ナイスク) 『ゆるゆる古事記 今日も神さまはやりたい放題』(監修)(2019年、三才ブックス)

 

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世界中にヤマタノオロチ伝説!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

世界中にヤマタノオロチ伝説!? 『巨竜戦記』を2倍楽しむ歴史ガイド 第3回

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