あの時、自分の気持ちを最後まで伝えていたら……
相手の気持ちが分かるまで、何度も訊き続けていれば……
「もう一言」が足りなくて後悔したことありませんか?
本作は、第80回「週刊少年マガジン」新人漫画賞で「入賞」を受賞であり、大今良時先生のデビュー作。
2015年「このマンガがすごい!」オトコ編で1位、第19回手塚治虫文化賞新生賞を受賞し、2016年にアニメ映画にもなり、興行収入20億円を突破した作品です。
伝えるって、思った以上に難しい、もどかしいですよね。
自分の「聲」が相手の心にきちんと届くまでには、数えきれないほどのハードルがある……
「聲」という言葉は「声」の旧字だそうです。
「声殳」は石でできた楽器をつるし打ち鳴らす様子を、下の「耳」はその音が耳に届くことを表しているとのこと。
「伝える意志」と「聞き取る意志」があってこそ、聲は伝わるものなのかもしれません。
本作は筆者がコミュニケーションを振り返るきっかけとなった思い入れの強い作品ですので、「私はこう感じた」と個人的な解釈を交えながら紹介させていただきます!
いじめられっ子といじめっ子
退屈が大嫌いで、「退屈との戦い」を続けてきた、小学6年生の主人公・石田将也。
こんな息子がいたら毎日心配で仕方ない……
クラスに一人はいる、典型的なガキ大将タイプですね。
彼のクラスにもう1人の主人公、西宮硝子が転校してきます。
硝子は、耳が聞こえません。
硝子を“異質なもの”と認識した将也は、彼女に未知なる宇宙を感じます。
はじめは硝子に親切にしていたクラスのみんな。
筆談が必要な硝子を、だんだんと疎ましく感じていきます。
担任から、耳が聞こえないのは「仕方のないこと」と言われても……
将也はクラスの様子を伝えようと思っていますが、真意までは伝わらず。
あと一言……いや、二言、三言足りない!
結局合唱コンクールには音痴の硝子も参加し、結果は散々。
段々とクラスでいじめられるようになりました。
将也がいじめの先頭に立つも…
感情表現や、意思表示をしない硝子。
ほんとうなら、ここで硝子も自分の気持ちを伝えて良かったでしょう。
意思表示をしない硝子に、いじめは段々とエスカレート。
将也は硝子をいじめることを「退屈しのぎ」にするように。
先生が硝子を笑う場面もありました。
しかし硝子の補聴器が5ヶ月で8回紛失・故障。
校長先生も交え、いじめについて話し合いが行われました。
犯人はもちろん……
女の涙は強し…。
いじめのすべてが、先頭に立っていた将也のせいに。
今度は将也がクラスの皆からいじめられるようになりました。
伝わらない聲
ある日、上履きを捨てられた将也が、朝早くに登校して犯人探し。
そこで落書きされた机を拭く硝子を発見します。
この机、実は……
その後、同級生に殴られた将也の顔を拭く硝子。
そこで将也と喧嘩に。
はじめて硝子が感情をあらわにした瞬間でした。
この後、硝子は転校。
毎朝、硝子が拭いていたのは将也の机でした。
後でわかっても、どうしようもないんですよね…。
やっと伝えられた「聲」
「いじめられる側」となった将也は、周囲から孤立したまま小学校を卒業。
孤独のまま中学、高校へ進学します。
高3になり、ある覚悟を決めて硝子に会いに行きます。
そこでやっと伝えられた、将也の聲。
将也はこのときのために、手話も覚えていました!
実は2人が思っていたことは、同じでした。
将太がもうひと言、あと一歩を踏み込んだことで気づけた気持ち。
こういうことって、意外とあるものですよね!
孤立していた将也の周囲の人間関係も変化していきます。
高校生になったからといって、まだまだうまく伝えられない、伝わらない場面も。
これはきっと……大人でも、同じですよね。
私はそう思います。
自分は周囲にきちんと「聲」を伝えられているのか……これを機に、考えてみませんか?