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【第112回新人漫画賞締め切り直前特別企画】〜漫画家を目指すキミに贈る〜漫画家への花道 『黒猫と魔女の教室』金田陽介先生が新人漫画家の悩みを解決!

新人漫画家さん必見!! 今回は、第112回新人漫画賞締め切り直前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『黒猫と魔女の教室』の金田陽介先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!

 

読者が引き込まれる漫画の描き方!!
『黒猫と魔女の教室』金田陽介先生に聞く!

最後まで読みたくなる作品作りの極意!!

マガジンポケットにて『黒猫と魔女の教室』を大好評連載中の金田陽介先生に全力取材! 新人賞時代の経験から、最後まで読みたくなる作品作りの極意、さらにはおすすめの練習法まで全てを語る!

 

金田陽介先生Profile
『氷山』で第84回新人漫画賞佳作を受賞し、デビュー。2012年に「マガジンSPECIAL」にて『星天高校アイドル部!』を初連載。その後、2015年に「別冊少年マガジン」にてTVアニメ化もした人気作『寄宿学校のジュリエット』を連載開始。2017年には「週刊少年マガジン」へ移籍し、2019年完結。2022年3月から「マガジンポケット」にて『黒猫と魔女の教室』を連載中。

 

●極意1
自分の武器を見つける!!

――『寄宿学校のジュリエット』(以下、『ジュリエット』)から金田先生の作品の愛読者なのですが、佳作を受賞した新人賞の作品を見て驚きました。村から雪男と恐れられる主人公と村の女の子が、試練を乗り越え心を通わせるという、『ジュリエット』や『黒猫と魔女の教室』(以下、『猫魔女』)とはまた異なる王道ファンタジーですよね。この作品を描かれるにあたって、狙いはあったのですか?


 当時の担当さんと新人賞の受賞作を分析したときに、感動的な話の方が受賞しやすいのかもしれないと思い、話を作っていきました。
 僕は『美女と野獣』がすごく好きなので、化け物と美少女が心を通わせる話を作りたいと思いました。どんな化け物にしようかと考えた時に、雪男が題材の漫画を読んだことがなかったので、目新しさがあると思い、設定を思いつきました。


――当時の担当編集者とのやり取りで印象に残っていることはありますか?


 「武器になるものがあると強いと思う。例えば女の子が可愛く描ける、とか」と言われたことが印象的でした。当時は正直、女の子を描くことに全然興味がありませんでした……。バトル漫画などがもともと好きだったのもあって、女の子を集中的に練習することはなかったですね。
 そこから「(ヒロインについて)とりあえず勉強してみよう」と思い、アニメを見始めました。当時は『とらドラ』が流行っていたのですが、見たらすぐにハマってしまって(笑)。それがきっかけで、アニメや漫画に登場する女の子たちをたくさん模写するようになりました。
 模写のおかげもあり、『氷山』では担当さんから「ヒロインが可愛い」と褒めてもらい、「女の子が自分の武器になるかもしれない」という思いが強くなりました。


――金田先生の描く可愛い女性キャラには、そんな原点があったのですね。


 他にも、担当さんとのエピソードではないのですが、新人賞の受賞式で久保ミツロウ先生からいただいた言葉も印象に残っています。
 『氷山』にヒロインが入浴しているシーンがあるのですが、「このシーンをもっと大きく見せて、読者を楽しませてあげないと!!」とアドバイスをいただきました。それまでは、自分の表現したいことをアウトプットすることにだけ意識が向いていたのですが、久保先生のアドバイスで視野が広がりました。読者がどんなシーンを楽しんでいるのか、求めているのかを考えて作品を作ることが大事だと気づかされました。

 

▲「入浴シーンをもっと大きく」と伝えられたページ

 

●極意2
読み切りはシンプルに!!

――佳作受賞まで多くの読み切りを描かれてきたと思うのですが、読み切りを描く際に意識すべきことはありますか?


 読み切りで大事なことは、要素を足しすぎない、シンプルにすることだと思います。読み切りで話が二転三転すると読みにくくなります。何が描きたかったのか伝わらない作品になってしまうんですよね。当時は僕もよくなりました(笑)。
 読み切りの時に担当さんに、「キャラは多くても4人、できれば2人。人数が少ない分、ちゃんとキャラを描いて、展開は分かりやすさを意識した方がいいと思う!」と言われ、その通りだなと思いました。キャラ数を絞るというのもそうなのですが、世界観もできるだけ絞って、必要な説明だけをする方が読者に伝わりやすい作品になると思っています。

 

●極意3
逆算で物語を考える!!

――佳作受賞後の初連載作『星天高校アイドル部!』(以下『アイドル部』)ではラブコメに挑戦されているのですが、これまでとは違うジャンルに挑戦したのには、何かきっかけがあったのですか?


 佳作を取った後もしばらく、バトルものやファンタジーもので連載案を考えていました。しかし、それがなかなか連載にならず困っていたんです。そんな時に、当時刊行していた「マガジンスペシャル」という雑誌で、新人作家の読み切りを載せ、アンケート1位の作品を連載にするという企画を知りました。いくつか考えた企画の一つが『アイドル部』でした。担当さんから「このラブコメの企画面白い!」と言われて、初めてラブコメを描くことになりました。


――金田先生がラブコメを描かれるまでにそんな経緯があったのですね。初のラブコメを描くこととなり、苦労したことはありましたか?


 描き方が全く分かりませんでした。どうやって話を終わらせればいいかさえ、当初は分かりませんでした(笑)。
 そんな僕の助けになったのが、当時のアシスタント先の渡辺静先生です。当たり前なのですが、読了後に「このヒロイン可愛い」と思えるシーンを描くことが、ラブコメの基本なのだと学びました。物語の見せ場となる可愛いシーンで、読者がキュンとできるよう、展開を構成する必要があるのだと学ばせていただきました。


――「読者がキュンとできるように展開を構成する」というのはどういうことですか?


 「話の中で一番可愛い場面」に向かって逆算して話を組み立てていく事だと思っています。
 『ジュリエット』の1話目でいうと、主人公の犬塚とヒロイン・ペルシアが剣でぶつかり合った時に、犬塚が突然告白するというアイデアが浮かびました。今まで敵視していた相手からの突然の告白に戸惑うヒロインを描けたら、可愛い場面になるのではないかと思い、そのシーンを1話のゴールに設定しました。その後はゴールに行き着くまでの展開を逆算しながら作っていきました。

 

▲読者を驚かした告白シーン

 

――逆算して展開を考える際に、大切にしていることはありますか?


 ゴールのシーンまで作品を飽きずに読んでもらう事が大事なので、読者の興味がわくような「フック」となる要素を入れるようにしています。特に冒頭は力を入れて作っています。
 「読者は3ページで飽きる」という言葉がありますよね。僕自身、漫画雑誌を読んでいる時、冒頭3ページくらいを読んで、面白くなかったら読むのを止め、別の作品までページを飛ばします。そうならないよう、作品を作る際には最初の3ページに「フック」を入れるようにしています。
 冒頭は、世界観の説明などをつい入れたくなりますが、それは読者の興味を引いた後に入れるようにしています。
 『ジュリエット』の1話目冒頭は、ペルシアの大きいコマと共に、犬塚がペルシアに思いを寄せているモノローグが入ります。直後、犬塚がペルシアに駆け寄り、ページをめくると、突然二人が戦い出すという流れになっています。
冒頭は、なるべく読者に興味を持ってもらえるような「好きな人と戦う」という意外性のある展開にしました。その後、世界観の説明を入れました。

 

 

▲1Pと見開きのギャップで読者の心をつかんだ1話冒頭

 

●極意4
キャラは矢印とギャップで魅力を作る!!

――キャラクターを考える際に意識していることはありますか? 


 キャラ同士の関係性ですね。「好き」「憧れ」「ライバル」といったキャラ同士の関係性について、「矢印」を交えて紹介する相関図があると思います。メインキャラに対し、他のキャラからの矢印をどう向けさせるか、常に考えながら作っていきます。
 『ジュリエット』に登場するスコットは、ペルシアに「恋愛」の矢印が向いていて、一方で、犬塚に対しては「ライバル」の矢印が向いています。また、『猫魔女』に登場する主人公・スピカのライバル・アリアは、スピカに対して「好き」という矢印が向いていて、逆にスピカは、よく揶揄ってくるアリアに対し「うざい」みたいな矢印が向いています(笑)。互いに矢印を向けあっているイメージです。
 矢印を作ってあげることで、キャラが非常に動かしやすくなります。逆に言えば、矢印の内容が決まらないと、キャラが上手く作れず、印象の薄いキャラで終わってしまいます。序盤からたくさん動いてもらうメインキャラは特に、矢印を念頭に作る方がいいかもしれません。


――なるほど。確かに矢印をどう向けさせるかを決めれば、キャラもより定まりそうですね。


 そうですね。一方で、最初から矢印を意識して作ることもあれば、物語が進むにつれて矢印が生まれてくるケースもあります。『猫魔女』に登場するスピカと同じクラスのハナは、そのパターンですね。周囲に対して無関心なキャラとして、序盤は登場していたので当然最初は、スピカにも矢印が向いていませんでした。
 しかし、物語が進むにつれ、ハナからスピカに「初めての友達」という矢印が向きます。この時は、矢印が生まれる瞬間を物語にしました。

 

▲ハナからスピカに矢印が向いたシーン

 

――キャラクターに魅力を与えるコツはありますか?


 ギャップが重要だと思います。『ジュリエット』を例に挙げると、犬塚は「男らしい見た目だけど内面は乙女」みたいなギャップを作り、ペルシアの方は「見た目はすごい乙女だけど、内面はサバサバしている」みたいなギャップをそれぞれ作りました。
 キャラ単体でのギャップはもちろんですが、「乙女な主人公」と「サバサバしているヒロイン」が対照的になるようにも作りました。二人の関係性にギャップを持たせるイメージです。
 ギャップが出ると、キャラに魅力が出てきます。まずはテンプレでもいいので、1人のキャラを決め、「そのキャラの逆って何だろう?」と考えていくと、魅力的なキャラを作りやすいと思います。


――話づくりの際にもキャラクターのギャップを意識することはあるのですか?


 そうですね。キャラのギャップが見えるようにストーリーを組み立てる時もあります。『ジュリエット』でサイベルというキャラのメイン回はそうでした。
 当時、サイベルにどうギャップをつけるか悩んだ記憶があるのですが、「こんなクールな人が、クマの柄が入ったパンツ(以下、クマパン)を穿いていたら、可愛いのではないか」というギャップを思いつきました。そこからは、いかにクマパンを魅力的に見せるか考えながら、ストーリーを作りました。ギャップは一気にキャラの魅力が増すと思うので、どうギャップを見せるかを常に意識しています!

 

▲ギャップを生みだすクマパン

 

●極意5
好きな理由を言語化する!!

――影響を受けた漫画はありますか?


 一番模写していた作品は『ローゼンメイデン』だと思います。特に『ジュリエット』は作風にかなり影響を受けているなと思います。『ジュリエット』の作中でよく花が散っている演出を入れていますが、まさに影響を受けた部分ですね。
 『猫魔女』を描く中で大きな影響を感じるのは『FAIRY TAIL』ですね。やっぱり魔法ファンタジーにハマったきっかけは『FAIRY TAIL』でした。他にも、『ガチアクタ』や『ダンダダン』からアクションシーンの勉強をさせていただいています。


――勉強とは具体的にどのようなことをされているんですか?


 僕はアクションシーンに苦手意識があります。それを克服するため、カッコいいと思うアクション場面を切り取り、分析しています。
 先ほど挙げた『ガチアクタ』や『ダンダダン』はかなり参考になっています。手前にあるものを極端に大きく描いているなど、構図が工夫されていて、奇抜な構図なのに分かりやすいんです。予備動作をヒキでちゃんと描いていて、迫力もある。一連の動作が分かりやすいです。
 漫画だけでなく、アニメもアクションシーンをコマ送りにして、写真を撮って動きを自分なりに分析しています。
 また、アクションシーンに限った話ではないのですが、「カッコいい」「面白い」と思ったものを漫画に限らず、すべて言語化するようにしています。映画を見て面白かったなと思ったら、パソコンにその映画のタイトル・あらすじを書いて、「ここが面白かった」とメモを残します。1回言葉にすると、自分が抱いた感情の理由に納得できるので、言語化するのはお勧めです。
 同時に、自分だったらどういう漫画にするかも考えます。面白かった題材を使ってどう描くかを考え、メモを残すようにしています。

 

●極意6
リアルを理解し漫画へと落とし込む!!

――模写もされていたという話もありましたが、おすすめの模写の方法などはありますか?


 できる事なら1ページ全部を模写するといいと思います! 絵柄だけでなく、コマ割りなど多くのことを学ぶことができるので。恥ずかしながら、僕はなかなかできていなかったのですが……(笑)。
 あとは、写真をよく見て、現実の髪の流れや服のしわ、人体の構造などを理解した上で、他の漫画を模写するといいと思います。リアルなものを見て描くだけだと、ただのリアルな絵になってしまいますが、リアルを知った上で、他の漫画ではどのように二次元へと変換しているのかを学ぶことが大切なのかなと思っています。僕自身、漫画だけを模写していた時に比べ、表現力を高められていると実感しています。
 写真の他にも、ドールやマネキンなどを参考にしています。デッサン人形のような小さい物よりも、大きいドールやマネキンがお勧めです。服のしわなどがリアルに見えるので、それを元に作画をすることが多いです。


――最後に新人漫画家の読者に向けてメッセージをいただけると嬉しいです!


 皆さん当然、「自分が面白い」と思うものを描くと思いますが、どういうシーンを入れたら、読者がいかに喜ぶか、驚くかといった意識をしてほしいです。視野を広げて作った方が、より読者に届く作品を描けると思います。
 一方で今回、特別審査委員長をさせていただく身としては、売れるかどうかは関係なく、これまで読んだことのない新しい作品が読めたらという気持ちもあります。頑張ってください!!


――本日はありがとうございました!

 

『黒猫と魔女の教室』はマガポケで大好評連載中!

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第112回新人漫画賞
特別審査委員長は今回のインタビューを受けてくださったマガポケにて『黒猫と魔女の教室』連載中の金田陽介先生!!

締め切りは2024年3月31日必着! ご応募お待ちしております!!

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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