「マガポケ」に新たなNTR旋風を巻き起こしている『グラぱらっ!』
主人公の隅田忍(すみだ しのぶ)は、新人グラビアアイドル・葛木(かつらぎ)さくらの大ファン。さくらをストーカー男から守ったことがきっかけで、彼女と同棲生活を始めることに。
人気グラドルを目指すさくらの力になろうと奮闘する忍ですが、スケベカメラマンや悪徳マネージャー、枕営業を斡旋するグラドル友達など──業界の“闇”は容赦なくさくらに襲いかかってきて……!?
今回は『カラミざかり』でNTRを世に広めた原作の桂あいり先生と、『キスしてくれなきゃ死んじゃう』で読者をときめかせた作画の西木田景志先生に特別インタビューを実施! 『グラぱらっ!』制作秘話からNTRに対する想いまで、たっぷり語っていただきました。
●桂先生と西木田先生が一番影響を受けた漫画は……?
──桂先生と西木田先生が漫画家を目指したきっかけについて教えてください。
桂あいり先生(以下、桂):
ありふれた理由なのですが、小さい頃から絵を描くのが好きで、絵を描く仕事がしたいと思っていました。漫画家になる前は、イラストレーターとして雑誌の仕事をしていて。そのときにたまたま漫画家の方から週刊連載の大変さを聞き、自分には絶対ムリだと諦めていたのですが、なぜか漫画のお仕事をいただく機会が増えてきて……。気づいたら漫画家の仕事がメインになっていました(笑)。
──西木田先生はいかがでしょうか?
西木田景志先生(以下、西木田):
桂先生と同じく、小さい頃から漫画が好きで、自由帳にいつも絵を描いていました。漫画の専門学校に入ってから持ち込みを始めたのですが、マガジン編集部さんがすごく優しくて、ここで漫画家になろうと決意したのを覚えています。
──優しく、というのは……?
西木田:
新人なので当たり前ですが、作品の中で修正すべき箇所がたくさんあるんですよね。ですが、最初は指摘されることに慣れていないため、編集さんの意見が刺さるんです(笑)。そんな中、マガジン編集部の編集さんは褒めて伸ばしてくれて。心が折れることもなく、一生懸命やっていたらデビューまで漕ぎつけることができました。それで何度か読切を描いて、連載の話もいただくようになりました。
──漫画家を目指す中で、影響を受けた作品やご自身が好きな作品について教えてください。
桂:
人生で一番影響を受けたのは、紡木たく先生の『瞬きもせず』です。山口県を舞台にした学生の恋愛物語で、初めて読んだときに衝撃を受けました。あとは『AKIRA』とか『童夢』など、大友克洋先生の作品も好きです。
──桂先生の繊細な心理描写に、紡木先生の影響があるのは納得です。西木田先生はいかがでしょうか?
西木田:
僕は冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』、藤沢とおる先生の『GTO』が大好きです。桂先生とは反対に、少年誌の作品をたくさん読んできました。
●『グラぱらっ!』誕生のきっかけは、「グラビア愛」?
──本作が誕生した経緯について教えてください。
担当編集S:
私はもともとグラビアページの編集をしていたのですが、桂先生がグラビア好きなことを知り、「グラビア業界を舞台にしたお話を作りませんか?」と相談させていただいたのがきっかけです。
桂:
そこで、私からNTR系とハーレム系で2つの企画を提案して。最終的に、NTRとハーレムをミックスさせたグラビアアイドルの企画にまとまりました。
担当編集S:
それならラブコメ的な要素も増えてくるよね、ということで、ラブコメを丁寧に描かれる西木田先生にオファーさせていただきました。
──西木田先生はオファーを受けた時にどう思われましたか?
西木田:
お仕事の依頼はだいたいメールでくるんです。でも、『グラぱらっ!』の話は編集さんから電話でされて……ただならぬ雰囲気を感じました(笑)。
担当編集S:
西木田先生の『キスしてくれなきゃ死んじゃう』を拝見して、桂先生と「ぜひ西木田先生にお願いしたい」と話していたので、気合いを入れて連絡しました。
『キスしてくれなきゃ死んじゃう』
●グラビアの世界に“闇”はない ⁉
──桂先生はグラビア好きとのことですが、どのようなところに魅力を感じていますか?
桂:
グラビアは魅せ方のバリエーションがそれほど多くない表現方法だと思っています。基本的に衣装は水着ですし、メイクも髪型も攻めたものはできない。それでもそこに何かを賭けて、グラビアアイドルは身一つで戦っているわけです。その姿にかっこよさを感じています。
──作中では、ヒロインのさくらちゃんが人気グラドルを目指して業界の悪いオトナに翻弄されていきます。こうした業界の闇にスポットを当てているのは、理由があるのでしょうか?
桂:
私が作品をつくる以上、お色気シーンが求められます。それで、さくらが追い詰められるシチュエーションを描くために、業界の闇を描くことにしました。なのですが、グラビア業界関係者の方々に取材をしてみると、非常にクリーンな世界だと分かって……(笑)。
担当編集S:
そこはしっかり主張しておきたいですね!
桂:
ただ、クリーンな業界をそのまま描いてもNTRラブコメにはならないのが苦しいところで……。グラビアアイドルたちを応援したい、グラビアの世界にスポットを当てたいとの考えで始めた企画なので、私たちが頑張れば頑張るほど、グラビア業界の迷惑にならないか心配です(笑)。
担当編集S:
「どんな業界であろうとも、悪いことを企む人たちが潜んでいるかもしれない」というニュアンスで理解してもらえたらいいですね。
●世の男たちは、NTRから目を背けている……!?
──先生方が考えるNTRの魅力を教えてください。
西木田:
正直なことを言うと、子どもの頃はやっぱり純粋に嫌でした(笑)。だけど、大人になるにつれて、そそられるようになりましたね。「なにこれ……?」みたいな(笑)。
──自分の好きな子が他の男と致してしまうわけですから、NTRに惹かれるのは不思議なところがありますよね。桂先生はいかがでしょうか?
桂:
実は、私も昔は拒絶反応がありました(笑)。
西木田:
ええっ!? そうなんですか?
桂:
ただ、私は「NTRは普遍的なこと」だと考えています。ほとんどの高校生は、学生時代に好きだった異性と結ばれずに終わっちゃうと思うんです。例えば、クラスの好きな子に恋人がいたり、大学生と付き合っていることが分かったり。
西木田:
たしかに、そう言われると……。
桂:
好きな子が誰かとそういうことをしているのを考えないようにしているけど、だんだん非情な現実が分かってくる。それを受け入れ始めると、NTRが味わい深いものになる気がしています。
──その姿を密かに妄想したことがある人は多いのかもしれません。
桂:
だから、実はみんなネトラレているんです。『カラミざかり』に共感してくださる方が多かったのも、NTRの経験が普遍的なものだからだと思っています。「あらゆるエロの土台にはNTRがある」と言えますよね。
西木田:
「失恋」をその目線で見たことはなかったです。僕がNTRにドキドキした理由が分かりました。
担当編集S:
芸能人に対する屈折した想いが「オトナのNTR」じゃないか、という議論も交わしましたね。
桂:
好きな芸能人とはほぼ絶対に結ばれないから、その意味でも、世の男性たちはみんなネトラレているわけです。グラビアや芸能界を舞台にすれば、その「オトナのNTR」を描けるんじゃないかとワクワクしています。
●『グラぱらっ!』で読者自身にもNTR体験を
──今回、NTRラブコメに挑戦するうえで大事にしていることはありますか?
桂:
NTRを表現する上で大事にしているのは、「読者のNTR体験」です。登場人物の関係性だけでNTRが成立するかどうかは関係なくて。ヒロインのそういったシーンを見て、読者自身が「ヒロインをネトラレた」と感じる瞬間を作りたいですね。
──『カラミざかり』では序盤からストレートなNTRを描いていましたが、『グラぱらっ!』ではNTRを前面に押し出す場面は出てきません。なにか理由があるのでしょうか?
桂:
成年向けの『カラミざかり』は読切で、『グラぱらっ!』は連載なので、そこの違いはあるかもしれません。連載の場合、最初に大きなNTRシーンを持ってきてしまうと、物語を進めていく上での自由度が奪われてしまいます。それと、いきなりNTRに走ると拒絶反応を起こす読者さんもいると思うので……。少しずつに過激にしていけたらなと目論んでいます。
『カラミざかり ボクのほんとと君の嘘』(原作/桂あいり 漫画/御池慧)
──今は読者のNTR耐性をじっくり育てている段階なんですね。
桂:
少数先鋭のNTRエリートの読者さんに作品を届けるのも面白いのですが、せっかく『マガポケ』という幅広い読者層をもつアプリで連載しているので、なるべく多くの人をNTRで“脳破壊”したいですね(笑)。読者さんにはじっくり少しずつNTRに慣れてもらって、NTR免疫をつけてもらえれば嬉しいです。
──西木田先生がNTR作品を描くときに意識していることはありますか?
西木田:
僕はとにかく、桂先生のネームをどうすれば表現できるか考えています。本作のベースとして、水着や裸のセクシーさを引き出すことが重要だと思うので、女の人を魅力的に見せることには力を入れていますね。
●人気沸騰中のおじさんたち……!?
──桂先生、西木田先生のお気に入りシーンを教えてください。
桂:
私は忍が痛い目に遭っているところが好きなので、さくらのためにビラを撒くけど相手にされないシーンや、悪いマネージャーにぶん殴られるシーンがお気に入りです。
──西木田先生はいかがでしょうか?
西木田:
僕は“おじさん”が出てくるシーンが好きです。作中に出てくるおじさんが、みんないい“味”を出しているんですよ。例えば、1話に出てきたさくらちゃんのストーカーが「俺以外の男に触んなって!」と怒っていますが、普通に考えたらおかしいのに“味”がある(笑)。このおじさんたちの“味”は、絶対に作画で表現したいと思いました。
桂:
1話のストーカーは、西木田先生の描き込みに熱量を感じて印象に残っています。おじさんに“味”を感じていただいたのが分かって、腑に落ちました(笑)。
西木田:
あと、さくらのマネージャーもいいですよね。マネージャーがさくらをAVデビューさせようとする話で、「男優が足りないから自分がやる」と言ってマスクを被るんです。こんなマネージャーがいたら最低なのですが、悪いおじさんの“味”がよく出ていて好きですね。
桂:
おじさんといえば、ミスコンのライブ配信審査でのエピソードで、ムーたんという多額の投げ銭をするおじさんが出てくるのですが、彼が意外にも読者さんから人気なんですよね。
担当編集S:
「ムーたんがんばれ」「ムーたんいいね」など、ポジティブなコメントが多数寄せられています。
西木田:
僕もムーたん好きですよ!
桂:
悪人ですが、なぜか嫌悪感を抱かずに済むのは、西木田先生がムーたんを面白がって描いてくれているからだと思います。その愛情が読者の方にも届いているんじゃないかなぁ。
西木田:
嬉しいですが、桂先生のネームの段階からムーたんは味のあるおじさんでしたよ(笑)。
●両先生の推しキャラは……?
──先生方の推しキャラは誰でしょうか?
桂:
お気に入りで言うと、トップグラドルの逢坂(あいさか)みおちゃんです。天真爛漫な子は、ネームを描いていて楽しい気持ちになります。
(※「逢」正しくは一点しんにょう)
──逆に、ヒロインのさくらちゃんはあまり感情を見せないタイプですね。
桂:
何を考えているか分からない子を出すことで、読者の方に想像を膨らませてもらいたい意図があります。読者の方もさくらに寄り添う登場人物のひとりとして、ストーリーを一緒に紡いでくれたら嬉しいです。
西木田:
さくらちゃんを描くときは、ちょっと弱々しくて守ってあげたくなる感じを出すよう、意識しています。
──西木田先生の作画から桂先生がインスパイアを受けることもあるのでしょうか?
桂:
あります! 西木田先生の絵を見て、「西木田先生が楽しそうだから、このキャラクターをもっと生き生きさせてあげたいな」とか、「こうしたら西木田先生に楽しんで描いてもらえるかな」と考えながらネームを作っています。
西木田:
そうだったのですね……! いつもありがとうございます!(笑)
──西木田先生が描いていて一番楽しいのはどのキャラですか?
西木田:
描きやすいのは、大人気配信者のチコちゃんです。チコちゃんの性格は僕の中で理解できる部分があるから、描きやすいんだと思います。なので、女の子ではチコちゃん、おじさんではムーたんが僕の推しになります(笑)。
●痛みがなければ何も手に入らない──? NTRの行方は……!?
──今後の展開について、見どころや注目ポイントを教えてください。
桂:
ミスコン編の後は、恋愛リアリティショー番組にヒロインたちが参加する展開も考えているので、ぜひ注目してほしいです。今までよりさらに過激なNTRを用意しているので、心して読んでもらいたいですね。
──ちなみに、夏祭りのシーンで『カラミざかり』の4人も出ていますが、再登場の可能性はあるのでしょうか?
桂:
あれはちょっとした遊びゴコロです(笑)。本格的に登場するかは内緒です(笑)。
──最近、『カラミざかり』のリメイク掲載がきっかけになったのか、『ギルティーサークル』や『デスティニーラバーズ』などでもNTR展開が描かれています。
桂:
そうなんですか! 最初「『カラミざかり』をリメイクしたい」とお話をいただいたときは、「正気かな?」と思いましたが、やってよかったです。パンドラの箱を開けたというか……講談社さんの懐の深さを感じますね(笑)。
──パンドラの箱が開いて、『グラぱらっ!』も飛び出してきたわけですね。それでは最後に、読者の方へのメッセージをお願いします。
西木田:
グラビアアイドルたちを魅力的に描かなければいけないプレッシャーはありますが、素敵な女の子を描くことが僕の仕事です。今後もかわいい女の子たちや、そんな彼女たちのNTRを楽しみに見てください!
桂:
「痛みがなければ何も手に入らない」という言葉があります。NTRに耐性のない方には苦しい表現があるかもしれないですけど、その先にはきっと何か得られるものがあると思うので、温かく見守っていただけたら嬉しいです。
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ぜひ周りの人にも教えてあげてください!