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完結記念座談会! 春場先生と担当編集が『五等分の花嫁』のすべてを振り返る

完結記念座談会! 春場先生と担当編集が『五等分の花嫁』のすべてを振り返る 

完結記念座談会! 春場先生と編集担当が『五等分の花嫁』の3年間を振り返る

*本記事は、一部『五等分の花嫁』の内容に触れるところがあります。ネタバレにご注意ください。

 

先週2月19日(水)発売の週刊少年マガジン12号で完結を迎えた『五等分の花嫁』。
その発売に先んじること一週間。2020年2月12日(水)、最終話の原稿を上げたばかりの春場先生を講談社にお招きして、3人の担当編集とともに作品について語っていただきました。
2年半にわたる連載の裏話や秘話、連載前のこと、今後の予定などを語りつくす、完結記念座談会!

 

参加者:
春場ねぎ先生
川窪(担当編集)
藤井(担当編集)
岩村(担当編集

 

――完結おめでとうございます。原稿作業はすべて終わりましたか?

 

春場先生:
二日前に最終話を描き上げました。しっかり休んだなという感じで今日は来ました。よろしくお願いします。

 

川窪:
二日でしっかり休めた?

 

春場先生:
一日でも休めただけで、いままでとまったく違いますから(笑)

 

(担当一同、自然と下を向く)

 

川窪:
そ、それは脳みそを空っぽにして休息できたという意味? それとも心が回復した感じ?

 

春場先生:
いつもと違う生活をしているなという感じが新鮮ですね。連載中とは脳の使い方がぜんぜん違う。最近ずっと体験していなかった時間を久しぶりに過ごしています。

 

印象に残っている打ち合わせ

――打ち合わせは毎週やっていたんですか?

 

春場先生:
はい。ネームを提出して、修正意見があればいただいて修正して、次回プロットの話をして、というルーティンでした。

 

――それぞれ、印象に残っている打ち合わせは?

 

岩村:
僕からいいですか。
僕は『五等分の花嫁』が人生はじめての打ち合わせだったんです。だから当然、一番覚えているのは、その最初の打ち合わせ。

 

川窪:
そういえばそうだった。

 

岩村:
新入社員で週刊少年マガジン編集部に配属されて、その日に「この新連載の担当に入ってもらうから」と渡されたのが『五等分の花嫁』のネームでした。4話目まで決定稿があって、初めての打ち合わせが5話目の初稿。

 

マガジンの打ち合わせはだいたい一番下の年次の担当からネームの感想をお伝えするので、僕が最初にしゃべったんです。めちゃくちゃ緊張しました。

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岩村が初めて触れたエピソード(第5話)は、風太郞の家庭教師初日。反発する五つ子をどうにかまとめようとする風太郞だが……

 

藤井:
ひと目でわかるくらい緊張してた(笑)。

 

岩村:
どきどきしながら感想をお伝えしたら、こんな、まだ何も知らないド新人の僕の意見まで、ねぎさんが真剣に聞いてくださって。漫画家さんってこんなに話を聞いてくれるのかって感動しました。

 

春場先生:
僕も岩村さんの最初の打ち合わせ、よく覚えてます。開口一番、「これまでの人生で読んだ中で、一番面白いラブコメです」って言ってくれた(笑)

 

岩村:
配属早々これが新連載になるって聞いて、新入社員ながらに「これでマガジンは安泰だな」ってマジで思いました。


入社した時の目標はマガジンで、ラブコメで、大ヒット作品を立ち上げることだったんですけど、しょっぱなからつまづきました。「これより面白いのはちょっと難しいぞ」って(笑)。

 

藤井:
で、岩村がこの調子だから、そのあとにしゃべる僕はめちゃくちゃやりづらいんですよ。すごい熱を込めて褒めるものだから、何を言うにも言いづらい(笑)

 

川窪:
何十話もずっとその調子だったなあ。

 

藤井:
岩村は毎週、ありとあらゆる語彙で「いかに今週ドキドキしたか」「いかに『五等分の花嫁』がこの世で一番面白いラブコメなのか」を語るんですよ。
ネームを読んで打ち合わせ室に移動して、席に座った後の第一声で「まだ胸のドキドキが止まりません」とか言わないじゃないですか、普通の編集者は(笑)。

 

川窪:
言ってた言ってた、めちゃくちゃ言ってた(笑)。あの岩村の誉め言葉、ねぎさん的には正直どうだったの?

 

春場先生:
もちろん嬉しかったですよ。
でも、「今まで読んだラブコメ」って言われると、比べられているものが大きすぎて戸惑いもありましたね。「そうなると僕が今まで好きで読んできた作品たちより上って思われてるのかなあ」って思うと、それがプレッシャーにもなって。

 

岩村:
げ、知らず知らずのうちにプレッシャーをかけてたんですね……

 

――藤井さんは?

 

藤井:
僕は毎回毎回がすべて印象深過ぎてちょっと……

 

春場先生:
ホントかなあ(笑)。

 

藤井:
(笑)
全体的な印象として、うまくいったときよりも、むしろ苦戦していたときのことをよく覚えています。特に、五つ子が新しい家に引っ越すあたりのくだり。

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七つのさよなら12(第50話)。「勉強を教えるだけじゃだめだったんだ」と気付き家庭教師を辞めた風太郞を五つ子が引き留めるエピソード。

 

春場先生:
そう、それ、そこ……(暗い顔)。
6巻の最後ですね。予定していた打ち合わせの時間内に終わらなくて、中断してアニメの脚本打ち合わせに参加して、そのまま会議室にとどまって打ち合わせを再開したんですが。

 

藤井:
中断してるから気持ちもちょっと切れちゃってるし、打ち合わせ⇒脚本会議の後だからみんな疲れてるし。

 

春場先生:
もう僕、半分寝てた(笑)。そしたら藤井さんがホワイトボードを使って色んなことを整理してくれたんですよね。

 

藤井:
キャラの感情の流れをひとつひとつ細かく追っていって、それぞれのキャラがどういう行動を取るのが正しいだろうって。

 

川窪:
一度「家庭教師を辞める」と言った風太郎が、どうやって五つ子のもとに戻るのか、その納得感が欲しかった。

 

春場先生:
風太郎からではなくて、その理由は五つ子側からしっかり提示しないといけないと思っていろいろ考えてましたね。

 

藤井:
ホワイトボードを使っての打ち合わせなんて、後にも先にもあんなことやったの、あの時だけだったなって。

 

――川窪さんは?

 

川窪:
俺は3話目かなあ。三玖の回。ここで、結構つまずいた。めちゃくちゃ話し合ったよね?

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五つ子の中で、いち早く風太郞に心を開いた三玖。「三玖の心の動きを描くのに頭をひねりました」(春場先生)


 

春場先生:
『五等分の花嫁』通して、打ち合わせの期間がもっとも長かったのが3話でした。まだペースが掴めてなかったっていうのもあるんですが、結局、1か月くらいやってたのかな。


いま思うといろんなところを直してたんですよね。結局、三玖の回は3話目と4話目を両方使って2話構成にしたんですが、最初は1話で全部やるつもりでネーム作ってました。それだけじゃなくて、一花が女優っていう情報も3話目に入れる予定でしたし。

 

それを、もっとゆっくり順番を追って読者に提示しようと思って、いまの形になりました。
とにかく序盤は展開を早めようとしていたんですよね。打ち切りが怖いこともあって、印象に残るシーンをどんどん読者に提示したかった。

 

川窪:
あと、3話で珍しく意見がぶつからなかったっけ?

 

春場先生:
3話目で三玖からの手紙をもらったときの風太郎のリアクションについて意見が割れて。

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3話で、三玖から屋上に呼び出された風太郞。ラブレターと思いこんで葛藤しているが、実際は……?

 

川窪:
そうだ。風太郎がヒロインのひとりである三玖からのラブレターをもらったときに、喜んでいいのかって話をした。俺は「喜ばない方がいいだろう派」で。

 

春場先生:
僕が「この場のノリだけなら喜んでもいんじゃないか派」でした。僕にとってはそんなに重要なことじゃなかったんですが、川窪さんはそこを重要視してて、平行線でした。

 

川窪:
作品通して、珍しく折り合いがつかなかったところでしたね。最後は年の功で説得した(笑)。

 

打ち合わせについて

――打ち合わせが難航することも?

 

春場先生:
序盤にちょっとあったくらいですかね。

 

実感として、2巻くらいまでは僕、川窪さん、藤井さん、岩村さんの持っているイメージがバラバラだった気がします。漫画の雰囲気というか、ノリとかテンポとかについて、思い描いている理想形がそれぞれ違うっていうか。それが、2巻くらいでぴたっときた。打ち合わせで言葉を費やさなくてもイメージが共有できるようになったというか。

 

そのころから打ち合わせは急激にスムーズになったんですよね。

 

藤井:
それは僕も同じタイミングで如実に感じてました。個人的な感想ですが、連載漫画としてはかなり早い段階でねぎさんのイメージを掴めたなって。

 

春場先生:
花火の回をやったのが大きかったと思います。あれで『五等分の花嫁』がどういう漫画なのかを、形にして表現できた。

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花火大会を五つ子と見るエピソード。このエピソードの前後で、春場先生と編集部員が持っている『五等分の花嫁』のイメージが揃った

藤井:
はっきりとした変化がそのあたりにあったのは、実感として強くあります。

 

岩村:
11話と12話は打ち合わせが秒で終わった記憶があります。一花の「あなたの生徒でよかった」回。

 

春場先生:
12話は覚えてます。唯一、ネームを提出するときに「傑作できました」って言って渡しました。

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春場先生が「傑作できました」と言った第12話の印象的なシーン。この後、一花の名シーンもアリ!

 

 

川窪:
自分で? 覚えてないけど、それはたしかに珍しいね。

 

春場先生:
実際、ネームの直しもなかったので、ほっとしました。そう言って渡して全ボツだと恥ずかしいから(笑)。

 

――春場さんの印象に残っている打ち合わせは?

 

春場先生:
本当に小さいことなんですけど、妙に記憶に残ってる連載開始前の打ち合わせがあります。
それまで打ち合わせでは五つ子のこと「この子」とか「彼女」って呼んでたんですが、ある日の打ち合わせで五人の名前を初めて口頭で伝えたんです。

 

そしたら次の瞬間からもう五人のことを名前で呼び始めてくれて、「いまの一瞬で五人分覚えたの?」って驚きました。「今まで自分のレベルに合わせて話をしてくれていただけで、すごく頭のいい人たちだったんだ、これはありがたいぞ」って(笑)

 

川窪:
やばい、そんなこと、ぜんぜん覚えてない(笑)

 

藤井:
記憶力がぜんぜんない、いまのエピソードと矛盾してる(笑)

 

春場先生:
あとは、そうですね、担当さんが3人ついてくれてるじゃないですか。「これは多勢に無勢だぞ」とは思ってました(笑)

 

藤井:
それ、わりと最初から言ってましたよね。

 

春場先生:
前の連載が原作付きで、担当さんも2人だったので2対2だったんですよ。それが今回でいきなり3対1になって。これは自分の意見をちゃんと言えるだろうかって。
実際は我慢しないで言いたいこと言ってたんで、気にならなかったですけど(笑)

 

川窪:
多勢に無勢じゃなかったらこうしてたのに、とかある? 本当はあそこはこうしたかったのに説得されちゃった、とか。

 

春場先生:
いや、本当に自分の好き勝手やってたら今より悪くなってた想像しかできないかな。
結果、好き勝手やってはいるんですけど、それは打ち合わせがあるからやれたことっていうか。

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川窪:
それは、どういう意味?

 

春場先生:
ネームの初稿を描く時に、「ここ、ちょっと変だな」って引っかかることはよくあるんですけど、「どうせ打ち合わせで指摘されるだろうから、今はとりあえずいいか」「その時に考え直せるしな」って思えるんです。

 

もしこれが、どんなネームでも「OK」って言われる環境だったら、ネーム描いてる時に考えなきゃいけないことが増えてた気がしますね。

 

――打ち合わせをそう利用してたんですね。

 

春場先生:
ひとりで考えてるより、話し合ってた方がアイディアも出ますし。
そこは担当さんたちを信頼してって感じですね。

 

 

公式Twitterについて

――逆に、担当さんたちに言いたいことは?

 

春場先生:
いつも迷惑かけてると思ってるんで、本当にないんですけど……。
あ、ひとつありました。TwitterのRT企画の時の無茶ぶり!

 

岩村:
ああー、本当に初期のころのですか?

 

春場先生:
それです。マガジンでCカラーをもらったんですが、五人分のカラーを描く余力がなかったんです。それで、Twitterで人気投票して、上位2名をカラーで描きますって企画をやってもらいました。

 

その時に、じゃあユーザーにRTをお願いするイラストを5人分描いてくれって言われて「あれ、それおかしくない?」って。

 

藤井:
もともと5人描くのが大変だからって理由ではじまった企画で、5人の絵を描くことになってる(笑)

 

春場先生:
その時は気づかなかったけど、いま思うと、あれ絶対おかしい。
それで上位2名の一花と三玖をカラーで描いたから、僕、結果、7人描いてる。
だったら最初から5人描いた方が楽だったんじゃないかって(笑)

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その五つ子のイラストはこちら!

 

川窪:
ホントだ!

 

春場先生:
ええー(笑)。

 

――『五等分の花嫁』は連載初期から公式Twitterが盛り上がってました。

 

春場先生:
ありがたいとしか言いようがないですよね。
でも、最初に漫画のコマを抜き出して、台詞を足して、毎日画像を投稿しますって言われたときは、これは……失敗するぞ……って(笑)

 

 

一同、笑い。

 

川窪:
需要がわからなかった?

 

春場先生:
これをやって喜ぶ人がいるんだろうか、宣伝につながるんだろうか、普通に無視されて終わるんじゃないかって悪い予感ばかりして。
でも、やってくれるならありがたいじゃないですか。だからお願いしますって言ってはじめてもらったら、読者が喜んでくれた。

 

川窪:
あれはずっと、岩村が中の人をやってくれてた。

 

岩村:
連載がはじまったとき、キャラクターが分かりづらいっていう声が意外とあったんです。
僕は完璧に見わけがついていたのでちょっと信じられなかったんですが、それならキャラ付けをTwitterで認知してもらいたいなと思ってはじめました。

 

月~金曜日、それぞれの曜日に五人を割り振って、キャラを把握しやすいような台詞を足していくことで、読者に認知してもらいたいっていう意図でした。

 

川窪:
反響あったよね。

 

岩村:
コマ画像がひとり歩きして、読んだことないけど見たことある、みたいな状態を目指してました。じわじわ広まるといいなって思ってはじめたんですが、意外とすぐに広まってくれ、これはいよいよすごい作品になるぞ、と。

 

川窪:
後輩を褒めることになるけど、あの作業を2年間欠かさずやってたっていうのは、実はすごいことだよね。
岩村はグッズの監修とか書店さんへの通信とか記事とかも一手に引き受けてくれてて、本当に大変だったと思うけど。

 

岩村:
忙しくなるのはうれしい悲鳴ですから(笑)

 

思い出の回とアニメ

藤井:
12巻の収録分くらいからネームに苦労されていましたよね。

 

春場先生:
そのあたりから終わりを意識して作らなきゃいけなくなったからでしょうね。
これまでの流れを踏まえたうえでの話になるので、やらなきゃいけないことが多い。それをうまく形にしなきゃいけない。

 

これはもう、ただ楽しいことだけやっている場合じゃないぞっていうプレッシャーが筆の進みを遅くしました。

 

川窪:
思い出の回っていうと7巻の最後「最後の試験」編、この作りはこれまでの漫画の中でも斬新だったんじゃないかって思う。
最初からこの形でしたっけ?

 

春場先生:
三か月で、まず三玖が賢くなって、次に、その次にって五つ子が順番に賢くなっていく予定だったんです。

 

川窪:
そうだ。でもそれだと、単純に3か月を5で割って、三玖が3週間くらいで賢くなっちゃう。もともと勉強のできなかった子が3週間で成果を出すって、ちょっと変じゃないかってことを気にしてたよね。

 

春場先生:
その予定で三玖のネームを描き上げたんですけど、納得はできてなくて。
それで打ち合わせの際に「同じ時系列を5人バラバラに描いていくのはどうですか」って言った。
それなら五人全員が3か月かけて賢くなっていくっていう形で描けるなって思ったんです。

 

藤井:
僕たちも、聞いた瞬間に「それはすごくいいアイディアじゃないか」って思ったので、すでに完成していた三玖のネームを、時系列に合わせて修正してもらう方向になりました。

 

春場先生:
あの時、あの方法を思いつかなかったら7巻の内容はずいぶん変わってたんじゃないかなあ。

 

川窪:
こんな作りの漫画、なかなかないよね。すごいことだと思う。構成にこだわりを感じる。 

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「○○の場合」、そのとき何が!? 第55〜59話では、同時系列で五つ子それぞれを追っていきました。

 

春場先生:
とにかく読者に退屈してほしくなかったから、手を変え品を変え、いろいろやりましたね。驚いてもらえたら、っていう気持ちはずっと持ってます。

 

――2019年1月にアニメ化されました。

 

春場先生:
嬉しかったですね。悲願だったので。
実は漫画もずっと、アニメを意識して作ってたんです。

 

藤井:
この話、僕らも、アニメが決まった後に聞いたんです。

 

春場先生:
特に4巻くらいまでは、1クールでアニメ化するならこのくらいの話数で、こういう展開が必要だろうって考えて構成してましたね。

 

だから4巻に温泉回が入ってるんです、これはアニメ後半のご褒美回だなって思いながら描いてました(笑) 

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第24話結びの伝説初日は、春場先生がアニメを意識して入れたサービス回。

 

川窪:
アニメの構成会議のときにも、「この回とこの回はセットでどうですか」って提案したり。

 

春場先生:
もともとそうしてもらいたくて描いてたので。

実際、希望通りの構成にしてもらえていて、嬉しかったです。
ちなみに、8巻にまた温泉回があるのは、二期があった時にもちゃんとご褒美回が欲しいと思ったからです(笑)

 

二期がどこまでやるかわからないけど、単純に計算して、4巻に入れたんだから、8巻に入れておけばいいだろうって。

 

担当から見る「春場ねぎ」

――連載前の春場さんの印象は?

 

川窪:
はじめてねぎさんと仕事をさせてもらったのが『煉獄のカルマ』という作品でした。これはネーム原作者が別にいて、ねぎさんには作画をお願いしていたから、『カルマ』が終わって打ち合わせをはじめるまで、ねぎさんのオリジナルネームを読んだことが一度もなかった。

 

だから、その時点での評価は「無」。良くも悪くも、どういう作品やストーリーを描く作家さんなのか、まったくわからなかったから。

 

藤井:
僕らがはじめて読んだねぎさんのオリジナルのネームも、『五等分』じゃないですし、ラブコメでもありませんでしたし。

 

川窪:
たしか、教師ものだったよね?

 

春場先生:
教師もので、ジャンルはサスペンスでした。

 

藤井:
これ、ねぎさんの前で言っていいことかわからないまましゃべっちゃいますけど、その教師もののネームを読んだ時の川窪さんの感想が印象深くて覚えてます。

 

川窪:
え、なんか言ったっけ?

 

藤井:
編集部で僕にだけぼそっと「とんでもない才能を見たな」って。川窪さんの中でねぎさんが「すごいネームを描く作家さん」になったのって、あの時じゃないんですか?

 

春場先生:
初耳!

 

川窪:
いや、それもまったく言った覚えがないんだけど(笑)、でもそんなに褒めてるならどうしてあの教師もの、形にならなかったんだろう?

 

春場先生:
あれは企画の根幹にちょっと難しい設定があって、扱いきれなくなって途中で断念しました。

 

川窪:
めちゃくちゃ覚えてるね、俺と違って(笑)

 

春場先生:
描いてる側だから(笑)

 

 

幻の連載案について

――それぞれにハッピーエンドがある、マルチエンディングを望む声もありました。

 

岩村:
実は議題に上がったことはありましたよね、打ち合わせの雑談程度で。

 

春場先生:
ありましたねー。

 

岩村:
全員分のルートっていうんですか、それを描くとなると、それまでに描いてきたすべてが無意味になる、という当たり前の理由で採用されませんでした(笑)

 

川窪:
そもそも最初に企画を聞いた時から、「小学生の頃、修学旅行で出会った女の子を探しているんだけど、五つ子で誰かわからない」って話だったから、ひとりに決まるのは当然だと思ってた。

 

1話目で結婚してるし、日本の法律上、五人と結婚できない以上は、そりゃあ誰かひとりと結ばれるんだろうって。

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『五等分の花嫁』はここから始まった。風太郞は誰と結ばれた?

 

藤井:
最初に連載会議に提出したネームは、最初から小学生時代のエピソードを描いていって、1話目の終わりに高校生になっている、っていう構成でしたね。

 

春場先生:
けど、それだと1話目のラストで急に主人公が出てきたような気持ちになって感情移入できないって言われたんですよ。だから、1話目から高校生にしようって、今の形になった。

 

川窪:
すごい覚えてるね。

 

春場先生:
言われた側だから(笑)

 

――今の形になる前に、何パターンくらいのネームが?

 

春場先生:
同じ『五等分の花嫁』の企画という意味なら、細かいのも合わせると5パターンですかね。ネームの形になったのは3パターン。

 

藤井:
最初はシェアハウスでしたっけ?

 

川窪:
それもぜんぜん記憶にない。シェアハウスってなに? どんなやつ?

 

藤井:
うそでしょ……

 

春場先生:
主人公が家を追い出されるんです。どこにも住むあてがなくて、ようやく格安物件が見つかったと思ったら、家主の五つ子と共同生活だと言われる。シェアハウスだから家賃はワリカンでいい、だから安いんだよっていう設定でしたね。

 

川窪:
あった、思い出した! それで連載会議に出したんだっけ?

 

藤井:
そうです。それが主人公が東京に来るところからはじまるパターン。

 

――そのころには家庭教師設定はなかった?

 

春場先生:
ありませんでした。
前の編集長に「五つ子との話だけじゃなくて、主軸になるストーリーがあった方がいい」「受験ものか、文化部ものが欲しい」って言われたんです。
まず文化部で考えていて、「華道っていいんじゃないか」って話にもなりましたよね?

 

川窪:
ああ、話した! 華道、懐かしい。

 

春場先生:
でもうまくいかなくて、「華道」はちょっとネーム描いてすぐに諦めました。
それでもうひとつの「受験」から考えていって、家庭教師がいんじゃないかってなったのが、最終形のひとつ前のネームですね。

 

目標と次回作について

――そろそろお時間が。

 

春場先生:
あれ、もうですか? ぜんぜん話足りないんですが、これで記事になりますか?

 

川窪:
じゃあ、最後に。
連載は完結して14巻が4月に出て完結だけど、まだまだ『五等分の花嫁』という作品を世の中に届けていきたいと思ってます。
14巻累計1500万部が僕の勝手な目標かな。願えば叶うと思っているんだけど。

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春場先生:
僕にできることはもう無いので、何もしないで売ってもらえるなら、こんなにありがたい話はないですね。

 

藤井:
絶対、何かお願いされますよ。5人分の絵を描いてください、とか。

 

春場先生:
まあ、自分の作品でもあるんで、協力はさせてもらいます(笑)

 

――自分の作品で「も」ある?

 

春場先生:
ああ、そうですね。やっぱりこの4人で作った作品っていう感じがあります。その代表が僕、みたいな。

 

読者の方や担当さんに褒めてもらって励まされたから描けた作品でした。何も自信を持ててなかったら、結構早々に諦めてたと思います。「これ以上のものを出そう、描こう」とは思い続けられなかったかもしれない。
あらためて感謝しかないです。

 

――次回作の展望は?

 

春場先生:
ラブコメのストックは最終回を描き上げると同時に僕の中で空っぽになったので、これを回復させるには、長い時間が必要だなって思ってます。

だからその間は、別のジャンルに挑戦したいですね。

 

あとは、次は30巻くらい続く連載をしてみたい。大変だからやりたくないけどやってみたい(笑)。そういう長い連載をやったらどうなるんだろうっていう興味本位で、次を始めます。

 

川窪:
幸いにして、ねぎさんの中にはやりたいことが具体的にいくつかあるから、「次は何をやればいいんだー」って困ってる状態じゃないもんね。

 

春場先生:
そうですね。いま、やりたいこと3つあって、その中で迷ってる感じです。
あとは、この案をどれだけ練っていけるか。
この感覚は懐かしくもあり楽しくもありで、もちろん不安な気持ちもありますが新鮮な気持ちでやってます。

 

――本日はありがとうございました。

 

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