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【1巻無料公開中】「シコれよ」は実体験……!? 『復讐の教科書』廣瀬俊先生インタビュー

f:id:magazine_pocket:20200919165946j:plain復讐は是か非か──そんなことを考えさせてくれるのが、9/9に単行本2巻が発売された『復讐の教科書』。廣瀬俊先生と河野慶先生がタッグで描く、主人公の黒瀬による、いじめ犯5人への痛快な復讐劇が話題の作品です。


「自分もいじめられていた経験がある」と語る原作担当の廣瀬先生に、漫画家になろうと考えたきっかけや原作者として大事にしていること、『復讐の教科書』の見どころをお聞きしました!

 

「心をえぐりながら描いています」

──廣瀬先生はこれまで『煉獄のカルマ』や『青春相関図』、最新作の『復讐の教科書』など“いじめ”をテーマにした作品が多いんですが、”いじめ”に強いこだわりのようなものをお持ちなんですか?

 

廣瀬先生:
『復讐の教科書』では、むしろ僕自身も「またいじめ!?」って感じでした(笑)。ただ、前作もそうですが、いじめをテーマにしている訳じゃないんです。

 

──なるほど……だすとすると3作品ともいじめを扱ったのには何か理由があるんでしょうか。

 

廣瀬先生:
『煉獄のカルマ』で描きたかったテーマは“自殺”の是非でした。
それを伝えるのに一番良い方法として、いじめられている高校生の話を描きました。『青春相関図』は複雑に絡み合う“人間関係”をテーマに描こうとしたときに、いじめを切り口にしたほうが表現しやすいと感じたんです。

 

『復讐の教科書』では“復讐”の是非がテーマなんです。とくにいじめを描きたいというわけではなくて、それぞれのテーマを伝える上で、一番良い切り口が「いじめ」だったと言うことだと思います。

 

──テーマはどのように選んでいますか?

 

廣瀬先生:
「答えのない問い」をテーマにしようと考えています。
たとえば、”友情”をテーマにするときも“男女の友情は成立するか”など、必ず最後に「?」がつくテーマで描きたいと考えています。

 

そのほうが漫画を描くうえで作家としてチャレンジしがいがありますし、読者に興味を持ってもらえるフックになるかなって。

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──『復讐の教科書』をはじめ、どれもいじめの描写が妙にリアルで、ドキドキしながらページをめくってしまいました。このリアリティはどこから着想を得ているのでしょうか?

 

廣瀬先生:
学生時代にいじめられていた経験をもとにしています。
いじめられた時に味わった気持ちの部分などもストーリーに乗せられるので、その分リアルな描写になっているのかもしれません。

……実は心をえぐりながら描いています。

 

──……さらに心をえぐるようで申し訳ないんですが、実際のいじめエピソードなんかも登場するんですか。

 

廣瀬先生:
たくさんあります。たとえば『煉獄のカルマ』の第1話で出てくる「シコれよ」は、学生時代に言われました。僕はシコりませんでしたけど。

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あと、『復讐の教科書』の第2話で主人公の黒瀬がお金を巻き上げられるシーンがあるんです。お金を取られることはもちろんですが、このお金は修学旅行に行くために自分でバイトをして貯めたお金というのがポイントになっていて。

 

僕も昔、部活で他校に遠征に行った時に、財布に入れていた2000〜3000円を誰かに盗られてしまったんです。僕は母子家庭だったんですけど、交通費と昼食代として母親が身を削って稼いだお金を盗られたことが悔しくて……悲しませたくなかったので、母親にも言えませんでした。

 

担当編集さんからも言われるんですが、人ってただ「殴られたから痛い」じゃないんです。殴られたことによる”心の傷み”みたいなことも含めていじめの経験として心に残っているので、それをストーリーに落とし込むようにしています。

 

──相手が大事にしているものを奪ったり、生き埋めにしたりと、復讐の方法も本作の見どころだと思うのですが、どうやって考えているんですか。

 

廣瀬先生:
これも実体験がベースになっていて。いじめられた経験があるせいか、どんなことをされたら人が精神的な苦痛を受けるか思いついちゃうんです。

 

例えば、復讐相手が大事にしているものがあるとしたらそれをぶち壊せばもっとも効果的にダメージを与えられますよね。「あのいじめのときはコレがキツかった……いじめっ子に同じ想いを味わわせるには?」と逆算で考えています。

 

漫画家になったのは富も名声も欲しいから!?

──廣瀬先生がそもそも漫画家になろうと思ったきっかけを教えてください!

 

廣瀬先生:
きっかけはいろいろありますが、一番は「廣瀬俊」という名前を、ひとりでも多くの人の記憶に残したいと思ったのが大きいですね。

 

幼稚園くらいかな? 子どもの頃からずっと絵がうまいって言われていたんです。褒められるのが嬉しくて小学生の頃からノートに漫画を描いたり趣味で風景画を描いたりしてたんですが、中学1年生のときに父親が亡くなってしまって……

 

後日、この名前は父親が付けてくれたことを母親から聞いたんです。父が名付けてくれた「俊」の名前を世の中に広めたい。だったら、自分は絵が得意なんだから、漫画家になるのが一番なんじゃないのか?そう考えました。

 

有名になったらお金も稼げるでしょうし、お金が稼げるようになったらひとりで育ててくれた母親に親孝行もできるとと思って漫画家になりました。

 

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──素敵なきっかけですね……なんか、しみじみしてしまいました。

 

廣瀬先生:
というのは表向きで、簡単に言ってしまうと富も名声もすべて欲しいからなんです(笑)。僕は煩悩に満ち溢れているので、お金も欲しいし女性からもモテたいんですよ。だから漫画家をやってるんです。

 

──そういう意味ではどちらも手にしているんじゃないですか。

 

廣瀬先生:
そんなことないですよ。この間なんか、いい感じだった女性にここぞというときに振られてしまいました(泣)。僕にもう少しお金があれば、整形してイケメンになれたのに……

 

──煩悩が姿を現してきましたね(笑)。

 

廣瀬先生:
20歳頃まではなるべく煩悩を打ち消してまじめに生きてきたんですが、得をしたことは一度もなかったんです。
だったらもう少し自分の欲望に素直に生きてもいいじゃんって。

 

──煩悩を許容するようになって、漫画家として何か変化はありましたか。

 

廣瀬先生:
煉獄のカルマの連載が決まった直後くらいに、担当編集さんから「何でもいいから漫画以外の目標を持ったほうがいい」って話をされました。「漫画を描くことがゴールになると、ダメになった時に潰れるから」と。

 

漫画家として変化をしたわけではありませんが、いま心の中でふつふつと考えているのは、将来的にはモルディブに別荘でも買って、毎日女の子と一緒に酒を飲みながら暮らしたいなって(笑)。

 

──煩悩の塊ですね(笑)。

 

Netflixでドラマ化したい!

──プライベートではどんな過ごし方をされているんですか。

 

廣瀬先生:
いまはコロナ禍ということもあって、家でNetflix(ネットフリックス)を見ていることが多いです。

 

『全裸監督』は一日で全話観てしまいましたし、韓流ドラマの『梨泰院(イテウォン)クラス』も観ました。最近のお気に入りでいうと『暖炉』ですかね。

 

──『暖炉』ってどんなドラマですか?

 

廣瀬先生:
あ、ドラマではなくて、暖炉で木が燃えている様子を映しているだけの番組です(笑)。

 

火が燃えているのを観ていると心が落ちつくらしいんですが、僕は心が燃え上がってくるんです。仕事の休憩中に見て、やる気をみなぎらせています。

 

漫画もドラマもそうですが、刺激の強い作品は好きですね。幼稚園や小学生の頃に野島伸司先生の作品をよく見ていて、『家なき子』や『人間・失格』『聖者の行進』などは強烈に記憶に残っています。

 

自分が原作を作るときも、いい意味でも悪い意味でもいいので、記憶に残るような作品にしたいと常々思っています。

 

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──そういう意味では廣瀬先生の作品は、どれも刺激が強く、記憶に残る作品だと思います。

 

廣瀬先生:
そうですね。いつかNetflixでドラマ化したいなって思っています。

 

──『復讐の教科書』をはじめ、廣瀬先生の作品はどれも実写向きですよね。

 

廣瀬先生:
アニメよりは実写向きかもしれません。おそらく、僕自身がアニメよりドラマのほうが好きなので、おのずと実写向きになるんだと思います。

  

本当は血を見るのも描くのもイヤ!

──いま廣瀬先生は原作を担当していますが、新人時代にはご自身で絵も描かれていたとうかがいました。ご自身で作画も担当したい、みたいな想いもあったりするんでしょうか。

 

廣瀬先生:
難しい質問ですね……今はないんですが、今後また芽生えるかもしれません。

 

やりたい、やりたくないというよりは、僕よりもうまく作画が描ける人がいて、結果、売れるならそっちのほうがいいかなと。いい作品が出来上がるなら、作画担当のかたと組んでひとつの作品を作り上げたほうがいいなって。そんな感じです。

 

──より良い作品を作るための選択ですね。

 

廣瀬先生:
そうですね。『煉獄のカルマ』では特にですが、僕の作品は結構エグい描写が多いんです。でも、僕自身は血を見るのはもちろん描くのも苦手で……

 

ネームの段階でたとえば傷口の描写があっても、ぐちゃぐちゃって感じで濁すように描いて、あとは作画担当の(春場)ねぎさんに託していました。すると、ねぎさんは映像などを参考にしながらそういった描写もていねいに描いてくれる。

「作画担当の人がいてくれて良かったな」と常々、思いますね。

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──作画をほかの先生に任せることで、廣瀬先生だったら実現しなかった描写などはありますか。

 

廣瀬先生:
たくさんありますよ。

たとえば、『煉獄のカルマ』では、煉獄案内人の女性は僕のネームの段階ではおじさんだったんです。でも、ねぎ先生は女性の絵を描くのが抜群にうまいということで、それを活かすためにも女性のキャラになりました。

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『青春相関図』では三宮(宏太)先生が作画担当だったんですが、デッサン力が圧倒的に高くて、かつキャラデザのセンスも最高にいいので、アクションシーンを増やしてみたり。

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『復讐の教科書』で作画を担当してくれている河野(慶)先生含め、僕のネームが「1」の完成度だとすると、作画のかたによって「100」まで仕上げてくれる。おかげで読みやすくなっています。

 

──確かに、ほかの漫画と比べても、廣瀬先生の作品はとくに読みやすいですよね。

 

担当編集:
「1」の完成度と言ってますが、廣瀬先生の作品はネームの段階から読みやすいんです。作画の担当者に親切なネームだなと思っていました。

 

表現が正しいかは分かりませんが、廣瀬先生が絵で表現できないような部分は、誰が見てもイメージできるよう文字で補足している。これなら作画のかたも困らないだろうなと思っています。

 

廣瀬先生:
漫画を描くうえで一番大事なのは、読みやすさだと思っています。読んでいるときに0.1秒でもストレスに感じてしまうのは損でしかない。なので、ネームの段階でストレスが極力0になるように描くようにしていて。

 

作画のかたにお願いする時も「これより見やすくなるなら好きに描いてください」と伝えています。

 

原作者は作画担当者の“踏み台”であるべし


──今は原作者として活躍していますが、廣瀬先生が思う原作者に必要なことってなんですか?

 

廣瀬先生:
作画のかたの人生を背負うぐらいの気持ちですかね。
原作者は作品を何本も掛け持ちできますが、作画は物理的に1本、描くのが早い人でも2本しか描けない。

 

それに、いくら原作者がいい案を出しても、作画担当者がいないと世に出せないですからね。

 

昔、当時の編集長からも、作画のかたの“踏み台“になるくらいがちょうどいいって言われたんです。だから、作画のかたの次へのステップとなるような、いい”踏み台”でありたいと思っています。

 

俺が俺がタイプ”の人は原作者に向いていないかもしれないですね。

 

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── 技術的なお話かと思ったので、気持ちの部分とは意外でした。

 

廣瀬先生:
技術的な面なら独学はもちろん、担当編集者のかたと一緒に描きながらスキルアップできますから。なので、作画のかたを支える気持ち的な面のほうが重要だと思っています。

 

──「マガポケ」オリジナル作品のなかで、廣瀬先生のお気に入りの作品はありますか?

 

廣瀬先生:
いろいろありますよ!
デスティニーラバーズ』は男の夢が詰まっているうえに、謎がめちゃくちゃ気になります。

 

死ぬほど君の処女が欲しい』は主人公の感情の描き方がていねいで、僕もどっちかといったら主人公側の人間なので感情移入して読んでいます。

 

あと、『犬になったら好きな人に拾われた。』は発明だと思います。
VRみたいで、しかも読みやすい。デッサン力がすごいなって思いながら読んでいます。

 

シュート!の世界にゴン中山が転生してしまった件』は企画がおもしろすぎますよね。もともと『シュート!』が好きっていうのもあるんですが、発想がおもしろくて笑いながら読んでます。

 

──最後に、『復讐の教科書』のファンにメッセージをお願いします。

 

廣瀬先生:
「すぱぁぁん」を気に入ってくれた読者がいて嬉しかったです(笑)。
普通に「パンパンパン」だとイマイチだなと思って、「ぱんぱんすぱぁぁん」にしたんですが、まさか拾ってくれる読者がいるなんて。

 

マガポケのコメント欄を見てると、「ちょっとぬるくなってきてる」などとも書かれていますが(笑)、全員にちゃんと復讐するので楽しみにしていてください!

 

──ありがとうございました。
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