100話突破!
さとうふみや先生、天樹征丸先生、金成陽三郎先生と船津紳平先生による『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』、いつもご愛読ありがとうございます!
犯人目線で進む本作は、犯人の汗と涙と、鼻水までが詰まったスピンオフ作品。
改めて読み返すと、犯人たちって本当すごい努力家ですよね……
涙なしには語れない努力の数々
高校生なのにトリックのため、10万円使ってゴムボート購入した『オペラ座館殺人事件』の有森くん。
お年玉貯めたのかな……
そして『雪夜叉伝説殺人事件』の綾辻ちゃんは、トリックのために真冬に一人で氷の橋、「氷橋」を作りました……
そんな努力を無にしてしまう、金田一少年の方がもはや悪役に見えてくる不思議な漫画。
それが『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』!
その中でも私がキング……いや、クイーンオブ努力家と言いたいのがこの人!
「蝋人形城殺人事件」の犯人、小説家多岐川かほるさん!
ちょっと気の弱いオバちゃんに見える彼女。
しかし彼女はトリックのために――
なんと等身大蝋人形を自作!!
しかも10体!
普通にさらっと出てきましたけど、蝋人形って素人でも作れるのか?
ということで、今回は静岡県の伊豆ろう人形美術館のゴメス氏に、蝋人形についてうかがいました!
ろう人形を作るのにどれぐらいのお金がかかるの?
ーー蝋人形1体作るのに、蝋そのものってどれぐらい必要なんでしょう?
ゴメス氏:
数10kgは必要です。
これを聞いてびっくり!
作る以前に、蝋の調達が大変じゃないですか!
樹脂を加えたりオイル脂肪を加えたりする必要もあるため、10体分となると蝋以外の材料もかなりの量が必要となりそう。
かほるさんは仕入れ用の業務ルートを開拓していたのか!?
作中でも描かれていますが、本格的な蝋人形を作るのには1体に半年から2年ほどかかると言われています。
今回はトリックのために「雑な作りでいい」とかほるさんも話していたので、もっと短かったかもしれません。
またトリック上、かほるさんが作ったのはマスクや頭部だけの人形もありそうですが、それだけでも大変ですよね。
っていうか、そこまで時間も労力もかかるなら、業者や作家に蝋人形を発注したらよかったのでは……?
ーーゴメスさん、蝋人形って、お値段は一体でどれぐらいするんでしょう?
ゴメス氏:
当美術館の蝋人形は2,000万円からですが、ピンからキリですね。
2000万円×10体ってことは、殺しをファブルに依頼できるんじゃ……?
そりゃかほるさんも自作しますわ……
蝋もオイルも買い込んで頑張るわ……
ーーちなみに蝋人形ってリアルですよね。
リアルに見せる工夫みたいなのはあるんですか?
ゴメス氏:
髪の毛は人毛、目は義眼を使い、指紋まで作るので大変な作業なんです。
指紋までとはすごい!
さすがにそこまではかほるさんにこだわる時間はなかったようですが……
ろう人形ってどれぐらい重いの?
かほるさんはトリックのために蝋人形を着席させたり、移動させたりしています。
ーー蝋人形ってどのぐらいの重さがあるんですか?
ゴメス氏:
普通の人間の体重から2割引いたぐらい、でしょうか。
ちなみにはじめと同じ高校2年生男子の平均体重は60.6kg(平成29年度 学校保健統計調査より)。
20%オフでも、48.48kg。
それでも女性ひとり分ぐらいあるし!!
20%オフ、結構重い。
でも、「金田一少年の事件簿」本編では蝋人形の胴体は発泡スチロールだったり、手も手袋で隠して作っていたりしていたことが描かれています。
胴体は簡易的な作りだったのは入れ替わるトリックのためだけではなく、こんな重さも関係していたのかもしれませんね……
そんな苦労をして作ったろう人形を、うっかり溶かしてしまいます。
ろう人形と心を通わせるかほるさん。
手のかかる子ほど可愛いとはこのことなんでしょう。
ーー蝋人形の保管で気を付けることはありますか?
ゴメス氏:
当館では専門家にお願いしていますが、(腕や脚などが)折れないように注意してクリーニングしています。
ギリシャのイカロスも溶かしちゃいましたよね。
そもそも一体2,000万円からですし、大切に保管しますよね。
ちなみに「芸術の森 伊豆ろう人形美術館」でぜひ見てもらいたい蝋人形は、『最後の晩餐』だそう。
なんとあの、レオナルド・ダ・ヴィンチの絵画を再現した蝋人形を見ることができます!
ホームページのTOPに画像が掲載されている作品ですね。
絵画に描かれているのはキリスト含めて13人なので、『蝋人形城殺人事件』の10体が並んだ感じと似た雰囲気が味わえるかもしれません。するかも、しれません!
大量の蝋を仕入れ、時間をかけて作り、移動させ、完成させたかほるさん。
そんなかほるさんの努力の結晶をはじめはバッサバッサと……
「君には血も涙もないのか!」と言ってしまいたくなっちゃいます。
でも、アキラメナイデ! カホルサン!
来世で努力は報われる。
『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』はこちらから読めます!
また『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』を読んだ後に、本家『金田一少年の事件簿』を読み返すと、「このとき、犯人はこうやってたんだね~」と振り返りながら読め、トリックの理解がより深まるのでオススメです!
★今回ご協力頂いたのは――
「芸術の森 伊豆ろう人形美術館」
http://www.bhwax.com/waxdoll.html
〒413-0234静岡県伊東市池674-1
【営業時間】10:00~17:00
【休館日】 木曜日(8月・年末年始・祝日は開館)