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FGO特別インタビュー! 単行本のデザイン担当「WINFANWORKS」に聞くデザインへのこだわり

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『Fate/Grand Order -turas realta-』最新8巻発売記念企画!!

 

『Fate/Grand Order -turas realta-』単行本デザイナー
デザイン事務所「WINFANWORKS」さんに聞く!
デザインのお仕事特別インタビュー!!

 

ーー「WINFANWORKS」様はどういったお仕事をお受けしている事務所でしょうか?

 

WINFANWORKSさん:
ゲー ム・アニメ・漫画・ライトノベルなどに関連したデザインを行う事務所です。ロゴデザインや書籍装丁以外にも、web、UI、CD、グッズなどのデザインも行っています。

 

最近では『Fate』シリーズ関連作品のデザインが多いです。
『Fate/Grand Order』のゲームタイトルロゴや、ゲーム内で各特異点を象徴する紋章(第1部-第七特異点である「絶対魔獣戦線バビロニア」と1.5部以降)などを担当しています。

 

ーー単行本のデザインでは大きく「カバー」「帯」「本文」の3つの要素があります。『Fate/Grand Order -turas realta-』を例に、力バーのデザインで意識されていることはございますか?

 

WINFANWORKSさん:
『turas realta』の場合は、ゲームのコミカライズですので原作のトンマナ(デザインに一貫性を持たせるためのルール)を踏襲するのが基本線になります。そのうえで、カワグチ先生のイラストに合わせて背景を調整し、その巻のテーマに沿うような見た目を作っていきます。

 

個人的には、漫画の単行本カバーは「ビジュアル+ロゴ」というよりは「ビジュアル+タイトル」の組み合わせ結果としての表1をどう作るのかが重要ではないかと考えており、 場合によってはロゴなどもカバー用に調整してもいいのではと思っていますが、『turas realta』の場合はゲーム内の第1部のメインストーリーのコミカライズということで、わかりやすさを重要視する形になっていますね。

 

ーーカワグチ先生のイラストは構図なども様々ですが、デザインする際に難しいことはあるのでしょうか?

 

WINFANWORKSさん:
そうでもありません。むしろ楽しいです。
僕はゲーム業界の出身で、ゲームの場合は、「絵があがったからこれでやって」と後からデザインを任せられることが多いです。そのため、既にあるイラストに合わせるのに慣れているから、作家さんに好きに描いてもらってやるのがやりやすい。

 

特に漫画は作家さんの個性、やりたいようにやってもらって、デザイナーは添え物的に魅力を増幅させるような形に仕事するのが僕としてはべターかなと思っ ています。

 

ーー帯をデザインされる際はいかがでしょうか?

 

WINFANWORKSさん:
作成の順番として帯が先というこ とはまずなくて、上記のカバーデザインを受けて帯をどうするか、という考え方になります。本屋さんで販売されるときは帯が巻かれた状態になるので、全体の見た目がおかしなことにならないか、ということを意識します。

 

『turas realta』の帯表1は原作に携わる各先生がたのコメントが中心で、それだけでーつの作品感のある綺麗な言葉ですので、その言葉を殺すようなことがないように、「言葉の力一発!」というデザインにしています。

 

ーー本文についてはいかがでしようか?

 

WINFANWORKSさん:
目次・幕間・あとがきなどのデザインということになるわけですが、『turas realta』の場合はカバーと同じく原作のトンマナを踏襲しつつ、世界観の補強になるようなデザインを目指して作成しています。

 

また、「別マガ」 コミックスには「次巻予告」があり、 ここが一番面白い作業かもしれません。次巻への興味を持っていただけるように編集さんの意見を頂戴しながら作成しますが、僕が担当している他の作品では、ここまで次回の内容をしっかり入れた次巻予告をあまり作った経験がないため、新鮮な感覚です。

 

いかにこのページで「次も面白そう! ワクワクする! 読みたい!」と思っていただけるか。ポスターを作る感覚に似ていますね。

 

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単行本第7巻に収録された次巻予告。
決戦への期待感を煽っている。

 

ーータイトルロゴのデザインを組む際に意識されていることはございますか?

 

WINFANWORKSさん:
作品の雰囲気に沿ったデザインにすることが第一だと思っていますが、漫画とゲームではロゴに求められる役割が異なる場合もありますので、「どういった使われ方をするのか」を念頭に置いています。

 

ーーゲームと漫画における口ゴの役割の違いとは何でしよう?

 

WINFANWORKSさん:
例えばですが、ゲームはロゴが先行してあって、後でメインビジュアルなどに使用されることが多いです。 ゲームのロゴは様々な場所で使用するので、どんな場所やサイズに入れても、 ロゴが目立たなくなるのはよくない。

 

特に『FGO』など、ゲームのイラストはキャラクターの肌の色を塗るにしても、様々な色を使用したりしていて情報量が多いです。そうした重厚なイラストに負けないロゴにしないといけない。

 

一方で、そうしたゲーム用に作ったロゴを例えばそのままコミカライズ やアニメに使用すると、本来の想定した用途とは異なるため、違和感を覚える時もあります。その時は媒体用に調整するようにしています。

 

ーーゲームのロゴはそのままでは漫画には合わないということでしようか?

 

WINFANWORKSさん:
そういう場合もある、ということだと思います。当然ながら例外もあります。
例えばこちらの『Fate/Grand Order -turas realta-』のロゴは、他社のデザイナーさんがデザインしています。その場合、 僕がデザインした原作ロゴの下部に、他社のデザイナーさんが合わせて文章を追加するという、シンプルな変化になっていると思います。

 

「コミカライズである」という事実が伝わりやすく、 ロゴとしての目的を果たすには十分です。重要な事は、当たり前の話ではありますが、ディレクターさんや作家さん、編集さんと意見を交換して「目指す方向性」を統一していくコミュニケーションをとってデザインすることだと思います。

 

デザインは添え物的要素が強い作業ですが、ロゴは作品の顔になるかもしれない部分であり、ロゴの方向性によってそれ以外のデザインの方向性も決まってきますので、なるべく時間をかけて検証しています。

 

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©️TYPE-MOON/FGO PROJECT

原作(上)とコミカライズ(下)ロゴ、細かな差が見られる。

 

ーー『Fate』シリーズでは、ロゴ以外にもデザインをされることはあるのでしょうか?

 

WINFANWORKSさん:
一つか二つ程度ではありますが、「令呪」のデザインをしたこともあります。
もっとも多いのは、その持ち主である「マスター」 のキャラクターをデザインしたイラストレーターさんが、ラフなどで原案を作成するケースです。時にはそのラフを僕がクリンナップすることもあります。

 

ーーUIのデザインもされるとのことですが、『FGO』でもUIを担当されているのでしょうか?

 

WINFANWORKSさん:
「タイトル画面」や「ターミナル 画面」、「ダイアログ」などのデザインも担当しています。他にもサーヴァントが使う宝具演出で、一部のガジェットだけ作るなど、細かな部分をお任せいただくことが多いです。

 

イベントのタイトル演出も担当しています。
『FGO』のイベントは、真面目なものから砕けたものまで様々なので、タイ トル演出の雰囲気によって、その印象を受け取ってもらえるように意識していますね。 

 

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WINFANWORKSさんがデザインした原作ゲームのタイトル画面

 

――本当に色々なデザインをされているんですね。 

 

WINFANWORKSさん:
そうですね。「誰かが作らないといけない、でも誰が作る?」といったものを作る役目なのかなと。

 

僕はデザイナーというのは脇役だと思っている ので、そういった人目に付きにくい細かなこともして、陰から主役を支えるようにしています。流しそうめんの最後に待っている受け皿みたいなものですね(笑)。みんなが取り損ねた仕事をまとめて引き受ける役。THE・裏方 といったこの仕事が性に合っていて楽しいです。

 

――『Fate』シリーズのコミカライズのデザイン面で統一していること、あるいは意図的に差別化していることなどはございますか?

 

WINFANWORKSさん:
『Fate』だからデザインを何かしらの形で統一しよう、という事を初めから意識することはないかもしれません。『Fate』...というか奈須きのこ先生の作品世界は懐が相当広くて、シリーズと言いつつ、全然毛色の違う作品もかなりあるからです。ですので、 基本的にはそれぞれ独立した作品という意識でやっています。

 

ただ、複数のコミカライズを担当するなどして、 『Fate』シリーズへの知識がある、というのはデザイン面で役に立つ時もあります。同一のキャラクターでも、シリーズの違いによって細かな違いがあったりするときに、僕の場合は事前の知識を持って作品に当たれるため、 仕事への人りやすさが違ってきますね。 特に『Fate/Grand Order material』などは、事前の知識が生きるかもしれません。

 

ーー『Fate/Grand Order material』もデザインを担当されているのですか?

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『Fate/Grand Order material I』(TYPE-MOON BOOKS刊)の書影。
サーヴァントの詳細が記載されている。

 

WINFANWORKSさん:
そうですね。
素材のご手配はTYPE-MOONさんにお願いしていて、それ自体も相当大変だと思いますが、もうお祭りのような感覚です(笑)。

 

400ページくらいの厚さのある本を、結構タイトな作業期間で一気に作ったりします。素材の数や文字数もバラバラです。本って本来は作成前に「台割」というページ数や、どこに何が入るかというのを決めた設計書のようなものを考えるのですが、それもなく作業したりしていて。

 

最終的なページ数は、本が完成して知る!みたいな感じです。まさにお祭りという感じで楽しいです。

 

ーそれはなかなかに難しい作業な気もしますね。

 

WINFANWORKSさん:
面白さの追求が第一だと考えているので、制作上の都合で文字数を削ったり、ページを少なくしたりというのはないように、柔軟な対応ができる体制でやっています。できるだけ原液ままの面白さを読者の皆さんに届けることを目指しています。

 

ーー最後に「別冊少年マガジン」の読者に向けて一言お願いします。

 

WINFANWORKSさん:
普段作品を読むにあたって、漫画に添えてあるデザインを気にすることは少ないかもしれませんが、もし余裕があればそういった部分にも目を向けていただけると、より深く作品を楽しめるかもしれません。

 

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