『DAYS』38巻&『青色ピンポン』1巻、5月15日(金)同時発売!
安田剛士×音羽さおり特別対談!
安田剛士先生
2013年より「週刊少年マガジン」にて『DAYS』を連載中。作品に『振り向くな君は』『Over Drive』など。
音羽さおり先生
2019年より「コミックブル」にて『青色ピンポン』を連載中。作品に『DAYS外伝』『STAR BEAT!!』(香椎さおり名義)。
『青色ピンポン』の「週刊少年マガジン」出張掲載はこちら!
お互いの作品をよく知る二人が 「スポーツ漫画」を語る!
安田先生:
お久しぶりです。『DAYS外伝』を描いていただいた時以来ですね。
音羽先生:
その節は本当にお世話になりました、いっぱい勉強させていただきました!
安田先生:
あんなに素敵な作品にしていただいて、お礼を言わなきゃいけないのは僕のほうです。今日はよろしくお願いします。
―音羽先生の新作『青色ピンポン』について
安田先生:
『青色ピンポン』、毎回更新されるたびに楽しく読んでます。オリジナル作品は久しぶりだと聞いていたのですが、すごく自然な導入で、面白いです!
余裕を感じるというか、構えが堂々としている(笑)。
音羽先生:
とんでもないです、毎回、四苦八苦しながら描いてます……。
でも、キャラクターたちを描くのは楽しいです!
安田先生:
すべての人物がチャーミングですけど、とくに主人公の秋人の設定が魅力的ですね
「いつか記憶を失ってしまう」という設定のおかげで、ふつうのスポーツ漫画じゃ出ない面白さがある。日常のやり取りや会話だけのシーンでも、設定を思い出して急に緊張感を覚えてしまう。うまいなあって。
音羽先生:
ありがとうございます。そんなに深いことを考えていたわけではないのですが(笑)。
安田先生:
設定だけだと暗い雰囲気を想像しちゃいそうですが、画面もキャラクターも物語も、明るくてまっすぐ。そこが素敵ですね。
音羽先生:
『DAYS外伝』をやっていた時に気づいたことなんですが、なるべくコメディパートは入れたいなと思っています。
どんな設定を抱えていたとしても、やっぱり明るくて楽しいほうが読んでもらえるのかなと思って。たぶん、安田先生も意識してやってらっしゃいますよね?
安田先生:
どうだろう、僕はギャグを考えるのが好きだから自然にやっているだけなのかもしれない(笑)。でもたしかに、ギャグを描けると安心しますよね。
試合中だと入れるタイミングが難しい時もありますが、うまいこと入れられるとすごい達成感がある。そんなことに達成感を覚えちゃだめなのかもしれないけど(笑)。
―絵について
安田先生:
『青色ピンポン』は秋人の設定から発想した漫画ですか?
音羽先生:
『DAYS外伝』をやらせていただいた後、オリジナルのスポーツ漫画を描きたいなと思っていました。卓球に興味を持っていろいろ調べているときに、この「コミックブル」のプロジェクトを聞いて、やりたい、と思いました。
そのあと、担当さんといろいろ話しているうちに出てきたのが、秋人のアイディアです。
安田先生:
音羽さんのオリジナルのスポーツ漫画、いつか読みたいと思っていたので、連載がはじまることを聞いたときはうれしかった。実際読んで、すごくいい作品になるな、と感じました。同時に、相変わらずすごい画面を作るなあって。
音羽先生:
絵はとにかく時間がかかってしまって……。
安田先生:
すごく丁寧な画面作りをしてますよね。細かいところにも手抜きがないし、「これは時間がかかるだろうな、大丈夫かな」と思ってます。
キャラクターを描くときにも骨格を意識して人体を描いてから服を着せてるみたい。僕はそこらへん、「何となく合ってればいいや」って描いちゃうから、申し訳ない気になる(笑)。
音羽先生:
それで重心や筋肉をあんなに描けるならうらやましいです……。重さとかスピード感を出すのが本当に難しくて、毎回原稿やりながら苦しんでます。筋肉の動きとか、『DAYS』は重さも速さも感じられる絵なので、いつも参考にしています。
安田先生:
スポーツ漫画はアクションが多いから、重さや速さや、あとは位置関係とか、そういうのをわかりやすく表現することには気を遣いますよね。未だにわからない。『はじめの一歩』の原画展にいって、余計わかんなくなった。どうして人間にあんなことできるんだって(笑)。
音羽先生:
雲の上すぎる話……。
安田先生:
音羽さんの画面って、華やかですよね。あれ、どうしたらできるんだろう。すごく少年誌っぽくてうらやましいです。
音羽先生:
少年誌で10年以上連載されてる安田先生にそんなこと言われても(笑)。
―スポーツ漫画について
音羽先生:
安田先生は主人公、つくし君を描くときに気を付けてること、ありますか?
安田先生:
つくしは「優しい」人間だと思っているので、そこだけは外さないようにしています。スポーツしていると、「強さ」を描くことを求められる瞬間がどうしても来ますが、その時も優しさを持っている人間にしよう、と。秋人は、意外と男性的ですよね。
音羽先生:
もうちょっと控え目というか、かわいいキャラにしようと思ってたんですが、描いているうちにどんどん強くなってしまって。
安田先生:
デザインや設定にはなよなよしている印象があったんですが、芯の強さを感じます。設定との兼ね合いで描くのが難しそうなキャラなのに、生き生きしてる。秋人のお姉さんたち、好きなんですけど、日常シーンや教室シーンは描かないんですか?
音羽先生:
お姉さんたちは、最初、もっと秋人に甘い人たちだったんですけど、なんか違うなって思って直したんです。その時、なんとなく頭にあったのは『DAYS外伝』の速瀬君のお姉さんのイメージでした。
本当は家の話も描きたいんですが、そう思ってるうちに、いまの部内戦をはじめてしまったので、タイミングが見つからなくて。『DAYS』は試合後の日常シーンも楽しいですよね。
安田先生:
試合は流れがあるので楽な時は楽なんですが、日常シーンはそういうわけにもいかなくて、時間がかかることがあります。そういう時、スポーツ漫画ってジャンルに助けられているなーって感じますね。
音羽先生:
そうなんですか?
安田先生:
黙ってても試合はやってきてくれますから。やることがないって状況にはならないですよね。「勝つ」って目的があるので、それを設定する苦労もないし。
あと、試合の流れの中では活躍させたいと思った奴を活躍させるのはそんなに難しくない。他のジャンルの漫画より、考えなきゃいけないことが少ないような気がします。
音羽先生:
たしかに、部内戦に入ってネームはちょっと楽になりました。日常シーンの方が難しいなって思うところはあります。逆にスポーツ漫画を描く上で「難しいな」と思うことはありますか?
安田先生:
スポーツをちゃんとやればやるほど読みにくくなっちゃいそうな気がして、バランスが難しいなって思いますね。
音羽先生:
試合の内容が専門的になると、詳しくない人を置いて行ってしまう、ということですか?
安田先生:
本当にうまい人はそれでも読みやすくできると思うんですが、僕の場合は適度に噓を入れてわかりやすくしないといけないな、と思ってます。噓ばっかりでも良くないし、そのバランスは難しい。
音羽先生:
私は卓球をやったことがなくて、勉強しながら描いているので、むしろ専門的な知識をもっと勉強しないとって思っているところです。勉強したらしたで、調べたことを全部描きたくなる欲求と戦わなきゃいけないんですけど(笑)。
―スポーツ漫画を描くこと
安田先生:
コミックブルは、他の作品も全部スポーツ漫画だから、独自性を出すのが大変そうですね。
音羽先生:
そこはあまり意識しないようにしているんです。
「スポーツをする人、見る人、支える人」を応援する、っていうのがコミックブルの理念だと聞いたので、そこだけ考えてやっていこうかなと。いま、色んなスポーツイベントが中止や延期になってますけど、安田先生はスポーツ漫画を通して発信したいメッセージとか、ありますか?
安田先生:
うーん、いま、こういう状況だから、っていうのは考えたことないですね。僕はいつも通りに漫画を描いているだけ、というか。
音羽先生:
いつも込めているメッセージはあるんですよね?
安田先生:
それも、自分の口では恥ずかしくて言えない(笑)。漫画を描くこと、つくしたちを描くことで、何か伝わるものがあるのなら、それを否定はしないです。けど、受け取り方は読んだ人のものでしかないから。僕からは何も。
音羽先生:
それでも、『DAYS』に勇気をもらっている人はたくさんいると思います。
安田先生:
そうなのかな。そうだといいなと思います。僕は音羽さんが連載をはじめてくれたことに勇気をもらいましたよ。もうちょっと自分も頑張んなきゃなって(笑)。
音羽先生:
その言葉を聞けただけでも、連載できてよかったなと思います(笑)。今日はありがとうございました。
安田先生:
こちらこそありがとうございました!
(この対談は、2020年4月、 リモート状況で行われました)
「週マガ」に対談と一緒に掲載された『青色ピンポン』出張版はこちら!