週刊少年マガジンに掲載された
漫画家(プロ)への花道を特別に大公開!!
今回は、2017年41号に掲載された
諫山創先生編の後半をお届けします!
☆前半はコチラ
新人漫画賞を
獲れ。
諫山創先生流
キャラクター術!!
超人気キャラクター多数の
『進撃の巨人』作者・諫山創先生の
キャラクター術を週マガだけで大公開!
魅力的なキャラクターは斯くて生まれる!!
極意のその壱
〜覚えてもらいやすい
キャラクターを作るべし〜
――キャラクターを作る時、まずどの要素から先に決めていますか?
諫山:僕はキャラクターデザインから始めます。
まず、こういう顔のキャラクターがいたら面白そうだなとか、こういう身体的特徴があったら目立つだろうなというように考えていきます。
造形ができたら、このキャラクターは何となくこういう性格だろうなというのを、その外見から想像します。
例えば、目つきが悪かったらひねくれていそう、みたいな感じでしょうか。
――キャラクターを作る際に、他にも何か意識していることはありますか?
諫山:海外ドラマや海外映画を見ていると、登場する俳優さんは「整っている顔」というより、「覚えやすい顔」が重視され、配役される傾向があると感じています。
いわゆる美形の人もいれば、「なんだこの眉毛は!?」とか、「顎が出てる感じ……」とか(笑)。
キャラクターメイキングの時には、そういった「覚えてもらいやすいキャラクター」の作り方を意識しています。
極意その弐
〜「先」のことを考えて
キャラクターを作るべし〜
――具体的に『進撃の巨人』のキャラクターは、どのようにして作られていったのでしょうか?
諫山:先に物語の展開を決め、その展開に合わせたキャラクター作りをしました。
例えばベルトルトの顔のデザインを決める際には、先に「ベルトルト=超大型巨人」という設定があったので、超大型巨人の顔を人間の顔にするとこんな感じかなと考えていった結果、面長になりました。
ベルトルトが長身なのも、その設定の影響です。
⬆︎「超大型巨人」の人型としてベルトルトのデザインが決定した。
――「先に物語の展開を決め、その展開に合わせたキャラクター作りをした」というお話でしたが、逆に想定していたキャラクター像から大きく変化したキャラクターはいますか?
諫山:クリスタです。
『進撃の巨人』という作品を作り始めた時に、物語の序盤でキャラクターをたくさん作り出した方が、後々物語を動かしやすくなると思い、とりあえず10人の主要キャラを先に作ろうと思ったんです。
その時に、一人くらいはいわゆる「萌え」的な可愛らしいキャラクターがいた方が読者も喜ぶんじゃないかなくらいのつもりで作ったら、見事に「可愛らしいだけ」の空っぽなキャラクターになってしまいました(笑)。
なので、最初、クリスタは描いていて全然楽しくなかったんです。
でも、展開を追うごとに、逆に空っぽであることがクリスタのパーソナリティになっていきました。表面的に外面はいいけど、実際は自分という中身が無く、空っぽっていう。
最初の、「需要に応える」存在から脱却していった結果、そのパーソナリティが物語の展開を考える上でも手助けとなり、今では好きなキャラクターの一人になりました。
⬆︎「空っぽ」なキャラクターから脱却した瞬間。
――次第にクリスタが好きになったというお話でしたが、『進撃の巨人』で諫山先生が一番好きなキャラクターは誰ですか?また、その理由も教えてください。
諫山:その時々によって僕の好きなキャラクターは変わるのですが、今はライナーが一番好きです。
ライナーは「僕自身の反省を担うキャラクター」なんです。
どういう意味かというと、ライナーが『進撃の巨人』という世界の中の「加害者」であるように、僕もライナーと同じく漫画の中でキャラクター達を酷い目に遭わせている「加害者」なんですよね。
なので、とても共感しながら描いています(笑)。
⬆︎諫山先生は、物語の「加害者」としてライナーと共感。
諫山先生が語る
『進撃の巨人』キャラクターたち!!
――『進撃の巨人』のキャラクターにおいて、諫山先生の意図していた狙いが世間の評価にうまく結びついたと感じていることはありますか?
諫山:リヴァイの人気については、強くてスカしているけど、体が小さいので、「どんなに粋がっていても滑稽な雰囲気が出てしまうという欠点」が上手くハマったのではないかと思っています。
格好良さと親近感を同居させることができたのかなと。
――逆に、一番世間の人気と諫山先生の印象とのギャップが大きいキャラクターは誰でしょうか?
諫山:エレンです。
エレンは、この物語のために存在しているようなキャラクターなので、とにかく動かしにくいんです。言わば、物語の奴隷ですね。
個人的にあまり生き生きとしたキャラクターとして描けていないと感じているので、世間の人気とはギャップを感じますね。
――『進撃の巨人』の中で、諫山先生にとっての理想的なキャラクターは誰ですか?
諫山:ユミルです。個人的に一番生き生きと描けているキャラクターです。
それから、ユミルの巨人化した姿もとても気に入っています。
漫画を通してやりたい事の一つに『妖怪人間ベム』のような、人間の姿から醜い異形へと姿を変えるということがあったのですが、ともすれば醜い巨人の姿を持つユミルを描くことによって、それを実現できたように感じています。
⬆︎諫山先生は「キャラクターをまっとうすることができた」とユミルに強い思い入れを持っている。
極意その参
〜欠点を作るべし〜
――『進撃の巨人』を読んでいると、絶望的な世界の中で生きるキャラクターたちの生き様から「本当にいそう!」や「こんな状況に立たされたら、こんな感情を抱きそう!」というような「実在感」をとても感じます。その「実在感」が、『進撃の巨人』という作品の大きな魅力の一つだと思うのですが、その「実在感」を持った「生きたキャラクター」を描くうえで意識されていることはありますか?
諫山:漫画は「空想」なので、自分でいかようにも理想的なキャラクターを作ることができます。例えば、何一つ非の打ち所がない美男美女というような完璧なキャラクターも作れます。
ですが、そのようなキャラクターにすると、どうしても空想感、作り物感が出てしまうと思います。
なので僕は、どこかに「欠点」を負ったキャラクターの方が魅力的だと考えています。
例えば何か性格に問題があったりだとか、変な鼻の形をしているというような身体的なコンプレックスを抱えていたりだとか。
それは、同じ欠点を抱えた読者からの共感や、また人の痛みを理解できるというような人間として読者の目に映り、そのキャラクターの魅力につながり得るからです。
悪役を描こうとする時にも、悪役としてのキャラを描いたのでは「実在感」は生まれないと思います。
そうじゃなくて、「この人は、別に悪い人を演じようとしているわけではなく、自分自身こそが正義だと信じている」という描き方にした方が、悪役としてのキャラクターに奥行きができると思うんです。
極意その肆
〜キャラクターに嘘をつかせるな〜
――諫山先生が理想とするキャラクター像とは何ですか?
諫山:「嘘をつかないキャラクター」です。
嘘をつくというのは、物語の都合によって、そのキャラクターが本来持ち得たであろう意志を捻じ曲げてしまうことです。
自分の意志で動いているキャラクターやメタフィクション的な意味での世界(漫画)に逆らうようなキャラクターにこそ魅力が宿ると思います。
逆に、物語の操り人形になってしまっているキャラクターは魅力的ではないと考えます。
得てして、主人公は物語の都合によって自分の意思を蔑ろにしてしまいがちなので、その対照的な立ち位置にいるキャラクターに魅力を感じることが多いです。
応援メッセージ
――最後に新人作家の皆さんにメッセージをお願いいたします!
諫山:自分が面白いと思っていないと、絶対に面白い作品にはなりません。
なので、まずは自分なりの「面白い」を見つけてください。
幸いなことに、世の中には一生かかっても見つくせないような名作映画や本・漫画・音楽など、たくさんの作品があります。
この時代に生まれたのだからこそ、そういうエンターテイメントをとにかく楽しんで、「面白い」という感情を積み重ねていってください。
そして、それこそ漫画を描きたくてたまらないほど、表現したくて仕方がなくなるほど楽しんだら、それを原稿にぶつけて、あなたにしか作れない「面白い」を世の中に突きつけてほしいと思います。
そんな作品が僕は読みたいです!
第81回新人漫画賞にて『orz』で入選。別冊少年マガジン2009年10月号より『進撃の巨人』を連載中。
(※この記事は週刊少年マガジン2017年41号に収録されたものです)
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▼漫画家(プロ)への花道【諫山創先生 編】前編はコチラ!
▼『進撃の巨人』がヘキサライドとコラボ!
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(終わり)