
今回は、「別マガ」3月号に掲載された【ショウ年マンガ】音楽家ヤマモトショウの自由研究 第7回「祝・FRUITS ZIPPER! 東京ドーム論!」を大公開!
●別マガ異色のエッセイ連載、第7回―!
ショウ年マンガ
音楽家ヤマモトショウの自由研究
第7回「祝・FRUITS ZIPPER! 東京ドーム論!」
■武道館は聖地。ドームは…神の領域!?
音楽業界では年末までにイベントが多く、1月は少し暇かも、なんてことを言っているうちに、あっという間にもう2月です。1月にはSAKKA FESというイベントで当時の作曲家たちが集まって「でんぱ組.inc」の名曲を生演奏するというイベントがあり、僕も一曲出演させていただきました。
今月のビッグイベントはなんと言っても、2/1の「FRUITS ZIPPER」初となる東京ドーム単独公演です。これを書いている時点では、まだライブは終わってないので感想は書けないのですが、東京ドームで単独公演をやるというのは想像以上にものすごいことなんですよね。
まずは集客。基本的には50000人を集められるアーティストにしか東京ドームでの単独ライブはできないわけです。武道館はアーティストの聖地であり憧れの場所ですが、人数だけで言ったら余裕を持って入るのは8000人くらいなので、桁違いの規模になります(そう考えると、アリーナは使わないにしても毎日のようにこの会場が埋まっているプロ野球ってとんでもない集客力ですね)。自分自身はバンド活動時には武道館にも辿り着いていないので、東京ドームで自分がライブをするというのは正直想像もできないです。
次に音響。大きな会場になると、音響のシステムも通常のライブハウスやホールのものとは異なってきます。なんせステージから客席まで100m以上あったりするわけなので、当然リアルにステージで出ている音と、客席で聴く音にはタイムラグが発生することになります。昔は「ドームは会場としては広くて豪華だけどライブ会場として音はあまり良くない」というような評価が一般的でした。音は基本的に四方に広がって減衰していくので、会場が広ければ広いほど、本来スピーカーから出ている音とは違う音が届くことになります。しかし最近では音響技術の進化もあって、それほど問題はなくなってきているようです。
さらには、チーム力。音響もその一部ですが、それ以外にもとんでもない人数のスタッフの方がいてようやく成立する規模のイベントです。会場もとにかく広いわけですが、実は意外とバンドであれば楽器がある分メンバーはそれほど動き回ることはできないので、会場が広くてもステージでやることは普段と大きくは変わらなかったりもするんですよね。その点、アイドルは会場が大きくなると当然ステージングにも大きな差が出てきて大変です。
実はこれを書いている数日前に「Hey!Say!JUMP」の東京ドーム公演を観る機会がありました(新アルバムで「劇的LOVE」という曲を提供しています)。彼らはドーム公演を毎年のようにやっているわけですが、初めて生で見たセットもステージングも圧巻でした。それでいて、ステージの遠さを感じさせないアットホームな雰囲気作りもできているのは、流石としかいいようがないです。
■『わたかわ』前夜のNEW KAWAII宣言!?
FRUITS ZIPPERは2022年の4月に活動開始した時は100人規模のライブハウスで、そこだって埋まるかどうかでした。過去ここまでの上げ幅があったアーティストがいたのか、というのも気になるところです。最初のライブのお客さんの中で、今回の東京ドーム公演にも参加される人は、どんな気持ちになるものなのでしょうか。
そのデビューライブより数ヶ月前のことですが、僕のスタジオで「わたしの一番かわいいところ」のレコーディングをしていました。メンバーと直接会うのはその日が初めてだったので、どんな人たちなのかと色々話をしたことを覚えています。どこでライブをやってみたいかという話もあったのですが、「東京ドーム」をその時点で口にしたメンバーはいませんでした。それは、心で思っていても初めて会う作曲家に言えるような簡単な目標ではなかったからかもしれません。でもある時からFRUITS ZIPPERのメンバーは「東京ドーム」というのをちゃんと公言するようになりました。その時ですら現実味があったのか、正直判定のしようはないのですが、僕は実はレコーディングのときに少しその可能性も感じていました。
というのも、当時メンバーやスタッフと「バズるかどうかはほとんど運だと思って地道に努力するしかない」という話を、データも元にかなりしっかり話をしました。その帰りがけのこと、松本かれんさんは僕の話を受けてもまっすぐに「私はバズると思うし、売れると思います」と言って帰っていったんですよね。そのときに、なんか漠然と「いけるかもな」と思ったんです。そのくらい自分自身や自分がやっていること・つくっているものを信じられる人だけが辿り着けるステージなのかもしれません。
■久々に行くと、デカくて嬉しい
東京ドームができたのは1988年なので、実は僕は同い年なんです。そういった意味でも親近感はありますが、様々なシーンでその名前が出るから、というのも馴染みのある理由の一つかもしれません。前述の通り、アーティストにとっての目標の会場として名前がよく挙がるのはもちろんですし、逆に東京ドーム公演を連続で何日やったというようなこともニュースになります。
あとは、よく「東京ドーム何個分」というような言い方で、建造物や空間に対して比較対象として扱われますね。マンガなどでもよく使われているイメージです(そしてそれが書いてあると「あ、この作品内には「東京ドーム」が存在するんだ」と思います)。具体的ではないにせよ、その「デカさ」をみんなが共有しているものとして存在しているわけで、これは本当にすごいことです。東京ドームのように、日本にいる人のほとんど誰もが大きさの尺度として把握できるものってなかなかないですよね。具体的に一つの場所が大きさの「基準」になっている、というのも面白いことだと思います。
そう考えてみると、マンガ好きなら絶対わかる「基準」みたいなものも存在するかもしれません。この数字ってこれのことだよな、とわかる数字がいくつかありますね。例えば「53万」とか。ただの数字なのに、なんのことか絶対わかりますよね。東京ドームも、ただの施設なのにその「一個分」がほとんどの人に共通な基準になっているわけです。
■日本最大のライブは…ドーム開催じゃない!?
さて、僕より上の世代の方の多くは覚えていると思いますが、今の20代の方などは日本国内で行われた単独のライブで、これまで最大の人数を動員したライブをご存知でしょうか?
かつて幕張で開催されたGLAYの「GLAY EXPO ‘99 SURVIVAL」で記録された約20万人というのが、今後も破られない不滅の記録なのではないかと思います。20万人というのは、そこそこ大きな市の人口くらいの数字ですからね。GLAYの人気が当時、国内でトップクラスだったのは言うまでもありませんが、今も同じように人気があるアーティスト自体はいると思います。しかし今は安全面も含めて当時と状況が違いすぎて、このような人数を一箇所に集めてライブを行うということはあまり現実的ではないように思います(単行本は記録更新されててすごいですよね)。いつかこのエッセイの企画で、各種「システム的にもう破られないであろう記録の話」もしてみたいです。
ということで、FRUITS ZIPPERの東京ドーム公演が、彼女たちの不滅の記録の第一歩になることを祈っています。
2月の担当編集
横浜ファンですが、東京ドームは大好き! ふるっぱーは永久に不滅です!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!
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