新人賞目前!! 特別企画第1弾!
漫画家を目指すキミに贈る漫画家への花道『化物語』大暮維人先生にインタビュー!
第104回新人漫画賞の締め切り目前! 今週と再来週の二号にわたってマガジン連載中の漫画家さんたちのインタビュー企画をお届けいたします!
第1回は『化物語』の大暮維人先生! 漫画家として化けるにはどうすればいいのか。ご自身の経験を振り返りながら、語っていただきました。
1995年デビュー。
その後『天上天下』や『エア・ギア』などの連載を経て、現在は週刊少年マガジンにて『化物語』(原作/西尾維新)を連載中。
秘訣1「心」
〜心の中をさらけ出せ!〜
――単刀直入にお聞きします。新人の方々が漫画家として化ける(実力を大きく伸ばす)には、まず何が必要だと思いますか。
大暮先生:
一つには、自分の心の中にある情熱を漫画にしっかり出すことが必要なんじゃないかと思います。「こういう漫画やこういう絵が描きたい!」という情熱です。
頭でっかちになると面白くなくなることが多いですし、漫画の技術は後からついてきます。粗削りでもいいので、心の中にある情熱でガーっと走って行ってほしいですね。情熱を全面に押しだすことをためらわずに進む力が必要だと思います。
――確かに「自分は何を描くべきなのかよく分からない」という新人の方は多いように思います。
大暮先生:
何を描くかということについては、本来他人に決めてもらうものではないはずですが、「描きたいものを描け」と言われると困る人は多いですよね。
恥ずかしかったり、そもそも何をやっていいかわからなかったり。漫画家の世界の中でも右に倣え的なものがあります。他人と違うことをして、読者に受け入れてもらえるのだろうかという不安は確かにありますが、それは考える必要のないことだと私は思うんです。
↑入選作『世界肉体野郎』のワンカット。バイクが描きたいという気持ちから、描き始めたという。
自分の心の中を直視して、それをそのまま漫画にさらけ出すことがとても重要だと考えています。心の中にあるものは、絶対にその人にしかないもの。つまりその人にしか描けない個性ある漫画に自ずとなっていると思うからです。
漫画家として化けようと思ったら、まず自分の心の中を直視して、それをそのまま漫画に出すことを恐れない、ということを意識してみてほしいです。とはいえ、本当にやりたいことはモチベーションの源泉として、常に心の中に残しておくべきだとも思っています。
―心の中をさらけ出すことが重要なんですね。ところで大暮先生は、1993年の「ホットミルク漫画大賞」にて初投稿作品で入選するわけですが、やはり入選作には大暮先生の〝心〟が出ているんでしょうか。
大暮先生:
まあ、そうですね。私もやっぱり恥ずかしいので、きっぱり「そうだ」とは答えづらいですが(笑)。 原点は変わっていないと今でも思います。入選作にある馬鹿っぽいノリは今でも大好きです。
――現在連載中の『化物語』においても大暮先生の〝心〟を出すことが出来た瞬間というのはあるのでしょうか。
大暮先生:
心の中にあるやりたいことやイメージを「満足に出せた!」というものはまだ正直ありませんし、今後も簡単ではないと思いますが、印象深いシーンを一つ挙げるとすれば戦場ヶ原が「I Love You」と告白する3連続見開きページでしょうか。
あれは『化物語』という西尾維新先生の素晴らしい原作があり、あのシーンの重要性が事前に分かってるから挑戦できたものでもありますが、私が新人の時にこれをやりたいと思っても、編集の方や他人の目を気にして出来ていなかったかもしれません。
ですが、新人の方には今の時期だからこそ、そういった心の中にあるものを恐れず積極的に漫画に出していってほしいですね。言葉以外の表現方法でも自分の気持ちを伝えることができたら楽しいはずです。
↑戦場ヶ原の告白をなんと見開き3連続の6ページで表現! 掲載当時話題になった
――自分のやってみたいことや心の中の欲求を、率直に表現することが大切なんですね!
秘訣2「技」
〜絵がうまくなるには、観察せよ!〜
――次は、描きたいものが決まった後にそれをどう描いていくのかということですが、大暮先生は圧倒的な画力が多くの読者に支持されています。新人の方が画力において化けるにはまず何が必要でしょうか。
大暮先生:
「観察」することがとても大事だと思っています。
『天上天下』を連載しながら、『エア・ギア』の連載が始まるタイミングで絵がうまくなったと周りの人によく言われるんですが、考えてみると当時は複数連載のためアシスタントさんをたくさん雇った時期だったんですね。
延べ50人くらいのアシスタントさんが、持てる技術とセンスを駆使して、多くの原稿を手伝ってくれていました。今考えると、その生原稿をじっくり見ることができたのが一番の勉強になったのだと思います。
当時はみんなアナログ原稿でしたから、ペンのタッチから強弱まで生原稿を見れば何でもわかったんです。デジタル原稿だとそれは難しいとは思いますが……。
――絵がうまくなるには「観察」ですか。少し意外です! 技術は目で盗め、ということですね!
大暮先生:
もちろん絵がうまくなるために一番必要なことは、描き続けることだと思います。
それ以外の方法があったら私が知りたいです(笑)。しかし、ただ漫然と描いているだけでは、うまくなりません。物をしっかりリアルに描くには、描く物をつぶさに観察して、描くべきポイントをおさえることが大事ですね。
例えば、若い時にやっていたのは、物を放り投げた時にどんな風に見えながら落ちてくるかを24コマ割りなどに分解して描いてみる、という練習です。物が落ちる過程を描こうとすると、対象物の全方向を描く必要があり、観察していないと描けないのです。
↑『天上天下』のヒロイン・棗亜夜を1巻(上)と8巻(下)で比較! 確かに連載の間に、絵がうまくなっている。
大暮先生:
このような練習を通して、たくさん物を描いていくと、物によって描くべきポイントがどこなのかよく分かってきます。ペットボトルで言えば、キャップのあるくびれ部分とか、底の部分とか、バーコード、ボトルフィルムの切り取り線などもですかね。
これらのどれかが絵に入ってるだけで、簡略化されたフォルムでも、それがペットボトルだと認識してもらえるようになります。つまりこれが、言葉を使わないコミュニケーションになりえるのではないかと思っています。
こういった「ポイントを観る目」を養うためには、身の回りのものから何でもしっかり観察するしかないと思います。
――観察してポイントを捉えながらひたすら描く、の繰り返しが大切なんですね!
秘訣3「体」
〜体をおろそかにするな!〜
――大暮先生が新人の時にしておけばよかったと後悔していることはありますか。
大暮先生:
新人の時にしておくべきだったなと後悔していることの一つは、体力づくりですね。マガジンのような週刊連載は連載が始まるとかなりの部分が体力勝負ですし、自分の心の中と向き合ったり、絵を描くのにもたくさん体力がいりますから。
あとは、絵柄を大きく変えるのにも体が大きく関わってくると感じています。若い時は手の筋肉が柔軟だったので、漫画っぽい絵からリアル寄りの絵まで比較的自由に絵柄を変えることが出来ましたが、年を取るごとに筋肉が硬まってきてしまうと、絵柄を変えることが難しくなりました。
一般的に、絵柄が変わらない人は頭が固い人だと思われているかもしれませんが、絵を実際に描いているのは手の筋肉ですから、体が硬くなってしまっているんだと私は思います。若い時は筋肉が柔軟でどんな絵柄にも変えることが出来る貴重な時期です。漫画家はインドアな職業ですが、手を含め体全体をおろそかにしてはいけないと思っています。
↑『エア・ギア』23巻(下)の表紙と1巻(上)の表紙を比較! 絵柄が変化していることが分かる。
――特に若い時は体に気を遣うことを忘れてしまいがちですよね……。
大暮先生:
そうですね。また、体力があると漫画以外の色々なことをやってみる余力も生まれますよね。家にずっと籠もって漫画を描いていると、どんどん自分の中の引き出しが無くなっていきますので、今でも新人の時にもうちょっと積極的に外に出て、色々なことを経験していればよかったと思っているんです。
――健全な精神は健全な肉体に宿る! 体力をしっかりつけて外に出ることも、漫画家として化けるための秘訣なんですね!
「心・技・体」を心得たら、恥を恐れずまずは投稿!
――最後に、プロの漫画家を目指す方々に向けて何か一言ありますか。
大暮先生:
「何を描くべきか」「絵がうまくなるには、どうしたらいいか」など悩みはつきないと思いますが、新人賞に応募する原稿は最大の練習場です!
最初からうまく描けないのは当たり前ですから、何も恐れずにまずは新人賞に向けて漫画を描きましょう! 新人賞に出せば必ず何か心に引っかかるものが返ってきます。その引っかかりが次への一歩になります。
漫画家としての大きな資質は「恥を恐れない」ことだと思いますので、恥を恐れず、心の中をそのまま出した原稿で勝負してみてください!
第104回新人漫画賞
締め切りは2020年3月31日(火) 当日消印有効!
新人賞の詳しい応募要項は週刊少年マガジン公式HPをチェック!
▼『化物語』はマガポケで読める!
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