マガポケベースマガポケの秘密基地! ここだけで読める面白記事あります!

【騙されたと思って1本!!】「別マガ」ムービーガイド 『夜警のレンブラント』青原想一郎先生&『帰れ! 大鶴谷帰宅倶楽部』田中カタパルト先生が選んだムービー編

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今回の推薦者は新連載『夜警のレンブラント』の青原想一郎先生と、同じく新連載『帰れ! 大鶴谷帰宅倶楽部』の田中カタパルト先生! アートを題材にした作品、珠玉のアニメ、はちゃめちゃアニメ、そして大監督が作った大人のためのアニメ。今回もいろんな作品が集まりました! 編集部オススメの作品も面白いのでチェックしてみてね!

 

●TITLE『永遠の門 ゴッホの見た未来』
ゴッホが見ていた景色とは

 今回最初の推薦者は「別マガ」7月号の巻頭カラー『夜警のレンブラント』でデビューを飾った青原想一郎先生だ! 夜警灯(光×銃)という懐中電灯を携え、暗闇世界でちびっこレンブラントが悪党相手に奮闘するというユニークな作品を生み出した青原先生が選んだ映画、1本目は『永遠の門 ゴッホの見た未来』だ!
 “仲間になりたい、一緒に座って酒を飲み、他愛ない話をしたい、タバコをもらったり、ワインを注がれたり、調子は? と聞かれ、それに答えて談笑する。時には誰かをスケッチしてプレゼントする、彼らはそれをどこかに飾る”。冒頭のモノローグはこの映画の主人公フィンセント・ファン・ゴッホ(ウィレム・デフォー)のものである。画家ゴッホの半生を描いた映画なのだ。
 ゴッホは『ひまわり』『夜のカフェテラス』など、誰もがどこかで目にしたことのある絵画の作者であるが、彼自身はこのモノローグにあるささやかな願いすら叶わなかった芸術家であった。最初の就職先(画商)はクビ、聖職者を挫折、画家を目指しながら、貧乏のどん底で精神を病み、孤独のうちに自殺。死後やっと世間から評価されるという、不幸の見本市みたいな人生を送った芸術家で、この映画でもそれは変わらない。ただ、自身が画家でもあるジュリアン・シュナーベル監督は、彼なりのゴッホをこの作品で描いている。
 絵描きとしてパリで全く評価されず、失意のゴッホが次に目指したのは南フランスのアルル。そこで、新しい光を見つけたいと言う彼の願いは叶えられる。どこまでも続く広大な畑、青い空、そして光を捉えようと、ひたすらキャンバスに向かうゴッホ。“平らな風景を前にすると永遠しか見えない。僕にしか見えないのか”と自問自答しながら、必死で美を追い求めるゴッホ。だが彼のそんな姿は村人には理解できない。彼らにとっては得体の知れない、見る価値のない絵を描く変人である。一緒に暮らしていた画家仲間ゴーギャンとも理解し合えず、ついには自分の片耳を切り落とすという自傷行為まで起こし、病院に入院させられてしまう。
 映画終盤、入院中の彼のもとに牧師(マッツ・ミケルセン)がやってきて会話するシーンが強烈な印象を残す。
 ゴッホの絵を指して“この絵は不愉快だ、醜い”という牧師に彼は“なぜ神は僕に醜いものを描く才能を?”と尋ねる。これに答えられない牧師。ゴッホは言う“もしかしたら神は時を間違えたのだと。未来の人々のために神は僕を画家にした” 一瞬、牧師はゴッホの絵の中に、自分には見えていない何かがあるのかと、絵を見直すのだが、そこに彼は美を見つけることができない。
青原先生がコメントを寄せてくれた。“孤独感を強く感じている人におすすめの1本。この映画の中で「心の急所を突く風景」が必ず見つかると思います。孤独を極めた男「ゴッホ」だからこそ感じることが許された強烈な自然を、映画を通して体験できる凄まじい映画です”。
 さて、読者の皆さんがこの作品で見る景色は?

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『ビッグ・アイズ』
鬼才ティム・バートン監督の、ゴースト画家の衝撃実話。

 

『永遠の門 ゴッホの見た未来』

発売中
DVD:4180円(税込)
発売:ギャガ/販売:松竹
提供:ギャガ、松竹
© Walk Home Productions LLC 2018

 

●TITLE『リズと青い鳥』
少女たちの願い

 青原先生、推薦作2本目は劇場長編アニメーション『リズと青い鳥』。マガジン読者にお馴染みの『映画 聲の形』のスタッフが再結集し、制作を京都アニメーションが担当した珠玉作だ。
 こちらの作品にも青原先生はコメントを寄せてくれました。
 “多幸感を感じつつも切なく終わる系映画の傑作。タイトルコールへの流れもため息が出るほど素晴らしいです。『響け!ユーフォニアム』シリーズ未視聴でも十分に楽しめます”。
 おっしゃる通り! 『響け!ユーフォニアム』シリーズは未見でしたが(勉強不足ですみません!)楽しめました!
 高校へと歩く少女。そのゆっくりした歩調は何か迷っているように見える。校門の手前の階段に座るその女子高生は、誰かを待っているようだ。彼女の名はみぞれ、北宇治高校吹奏楽部に所属する、オーボエ奏者だ。そこに現れるのは軽快な足取りのもう1人の少女、希美。同じ吹奏楽部のフルート奏者である。2人は一緒に高校へ向かう。前を歩くのは希美、その後ろに続くのはみぞれだ。映画はこの2人の物語である。
 3年生の2人にとって、最後のコンクールの自由曲が『リズと青い鳥』に決まった。童話『リズと青い鳥』を題材にした楽曲だ。この童話を知る希美は、みぞれに図書館で借りてきた絵本を見せながら“なんかちょっと私たちみたいだな”と言う。
 孤独な少女リズは、ある嵐の夜、自宅の庭で少女が倒れているのを見つける。それは少女に姿を変えた青い鳥だったが、リズと少女は仲良くなって一緒に暮らし始める。だが、青い鳥はいつしかリズのもとを離れ、飛び立っていってしまうという物語である。
 希美は“早く本番でこの曲吹きたいな”と言うが、みぞれは“本番なんて一生来なくていい”と呟く。
 観るものは最初、希美が青い鳥で、元気一杯の彼女は大空に飛び立とうとしているように見える。みぞれは大好きな希美との卒業という別れを前にして、不安で堪らない。コンクールだけでなく、大学進学という変化も2人に迫る。
 少年の友情物語には、どこかにライバル心が入ってしまうものだが、少女の友情物語はもっと複雑である。
 カメラは少女たちの足元を追っていく。その動きは少女たちの気持ちを表しているようだ。立ち止まり、クルリと方向を変えるかと思えば、飛ぶように弾む。少女たちの不安や迷い、怒りや期待がそんな細やかな描写で伝わってくる。
 リズが望んでいるのは……、青い鳥が願うのは……そしてみぞれと希美の、望みと願いは。
 繊細な少女たちの世界を、端正な音楽と淡い色調に乗せて作り上げた美しい作品だ。

▼編集部オススメ、もう1本!
『花とアリス 殺人事件』
こちらも少女の友情を描いたアニメーション!

 

『リズと青い鳥』

発売中
DVD:7480円(税込)
ブルーレイ:8580円(税込)

発売元:京都アニメーション・『響け!』製作委員会
 © 武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 

●TITLE『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』
野原家の大冒険!! 目指せ、高級焼き肉!!

 今回の推薦者2人目は、新連載『帰れ! 大鶴谷帰宅倶楽部』でセンターカラーを飾った田中カタパルト先生。推薦作1本目は『映画 クレヨンしんちゃん  嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』だ!
 今までにもクレヨンしんちゃんを推薦する作家さんは多かったが、タイミング等で紹介することができずにいた(すみません)。この度、めでたく“ムービーガイド”に登場です!
 漫画家はみんなしんちゃんが好き! もちろん読者も! そしてみんなヤキニクが好き!
 野原家のある日の朝食。しんのすけ、ひろし、ひまわり、そしてシロまでが貧相な朝食に怒りを爆発! だが母であり主婦のみさえには貧しい朝食にする理由があった! みさえは、数か月かけて食費を節約し、今晩の夕食のために高級焼き肉を準備していたのだ!!︎ これを知ったしんのすけたちは大喜び! ところがそこに白衣を着たヘンな顔のおじさんが乱入! しかも続いて少佐と呼ばれる怪しげな男まで現れ、白衣のおじさんに“さっさとアレを出せ”と迫る。だが白衣のおじさんは“アレはこの家族に託しました”と訳のわからないことを言い出す。すると少佐は“仕方がない。一緒に来てもらおう”と野原一家を連れ去ろうとする!? 危険を感じた一家は逃げ出すが、組織の一味っぽいこの相手は、かなりの力を持っており、なんと、野原家全員が指名手配犯として報道されてしまう!? しかもその罪状は、ひろしは異臭物陳列罪、みさえは年齢詐称、しんのすけは幼児変態罪、ひまわりは結婚詐欺、シロに至っては集団暴走行為及び飲酒運転!!︎ しかも賞金までかけられたものだから、一家は周囲から追われるハメに!!︎ 一味は何者なのか? 彼らが探しているのは何か? なぜ野原家が狙われるのか? 果たしてしんのすけたちは高級焼き肉を食べることが出来るのか!?
 この映画の魅力はなんと言っても家族の強い絆だ(もちろん愛犬のシロも含めて)!!︎
 途中、一家は離れ離れになるのだが、お互いを信じて(焼き肉も食べたいし)、目的地(熱海なんだけど、なぜかは映画を観てね)で会えると突き進む姿は笑える、じゃなくて感心する。家族が揃うまでの行程はジェットコースター・ムービーである(実際ジェットコースターにも乗るんだけど)。
 それにしても、5歳の幼稚園児に、なぜこうもみんなは惹かれるのか。みんな、お尻でダンスしたいのか、ストレートにものを言いたいのか。それともみんなに愛されたいのか。
 いずれにしても、この映画を観た後は、焼き肉を食べたくなること間違いなしである!

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ! オトナ帝国の逆襲』
クレヨンしんちゃんをもう1本!

 

『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード』

発売中
ブルーレイ:5280円(税込)

発売元: シンエイ動画
販売元: バンダイナムコフィルムワークス
© 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK

 

●TITLE『紅の豚』
宮崎駿監督が憧れた飛行艇乗り

 田中カタパルト先生推薦作2本目は『紅の豚』。これまたみんなが大好きなジブリ作品だ! 豚になった飛行艇乗りの物語である。
 主人公ポルコ・ロッソは、魔法をかけられ、豚になった飛行艇乗りだ。かつてはイタリア空軍のエースパイロットだったが、今では美しいアドリア海で、海賊ならぬ空賊を相手に賞金稼ぎで生計を立てている。彼の愛機は真紅の飛行艇サボイアS-21だ。
 そんな彼が安らぐ場所は、ホテル・アドリアーノ。アドリア海に浮かぶ美しいホテルで、女主人のジーナは戦死したかつての仲間の妻である。ホテル・アドリアーノには人間だった頃のポルコと飛行艇乗り仲間の写真が飾ってある。
 ジーナは無茶をするポルコを“馬鹿”と怒るが、男はなぜか女性から“馬鹿!!”となじられるのは嫌いじゃない。ほんとに馬鹿扱いだと問題だが、その言葉の前に、“憎みきれない”とか、“心配させて”を入れた馬鹿なら大歓迎である。他にも『エヴァ』のアスカみたいな女子に “あんた、馬鹿?”と言ってもらいたい男子も多そうだが。
 ポルコのせいで商売が出来ない空賊たちは、アメリカ人パイロットのカーチスを助っ人として雇う。カーチスはポルコを倒して名をあげようと彼をつけ狙うが、時代は世界大恐慌時代のイタリア、ファシスト政権の秘密警察や空軍もポルコを狙っていた……。
 “そういう事は人間同士でやんな。豚に国も法律もねえよ” “飛べない豚はただの豚だ” “ファシストになるくらいだったら豚の方がマシだ”かっこいいセリフが記憶に残る作品だ。ポルコはカッコいいのだ。17歳の若い飛行機設計技師の娘フィオが憧れを抱くのも分かる。それにしてもポルコは誰に魔法をかけられたのか? 本当は自分で魔法をかけたのではないだろうか。戦いたいのではなく飛びたい。そのためにポルコは豚になったのではないだろうか。その思いは宮崎監督のもう1本の作品『風立ちぬ』に通じる。
 『紅の豚』は大人に向けた作品である。宮崎監督はこの作品についてこのように語っている。“空を飛ぶロマンや飛行艇へのあふれる思い。人生の哀感や苦味も織り込んだ大人のためのアニメーション。戦争はイヤだけど、戦争ごっこは大好きという男性 仕事中毒の中年、そしてそんな男たちを愛する女性たち。みんなに見てもらいたい映画です”。大人のためのジブリ作品。未見の方はぜひご覧ください。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『華麗なるヒコーキ野郎』
空に憧れた男の物語をもう1本。

 

『紅の豚』

発売中
DVD:5170円(税込)
ブルーレイ:7480円(税込)

発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 1992 Studio Ghibli・NN

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

感想をポストする

 

▼『夜警のレンブラント』はマガポケで読める!

pocket.shonenmagazine.com

▼『帰れ! 大鶴谷帰宅倶楽部』はマガポケで読める!

pocket.shonenmagazine.com

▼前回の「別マガ」ムービーガイドはコチラ!

pocket.shonenmagazine.com

▼マガポケ漫画のオススメ記事はコチラ!

pocket.shonenmagazine.co

pocket.shonenmagazine.com