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読者の感情を揺さぶりたい! 『MAN OF RUST』漆白慶先生インタビュー

X(旧Twitter)で大きな反響を呼び、マガポケで連載化した『MAN OF RUST』。
深い崖の隙間で“地上人”から蔑まれて生きる“落界人”・ルオが、 “第六感”という超能力を開花させ、この世界を変えるために地上を目指す≪超王道少年漫画≫です!

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社

 

この王道バトルファンタジーを世に放った新進気鋭の漫画家・漆白慶先生に、マガポケで連載が決まった経緯や作品に込められた想いについて伺いました!

 

●60ページの大作をSNSに投稿!?

──漫画家を目指したきっかけを教えてください。

 

漆白慶先生:
もともとはバンド活動をしていたのですが、コロナ禍でダメになってしまって。絵を描くのは好きだったので、漫画を描いてみようと思い立ち、『MAN OF RUST』の原型になる漫画(『体が鉄になった男の話』)をX(旧Twitter)に投稿しました。それがバズったのがきっかけで、今の担当さんに声をかけてもらい、本格的に漫画を描き始めましたね。

 

 
X版『MAN OF RUST』(『体が鉄になった男の話』) 第1話

 

──『MAN OF RUST』が初めて描いた漫画だったのでしょうか?

 

漆白慶先生:
そうです。だから、アシスタント経験もないし、漫画のこともよく分かってなくて……。連載が決まったあとに、「コマ割りってなんだろう」と勉強し始めました。

 

──バズったのは予想外でしたか?

 

漆白慶先生:
バズるとも思ってなかったし、ただ単にアウトプットの場として投稿しただけでした。突然大勢の人に見られるようになって、正直怖かったです。2021年4月に第2話を投稿したとき、2日間でフォロワーが1万人ぐらい増えて、「何だこれ?」って。

 

担当編集:
僕が漆白さんをフォローしたのもそのタイミングでした。漆白さんの作品は60ページ超の大作で、骨太な王道バトルファンタジー。そんな作品がバズっているのを僕は見たことなくて、漆白さんの才能を感じました。

 

X版『MAN OF RUST』(『体が鉄になった男の話』) 第2話

 

●自然の中で育った子ども時代

──『MAN OF RUST』からは独特なワードセンスを感じますが、そのセンスはどこで培ったのでしょうか?

 

漆白慶先生:
本当ですか⁉ そう思ってもらえたなら、一番の影響は映画かなぁ。「バットマン」シリーズと『ショーシャンクの空に』は、昔からずっと週に1回ペースで観ています。

 

──音楽もよく聴きますか?

 

漆白慶先生:
ゲーム音楽やケルト系の音楽が好きです。バンド活動をしていましたが、人の声が入っていない音楽の方が好き。音楽の濃度が高くなりすぎる感じがするのかも? なので、自然の環境音とかもよく聴いています。

 

──“第六感”も、自然の摂理を「心」で捉えて力に変えるものです。昔から自然に触れてきたのでしょうか?

 

漆白慶先生:
生まれたところが、鳥と葉っぱと駄菓子屋しかない場所でした。それも“第六感”の設定に関係しているかもしれません。

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社

 

──どのような幼少期を過ごされたのか気になります。

 

漆白慶先生:
ベイブレード、爆丸、デュエル・マスターズ、ポケットモンスター、コロコロコミックが好きな、普通の子どもでした。あとは、焚火をしたり、木の実で遊んだり。平和なところだったので許されていたのですが、振り返ると、悪ガキだったかもしれません。

 

●バズったあとに燃え尽きた!? 紆余曲折の末に原点回帰

──X版の『MAN OF RUST』から、どのような経緯で連載に至ったのでしょう?

 

漆白慶先生:
2021年6月に3話を投稿してから、ちょっと燃え尽き症候群みたいになっちゃって……。1年ほど、ひたすらゲームをしていましたね(笑)。そんなときに、担当さんから声をかけてもらったんです。当時デザイン関係の仕事をしていたのですが、ちょうど転職しようと考えていた時期だったので、せっかくだから漫画の仕事に挑戦してみようと一念発起しました。

 

──連載版の『MAN OF RUST』は、X版からプロットやキャラ設定の変更がありますね。ここは担当編集と話して変更していったのでしょうか?

 

漆白慶先生:
相談しながら、ちょっとずつ変わっていきました。そこに一番苦しみましたね。X版は出てくる要素が多くて、それを整理するのが課題だな、と。最初はX版に登場する“鉄の悪魔”を“テツジン”にして、そこから物語を作ることになりました。今よりも“テツジン”がネームの中心になっていたと思います。

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社


漆白慶先生:
でも、打ち合わせを重ねるうちに、この作品の魅力は“第六感”にあるんじゃないかという話になって。もう一回ネームを切り直したら、原点回帰じゃないですけど、X版のときとほとんど同じ流れになったんです。それから、X版では少しあいまいだった“第六感”の定義をすり合わせる打ち合わせをしました。その中で、「物事の本質を捉えることによって授かる力」という設定が生まれて、急に開けた感じがしたんです。

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社


──二人三脚で連載版のネームを作り上げていったんですね。

 

漆白慶先生:
本当にそんな感じでした。ずっと苦しんでいましたが、一緒に作れてよかったです。

 

●ルオの物語は、ふと見上げた空から生まれた⁉

──高い崖壁に阻まれた「落界」から地上を目指すという設定は、どのようにして生まれたのでしょうか?

 

漆白慶先生:
一時期、ずっと部屋に引きこもっていた頃があったんです。真っ暗な部屋の中でゲームしかしない生活をして、生活も昼夜逆転して、朝6時とかに寝るんですよね。ある日、寝る前にタバコでも買いに行くかと思って外に出たら、目に飛び込んできた空が綺麗すぎて。自分はゲームしかしてないし、お金もない。バンドもダメになった。何もないけど、この空はすごく綺麗だ、って。自然とそんな気持ちになりました。そこで、もしも主人公が無理やり暗くて狭いところに閉じ込められていて、ふとしたときにこの空が見えたらヤバいんだろうなって思ったんです。そこからX版の原型が出来上がりました。

 

──地上を目指す主人公のルオに、そういった体験が映し出されているのかもしれないですね。

 

漆白慶先生:
たぶんそうだと思います。ルオは自分が一番描きやすいキャラクターなんです。何もないと面白くないから目の下にクマをつけたけど、自分が描き慣れている一般的な顔や髪型をしている男性ですし、親近感があります。

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社

 

──ルオが、地上のバケモノ“テツジン”の死骸“遺鉄”を盗んでしまうシーンも印象的です。

 

漆白慶先生:
キャラを描くときに、嫌われることを恐れずに描きたいんですよ。もちろん盗みは悪いことなんだけど、周囲から虐げられる中でそういうことだってあると思うんです。誰からも好かれる良い人過ぎるキャラじゃなくて、嫌われるところがありながらどこか憎めないキャラを描いていきたいです。

 

──青年になったルオにも、人間らしさを感じます。

 

漆白慶先生:
ルオは7年間も洞窟にいたし、人の心をまだ理解できていない部分はあります。その意味ではまだ子ども。でも、第六感は心で本質を掴む力なので、洞窟から出て人と出会う中で、ルオも「心」を学んでいくのだと思います。これからルオのダメな部分も含めて、もっと人間性を深掘りしていきたいですね。

 

『MAN OF RUST』 第1話 ©漆白慶/講談社

 

●ルオと癒炎(ゆえん)のイメージは、地球と太陽

──お気に入りのキャラクターはいますか?

 

漆白慶先生:
うーん、全員好きすぎるなぁ(笑)。みんな描いていて楽しいんだけど、あえて選ぶなら、やっぱり地上人の司教・イブスかな。イブスは、自分の常識が正しいと信じて疑わない男。それはルオにとっての悪かもしれないけど、彼自身は自分の正義を執行しているだけ。そのぶつかり合いもちゃんと描いてあげたいと思っています。

 

──ヒロインの癒炎はどうですか?

 

漆白慶先生:
癒炎はルオよりも先に生まれたキャラクターです。誰よりも優しくて純粋だからこそ、わがままな女の子。年齢はルオと同じだけど、精神年齢は8歳くらいの感覚です。ルオは「空を見たい」という想いから生まれたキャラだからこそ、癒炎はその空で輝く太陽であってほしくて。当初、癒炎の第六感は『太陽』にしようと考えていました。

 

『MAN OF RUST』 第4話 ©漆白慶/講談社

 

──どうして太陽なのでしょう?

 

漆白慶先生:
太陽には、「始まり」のイメージがあります。地球に生命が生まれたのだって、太陽の存在が理由の一つ。だから、ルオと癒炎には、地球と太陽の関係であってほしいんです。そして、「ルオの心を癒やす太陽」のイメージを浮かべていたら、「傷を癒やす炎」という第六感のアイデアが生まれました。

 

『MAN OF RUST』 第4話 ©漆白慶/講談社

 

──第9話では、癒炎が自警団に殺された罪人を火葬します。罪人が火葬されることで人間として葬られる、考えさせられる名場面です。

 

漆白慶先生:
自分の中では、命の弔いを表現するとても重要な場面になったと思っています。心を込めるとはどういうことかを描きたかったので。

 

『MAN OF RUST』 第9話 ©漆白慶/講談社


──ちなみに、先生が欲しい第六感はありますか?

 

漆白慶先生:
えぇ……『大気』かな。なんでもできそうじゃないですか? でも、大気の本質ってなんだろう……?

 

──第六感の覚醒は本質を掴まないといけないのが大変ですね。

 

漆白慶先生:
本質を考えるときが一番大変なんですよ。何かアッと思わせる捉え方をするために、常日頃からアンテナを張って、いろいろなことの本質を考えながら生活しています。もしも第六感を使えたら、僕が最強の覚醒者になるかもしれないです(笑)。

 

●“いっぺん”に込められた言葉のセンスとは?

──先生のお気に入りのシーンについて教えてください。

 

漆白慶先生:
第5話で、イブスが司教たちにルオを逃した責任を追求される場面ですかね。ヒゲをイジられるところが気に入ってます(笑)。あとは、第8話で、癒炎がゴミ箱から虫の抜け殻を見つけるところも好きですし、第2話でレーナという落界人の女の子が表現した「ボゴジュヲアァ」というオノマトペも好きですね。

 

『MAN OF RUST』 第2話 ©漆白慶/講談社

 

──オノマトペもそうですが、本作に出てくるセリフは印象的なものが多いです。

 

担当編集:
漆白先生のセリフへの嗅覚を感じたエピソードがあって。レーナのお父さんが「この狂った世界をいっぺんぶっ壊してくれ」と言うシーンで、「『この世界をぶっ壊してくれ』のほうが端的で良くないですか?」と伝えたら、「『いっぺん』がないとダメなんです」と。

 

漆白慶先生:
「ぶっ壊してくれ」は聞いたことのあるセリフじゃないですか。だけど、「いっぺん」があることで、ちゃんとこのシーンで必要な言葉になる感覚がありました。

 

『MAN OF RUST』 第2話 ©漆白慶/講談社

 

──バトルシーンにも独特な勢いがあるように思います。

 

漆白慶先生:
本当ですか? 僕はとりあえず筆を走らせることしかできないので……。描きながら、漫画ってなんだろうとずっと悩んでいます。

 

──バトルシーンを描くときに意識していることはありますか?

 

漆白慶先生:
最初はただ起こっている状況を描けばいいと思っていたのですが、どうやら違っていて(笑)。セリフの位置や視線誘導、コマ割りとか、漫画にはいろいろな要素があるんですよね。今はとにかく、「体のバランスを崩さない」「動いているところは斜線を入れる」とかの基本的なことを守りながら、どうすれば臨場感が出せるのか試行錯誤しています。

 

『MAN OF RUST』 第8話 ©漆白慶/講談社

 

●社会に一石を投じる作品に!?

──今後注目してほしいシーンや見どころを教えてください。

 

漆白慶先生:
キャラクターの成長を見守ってほしいですね。そのうえで、読者の皆さんに「これはどういうことなんだろう」と興味を持ってもらえるよう、設定や情報を少しずつ作品の中に散りばめていくつもりです。

 

『MAN OF RUST』 第2話 ©漆白慶/講談社

 

──物事の本質に光を当てる本作は、人間や社会の本質に迫るものがあるように思います。

 

漆白慶先生:
社会の本質は捉え方次第で正解はないわけですけど、ネガティブな感情を引き起こしそうなことでも恐れず描いて、読んでくださった方の感情や世界観を揺さぶっていけたらいいなと思います。

 

──最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

 

漆白慶先生:
この作品は、Xで応援してくれた人たちのために描いているところがあります。X版のときのキャラクター像は、基本的に変えるつもりはありません。X版を読んでくださった方も、マガポケで知ってくださった方も、みんなが楽しめる作品を描いていくので、読んでください!

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