別冊少年マガジンで大人気連載中のコラム
『別マガ ムービーガイド』を大公開!!
週マガ編集部の映画担当が、漫画家さんや編集部員のオススメ映画を聞いて、それを紹介するコーナー!
今回は、2018年10月号に掲載された編集部員の香山編をお届けします!
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名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。
紹介された映画が気に入ったら、オマケで編集部のオススメのもう1本もご覧くださ〜い!!
今回の推薦者は、新入社員にして『荒ぶる季節の乙女どもよ。』担当香山である。
新入社員といっても、社会人経験を積んできた男なので、周囲の評判は〝それなりにこなれた男〟。その評価がどうなのかはさておき、推薦作である。
1作目は
『桐島、部活やめるってよ』。
朝井リョウの青春小説の 実写映画化だ。
なかなかうまいタイトルである。このタイトルを聞いただけで、なんとなく高校生活のざわざわ感が伝わる。
で、この桐島が主役かと思いきや、実は桐島はほぼ登場しない(遠目にちょこっと。後ろ姿ちょこっとくらい)。桐島を取り巻く生徒たちが主役なのだ。
読者もご存じのように、高校にはスクールカーストなるものが存在する。例の三角形の図である。
その頂点にいるのは、運動部のスター選手である。
桐島はどうもその一人らしい。全国大会にも出場するような名門バレーボール部を率いるキャプテンである。彼の周りには、クラスでも目立ちそうなモテ男とモテ女が集まっている。
その次に位置するのは、普通の生徒だ。
自分たちが所属する運動部や文化部でそれなりに、なんとか やっている。野球部やバドミントン部、吹奏楽部などだ。
そしてスクールカースト、底辺にいるのが
文化部のモテない男たちである(例:映画部 女子部員なし)。
彼らは部室にたむろし、モテる男たちを呪いながら、オタク話にうつつを抜かす(だからモテないのか!?)。
ある日、ある男子学生の放った
〝桐島、部活やめるってよ〟
の一言が、思わぬ波紋を投げかける。
やめる理由はわからない、本人も姿を見せない。
桐島の彼女、梨紗(山本美月)は桐島から何も聞かされていなかったことに動揺。そのことに同情しているようで、実は興味津々の親友沙奈(松岡茉優)。
同じグループの男子3人は、自分の立ち位置に居心地の悪さを感じ始める。
影響は桐島グループのメンバーではない生徒たちにも及んでゆく。
個人的に感情移入しちゃったのは、映画部員。桐島グループのモテ女子に相手にされない彼らは陰で
〝俺が監督だったら、あいつら使わないね。笑ってろ、今のうち〟
完全に負け惜しみであるが、気持ちは分かる。
昔、オタク監督として有名なティム・バートン監督(『バットマン』旧シリー ズ『シザーハンズ』『チャーリーとチョコレートエ場』等)にインタビューした時、なぜかかつてのクラスの人気者の話になって、〝あの頃スターだった彼らは、今何をしてるんだろうね〟と、どことなく勝った感をだしていたのを思い出す。
オタク読者諸君、今はモテなくても、勝てる日は来る!!(かも)
それにしても、高校時代というのは、切ないものだ。
吹奏楽部の女子が、屋上で楽器の練習をするのは、思いを寄せる男子を見ていたいからであり、バドミントン部の女子が、背の低いバレー部男子をかばうのは、優秀だった亡き姉と比べられる自分を彼に見るからである。
青春映画を撮るように顧問から言われても〝俺たちに恋愛ものは無理だよ。どうせなら作りたいモノ作ろう!!〟とゾンビ映画を作る映画部。
この映画の最後のセリフはこうだ。
〝俺たちは、この世界で生きていかねばならないのだから〟。
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香山、2作目は
『シング・ストリート
未来へのうた』。
もしかして香山くん、キミは青春映画マニアか。こちらはバンド青春ものである。
舞台は1985年、アイルランド、ダブリン。
ロウラー一家は、厳しい経済状況下にある。
父親は失業。母親は週3日しか働けない、となると割を食うのは子供である。
兄ブレンダンは大学を中退させられ、高校生の弟コナーは私立のイエズス会系の学校から、公立のカトリック系の学校へ転校させられる。
どっちもキリスト教なんだから、そう違わないかと思ったら、転校先のカトリック系高校、シング・ストリート高校はやたら荒っぽいのである。
なんせモットーは〝雄々しくあれ〟。
生徒たちは、タバコは吸うわ、けんかは日常のヤンキー高校なのである。
カトリック系ヤンキー高校、日本ではまず考えられないが、アイルランドではアリなんだろう。
毎日ビビリながらも学校へ通うコナーに、
ある日女神が舞い降りる!!
自称モデルのラフィーナである。高校の前に立っていた彼女に、ひとめぼれしたコナーは大胆にも話しかけ、
〝僕のバンドのビデオに出ない?〟
もちろん嘘八百である。
男子がバンドを始める理由の9割は、断言してもいいが、
女子にモテたいからである。
校内コンサルタントを自認するダーレンをマネージャーにし、楽器がうまいエイモン、街で唯一の黒人ということでスカウトされたンギグ、メンバー募集の張り紙でやってきたギャリーとラリー、5人でバンドを結成するコナー。
バンド名はシング・ストリート。
(高校の名前SYNGE STREETにひっかけて
SING STREET)
ロックの師匠である兄ブレンダンから、
他人の曲で口説くな、
上手くやろうと思うな。
カバーはよせ。
ロックはリスクだ、
笑われるリスクだ!!
と、なんだかわかったような、わからないような、でも説得力だけは異常にあるアドバイスを受け、曲作りを始めるコナーたち。
そしてその曲が、驚いたことに素晴らしいのだ。
ラフィーナも含め、彼らの背景には、家庭崩壊、貧困、家庭内暴力、理解のない教師と言った、彼ら自身ではどうにもならない問題が存在するが、彼らの作る曲は、それに負けない力を持つのだ。
80年代のロックの名曲の数々と、シング・ストリートの曲は、慰めや励ましを必要としている人に聞かせたい。
そしてこの映画は、慰めと励ましの映画なのである。
(ちなみにあまりに音楽がいいので、サントラCD買ってしまった)
(※この記事は別冊少年マガジン2018年10月号に収録されたものです)
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(終わり)