マガポケベースマガポケの秘密基地! ここだけで読める面白記事あります!

別マガ ムービーガイド『騙されたと思って1本!!』〜編集部員 香山編〜

f:id:magazine_pocket:20171110162328j:plain

 

 

別冊少年マガジンで大人気連載中のコラム

『別マガ ムービーガイド』を大公開!!

 

週マガ編集部の映画担当が、漫画家さんや編集部員のオススメ映画を聞いて、それを紹介するコーナー!

 

今回は、2018年10月号に掲載された編集部員の香山編をお届けします!

 

🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 

 

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。

 

紹介された映画が気に入ったら、オマケで編集部のオススメのもう1本もご覧くださ〜い!!

 

 

今回の推薦者は、新入社員にして『荒ぶる季節の乙女どもよ。』担当香山である。

 

新入社員といっても、社会人経験を積んできた男なので、周囲の評判は〝それなりにこなれた男〟。その評価がどうなのかはさておき、推薦作である。

 

 

1作目は

 

『桐島、部活やめるってよ』

 

朝井リョウの青春小説の 実写映画化だ。

 

なかなかうまいタイトルである。このタイトルを聞いただけで、なんとなく高校生活のざわざわ感が伝わる。

 

で、この桐島が主役かと思いきや、実は桐島はほぼ登場しない(遠目にちょこっと。後ろ姿ちょこっとくらい)桐島を取り巻く生徒たちが主役なのだ。

 

 

読者もご存じのように、高校にはスクールカーストなるものが存在する。例の三角形の図である。

 

その頂点にいるのは、運動部のスター選手である。

 

桐島はどうもその一人らしい。全国大会にも出場するような名門バレーボール部を率いるキャプテンである。彼の周りには、クラスでも目立ちそうなモテ男とモテ女が集まっている。

 

その次に位置するのは、普通の生徒だ。

 

自分たちが所属する運動部や文化部でそれなりに、なんとか やっている。野球部やバドミントン部、吹奏楽部などだ。

 

そしてスクールカースト、底辺にいるのが

文化部のモテない男たちである(例:映画部 女子部員なし)。

 

彼らは部室にたむろし、モテる男たちを呪いながら、オタク話にうつつを抜かす(だからモテないのか!?)

 

 

ある日、ある男子学生の放った

 

〝桐島、部活やめるってよ〟

 

の一言が、思わぬ波紋を投げかける。

 

やめる理由はわからない、本人も姿を見せない。 

 

桐島の彼女、梨紗(山本美月)は桐島から何も聞かされていなかったことに動揺。そのことに同情しているようで、実は興味津々の親友沙奈(松岡茉優)。

 

同じグループの男子3人は、自分の立ち位置に居心地の悪さを感じ始める。

 

影響は桐島グループのメンバーではない生徒たちにも及んでゆく。

 

個人的に感情移入しちゃったのは、映画部員。桐島グループのモテ女子に相手にされない彼らは陰で

 

〝俺が監督だったら、あいつら使わないね。笑ってろ、今のうち〟

 

完全に負け惜しみであるが、気持ちは分かる。

 

昔、オタク監督として有名なティム・バートン監督(『バットマン』旧シリー ズ『シザーハンズ』『チャーリーとチョコレートエ場』等)にインタビューした時、なぜかかつてのクラスの人気者の話になって、〝あの頃スターだった彼らは、今何をしてるんだろうね〟と、どことなく勝った感をだしていたのを思い出す。

 

オタク読者諸君、今はモテなくても、勝てる日は来る!!(かも)

 

 

それにしても、高校時代というのは、切ないものだ。

 

吹奏楽部の女子が、屋上で楽器の練習をするのは、思いを寄せる男子を見ていたいからであり、バドミントン部の女子が、背の低いバレー部男子をかばうのは、優秀だった亡き姉と比べられる自分を彼に見るからである。

 

青春映画を撮るように顧問から言われても〝俺たちに恋愛ものは無理だよ。どうせなら作りたいモノ作ろう!!〟とゾンビ映画を作る映画部。

 

この映画の最後のセリフはこうだ。

 

〝俺たちは、この世界で生きていかねばならないのだから〟。

 

f:id:magazine_pocket:20181005162131j:plain

 

 

🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞 🎞  

 

香山、2作目は

 

『シング・ストリート

 未来へのうた』。

 

f:id:magazine_pocket:20180919002628j:plain

 

もしかして香山くん、キミは青春映画マニアか。こちらはバンド青春ものである。

 

 

舞台は1985年、アイルランド、ダブリン。

 

ロウラー一家は、厳しい経済状況下にある。

 

父親は失業。母親は週3日しか働けない、となると割を食うのは子供である。

 

兄ブレンダンは大学を中退させられ、高校生の弟コナーは私立のイエズス会系の学校から、公立のカトリック系の学校へ転校させられる。

 

どっちもキリスト教なんだから、そう違わないかと思ったら、転校先のカトリック系高校、シング・ストリート高校はやたら荒っぽいのである。

 

なんせモットーは〝雄々しくあれ

 

生徒たちは、タバコは吸うわ、けんかは日常のヤンキー高校なのである。

 

カトリック系ヤンキー高校、日本ではまず考えられないが、アイルランドではアリなんだろう。

 

毎日ビビリながらも学校へ通うコナーに、

ある日女神が舞い降りる!!

 

自称モデルのラフィーナである。高校の前に立っていた彼女に、ひとめぼれしたコナーは大胆にも話しかけ、

 

〝僕のバンドのビデオに出ない?〟

 

もちろん嘘八百である。

 

男子がバンドを始める理由の9割は、断言してもいいが、

 

女子にモテたいからである。

 

 

校内コンサルタントを自認するダーレンをマネージャーにし、楽器がうまいエイモン、街で唯一の黒人ということでスカウトされたンギグ、メンバー募集の張り紙でやってきたギャリーとラリー、5人でバンドを結成するコナー。

 

バンド名はシング・ストリート

(高校の名前SYNGE STREETにひっかけて

SING STREET)

 

ロックの師匠である兄ブレンダンから、

 

他人の曲で口説くな、

 

上手くやろうと思うな。

 

カバーはよせ。

 

ロックはリスクだ、

笑われるリスクだ!!

 

と、なんだかわかったような、わからないような、でも説得力だけは異常にあるアドバイスを受け、曲作りを始めるコナーたち。

 

そしてその曲が、驚いたことに素晴らしいのだ。

 

ラフィーナも含め、彼らの背景には、家庭崩壊、貧困、家庭内暴力、理解のない教師と言った、彼ら自身ではどうにもならない問題が存在するが、彼らの作る曲は、それに負けない力を持つのだ。

 

80年代のロックの名曲の数々と、シング・ストリートの曲は、慰めや励ましを必要としている人に聞かせたい。

 

そしてこの映画は、慰めと励ましの映画なのである。

 

(ちなみにあまりに音楽がいいので、サントラCD買ってしまった)

 

f:id:magazine_pocket:20180925204216j:plain

  

 

(※この記事は別冊少年マガジン2018年10月号に収録されたものです)

 

   

▼「マガポケ」のDLはコチラから!

<App Store>iPhone/iPadの方

https://itunes.apple.com/jp/app/id998542154

<Google Play>Android端末の方

https://play.google.com/store/apps/details?id=jp.co.kodansha.android.magazinepocket

 

(終わり)