「マガポケ」に『はじめの一歩』が初登場! 1~61巻を2月7日まで期間延長して無料公開中! それを記念して、『はじめの一歩』の魅力を、ボクシング経験者のライターTが3回にわたって紹介。第2回は、主人公・一歩が所属する鴨川ジムの仲間たちのエピソードを紹介! ボクシング漫画の時代を築いた名作をご堪能ください!!
【目次】
- ●一歩の恩人! 鴨川ジムの看板選手・鷹村守!!
- ●鴨川ジムのムードメーカー! トリッキーな先輩選手・青木勝!!
- ●鴨川ジムの縁の下の力持ち! 熱い正統派ボクサー・木村達也!!
- ●一歩を慕う後輩! 鴨川ジムの有望株・板垣学!!
- ●ボクサー・幕之内一歩の育ての親! “鉄拳”鴨川会長!!
●一歩の恩人! 鴨川ジムの看板選手・鷹村守!!
【鷹村と一歩】
鷹村は一歩にとって、ボクシングを始めるきっかけを与えてくれた恩人である。一歩が高校生の時、同級生に苛められていたところに鷹村が現れ、いじめっ子たちを一蹴。その流れから、一歩は鷹村にボクシングの手解きを受け、やがて彼の所属する鴨川ジムに入門することとなった!
鷹村は一歩の憧れであり、良き兄貴分といった存在。彼は鴨川ジムの看板選手であり、一歩と出逢った時点ですでに新人王を獲得、その後もトントン拍子でミドル級の日本王者となり、破竹の勢いで世界への階段を駆け上っていく。強烈無比なパンチ力と闘争本能を剥き出しにしたファイトスタイルは客受けも良く、彼の試合は常に超満員。人気と実力を併せ持つ鷹村は、日本ボクシング界の切り札と呼ばれるまでの存在となる。
彼の強さはまさに規格外。人間相手では飽き足らず、野生の熊をも素手で仕留めてしまう程。また、いわゆるガキ大将気質のため、面倒見が良い一方でイタズラ好き。時折子どもじみた行動で、一歩をはじめとするジムの後輩たちや、鴨川会長にまで迷惑をかけることがある。良くも悪くも豪放磊落で、思わず応援したくなってしまう男だ。
【鷹村’sベストバウト 日米怪物対決! VS.ブライアン・ホーク】
そんなビクトリーロードを歩んできた鷹村が初めて「強敵」と相見えたのが、世界タイトルマッチ。鷹村はもちろん、鴨川ジムにとっても待ちに待った一戦だ。対戦相手はアメリカのブライアン・ホーク。鷹村の本来の階級はミドル級だが、チャンピオンのホークはJ(ジュニア)・ミドル。つまりタイトルマッチを実現するため、1階級下まで体重を落とさなければならず、鷹村はきつい減量を迫られた。また、ホークは前哨戦の試合会場に顔を出して鷹村を挑発。世界タイトルマッチは、試合前からきな臭い雰囲気が漂うことに――。
傲慢な態度が目立つホークだが、その実力は紛れもない本物。類い希なパンチ力に加え、野獣のような闘争本能を剥き出しにしたファイトスタイルは、どこか鷹村に近い部分がある。もっとも、普段はいい加減な鷹村がボクシングに対してだけは真摯に向き合い、トレーニングも真面目にこなすのに対して、ホークは練習嫌い。ずば抜けた身体能力と、特定の型を持たない天衣無縫なボクシングで世界の頂点に登りつめたホークは、才能だけで言えば鷹村を上回る怪物だ。
ブライアン・ホークのファイトスタイルを見て、私はかつてのフェザー級世界王者“プリンス”ナジーム・ハメドのボクシングを思い出した。ハメドのボクシングの枠に収まりきらない天性の闘いぶりは「ハメド・スタイル」と呼ばれ、センセーションを巻き起こした。派手な入場パフォーマンスに大言壮語をまき散らすなど、リング外でも大いに話題を振りまいた男である。日本では「悪魔王子」というニックネームが付き、ハメドはどちらかというとヒール的な立ち位置のボクサーだった。しかし、他の誰にもマネの出来ない彼のボクシングは、実に魅力的。むしろ、その悪さもまた客を惹きつける要素になっていた。現実にホークがいたとしたら、ハメドのようなボクサーになっていただろうかと想像する。
そんな強者を迎える日米怪物対決は、序盤から激しい打ち合いとなる。研ぎ澄ませた技術を存分に発揮して強烈なパンチを繰りだす鷹村に対して、ボクシングのセオリーに当てはまらない野性的な動きで襲いかかるホーク。その才能は鷹村と鴨川の予想を大きく上回るものだった。ホークの型破りな攻撃は、徐々に鷹村を追いつめていく。
そんな窮地に立たされた鷹村を救ったのは、ボクシングを始めた頃から、鴨川会長と丹念に磨き続けた基本技術、ジャブだった! そのジャブには、鴨川のボクシングが世界に通用することを証明したいという、鷹村の思いが込められていた。この攻撃を皮切りに鷹村は覚醒。鷹村とホークの死闘は異次元の領域に突き進んでいく――!!
鷹村VS.ブライアン・ホークは【Round 379】~をチェック!
●鴨川ジムのムードメーカー! トリッキーな先輩選手・青木勝!!
【青木と一歩】
青木は鴨川ジムの中堅選手。気さくで面倒見のいい性格で、よく一歩のスパーリングに協力し、一歩のボディブローで悶絶する…なんて時もある。また、青木の彼女・トミ子は、一歩が想いを寄せる久美の同僚。奥手な一歩の背中を押してくれる良き先輩だ。
かつて青木は、同級生の木村達也と喧嘩に明け暮れる不良少年だった。そんな折、木村と共に喧嘩をふっかけた鷹村に敢えなく惨敗。リベンジのために鷹村が所属する鴨川ジムに入門し、ボクシングを始めた。鷹村に一発食らわせるために猛練習を積んだ彼は、プロとなりデビュー戦で勝利を飾る。かくしてボクシングの面白さに目覚めた青木は、自分を変えるきっかけを与えてくれた鷹村に敬意を抱くようになる。
ちなみに彼はラーメン屋でバイトをしており、料理の腕はかなりのもの。さらにボウリングや野球などもセミプロ級の実力の持ち主。意外にも多才な男であるが、むしろボクシングよりも、別の道に進んでいた方が成功していたのでは? なんて思ってしまうことも。
ボクサーとしての青木は、かなりトリッキーなタイプ。相手の目の前で突然しゃがみ込み、大きくジャンプしながらアッパーを放つ「カエルパンチ」に代表される変則的な攻撃で相手の意表を突く。動きだけでなく心理面でも相手を揺さぶる彼の闘いぶりは、まさにトリックスターだ。
【青木’sベストバウト “新兵器”「よそ見」! VS.今江克孝】
青木のベストバウトは、日本タイトルマッチ。対戦するチャンピオンの今江克孝は、努力型の正統派ボクサーで、変則スタイルの青木とは完全に対照的な存在だ。
対戦に先立って今江は青木の過去の対戦ビデオを丹念に観察し、十分な対策を練ってきた。青木は変幻自在な動きで翻弄しようと試みるが、今江はそのことごとくに冷静に対応。序盤から窮地に立たされる青木だったが、そんな状況でも青木の頭脳はフル回転していた。なんと青木は、深刻なダメージを受けたフリをしながら今江の猛攻を誘い、彼を疲労させようとしていたのだ!
そしてふたりの闘いは徐々に泥仕合の様相を呈していく。今江の疲労がピークに達し、冷静な判断力を失ったその時、青木はこの試合のために温めていた“新兵器”「よそ見」を繰りだす――!!
青木VS.今江は【Round 447】~をチェック!
怪物的な強さを持つ鷹村や、天性のパンチ力を持つ一歩などと違い、ずば抜けた才能のない青木は、ある意味もっとも身近に感じられるボクサーだ。彼は自分に足りない部分を埋めようと、必死に知恵を絞る。
そんな彼の奇想天外なボクシングは、往年の名ボクサー・輪島功一を思い出させる。彼も極めて変則的なボクシングで相手を翻弄し、強豪ひしめくウェルター級で3度も世界王者を手にした。青木の「カエルパンチ」は実際に輪島が使ったもの。今江戦で使った「よそ見」も同様だ。もっとも、この「よそ見」は、有効だと分かっていても、互いにパンチを打ち合う試合で使うには、とんでもなく勇気がいるはずだ。何が飛び出すか分からないびっくり箱のような青木の闘いぶりは、ボクシングがエンターテインメントであることを改めて感じさせてくれる。
●鴨川ジムの縁の下の力持ち! 熱い正統派ボクサー・木村達也!!
【木村と一歩】
木村はフットワークを使いながら、相手との距離を保って闘うアウトボクサータイプ。一発のパンチ力こそないものの、リズム感に優れたテンポの良い攻撃が持ち味だ。
木村の階級はJ・ライト級で、一歩のフェザー級とは1階級しか違わないため、スパーリングを行うことも多い。木村のスタイルは一歩にとって苦手ということもあり、入門当初は完全に手玉に取られていた。ところがその後の一歩は、数々の強敵との対戦を経て急激に力を付けていく。木村自身も日本ランカーに昇格したが、一歩の成長に喜びつつも、先輩として負けられないという、複雑な感情を抱えていた。
前述のように、木村と青木は高校時代、一緒に暴れ回ったヤンチャ仲間。それだけでなく、少年野球のチームメイトでもあった。しかも青木がエース・ピッチャーで、木村は強打の四番打者。青木もそうだが、そのまま野球を続けていたら、もっと活躍出来たのかもしれない。しかし、木村自身は、思い通りに行かない現実を受け止めつつも、ボクシングの道に進んだこと自体は後悔していないのだ。
【木村’sベストバウト 先輩の意地が光る! VS.間柴了】
そんな木村のベストファイトは、日本タイトルマッチ。対戦相手はなんと“死神”間柴了。かつて一歩と死闘を繰り広げたフリッカージャブの使い手である。間柴は一歩との対戦後に階級を上げ、J・ライト級の日本王者に登りつめていた。間柴の妹である久美と仲を深めていた一歩にとっては、かなり複雑な対戦カードでもある。
間柴は階級を上げたことでパンチ力もアップし、国内では敵なしと言われる存在となっていた。なにしろタイトルマッチを打診された日本1位と2位のランカーが対戦から逃げたため、3位の木村に出番が回ってきたほどだ。しかし、目の前で一歩の成長を見てきた木村は、先輩の意地にかけてもこの与えられたチャンスをモノにしようとこの勝負に挑む決意をした。
そこで木村は、かつてのジム仲間である宮田一郎に、打倒間柴への協力を要請。宮田との練習で、距離を取りパンチを当てる間柴の「フリッカージャブ」をかいくぐり、懐に潜り込むタイミングを掴んだ木村。しかし、彼はそこから相手をなぎ倒す決め技がないことに気づく。絶望感に苛まれる木村だったが、意外なところから間柴対策のヒントを見出した――!!
そして迎えた日本タイトルマッチ。間柴は切れ味と破壊力を増したフリッカーで、序盤から木村を攻め立てる。一方の木村は嵐のような間柴の猛攻を被弾しながらも愚直に前身してボディを攻撃。
白熱する試合の終盤、木村がこの試合のために完成させた「ドラゴン・フィッシュブロー」が炸裂!! この一撃をきっかけに、両者の闘いは先の見えない大熱戦となっていく――。
木村VS.間柴は【Round 277】~をチェック!
●一歩を慕う後輩! 鴨川ジムの有望株・板垣学!!
【板垣と一歩】
板垣は一歩の後輩。インターハイで国体準優勝という経歴を持つアマチュアエリートである。将来有望な選手だけに大手のジムにも入れたはずなのだが、彼は敢えて鴨川ジムを選んだ。それには、板垣のアマチュア時代のライバル・今井京介を倒すため、という理由があった。今井は一歩に近いタイプのインファイターである。板垣は、今井以上の攻撃型インファイターである一歩と共にトレーニングすることで、ライバルを倒す手立てを掴もうと考えていたのだ。
【板垣’sベストバウト 手痛いプロの洗礼! VS.牧野文人】
板垣は、一歩のライバルである宮田に近いテクニシャン。俊敏なフットワークにハンドスピード、天性の反射神経とセンスを併せ持つ有望株だ。
迎えたデビュー戦、相手は実力的には板垣に及ばないと思われるボクサーだ。試合開始時は実力通り、板垣が圧倒。しかし2戦2敗で崖っぷちの対戦相手は、なりふり構わないラフファイトに打って出る。その際、バッティング(頭突き)とエルボー(肘撃ち)を受けた板垣は2度のダウンを喫し、レフェリーストップの憂き目に遭ってしまったのだ。板垣は反則をアピールするも、レフェリーには認められずじまい。アマチュアエリートの板垣は、手痛いプロの洗礼を受けた。
板垣VS.牧野は【Round 363】~をチェック!
デビュー戦こそ躓いたものの、一歩の家業である釣り船屋で働きながら、一歩の強さの秘密を貪欲に吸収した彼は、ボクサーとして一回り大きく成長していく。その後、板垣は順調に勝ち星を重ねていく選手となる。
●ボクサー・幕之内一歩の育ての親! “鉄拳”鴨川会長!!
【鴨川会長と一歩】
鴨川ジムの会長である鴨川源二は、第二次大戦中からボクシングに携わってきた業界の生き字引的な存在だ。鷹村に連れられ一歩が鴨川ジムを訪れた当初は、一歩の闘争心のなさから見込みなしと判断し、宮田とのスパーリングを命じた。しかし、リングで見せた一歩の類まれなパンチ力に才能を見出し、様々なテクニックを伝授していく。
スパルタ的な厳しさで選手を鍛える一方で、オーバーワークへの配慮やメンタル面のケアも怠らない。鷹村曰く「会長(じじい)マジック」は初心者に自信と実力を付けさせる熟練の技。ミット打ちの際、ミットのワタを抜いていい音が出るようにしたり、ミットを置く位置はそこに入れば必ず倒れるというポイントを押さえ、打撃角度を自然と覚えさせるのだ。厳しく、着実に、選手を成長させていく鴨川はまさに名伯楽である。
また、一歩がプロ入りした後は、セコンドとして常に隣に立つようになる。怪我をした選手をケアするカットマンとしての腕も超一流だ。
そして鴨川といえば、ほとばしる熱い名言がとても印象的。ボクシングは才能と努力によってしか強くなれないことをよく知る先達の言葉だからこそ重い。
【鴨川会長’sベストバウト 親友でありライバルである猫田の仇打ち! VS.ラルフ・アンダーソン】
時は終戦から2年。復興に向かう日本で、若き日の鴨川源二は「拳闘」を糧に、ライバルたちと熱い青春の日々を送る――。
鴨川と猫田はリングの上では殺し合いのような殴り合いをするが、リングを降りればまるで親友というまさに理想のライバル。当時、年はすでに30手前、ピークは過ぎていたものの自分たちの拳闘が人に勇気を分けていると誇らしい気持ちで闘っていた。
そんなある日、ふたりは危険な米兵、ラルフ・アンダーソンに襲われていた美しい女性・ユキと出逢う。行くあてがないというユキと、橋の下に住んでいた猫田は鴨川が改造した廃バスの住処に転がり込み、3人の奇妙な共同生活が始まる。ずっと続いてほしいと願うような幸せな日々であったが、猫田はじわじわとパンチドランカーの症状に蝕まれ、実は広島から来ていたユキにもまた、原爆症があった……。
ユキを元気づけようと、猫田はラルフとの試合に挑む。試合は終始猫田が優勢だったが、パンチドランカーの症状に酔っている猫田は勝負を急ぎ、プライドの高いラルフの逆鱗に触れてしまう。そして放たれる後頭部を狙う反則技・ラビットパンチにより、敗北…。猫田は後遺症の残る怪我を負い、ボクサーを続けることは絶望的になってしまう。
日本男児の誇りを持って猫田の仇討ちに燃えた鴨川は、先の試合からラルフの弱点は腹だと確信し、土手に丸太を刺して拳で埋めこむという壮絶な修行に挑む!
そして始まる鴨川VS.ラルフ戦。ラルフもまた、猫田との試合で自覚した弱点の腹を徹底的に鍛え上げ、完璧なコンディションを作り上げていた。しかし、鴨川が根性で作り上げた “鉄拳”は友の想いを乗せ、相手のボディを貫く――!!
ラルフはウェルター級なのに対して、鴨川と猫田はバンタム級。ここまで差があるボクサーが闘うのは、まさしく戦後間もない頃の「拳闘試合」ならでは。今の鴨川からは想像も付かない、若く逞しい彼の姿と激闘ぶりは必見だ!
鴨川VS.ラルフ・アンダーソンは【Round 409】~をチェック!
文/ライターT
『はじめの一歩』の魅力はまだまだたくさん!
次回は、一歩のライバルである宮田、千堂、間柴のエピソードをお届けしたいと思います。お楽しみに!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!
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