
新人漫画家さん必見!! 今回は、第115回新人漫画賞締め切り前特別企画として、漫画家先生へのインタビュー「漫画家への花道」を大公開! 『十字架のろくにん』の中武士竜先生が新人漫画家の悩みを解決しちゃいます!
かっこいい世界・キャラクター・生き様を描き出す
『十字架のろくにん』中武士竜先生に聞く!
新人賞から連載へステップアップする極意!!

マガポケにて『十字架のろくにん』を大好評連載中の中武士竜先生に電撃取材! 中武先生の漫画創作論をお聞きしました!
中武士竜先生Profile
2013年MGPにて『ノラ』奨励賞受賞
第91回新人賞にて、『Hauler』奨励賞受賞
第93回新人賞にて、『積乱雲』特別奨励賞受賞
第94回新人賞にて、『ドバドバドローイング』奨励賞受賞
第95回新人賞にて、『青春最終決戦』佳作受賞
現在、『十字架のろくにん』(別冊少年マガジン→マガジンポケットへ移籍)を大好評連載中!!
●極意1
読み切りには、物語全体で伝わるメッセージ性を!
――中武先生が連載をとるまでの、賞歴を教えてください
僕、長いですよ(笑)。MGP(現在のマガジンライズに当たる毎月開催の賞)で奨励賞1回。その後に新人漫画賞で奨励賞→特別奨励賞→奨励賞→佳作で、合計5回くらい挑戦してます。プロで活躍されている作家さんって、初投稿でいきなり入選みたいな方、多いと思うんですけど、僕はマガジンさんの用意してくれた階段を1段ずつ上がっていきました(笑)。今頑張ってる新人作家さんには、そういう奴もいるぞ、って勇気を与えられる存在なんじゃないかと自負してます(笑)。
――ありがとうございます(笑)。中武さんが当時、新人賞用の読み切りを作る中で、意識されていたことはありますか?
メッセージ性は意識していました。皆こうすればいいのにとか、これが大事なことじゃない? とか、当時の自分が周りに対して思っていたことを描いていました。新人賞では、自分の伝えたいメッセージが1つあって、そのメッセージが伝わるような読み切りを作ると賞がとれる、という何となくの感覚がありました。
あとは画力です。僕はぐうたら野郎だったので、締め切りの2週間前にネームがやっと上がる、くらいのペースだったので、作画にそこまで時間をかけられず、「画力が課題」と評価されることがしばしばありました。作画には時間をかけたほうが絶対にいいので、ネームは早めに作っておくというのが、反面教師としてのアドバイスです(笑)。
――メッセージやテーマについて、伝えたいことは決まっていても、伝え方が難しいと感じる新人さんも多いかと思います。中武先生は、メッセージの伝え方で意識されていたことはありますか?
直接的に伝えるのではなく、お話に落とし込みながら伝えるように意識していました。伝えたいことを直接セリフやモノローグで言ってしまうと、説教くさくなったり、嫌味ったらしくなったりすることがあるんです。なので、読み切り全体を読むとなんとなく伝わること=メッセージ性、と意識しながら描いていました。
●極意2
ストーリーは、逆算して考える!
――伝えたいメッセージが決まった後、中武先生はどのようにストーリーを作っていたのでしょうか?
描きたい絵(シーン)が一番盛り上がるシーンになるように、絵から逆算して作っていたと思います。
漫画を作るときに、プロットを考えてから絵を描き始める「言葉で考える人」と、描きたい1つカット(絵)が先にあって、そこに向けて話を作っていく「絵で考える人」と、大きく2種類のタイプがいると思うのですが、僕の場合は完全に後者でした。特に意識している訳ではないですが、普段から、この風景は漫画にしたいなとか、この構図描いてみたいなとか、日々見ているものをストックしている感覚があって、それが漫画に繫がっています。
読み切りを描いていた時もやっぱり描きたいシーンが僕の中にはあって、そのシーンが一番の山場になるように、逆算してお話を考えていました。このシーンを一番盛りあげるために、序盤はこうしようとか、中盤はこうやって盛り上げていこうとか、後ろから組み立てていくイメージです。これは連載中の今も同じで、毎話ごとに描きたいと思う、強い絵があるか考えながらネームを作っています。
――絵の強さとは、具体的にどういうことでしょう?
かっこいい表情だったり、ショッキングなシーンだったり、そのお話・その回の「決めシーン」だと僕は思っています。連載中の『十字架のろくにん』でも、決めシーンはここかなと考えながら、毎話ネームを切っています。
実際に担当さんとの打ち合わせでも、今回の話の決め絵はどこかと、話し合う場面がよくあります。凄惨な拷問シーンだとか、漆間のカッコイイ表情だとか、その回のメインとなる強い絵が大きく入るようにしています。
●極意3
読み切りでは、キャラクターの悩み→成長の過程を描く!
――ストーリーは絵から逆算して考えるとのことでしたが、キャラクターはどのように考えていたのでしょうか?
読み切りの時は、伝えたいメッセージに適うキャラクターを考えるようにしていました。これが最終的に伝えたいことなのだったら、主人公の悩みはこうしようとか、この悩みだったらこんな人間性が良いかなと、キャラクターも逆算して考えていましたね。ラストはこう考えるキャラクターだから、序盤は逆にこんな問題を抱えさせて、お話全体でキャラクターの成長を描く。こう組み立てていくと、キャラの成長を描くことによって、物語全体で伝えたいメッセージが描けるという感覚です。
――それでは、連載作『十字架のろくにん』の際には、キャラクター作りで意識されている点はありますか?
強いて言うなら、「ブレない」ってことでしょうか。『十字架のろくにん』の連載案を練っている時は、読み切りと違って、メッセージ性からではなく、キャラクターから考えていた気がします。主人公がすべてを捨てて復讐する、というイメージが先にあったので、物語の根幹・「復讐への意志」を貫くキャラクターを描いているつもりです。
主人公の漆間は、復讐に対して一切の疑念を抱きません。むしろ、どんな壁が現れても、徹底的に復讐を果たそうとします。このまま復讐してもいいのか…?とか、意志が揺らいでしまうと、この漫画の根幹が崩れてしまうからです。
サブキャラクターも同様で、「ブレない」ようにしています。漆間のおじいちゃんは、これまでやってきたことは悪いことかもしれないけれど、「最強で孫思い」という最初の設定はブレません。そして、悪役であるキャラ達も、悪であることからブレません。何か事情があって、仕方なく悪になったとかはなく、悪い奴はずっと悪い。悪いことに理由をつけたりはしないようにしてます。
僕の中で、少年漫画の王道といえば、「諦めない主人公」。『十字架のろくにん』は、ちょっと少年漫画と言うには刺激的な内容なんですが、自分の中では王道の少年漫画をやっているつもりで、それが特に「ブレない」キャラクターに現れているんじゃないかな、と思っています。

▲『十字架のろくにん』主人公・漆間俊が、第1話で復讐を強く決意する印象的な見開きシーン。
●極意4
変化は成長に繋がる!
――新人時代は、明るいテーマのお話を多く描かれていましたが、連載作『十字架のろくにん』では、一変してダークなサスペンスを題材に選ばれました。連載作のジャンルを決める際に、中武先生の中で何か変化があったのでしょうか?
本当に描きたかったものが見つかったんだと思います。大学卒業のタイミングで佳作受賞できたので、その賞金を使って上京したんですが、それから2年くらい鳴かず飛ばずでした。ネームを描くペースも落ちてきて、1か月かけて1本完成すれば良い方でした。ただ、当時は楽しく暮らせていて、特に停滞感は感じていませんでした。「停滞感がない」のがむしろ問題で、今思えば最悪の状況でした。そんな時に、担当さんに憧れだった大今良時先生のアシスタントを紹介してもらったんです。それがきっかけで大きく変わりました。
――アシスタント経験によって、何が中武さんの中で大きく変わったんでしょう?
僕も早く自分の連載がしたい! と強く思うようになったんです。憧れの先生の仕事現場を見て、やっと本当に「焦る」ことができた、というか。そこで、これまで自分が見てきたエンタメを見つめ直して、自分が本当に描きたいものは何か、本気で考え直しました。すると、幼い頃からよく見ていたのは、実はホラーとか、グロい作品だったことに気がついて、「少年漫画らしい明るい話を描かなくちゃいけない」という自分の変なこだわりを捨てられたんです。
ネームのペースも上げて、週に1回担当さんに見せに行くようにしました。打ち合わせも、それまでは担当さんの話に食ってかかっていっていたんですが、一度しっかりアドバイス通りに描いてみよう、と言葉の受け止め方を変えてみました。そうしたら、担当さんとちゃんと話し合いができるようになりました。そこからは、1年かからないうちにスッと連載が決まりました。
――アシスタントしながら、週一でネーム作成。中々ハードなスケジュールだったと思います…。
当時はアシスタント現場での休憩時間中も、ネームを描いていましたね(笑)。毎晩アシスタントが終わったら筋トレを1時間して、その後は夜中の2時まで、たとえ眠くてもネームを描く日々でした。電車通勤だったんですけど、電車の中でも専門書を読みながら絵の勉強をして、とにかく全部漫画のために時間を使っていました。
睡眠時間を削るってあまり良くないことだとは思うんですが、現状を変えようと思ったら、時間を新しく作るしか無かったんです。なので、僕の場合は睡眠時間を削ってネームを描いていましたね(笑)。ただそのくらい自分を追い込んでみると、自分にとって「本当に大事なこと」と、「案外捨ててもいいこと」の区別がついてくるんです。というか、余裕がなくて「本当に大事なこと」しか抱えてられなくなってくるんです。おかげで、ジャンルへの固執や、担当さんへの反発など、余計なものが捨てられた気がします。変化を受け入れてみるのも、成長するためには大切なことだと思います。
●極意5
不要なこだわりを捨てる!
――中武さんは、新人賞作品を見るとジャンルだけでなく、絵柄も大きく変わっていると思います。何か意図があったのでしょうか?
絵は話ごとに変えていましたね。というか、変えよう、という意識があったわけではなかったんですが、その時その時でハマった作品の影響を受けすぎて、絵柄が似ちゃってたんです。担当さんには原稿を送るたびに「○○読んだの?」と言い当てられてました(笑)。
新人さんの中には、自分の絵にこだわって、中々絵柄を変えられない人がいると思います。でも新人さんにこそ、自分の絵にこだわらずに、違う絵柄を取り入れてみることをお勧めしたいです! 思い切って、普段と違う絵を描いてみると模写練習にも繫がりますし、自分にはない良い部分が見つかって、それを取り入れることで絵柄が成長して…、また新たな良い部分を見つけて…という変化の連鎖が、成長に繫がっていくと思います。

▲『積乱雲』(上)と『青春最終決戦』(下)の1コマ。絵柄が大きく変化している。
――絵柄を変える以外にも、絵の練習方法があったら教えてください。
デッサン練習をめちゃくちゃしていました。人体解剖学の本を使って、筋肉のつき方や動き方を学んだ上でデッサンしてみたり、クロッキー練習も沢山していましたね。クロッキー練習っていうのは、短時間のうちにラフ画で概形を書く練習なんですけど、YouTubeで検索すれば、1分とか30秒ごとに変わるポージングを、時間内に描く練習用動画があると思います。僕的には、これが結構重要だったなと思います。
この練習をやっておくと、自分の頭の中でポーズが出力できるようになるので、写真を毎回撮ったりせずとも漫画が描けるようになるんです。なので、ぜひやってみて欲しいです!
――絵の練習以外にも、今に繫がっているなと思う練習があれば教えてください。
話作りを意識しながら、映画や漫画のインプットを増やすことですかね。大まかなプロットを書き出しながら、どこで伏線を張っているかとか、どこがフリになっているかとか、構成の勉強に近い見方をしていました。自分の漫画で描くかはわからないけど、いろんなジャンルのベタを知って損はないと思います。
あとは、同じ漫画を2周3周して、注目する部分を変えながら読み込むこともしていました。1周目は絵しか気にならなかったけど、2周目はキャラクターのリアクションのコマが気になって、3周目はカメラワークが気になって…。何度も読み込むことで新たな気づきがあり、それを自分の漫画にも落とし込むようにしています。
例えば、『幽遊白書』からコマ割りを学んだり、『聲の形』から影響を受けて、線の太さを変えてみたり、『亜人』からアクションシーンを模写したりしましたね。特に『はじめの一歩』は当時も今もアクションシーンの参考にさせていただいています。そういう意味では、インプットの量も大切だと思います。
●極意6
自分を信じて描き続ける!
――最後に、新人作家さんに向けてメッセージをお願いします。
とにかく誰に何を言われても、自分だけは自分に期待してください! 自分で才能ないとかは思わず、自分だけは自分に自惚れてていいと思います。そして誰に何を言われても、いずれ見返してやるぞという感覚で、素知らぬ顔で漫画を描き続けてください。ひたすら諦めずに描き続ける、これが本当に大切です。
実際、僕はアシスタントやっている頃に、毎朝シャワーを浴びながら鏡を見て、「俺は絶対漫画家になれる! 俺はすごい! 絶対漫画家になれる! 」って叫んで、自己暗示をかけていました (笑)。自分だけは自分を信じて、描き続けてください!
『十字架のろくにん』はマガポケで大好評連載中!
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第115回新人漫画賞
特別審査員はマガポケにて『ガチアクタ』連載中の裏那圭先生!!

締め切りは2025年9月30日当日消印有効! ご応募お待ちしております!!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!