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読む漫画スキルアップ 第3弾 画力編

 

プロ漫画家さんに直接、

マンガ上達の秘訣を聞く

 

『読む漫画スキルアップ』。

 

 

第1回第2回と続いたこの企画も早3回め。

 

今回も『爆音伝説カブラギ』(原作/佐木飛朗斗)などの作品で知られる東直輝先生に、画力UPのコツを聞いていきます。

 

今回はより実戦的に“実際に原稿を描く時の注意点”を聞いてみた!

 

  

“ヒキの絵で、

状況を伝えよ!”

 

――原稿を描く時のコツって、何かあるんでしょうか。

 

東先生(以下、東):あります。

 

まず気を付けないといけないことは、ヒキの絵が描けているかどうか。

 

描けた上で、原稿の中にヒキの絵がしっかり入っているかどうかです。

 

――アップ、つまりヨリの絵でなく、ロングのヒキの絵が入ることで、どんな効果があるのですか?

 

東:ヒキの絵というのは、どの場所に誰がいるかが一目でわかる、つまり“作中の今の状況がわかる絵”なんです。

 

これが入っていないと読者は状況が一目でわからず、結果読みづらいマンガになってしまいがちです。

 

ですが、このヒキの絵はアップの絵より格段に難しい。

 

新人作家さんの中には、苦手とか感じている人もいるんじゃないでしょうか。

 

 

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ヒキの絵と言ってもいろいろある。東先生に、構図別に3つのヒキの絵を描いていただいた。

 

―― 一概にヒキの絵と言っても、実際にどんな絵を入れればいいのでしょうか。何か参考にされているものはありますか?

 

東:もちろん漫画も参考になりますし、映画も参考になりますよ。

 

映画も見てみると、各シーンでヒキのカットを入れて、状況を観客に上手に伝えているのがわかると思います。そのカットの構図は、とても参考になりますよ。

 

――なるほど。映画のストーリーなどを参考にする話は聞いたことがありますが、絵を描くにあたっては、構図も参考になるんですね。

 

東:そうです。いろんな構図で描く練習もぜひ取り入れて欲しいですね。

 

同じ場所、同じキャラクターを描く場合でも、構図で印象は大きく変わるものです。二人の間に流れる空気感が変わってくる、という感じでしょうか。

 

マンガでは、その空気感を表現しないといけない。

 

色んな構図が描けるようになれば、それだけ色んな空気感が出せる。演出の幅が広がるんです。

 

 

〜具体的な構図の例〜

 

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 比較すると、それぞれの場面にあった構図になっているのがよくわかる。

 

  

“最強の

人物絵練習法とは!?”

 

――ヒキの絵の練習の次に取り入れるべき要素は、なんでしょうか?

 

東:人物絵だと思います。

 

その中でも、特に表情ですね。

 

漫画に出てくるキャラクターにいろいろな表情をさせることが絶対に必要になってくるので、その練習です。

 

――具体的にはどのように練習されたのでしょうか?

 

東:僕は、自分の顔を鏡で見てそれを参考にしていました。この方法は、今でも使う時がありますよ。

 

――今でも! それだけ優れた方法なんですね。

 

東:すぐに用意できますからね。今ならネットで参考を探すこともあります。

 

たとえば笑顔の練習がしたい時は「笑顔」で画像検索して。同じ顔ばっかり描いていても飽きちゃいますしね。

 

でも、まずは自分の顔を参考にするのがいいと思います。

 

ただ、僕は男性なので女性のキャラクターを描く練習にはならないので、女性を練習する時は女性向けのファッション雑誌を買ってきて、モデルさんを参考にして描いていました。

 

男の子を描くのはすきだったんですが、女の子を描くのは苦手意識があったので、練習を繰り返しましたね。

 

――苦手克服の秘訣などありますか?

 

東:フェチを全開にして描いてみよう、というのが秘訣ですね。

 

たとえば、胸とか足とかおしりとか、いろんなフェチの方がいるじゃないですか。つまり、そのパーツに魅力を感じる人がいるってことです。

 

なので、「今日は足」「今日は尻」みたいにパーツパーツに分けて練習していましたね。「そのフェチの方に届け―!」と思いながら描いてました。

 

好きなものを描く時は、「あ、こうした方がいいな」「こうしたらダメなんだな」というふうに自然と“気づき”があるんです。

 

でも、苦手意識があるものは中々気づけない。

 

なので、こういう風に誰かの好きなもの(=フェチ)にテーマを絞って練習することで、気づきを得るようにしていました。

 

 

“気づきが

画力をUPする!”

 

――なるほど。描いていく中で気づきを得ることで画力は向上していくんですね。

 

東:そうだと思います。

 

1回めの時もお伝えしましたが、やっぱり絵の教本は1冊持っていた方がいいです。描いた方の気づきが凝縮されていますから、それだけ上達が早くなりますよ。

 

僕は「やさしい顔と手の描き方」という本を繰り返し読んでいました。

 

――ほかに画力向上のためにしていたことはありますか?

 

東:彫刻をよく描いていましたね。ミケランジェロのものを繰り返し描いてました。

 

――それは、いわゆるデッサン練習ですか?

 

東:それもあります。

 

彫刻ってとてもリアルに見えますが、実は力強さや美しさを表現するためにデフォルメされているんです。陰影がハッキリしていて、筋肉の線が見えやすい。

 

写真だとわかりづらい「ここ、色なの影なの?」というものがないので、写真以上に絵に落とし込みやすく、参考になるんですよ。

 

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 ミケランジェロのダビデ像を参考にしつつ、自分の絵をレベルアップさせていく。

 

 

他には、キャラクターの正面顔を描いて、各パーツを切り取って福笑いをしていましたね。

 

――福笑い? 一見絵には関係ないように思いますが、どういう効果があるんでしょうか。

 

東:自分の絵のクセを知るためですね。

 

福笑いみたいに位置を微調整すると、たとえば目の高さがズレていたことに気づけるんです。

 

目の高さにズレがあると、そこから耳の位置がズレて、最終的に輪郭がずれていきます。結果、下手な絵になってしまう。

 

今はデジタルで描いている人も多いでしょうから、福笑いもしやすいと思いますのでぜひ一度やってみて欲しいですね。

 

これも、自分の絵のクセに気付くためにオススメの方法です。

 

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〜以前描いた男女の絵に、

東先生が自ら修正を入れた例〜

 

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どのように東先生が気づき、画力を向上させていったかがおわかりいただけるだろう。

 

――なるほど、ありがとうございました!

  

 

 

東先生に聞きたい質問を大募集。 

質問は担当フジカワ ツイッターまで!

 @magazinefuji

 

 東直輝 

f:id:magazine_pocket:20180214193027j:plain『爆音伝説カブラギ』(原作/佐木飛朗斗)など代表作多数。 

 現在は新作を鋭意準備中である。

 

 

 

▼『爆音伝説カブラギ』第1話はコチラ

www.shonenmagazine.com

 

(終わり)