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『カッコウの許嫁』の吉河美希に聞く!読み切り漫画の作り方!【漫画家への花道】

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新人賞目前!! 特別企画第2弾!!

 

『カッコウの許嫁』吉河美希先生に聞く!
今日から使える読み切り漫画の作り方!!

 

第104回新人漫画賞も締め切り間近! 特別企画第2弾となる今回は、『カッコウの許嫁』を連載中の吉河美希先生が登場!! 『ヤンキー君とメガネちゃん』『山田くんと7人の魔女』で人気を博し、昨年、週マガに読み切り3本掲載という偉業を成し遂げた吉河先生に、「読み切り漫画」の作り方を聞きました!

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◇吉河美希◇

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2003年『グローリーデイズ』で第70回週刊少年マガジン新人漫画賞佳作を受賞。その後、2006年から「週刊少年マガジン」にて『ヤンキー君とメガネちゃん』を連載。2012年より『山田くんと7人の魔女』を連載。2020年から『カッコウの許嫁』を連載中!

 

ステップ1 ”わかりやすく”をモットーに!

――吉河先生が読み切り漫画を描く際に、常に心がけていることを教えてください!

 

吉河先生:
とにかくシンプルな作りにすることですね。ページ数も限られているので、読者に「何を楽しんでもらう」漫画なのかが一発でわかるように意識して作っています。

 

――シンプルな作りにするためには、具体的にどうすればよいのでしょう?

 

吉河先生:
例えば、キャラクターの数を極力減らすと良いと思います。ラブコメの場合、大切なのは主人公やヒロインのキャラを掘り下げて、いかに彼らの魅力を読者に届けられるか。2人の関係性の変化に注目してもらうために、最低限必要なキャラクターで物語を構成するようにしています。

 

――その他に気をつけていることはありますか!?

 

吉河先生:
私も新人時代によく陥っていたのですが、とにかく物語の導入部分が重くなりすぎないようにすることが大事です!

 

新人さんの作品には、キャラや世界観の説明だけで10Pくらい使ってしまい、肝心の物語がまったく進んでないということが多いと思うのですが、実は物語の細かい情報って、読者はあまり気にしてないと思うんです。だからこそ、2P目からどんどん物語を進めていく意識を持つように私は心がけています。

 

ステップ2 自分の中の固定概念をぶっ壊せ!

――吉河先生は昨年、『東京ヘルヘヴンズ』『柊さんちの吸血事情』『カッコウの許嫁』と3本もの読み切りを掲載されました。物語のアイデアは、どうやって生み出しているのですか?

 

吉河先生:
今回の読み切り3本に絞って言えば、今まで描いたことのないものに挑戦しようと思っていました。これまで『ヤンキー君とメガネちゃん』や『山田くんと7人の魔女』と学園ものが多かったので、そこから離れた題材として、「天使と悪魔」や「家族もの」の漫画を描きたいなと。

 

自分が描いてみたい題材や、最近気になるものなどをまずは挙げて、そこから可能性がありそうなものを絞っていくと良いかもしれません。

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柊さんちの吸血事情

 

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東京ヘルヘヴンズ
 

――新人時代は、いろんなジャンルに挑戦してみた方が良いのでしょうか?

 

吉河先生:
基本的にはそうあるべきですが、私のデビューのきっかけは違いました。私が最初に描いた漫画はSFファンタジーものだったのですが、新人賞の佳作を獲った作品は、「学園もの」でした。その「学園もの」も、すごく描きたいという意思が初めからあったわけじゃないんです。

 

当時の担当さんと雑談で「学生時代」の話をした際にすごく盛り上がって、じゃあこの楽しさを漫画にしてみようということに。自分では考えていなかった新たなジャンルに挑戦すると、思いのほか自分に向いていたという発見があるかもしれません。そして、そのきっかけは、案外ふとした会話の中から生まれることもあるんです。

 

――『ヤンキー君とメガネちゃん』のようなラブコメ作品を描き始めたきっかけは?

 

吉河先生:
担当さんから突然提案があったんです。「今度ラブコメの増刊が出るので、それに描いてみない?」って。でも、当時はラブコメを描ける自信が全くなくて……。

 

――え!? そうなんですか?

 

吉河先生:
私の中でラブコメって固定概念があったんです。イチャイチャしたり、好き嫌いの駆け引きを描かなくてはいけないものだと。でも自分自身は、そこで勝負できるタイプではないと思っていたので、無理なんじゃないか……と。

 

――そこから、どうやってラブコメを描こうと思い至ったのですか?

 

吉河先生:
そんな固定概念を持った自分は、逆にどんなラブコメなら描けるだろうと考えたんです。

 

そうして試行錯誤しながらできたのが、『ヤンキー君とメガネちゃん』でした。主人公の品川大地とヒロインの足立花、本人たちは別にイチャイチャしているつもりではないんですが、傍から見るとなんか仲良さそうに見える。自分が描けるラブコメはこういう形だったんだと、新たな発見に繫がりました。苦手意識や固定概念を持っているからこそ、それらをうまく活かして新たな可能性が開けたんだと思います。

 

だからこそ、自分には向いてないんじゃないかと思うジャンルも、思い切って挑戦してみると、意外な発見があるかもしれません。あれ、案外描くのが楽しいぞ、と。「このジャンルで勝負したい!」というものがあるのは良いことですが、それに縛られすぎないことも大切です。

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傍から見ると仲良く勉強しているが、本人たちは赤点回避に必死!!

  

――映画を観たり、どこかに出かけたりするなど、意識的に物語のアイデアを収集することはありますか?

 

吉河先生:
それは全くないですね。アイデアを得ることに意識を向けすぎると、純粋にその作品を楽しむことができなくなってしまうので。ゲームや海外ドラマが好きなんですが、それらは、ただやりたいからやる、観たいから観る、というスタンスです。

 

でもきっと、無意識の内にアイデアの種みたいなものがその時インプットされているんだと思います。意識しすぎると何でも斜めから見てしまうので、そうなると一般の感覚を忘れてしまうんです。純粋に「楽しかった」「面白かった」という感覚を大事にしたいので、まずはその作品に正面から向き合うようにしています。

 

ステップ3 キャラの魅力は意外性!

――キャラクターを作る上で大切にしていることは何ですか?

 

吉河先生:
わかりやすいことですね。最初からひねるのではなく、設定から読者が思い浮かべるイメージ通りのキャラになるようにしています。

 

例えば、『ヤンキー君とメガネちゃん』のヒロインである足立花の場合は、学級委員という設定なので、メガネで三つ編みおさげの真面目そうな見た目にしています。わかりやすいキャラクターにしておくと、導入の説明が省けるので、物語も進めやすくなるんです。

 

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一見優等生に見えるが、実はおバカで元ヤンキーというのが、彼女の魅力になっている。

 

――そうして生まれたキャラクターを、読者に好きになってもらうにはどうすれば良いでしょうか。

 

吉河先生:
キャラクターの1個先まで掘り下げることが大切です。こんなギャップがあるとか、実はこんなことを考えていましたなど、読者の想像をいい意味で裏切るポイントがあれば、キャラに深みが増して、読者の印象に残りやすくなります。

 

例えば、『カッコウの許嫁』のヒロインであるエリカは、SNSへの投稿に夢中になっている目立ちたがり屋な女の子というイメージがありますが、実は、SNS上で有名になって、自分の存在を知ってほしい人がいるという真の目的があります。読者が想像するもう一歩先のキャラ性を作ることによって、さらに魅力が増していくんです。

 

――では、物語の主人公はどのようにして作っているのでしょうか?

 

吉河先生:
私はヒロインのイメージから先にできあがることが多いので、主人公の男の子は、ヒロインとの対比で考えています。例えば、『ヤンキー君とメガネちゃん』や『山田くんと7人の魔女』であれば、学級委員や優等生の女の子と、不良の男の子という真逆の組み合わせが、2人の関係性に面白さを生み出しています。

 

『カッコウの許嫁』であれば、お金持ちで有名人のエリカと対になりそうな存在として、貧乏で勉強ばかりしている凪くんが生まれました。そんな真逆な2人の関係性にどんな変化が生まれるのか、という部分を『カッコウの許嫁』の魅力として描こうと思っています。

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隠していた想いを明かすことで、2人の距離がまた一歩近づいた。 

 

――多彩なキャラクターのデザインはどうやって生み出しているんですか?

 

吉河先生:
先ほどお話した、キャラ設定のイメージ通りの見た目を考えるというのが一つ目の方法です。大人しいキャラはメガネをかけさせたり、活発な子はショートカットにしたり。漫画を作る上で、同じ性格のキャラを出すことはないので、キャラ設定に合わせて作ると、多様なデザインになると思います。

 

二つ目として、新人さんにはオススメできないかもですが、前作と比較して作る方法もあります。『ヤンキー君とメガネちゃん』の足立花が黒髪で三つ編みのメガネをかけた女の子だったので、『山田くんと7人の魔女』のヒロイン・白石うららは金髪ロングで「ザ・美少女」という見た目にしました。これまでに描いたキャラクターの真逆な要素で作ると、新たなデザインを生み出せると思います。

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f:id:magazine_pocket:20200325205229j:plain同じ優等生のイメージでも、要素次第でここまで変わる!

 

 

ステップ4 新人は楽しんだもん勝ち!

――新人時代に心がけておくべきことはありますか?

 

吉河先生:
一番大切なのは「楽しく漫画を描くこと」だと思います。誤解されやすいのですが、楽して描くこととは全く違うので、しんどい思いをすることもあります。それでも、自分が「これは面白い!」と思うものを読者に届けることや、「昨日よりも、いい絵が描けた!」ということに楽しさを見出すことが、漫画家を目指す上ではとても大切なことです。

 

――新人時代にやっていて良かったことはありますか?

 

吉河先生:
漫画のアシスタントですね。技術があがったことももちろんですが、プロの漫画家になりたいという同じ志を持った仲間と出会えることは、良い刺激にもなりますし、今でも仲良くさせていただいてる人がたくさんいます。漫画家って社会に出た時に新しい友達を作りにくい職業ですし、家に籠もっての作業が多いので、人と出会える貴重な場でした。

 

――画力を上達させるため、やっていたことはありますか?

 

吉河先生:
特別な練習方法などはないんですが、心がけていたことは「前回の原稿よりも上手く描く」ということです。今回の原稿でキャラがジャンプするシーンがあれば、それをどれだけカッコよく描けるかを考える。誰かの絵を目標にするというよりも、前回の自分を越えるという意識で毎回原稿を描いています。

 

――最後に新人賞を目指す皆さんに一言お願いします!

 

吉河先生:
納得のいく絵が描けなかったり、思うような結果が出なかったりと辛いこともあるかと思いますが、連載する前の新人時代はどんな作品を描いたって良い自由な状況でもあります。私も、昨年描いた読み切り3本は、今までとは異なるジャンルを描くことができたので、ぜひ皆さんも、自由な発想でいろんな作品に挑戦してみてください。
応援しています!

 

――ありがとうございました!

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第104回新人漫画賞

締め切りは2020年3月31日(火) 当日消印有効!
新人賞の詳しい応募要項は週刊少年マガジン公式HPをチェック!

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