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【騙されたと思って1本!!】「別マガ」ムービーガイド 『HOOL!GAN'S』衣谷イロ先生&担当が選んだムービー編

名作・駄作・カルト作。アクション・SF・ラブコメディ。映画はいろいろあるけれど、まだ観てない映画をもう1本。今回の推薦者は『HOOL!GAN'S』で鮮烈デビューを果たした衣谷イロ先生と、担当の石井くん。2人ともなかなかのクセ者。かなりハードで過激な衝撃作が揃いました。映画は心してご覧ください。編集部オススメの作品もおもしろいのでチェックしてみてね!

 

●TITLE『ヒート』
火花を散らす名優2人の一騎打ち!!

 今回、最初の推薦者は『HOOL!GANʼS』で衝撃のデビューを飾った衣谷イロ先生だ。推薦作1本目は『ヒート』。90年代クライム・アクションの名作だ!
 ニール・マッコーリー(ロバート・デ・ニーロ)率いる強盗団と、彼を追うLA市警のヴィンセント・ハナ警部補(アル・パチーノ)の追跡劇である。
 追われる側であるニールのモットーは“ヤバい暮らしには身一つが一番。いざって時は30秒フラットで高飛びできるよう面倒な関わりを持つな”だ。彼の住むアパートに家具はなく、人間関係も強盗団の仲間のみ。そして彼がリーダーであるこの強盗団はプロ中のプロの男たちの集団である。
 追う側であるLA市警のヴィンセントは大学院出のインテリだが、2度の離婚歴あり、3度目の結婚も破綻間近の仕事人間である。妻から、あなたの人生を分けて欲しいと懇願されても“苦悩は俺だけのものだ”と言い放つ。世の悪を知り尽くし、悪を追うことに取り憑かれた男なのだ。
 映画オープニングの現金輸送車強奪シーンから緊張感マックスだ。周到な準備を重ね現金輸送車を襲う。手際良く警備員を鎮圧し、現金ではなく保険付きの無記名債権を奪う。ところがここで問題が生じる。この仕事に、いつものメンバーに加え、助っ人として雇われた男(のちに連続殺人鬼であることが判明)がいたのだが、この男が警備員の1人を撃ったため、警備員全員を殺すことになってしまう。そしてこの一件が完璧だったニールと彼の仲間を追い詰めていくことになる。
 この作品の見所はなんといってもロバート・デ・ニーロとアル・パチーノという名優の一騎打ちとも言える競演である。盗聴、警察内部の買収、監視……騙し合いながらもお互いの有能さを認め合う2人。
 映画の中で2人が一緒に画面に映ることはない。2人がコーヒーショップで向かい合って話す有名なシーンがあるが、画面に映るのは1人だけ。憎い演出である。
 ほかの俳優陣も素晴らしく、ヴァル・キルマー(『トップガン  マーヴェリック』では咽頭癌のため声が出ない状態で出演)、トム・サイズモア(軍人や刑事役が多い男映画の名脇役)、ジョン・ヴォイト(アンジェリーナ・ジョリーのお父さん)など通好みの俳優がズラリ。ちなみにアル・パチーノの義理の娘役として子供の頃のナタリー・ポートマンが出演している。
 監督のマイケル・マンは男を描かせたら超一流の監督で、あのトム・クルーズに非情な殺し屋を演じさせた『コラテラル』の監督でもある。『羊たちの沈黙』で有名なキャラクター、レクター博士が初めて映画に登場したのは、実はマイケル・マン監督の『刑事グラハム/凍りついた欲望』だった。
 現代のクライム・アクションは、スマホや防犯カメラなしには成り立たないが、90年代のそれは、デジタル機器なしの男と男の戦い! ラストの銃撃戦はそのリアルさで観るものを圧倒する! 映画史に残る男たちの過酷で非情な銃撃戦である。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『ダークナイト』
これ、絶対『ヒート』の影響あるよねの1本。

 

『ヒート』

ディズニープラスのスターで配信中
© 1995 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 

●TITLE『ボーダーライン』
国境とその先に存在した法なき戦争

 衣谷先生2本めの推薦作は『ボーダーライン』。これまたハードな作品だ。
 正直、2本とも意外な推薦作。漫画の予告ページに掲載されている衣谷先生の絵柄が、すごくスタイリッシュでおシャレだったので、好きな映画もそんなおシャレな映画かと想像したのだが、全然違った(まだ掲載誌は出来てないので、『HOOL!GANʼS』は読めてません)。推薦作はハードで、テンション張りまくりの2本。漫画家とは予想を超える人たちです。
 アリゾナ州チャンドラー。武装したFBIやSWATがある家に突撃する。FBI誘拐即応班のリーダー、ケイト・メイサー(エミリー・ブラント)は容疑者を射殺し、家屋の壁の裏からビニールに包まれた30体以上の死体を発見する。さすがのSWATも吐きそうな惨状だ。誘拐事件の主犯は麻薬カルテル、ソノラの親玉マニュエル・ディアスである。
 この事件の後、ケイトは上司に推薦され国防総省のマット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)のチームに加わり、カルテル捜査とディアスの追跡をすることになる。
 作戦の詳細を知らされないまま、マットと共にプライベートジェットに乗り込むケイト。そこにもう1人の男が現れる。所属不明のアレハンドロ・ギリック(ベニチオ・デル・トロ)だ。メキシコの元検察官だという。
 最初の目的地エルパソで、マッチョな男たち、連邦保安官、麻薬取締局(DEA)デルタフォースの面々と合流。マットのチームと彼らの仕事は、メキシコのフアレスからカルテルの幹部であり、ボスであるディアスの弟ギレルモをアメリカのエルパソに連行することだった。
 “ようこそ、フアレスへ”。そこでケイトが最初に目にしたのは、高架下にぶら下がっている首のない裸の死体(それも複数!)である。“人々への脅しだ。残虐な殺し方を見せ、麻薬取引に関与し、何かしでかした罰だと思わせる”ドライバーはこともなげに言う。そんな中、ケイトたちはギレルモを連行するのだが……!?
 タイトルのボーダーラインとは国境のこと。画面は上空からの映像と、不安げなケイトの表情を交互に映す。上空から見えるのは、アメリカとメキシコの国境を示す長い壁(鉄条網)だ。リズムを刻むだけの音楽と、重低音だけが鳴り響く。
 自国ではない国で超法規的行動をとるCIA、それを命じるアメリカ政府上層部。警察さえ信用できない麻薬王国メキシコ。麻薬を巡る世界的な競争。その中で犠牲となる個人と彼らの復讐劇。正義もなく、制約も限度も、法すらもない戦争の目撃者となったケイトは……。
 フアレスは実在する都市だ。この映画が公開された時、住民はどう感じただろう。この作品のあまりに酷い展開に。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『ミッドナイト・エクスプレス』
旅行中のトルコで、麻薬所持で逮捕された青年。実刑4年。悪夢のような刑務所で……!?

 

『ボーダーライン』

発売中
スペシャル・プライス
ブルーレイ:1980円(税込)
スペシャル・プライスDVD:1320円(税込)
発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
© 2016 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

 

●TITLE『TITANE/チタン』
これぞ衝撃作! 混乱させられること間違いなし!

 今回2人目の推薦者は衣谷先生の担当である石井くん。彼との仕事のやり取りは、メールが多いのだが、いつも迅速かつ丁寧なメールなので、石井くんはちゃんとしたヤツという印象だったのだが、今回の推薦作を観てみると……実はけっこうとんでもない人物なのでは? 思わずそう考えてしまう作品選びだった。
 石井くん推薦作1作目は『TITANE/チタン』。2021年のカンヌ映画祭で見事最高賞であるパルムドールを受賞した作品だ。世界でも有名な映画祭で1等賞を取ったんだったら、すごい感動作かと読者は思うかもしれないが、この映画、すごい感動作というより、かなりの衝撃作である。
 幼い頃、少女アレクシアは父親の運転する車の事故によって頭に重傷を負う。事故は彼女の反抗的な態度が原因だった。頭蓋骨にチタンプレートを埋め込まれたアレクシア……。
 成人したアレクシアはダンサーとなっていた。モーターショーで、際どいダンスを見せるアレクシア。その夜、彼女の大ファンだと言う男に言い寄られた彼女は、なんと髪をまとめるために使っている細い金属棒で男の頭をさしてしまう(それも耳から)!! 観客は彼女の無茶苦茶な行動に驚かされるが、そんなことで驚くのはまだ早い。彼女が血塗れになった身体をシャワールームで洗っていると、シャワールームのドアを叩く音がする。恐る恐るドアを開けると、そこにいたのは……車である! しかもその後、彼女はその車とセックスまでしてしまうのだ!! こうなってくるとホラー映画のようだが、恐ろしいことはまだまだ続く。アレクシアの身体の大事な部分からはエンジンオイルのような黒い液体が染み出すし、お腹も張ってくる。妊娠検査薬で調べると、なんと陽性。父親はいったい誰!? 精神的にバランスを失いつつあるアレクシアは殺人を重ねる。ついに指名手配された彼女が逃げるために思いついた方法とは……!?
 この作品、フランス映画だが、ヨーロッパ映画というのは、日本人が馴染んできたアメリカ映画とはどこか違う。肉体に関する感覚が違うんじゃないかと思う。フランス人女優の脱ぎっぷりの良さにはいつも感心させられるが(もちろんちゃんとした理由あってのヌードであるが)、今作で主役を演じたアガト・ルセルの長編映画デビュー作とは思えない肉体の使い方は衝撃以外の何ものでもない。
 とにかく先の展開は読めないし、暴力描写は過激、なのにある種の優しさを持った快作。監督はジュリア・デュクルノー。女性である。

▼編集部オススメ、もう1本!
『クラッシュ』
こちらは交通事故に性的快感を覚える人々を描いた1本。デヴィッド・クローネンバーグ監督作。

 

『TITANE/チタン』

発売中
DVD:1257円(税込)
発売・販売元:ギャガ
© 2021 KAZAK PRODUCTIONS – FRAKAS PRODUCTIONS – ARTE FRANCE – VOO

 

●TITLE『カメの甲羅はあばら骨』
骨は偉大である! 友情も!

 石井くん、推薦作2本目は『カメの甲羅はあばら骨』。すみません。この映画知りませんでした。
 スクールカーストを題材にした学園ものアニメーションなのだが、それが、なんというか……。
 冒頭、骨の冠(!?)を頭にいただく天使のような男女が骨を讃える歌(!?)を歌っている。もう最初から、これはなんかおかしなことになりそうな予感である。
 カメ田カメ郎は冴えない学園生活を送る普通(!?)の高校2年生。親友はカエル川である。スクールカーストの底辺にいる彼らは、目立つことなく毎日をやり過ごしている。って、名前はヘンだけどよくある話じゃんと思う読者に言っておくが、カメ田には甲羅のような肋骨があるし、カエル川の足はカエルのような形態である。そう、この映画の登場人物は皆、動物の骨を持っているのだ。
 学園ではスポーツ万能のライオン寺やモデルのフラミンゴ塚、声の大きいワニ渕やワシ崎らが上位グループで、下位グループのカメ田たちは、学食でお昼も食べられず、グランドの片隅で食べている。
 そんなある日、カエル川が強靭なカエル足を使い、車に轢かれそうになった少年を救う。そのニュースがSNSで拡散され、カエル川は一躍人気者に! その人気に目をつけたのが生徒会長を目指すライオン寺たちである。彼らは選挙の人気取りにカエル川を仲間に引き込もうとする。それを知ったカメ田は心配する。なぜならカメ田には過去に同じような経験をした友人キリン沢がおり、彼を守れなかった苦い記憶があったからだ。キリン沢はその長い首の骨で人気者の座を射止めたものの、人気グループによって笑い者となり、学校をドロップアウトしていた。その一方で、あばら骨に隠した(!?)自分の本音が、カエル川に対する嫉妬と劣等感であることにも気付いているカメ田。
 生徒会選挙当日、カエル川はライオン寺の応援演説に立つのだが……!?
 骨が変わっただけで、青春真っ只中の友情を、こんなに説得力をもって描けるとはビックリである。あばら骨を骨琴、もとい、木琴にしてリズムを刻んで(このリズムがまたダサかっこいい)親友の応援をするシーンにもビックリしたが。
 とにかく不思議な映画。原作は同名の動物図鑑。いやはや、なんとも……。困惑しつつも、なんか感動させられちゃう青春ドラマである。
 それにしても、学園に象骨格の生徒が多いのはなぜかしら。

 

▼編集部オススメ、もう1本!
『サウスパーク/無修正映画版』
こちらはブラックジョーク満載のストップモーション・アニメ。かなり過激です。

 

ぜひ周りの人にも教えてあげてください!

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