2015年に創刊した「少年マガジンR」が、2019年末に大幅リニューアル! 電子オンリー雑誌として月刊化したほか、2020年1月からアニメ放送がはじまった『虚構推理』をはじめ、多くの「マガジンR」掲載作が『マガポケ』オリジナルに移籍しました。
今回は、「少年マガジンR」の須藤編集長にリニューアルのいきさつや作家さんたちの反応、実際に「マガポケ」での掲載がスタートしてからの反響などについてうかがいました!
紙の隔月誌が、電子オンリー化、アプリ掲載をスタートさせたのはなぜ?
ーー2019年12月に「マガジンR」のすべての作品が「マガポケ」オリジナルに移籍しました。そうなった経緯を教えていただけますか。
須藤編集長:
「マガジンR」は月刊少年マガジン編集部で編集している雑誌です。「マガポケ」は週刊少年マガジン編集部を中心に、僕ら月マガも含めた他の編集部と合同で運営されています。
結論から言ってしまえば、「マガポケ」への移籍を決断したのは、より多くの読者に「マガジンR」の作品に触れてもらいたかったからです。
「マガジンR」は2015年に創刊した”隔月”発行の雑誌でした。2019年12月に”月刊”の”電子オンリー雑誌”としてリニューアル。要するに、紙の発行をやめました。合わせて講談社の漫画アプリの中でもっとも読者数の多い「マガポケ」のオリジナルに移籍したいと編集部で話し合いました。
いま、漫画は雑誌だけではなくアプリやWebでも読むことができます。媒体が異なれば、当然読者も違ってくるはず。そんな違いのある読者に「マガジンR」作品に触れてもらいたかったという感じですね。
――「マガポケ」オリジナルに移籍したのは?
須藤編集長:
「マガポケ」でオリジナル作品として掲載するルールのひとつは、最新話がもっとも速く公開される場所が「マガポケ」であること、です。だから今「マガジンR」は、すでにマガポケで発表された各作品のエピソードを、電子雑誌としてまとめて売っている、という状態に変わりました。
音楽CDみたいな感じですね(笑)。まずは漫画アプリの「マガポケ」でシングルが出て、あとでアルバムとして電子書籍の「マガジンR」が出る感じ。以前は、先にアルバムを発売してから、人気曲をシングルカットで発売する海外方式でしたよね。
それでも、電子雑誌として電子書店で買ってくださる読者さんが多いのはありがたいことです。だから、カラーイラストや記事など、いわゆる“特典”や“オマケ”要素も雑誌にはなるべく入れるようにしています。
ーーテイストの異なる作品が増えて、ユーザーも喜んでいると思います。
須藤編集長:
そう言ってもらえるのは嬉しいです!
電子オンリーになったことはこれまで紙の雑誌で買ってくださっていた読者さんには申し訳ないことですし、その方たちが全員、電子書籍に移行して買い続けてくださるかどうかは自信がありませんでした。
このままでは「マガジンR」作品の読者が減ってしまうかもしれない。既存読者の、電子書籍への移行がなるべくスムーズに進むように考えながら、一方で、少しでも読者を増やす方法はないか考えた結果、「最新話をマガポケに掲載しよう!」と判断しました。
もちろん、それまで「マガジンR」という雑誌に載っていた作品たちですから、既存のマガポケオリジナル作品とはテイストも作り方も作家さんの目指すところも異なる部分があります。それは少し心配の種ではありました。
結果としてはマガポケオリジナル作品のバリエーションが増えて、読者さんも増えて、すごくいい結果になったと思っています。
マガポケに移籍することについての作家さんたちの考えは?
ーー先生たちはマガポケへの移籍にどんな印象をお持ちでしたか?
須藤編集長:
今回のリニューアルについては、マガポケへの移籍というより、紙の雑誌がなくなる、ということに落胆される作家さんが多かったんです。「紙、なくなっちゃうんですか……?」と。
マガポケに移籍することに関しては、「自分の作品は浮かないですか?」「埋もれてしまいませんか……」と質問をいただくことがありました。「マガジンR」のテイストは「マガポケ」読者に受け入れてもらえるのか……と不安をお持ちだった作家さんもいました。
ーー結果的には、ユーザーに喜んでもらえたような印象です!
須藤編集長:
「マガポケ」には、ランキングやコメント欄があって、人気のある漫画がひと目で分かりますよね。雑誌にはアンケートがありますが、ここまでダイレクトかつスピーディーに評価が返ってくることはアプリならではです。
ーートップページにランキングが表示されますし、コメント欄にもたまに厳しい意見が寄せられますね。
須藤編集長:
「読者の反応をすぐに見られる」は良いことでもあるんですが、馴れないと引っ張られてしまうんですよね。急に読者との距離が近くなって、戸惑われる作家さんもいらっしゃいました。
どんなに面白い作品でも、ネガティブなコメントはついてしまいます。でも、すべての読者の要望を取り入れることは不可能ですし、そもそも意味がない。
人間、どうしてもポジティブな意見よりもネガティブな感想の方に目がいってしますよね。おもしろかった」という10の声より、「つまらなかった」という1のコメントのほうがパワーが強い。心に来るんですよね。でも、10の「おもしろかった」をパワーにして欲しい。
ーー読者との正しい距離感を作るのも編集部の仕事?
須藤編集長:
ある作品に対して「絵が変だ」と言う読者もいれば「この絵が大好き!」と好意を示してくれる読者もいる。「好き!」と言ってくれる読者のほうが多いなら、その読者に向けて精一杯やってほしい、というようなことを、作家さんには伝えていきたいですね。
ーー実際に「マガポケ」へ移籍して、印象に変化はありましたか?
須藤編集長:
作品についた「お気に入り」や「応援」の数を見ていると、「マガポケ」読者にも読んでもらえているんだな、受け入れてもらえているんだな、と実感できます。
作家さんたちからも「テイストが違っていても読者に楽しんでもらえているのがわかって安心しました」という声をいただけました
ーー掲載前の不安が解消されたんですね。
須藤編集長:
そうですね。
隔月刊から月刊に変更したので、以前より短いサイクルで漫画を描かないといけない。でも、読者の「おもしろい!」「好き!」がダイレクトに伝わってきたら、モチベーションになりますよね! 不安が刺激に変わったような気がします。
ーー刺激とは具体的に?
須藤編集長:
コメント欄を見ていると、読者から「マガポケにはこういう作品がなかったから新鮮」という反応もありました。
月マガ編集部としてもそれがとても嬉しいですし、アプリ掲載に不安をお持ちだった先生にも「マガジンR作品も浮いたりしません」「好意的に受け取ってもらえています!」と自信を持って言えます。
そして、こういう読者からもらう刺激は、自信だけでなく、安心感やモチベーションにもつながると思うんです!
マガジンRの作品群でマガポケを盛り上げたい!
ーー「マガジンR」作品で「これはぜひ読んで欲しい!」という作品はありますか?
須藤編集長:
全部です(笑)。
ーー野暮な質問でした(笑)。質問を変えて、須藤さんが「マガジンR以外で、マガポケオリジナルのこれは面白い」と思った作品はありますか?
須藤編集長:
僕は「いじめのケジメ』が好きです。
でも実はランキングの上位の作品はだいたい好きなんです(笑)。「マガポケ」はランキングに「不思議だな」と思うことがないとは感じています。
ーー不思議だなってどういうことですか?
須藤編集長:
「なんでこの作品が上位なんだろう……」と思うことがない印象です。上位にある漫画はジャンル問わず「面白い」作品が集まっています。ランキングは読者からの「応援」の数で決まるじゃないですか。ということは、きっと面白い作品を見極める読者が多いんです。
ちなみに「マガポケ」側から「マガジンR」作品で気になる作品はありますか?
ーーあ、聞かれると思ってなかった!
アニメ化した『虚構推理』はぜひみなさんに読んで欲しいです。あと、『白聖女と黒牧師』みたいなラブコメやバトルファンタジーの『ピーチボーイリバーサイド』なども好きです。
須藤編集長:
ほかにもリニューアル以前から「マガポケ」オリジナル枠で連載している『爆笑頭』など、「マガジンR」の作品にもっともっと触れてもらえたら嬉しいです!
ーー「マガポケ」としては、今後もより一層、幅を広げていきたいなって考えているんです。ジャンルやテイストが増えれば、「マガポケ」の印象も変化しますから。
須藤編集長:
「マガジンR」はリニューアル後の流れに馴れることが第一目標です。
そして、「マガポケ」掲載については編集部ともども新しいブランド(媒体)を立ち上げたような意識で取り組んでいきたい。
これからは「マガポケでこういうジャンルがウケるから、こういう作品を作ろう」と言う声も出てくると思います。作家さんたちとどんどんおもしろい作品を作って、結果的に「マガポケ」や「マガジンR」が愛される媒体になっていけばと思っています。
ーー一緒にいい媒体を作っていきましょう。今日はありがとうございました。
「マガジンR」作家陣から「マガポケ」参戦についてコメントをもらいました!
『小説の神様』 手名町紗帆先生
「 エログロやデスゲームなどが人気な印象が強いマンガアプリですが、マガポケではそれだけでなくじっくり読ませる本格ミステリや 『小説の神様』のような文化系青春マンガでも、色んな方が読んでくださっていることを実感します!」
『虚構推理』 片瀬茶柴先生
「印象とは違うかもしれませんが、マガポケに掲載されるようになってから最新話を見て感想をくださる方が増えたように思います。ありがたいかぎりです。『金田一少年の事件簿外伝 犯人たちの事件簿』を読むと犯人たちの本気が伝わってきて元気になります。犯人から見た探偵って怖いですね」
『ピーチボーイリバーサイド』 クール教信者先生
「新旧いろんな作品を揃えているのでマガジン本誌で昔読んでいた漫画もすぐに探せてスマホですぐ読めるのは便利だなと感じております。コメントも素直で率直なコメントが多く、傾向が見やすいので反応が参考になりますね。まだ始まってないんですけど『キミのこと喰べていーい?』に期待してます。予告がすごくえっちな感じでした!」
『ときめきのいけにえ』 うぐいす祥子
「一日中漫画を堪能できる夢のようなアプリですね! コメント欄は読むのがちょっと怖いです」