マガポケにて『黒猫と魔女の教室』(以下、『猫魔女』)を連載中の金田陽介先生は、月刊モーニング・ツーにて連載中の『とんがり帽子のアトリエ』の愛読者。連載当初から読んでいて、それがきっかけで実現した対談は大いに盛り上がりました。互いの描く魔法ファンタジーについて、存分に語り明かしていただいています!
――本日はお集まりいただきありがとうございます。企画が立ち上がった経緯ですが、金田先生が昔から『とんがり帽子のアトリエ』(以下、『とんがり』)を愛読していると仰っていたのがきっかけなんです。
白浜先生:
大変光栄です。私も今日の対談が楽しみでした。よろしくお願いします!
金田先生:
よろしくお願いします! 『とんがり』との出会いは、思わず表紙買いしたのがきっかけです。もともと魔法ファンタジーの作品が好きだったこともあって、この表紙を見た瞬間、「これは買わなきゃ!」と思い、手に取りました。読んでみると、世界観などの作りこみに圧倒され、物語の中に没入してしまいました。
白浜先生:
冒頭からこんな褒めてもらえるなんて嬉しい…! ありがとうございます。
金田先生:
小道具の作りこみも丁寧ですよね。 ご自身でデザインされているんですか?
白浜先生:
そうですね。基本的には自分でデザインしています。結構、考えるのが大変です(笑)。
金田先生:
魔法ファンタジーって、小物のデザインを考えるの、大変ですよね。
白浜先生:
そうですね。それに、感覚で作っているところもあるので、場面ごとにデザインが違うかもしれません(笑)。
金田先生:
(笑)。分かります。自分も杖のデザインが初期と比べて、ちょっと違ったりするので。記憶力を信じてやるんですけど、見返すと「あれ、違うな」みたいな。
●画力にぶん殴られた!
金田先生:
『とんがり』は絵が本当にきれいですよね。服がふわっとしている描写が特に好きで…。マントが棚引いているシーンとか、見惚れちゃいます。
白浜先生:
本当、嬉しいです。やった! 私は『猫魔女』の制服が好きです。すごく可愛い…。そして、キャラごとに制服の着方が少し違っていますよね。制服って規律を正すとか、統一するためにあるものなのに、逆にキャラの個性が出ているところが面白いと思いました。
金田先生:
ありがとうございます。たしかに、スピカはきちんと着ていますが、中には着崩している生徒もいますね。
白浜先生:
バリエーションがあって、皆ちょっとずつ違うのが可愛いです。
金田先生:
めちゃくちゃ嬉しい…! 『とんがり』の服装は魔法ファンタジー感がありつつ、今っぽさもありますよね。すごくオシャレなので、どうやって服装を考えているのか、聞いてみたかったです。
白浜先生:
服はファッション雑誌より、服飾の専門学校の教科書を見ることが多いです。パターン(設計図)を参考にしています。
金田先生:
えー! パターンから考えているんですか。
白浜先生:
はい。既存のパターンを少しいじって描いています。あとは、デザインスケッチを見るのも好きですね。金田先生も洋服はお好きなんですか。制服が凄く可愛いのと、色も素敵だし…。
金田先生:
結構、好きだと思います。それにスケッチを見るのも好きですね! 「可愛い」と言ってくださった制服に関して言うと、星座をモチーフにして作りました。星空を連想するような服になればいいなと思い、デザインしていて。ただ、いっぱい装飾を付けちゃうと、描くのが大変になってしまうんです。というのも、前の連載(『寄宿学校のジュリエット』)の時に、リボンにストライプを入れたりしていたら、めちゃくちゃ作画の負担が増えたんですよね(笑)。なので、なるべくシンプルだけど華やかな制服にできたらいいなと思って作りました。全体的な色は夜っぽい、黒とかネイビー。それに星の金色を付けてデザインしました。
▲主人公・スピカの通うディアナ校の制服。
白浜先生:
でも、黒ってシンプルだと思ったら、意外と作画コストありますよね(笑)。
金田先生:
そうなんですよね、ベタが難しい(笑)。
白浜先生:
分かります(笑)。アナログですか?
金田先生:
いや、フルデジ(フルデジタル)ですね。
白浜先生:
描き込みが多いし、アナログなのかなと思いました。デジタルっぽさが良い意味でなくて、違和感がないですね。
金田先生:
ありがとうございます! アナログが好きなので、いかにアナログみたいにできるかを研究して作画しているんです。
白浜先生:
いやぁ、絵が上手いんよ…(笑)。
金田先生:
いやいやいや(笑)。恐れ多いです。『とんがり』は作画が凄すぎて、画力でぶん殴られている感じです。
――お互いの作品のストーリーやキャラの印象はいかがですか。
白浜先生:
私は牡牛座なので、最初はイオちゃんが出て来た時にワクワクしました。ただ、ストーリーが進むに連れて、ハナちゃんが好きになりましたね。猪突猛進のキャラが好きです。思い込んだら一直線なところが可愛い。
▲スピカとの絆が深まり、優しい笑顔を見せるハナ。
金田先生:
ありがとうございます。ハナは読者の方からの人気もありますね! キャラの性格は星座をモチーフにしています。星座占いなどを参考に作っていきました。ハナはさそり座なので、「一人でいがちだけど、友達ができると依存しちゃう」みたいな印象で作りましたね。『とんがり』だと、アガットとココの関係性が好きですね。最初はいがみあっていたけれど、だんだんと深まっていく絆に感動しました。特に11巻が大好きです!
▲主人公のココに、過去の言動について謝るアガット。二人の成長が感じ取れる場面だ。
白浜先生:
群像劇が好きなので、誰が主人公になってもおかしくない話を描きたくなってしまうんです。なので、つい話がとっ散らかっちゃうんですよね(笑)。『猫魔女』も誰が主人公になってもおかしくないですよね。皆、メインヒロイン感がある。
金田先生:
ありがとうございます。でも、サブキャラがメインの回でも主人公を立てなきゃいけないので、それが大変な時もあります。カペラとユゥの話は、なかなかスピカを二人の間に入れられなかったですね。
白浜先生:
でも、これは皆が大好きな回ですよ!
●私、魔法使えないじゃん!
――両作品とも魔法ファンタジーが題材になっています。影響を受けた作品はありますか。
金田先生:
『フェアリーテイル』や『魔法陣グルグル』ですね。例えば、『魔法陣グルグル』は地面に杖で魔法の陣を描いたら、魔法が出るみたいな設定なんですが、それが読んでいて、とてもワクワクするんですよ。『とんがり』も魔法陣を描くじゃないですか。杖で魔法を出すわけではなく、描いて魔法を出現させるっていう動作に魅力を感じます。
白浜先生:
私も『魔法陣グルグル』大好きです。でも、(登場人物の一人)ククリちゃんのミグミグ族しか魔法が使えないじゃないですか。他の魔法が出てくる作品も、ほとんどが一般の人は魔法を使えないですよね。だから「私、魔法使えないじゃん!」みたいな、少し悲しい気持ちになってしまって。
金田先生:
なるほど…!
白浜先生:
「君は魔法を使えても、私は魔法を使えないよね」という事実に気づいて、少し残念な気持ちになってしまったんですよね。だから自分の作品では、誰でも魔法を使えるという設定にして、魔法ファンタジーの価値観をひっくり返してやろうみたいな気持ちがありました。
金田先生:
その時の気持ちが『とんがり』にもつながっていたんですね。
白浜先生:
そうですね。誰でも挑戦できるし、誰でも魔法使いになれるって分かったら、嬉しくなる読者さんが増えると思って、『とんがり』の設定を作りました。
金田先生:
分かります! 自分も白浜先生に近い感覚で、星座をモチーフにした『猫魔女』の設定を考えました。魔法ファンタジーを読んでいる時に、「自分がこの世界に入ったら何の魔法を使えるか」を考える時があるんですが…。中には読んでいてもイメージできない作品ってあるんですよね。でも、星座だったら「自分がこの世界に入ったら、この魔法を使えるのか」って、自分に当てはめて想像してもらえるなと思って、モチーフを決めたんです。
――魔法ファンタジーを作る上で意識していることはありますか。
金田先生:
魔法ファンタジーって、知らない国の知らない文化を持つ人達の話ですよね。読者の立場からすると、全く違う世界の話な訳だから、敷居が高いと感じる人が多いと思うんです。だから自分の場合は、誰もが知っている「学校」を舞台にしました。その国のことは知らなくても、学校は皆、知ってる。そこを拠り所にすれば、敷居を下げられると思ったんです。それでも、異世界の価値観とか文化を伝えるのって難しいですよね。
白浜先生:
そうですね、読者に伝える情報量を決めるのは難しいです。細かい設定まで知りたいと思う読者の方もいるかもしれませんが、一方で、知らない国の情報がありすぎると、物語に入り込めないと感じてしまう読者さんもいる。この問題を、私はいつも料理で考えています。全く知らない料理を全く知らない味付けで料理しちゃうと、その料理を出された人は、食べる前に怖気づいてしまうと思うんですよね。でも、ハンバーグやカレーとか。皆が知っている料理に、誰も知らないスパイスで味付けしたものを出すと、「カレーだけど、味付けが普通のカレーと違っていて面白いね」みたいに感じてもらえ、受け入れてもらえる気がするんです。金田先生が『猫魔女』でやっていることは、まさにこれだと思っています。誰も知らない魔法ファンタジーの世界に、学校という皆が知っているスパイスを入れて、魅力的な世界観を作り上げている。
金田先生:
なるほど! 料理の例え、分かりやすいですね。逆に『とんがり』では、何を共通言語にして作っているんですか?
白浜先生:
『とんがり』では「クリエイターあるある」を入れています。漫画を読んでいる人の中で、漫画を描いている人の比率って年々増えている気がしていて。漫画に限らず、何かしらを作っている人も多いと思うので、クリエイターの皆さんに共感してもらえるような話を混ぜています。
金田先生:
そうだったんですか! たしかに、めちゃくちゃ「分かる!」ってなる時がありました。
白浜先生:
共感できることがあると、たとえキャラは魔法のことで悩んでいたとしても、自分のことに置き換えて考えてもらえるかなと思っています。
金田先生:
分かります。「魔法が描けなくなっちゃった」ってなって悩んでいたココと「ネームが描けない」と悩んでいる自分が完全に重なった時があって。凄く刺さったんですよね。
▲ココが魔法に行き詰まる場面。ネームに悩む金田先生は自分と重ねながら読んでいた。
白浜先生:
(笑)。でも共感できることがあることで、キャラの苦しみも伝わりやすいし、そこから抜け出た時の喜びも、より感じてもらえるのかなと思っています。
●生活の一部を魔法の修行に当てはめられたらいいなって
金田先生:
『とんがり』のストーリーの魅力が、より理解できた気がします。他に自分が感じている『とんがり』の魅力を語らしていただくとキャラが窮地を乗り越えていく展開が、とにかく面白いです。覚醒していきなり強くなったり、力押しで勝ったりせず、今までの蓄積とひらめきで、ピンチを乗り越えていく感じが好きです。
▲これまで覚えた魔法陣で、状況の打開を試みるココたち。
白浜先生:
ありがとうございます。展開を考えるのは、脱出ゲームを考えるのに近いかもしれないです。今まで覚えたことを、とんちのように使うイメージで作っています。あとは、派手なバトルをカッコよく描けないというのもありますが(笑)。読者の方も、この作品にはそこまで激しいバトルを求めていない気もします。ただ、『猫魔女』も工夫で乗り切る場面が多いですよね。
金田先生:
いろいろと、制限をかけているからだと思います。たくさんの種類の魔法がある中で、主人公のスピカは植物を扱う魔法しか使えない。それに、ポンコツキャラという設定もあるので、持っている技の数も、他のキャラと比べて少ない。数少ない技で、どうピンチを切り抜けるかを考えると、華麗な魔法でねじ伏せるみたいな展開にはできないので、自然とアイデアで乗り切る展開になるのかもしれません。
▲小さい魔力を駆使して、敵の裏をかいたスピカ。
白浜先生:
スピカちゃんは、十二星座の魔法には当てはまらない「再生魔法」を使えますよね。秘めた力を持っているのに、完璧に使いこなせていないところが可愛いです(笑)。でも一途で努力家なので、応援したくなるというか。それと、1巻でミカン畑を一生懸命作っているところは笑いました。魔術学校に合格するために、ミカン畑で魔法の訓練をしていたのに、いつの間にか、立派なミカン畑を作ることに目的がすり替わっていて(笑)。
▲魔術学校の入学試験に合格するための練習のはずが、気づいたら立派なミカン畑を築き上げていました。
金田先生:
実はあの場面、『とんがり』の影響を受けているんです。ココが魔法を使えなかった時に、「日常生活に置き換えて、魔法の練習をすればいい」とキーフリー先生が言っていて。そこからココは、日常生活との共通点を見つけながら、魔法の練習をして、魔法を修得していくんですよね。それに感銘を受け、『猫魔女』にも取り入れたんです。序盤でよくわからない修行をするより、生活の一部を魔法の修行に当てはめれば、共感してもらえるのではないかと思って…。
白浜先生:
そうだったんですね。家のお手伝いをしていたら、魔法をコントロールできるようになったって凄く夢がありますよね。そういう意味で、『猫魔女』は魔法が使えるようになった理由に説得力を感じました。
――キャラ作りについて聞かせてください。金田先生は星座をモチーフにしているという話が出ましたが…。
金田先生:
そうですね。さきほど話したように、星座の性格診断を参考にしていました。さきほど話したハナ以外で言うと、山羊座魔法を使うカペラのメイン回で印象的なことがありました。山羊座の性格って、性格診断だと真面目と言われがちなんですよね。奥さんが山羊座なんですが、「真面目としか言われないから、真面目と言われるのがヤダ!」と言っていて、そう考える人もいるのかと思いました。奥さんのエピソードを参考にカペラの性格を作っていきました。そしたら彼女のメイン回の時に、コメント欄で「何で山羊座の気持ちがこんなに分かるんだ」みたいな書き込みがあって(笑)。
▲「真面目」が禁句の自称不良のカペラ。
白浜先生:
(笑)。そういうふうに作られていたんですね。面白い! それに加えて、キャラの性格で『猫魔女』の魅力的なところはギャップだと思います。詠唱してほうきに乗って空を飛んだと思ったら、次のページでは屋根から落ちているみたいな(笑)。可愛いです。逆に私はキャラクターを作るの苦手で…。
金田先生:
えっ!? みんなめちゃくちゃ個性的ですが。
白浜先生:
最初の登場は、あまりインパクトはなく「ただ、そこにいる」って感じなんですよね。ココちゃん達と関わっていくうちに好感が持てるキャラになっていく感じかな…。
金田先生:
たしかに、アガットとココの関係みたいに、だんだんとたまらなく好きになっていく感じが『とんがり』にはありますね。一方で、キャラの行動理念がしっかりしているなと感じる場面もあって、そこにも魅力を感じています。性格はかなり詰めて、考えていくんですか。
白浜先生:
いえ、自然にそうなっちゃう感じですね。得意な魔法も決めていなかったんですけど、描いていくうちに定まることが多いです。
金田先生:
そうなんですね。でも描いてみないと、キャラがどう動くか分からないですよね。『猫魔女』の場合、アストレアはあんな変なキャラになる予定はなかったですね。もうちょっとクールなキャラになる予定でした。
白浜先生:
えー、そうなんですか(笑)。
金田先生:
結構、残念なイケメンになってしまいました。『とんがり』だとルルシィが凄く好きです。こちらは残念なイケメンとかではなく、本当にカッコいい!出てくるたびに「きたぁ!」ってなってます。カッコいい女性キャラが自分は好きで。
白浜先生:
カッコいい女性、いいですよね。ありがとうございます!
▲金田先生の予想を超え、自分を貫き続けるアストレア。
▲美人でカッコいい魔警団のルルシィ
●問題児だけど居場所がある。
それに救われている読者もきっといる。
――最後に、お互いの作品へのメッセージを交換して終わりたいと思います。
金田先生:
ファンタジーって、世界観が自由だけど現代の自分達にもつながるテーマがあると嬉しいですよね。アガットとココの関係性が、二人が成長していくに連れて良くなっていくのが好きで。その過程は、現代にも通じるものだと思っています。あとは何より、とんがりの雰囲気が好きです。先生と生徒が一丸になる感じが…。先の展開が気になります…!
白浜先生:
『猫魔女』は努力すること、友達と協力すること。魔法の話なのに、普遍的で現実にも学びのある感じが好きです。少年漫画だけど、児童書みたいな感覚があります。大勢の生徒がいるクラスでは弾かれてしまうような子も、自分なりの学び方とか、成長の仕方がある、問題児って言われてる生徒達が集められてるけど、居場所があるのがいいですよね。それで救われている読者の方もいると思います。一読者として、今後の展開を楽しみにしています。
――本日はありがとうございました!
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