マガポケベースマガポケの秘密基地! ここだけで読める面白記事あります!

これからも一生懸命ふざけていきます! 『さわらないで小手指くん』シンジョウタクヤ先生インタビュー

f:id:magazine_pocket:20211005132151j:plain

2021年5月から「マガポケ」で連載をスタートさせた『さわらないで小手指くん』は、マッサージをテーマにしたラブコメというこれまでにない画期的なジャンルの作品です。主人公の小手指向陽(こてさし こうよう)はスポーツドクターを目指す高校一年生。この春から星和大付属高校に通う彼は、学費を稼ぐために女子寮の管理人として住み込みで働くことになります。男子にとっては夢のようなシチュエーションですが、そこで暮らすのは一筋縄ではいかない曲者ぞろいのアスリートたち。

 

そんな女子寮を舞台にちょっとエッチなドタバタストーリーが繰り広げられる一方、作中では本格的なマッサージの技術が披露されるという実用的な側面もあります。今回は単行本の発売を記念して、シンジョウタクヤ先生に突撃インタビューを実施。ラブコメ+マッサージという前代未聞の作品が生まれた経緯について存分に語ってもらいました。

 

pocket.shonenmagazine.com

 

●子どもの頃からずっとマガジン派です

――先生が子ども時代に読んでいた漫画を教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
うちは父親が「マガジン」派だったので、家にはいつも「週刊少年マガジン」が置いてあったんです。『はじめの一歩』は子どもの頃からずっと読んでました。それ以外だとバスケ漫画の『Harlem Beat』や『ラブひな』をよく読んでいましたね。『ラブひな』はアニメもやっていたんですが、小学生には少し遅い時間帯の放送で、親に頼んで毎回その時間に起こしてもらって見ていました(笑)。あと、「マガジン」ではないですが、大きな影響を受けた作品といえば『SLUM DUNK』ですね。当時はすでに連載が終了していてバスケブームも一段落していたんですが、まわりの友だち含め、みんな読んでいました。僕も大きな影響を受けて、そこからバスケを始めて現在も続けています。

 

――漫画もアニメもスポーツも好きという活発な少年時代だったんですね。漫画の道に進もうと思ったきっかけは?

 

シンジョウタクヤ先生:
将来はアニメの仕事に就きたいと考えていたので、高校卒業後に絵の専門学校に進学しました。その学校には「アニメ」「マンガ」「キャラデザイン」という3つのコースがあるんですが、 一年次の前期は全コースを体験できるカリキュラムが組まれているんです。その中で僕は一番苦手だったマンガコースを選びました。

 

――あえて苦手なコースを選んだのはなぜですか?

 

シンジョウタクヤ先生:
昔から、自分が苦手なこと、できないことにあえて挑戦するタイプなんです。もともと、アニメの絵を真似して描くのは得意だったんですけど、自分でストーリーを考えたり、オリジナルのキャラを作ったりすることはぜんぜんできなかった。それでマンガコースを選んだんです。

 

●専門学校時代に築いた人脈で、初の連載をゲット

――専門学校時代のエピソードを教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
一年次の後期になるといきなり作品作りが始まるんですが、そこで16ページの作品を完成させました。絵の描き方とかネームの作り方とか一通りの基礎は学びましたが、学校では技術を身につけるよりも人脈を増やそうと考えたんです。そこから先生と仲よくなって、横のつながりから簡単な仕事を貰うようになり、仕事を通して技術を身につけていった感じですね。

 

――卒業後はどのようなキャリアを?

 

シンジョウタクヤ先生:
卒業後も依頼された仕事をこなす日々でしたが、21歳くらいのときに漫画サイトでちょっとしたエロ系の作品を描くことになりまして。公開は月10ページ程度なんですけど、僕にとって初の連載作品でした。2年くらいで結果が出なくなり切られてしまいましたが、その後にもう一度チャンスをいただけて、28歳くらいまではその連載を続けてましたね。

 

――それまでそういった作品を描いたことはあったんですか?

 

シンジョウタクヤ先生:
まったくの初めてです。実はそれまで女の子がぜんぜん描けなかったんです。苦手なジャンルだからこそチャレンジしてみようと。

 

●コンペを勝ち抜いてマガポケデビュー

――先生は生粋のチャレンジャーですね。

 

シンジョウタクヤ先生:
実は『さわらないで小手指くん』を描くまではラブコメにも挑戦したことがなかったんです。担当編集から「マガポケ」がラブコメの読み切り作品のコンペを開催していると教えてもらい、不得意なジャンルだからこそ応募してみようと思って。そこで描いたのが初めてマッサージをテーマにした『アロマちゃんはほぐされたい。』という作品で、これが本作のベースになっているんです。

 

pocket.shonenmagazine.com

 

――そのコンペをきっかけに『さわらないで小手指くん』の連載がスタートするわけですね。マッサージという、他ではなかなか見ないテーマを選んだのはなぜでしょう?

 

シンジョウタクヤ先生:
それは担当編集さんからの提案です。身体のケアとか健康管理って、スポーツをやらないとなかなか身につかないものなんですよね。そこで、読者の皆さんがあまり知らない有用性のある知識をラブコメに取り入れたらおもしろくなるかな、と考えたのがきっかけです。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132259j:plain

 

――長年バスケを続けていると、身体のケアでマッサージを受けることも多そうですね。

 

シンジョウタクヤ先生:
実は去年、バスケの最中に大ケガをしてしまい、今でも通院中です……(笑)。

 

――なんと、そうだったんですね! 大ケガと言いますと……?

 

シンジョウタクヤ先生:
前十字靱帯の断裂です。 シュートをして着地後になんだか膝がぐらっとしたなと思ったら、次の瞬間にはもう立てなくなってました。ほぼ自爆したような感じで、膝から崩れ落ちて歩けなくなるという(笑)。

 

――それはなんともお辛い……。

 

シンジョウタクヤ先生:
完治するには手術後8~10ヶ月かかると言われましたね。リハビリの一環でマッサージがあるのですが、あれは痛かったです。本当に痛みしかない(笑)。だったらこの痛みを僕の作品ではあえて気持ちよく描いてみよう、という思いで日々描いています。

 

――作品で気持ちよく描かれているマッサージのシーンには、そんな裏話があったんですね……。

 

●整骨院の先生に妻の意見、動画サイトも参考にしています

――マッサージに関する専門知識はどのように調べているんでしょうか?

 

シンジョウタクヤ先生:
主にネットです。セルフケア系のマッサージから、ストレッチに関する知識もトレーニングの知識もいろいろ紹介されています。特に動画サイトでは、より短い時間でコンパクトに要点を解説してくれるので助かってます。一応、僕を診てくれている整骨院の先生も僕がマッサージを題材にした漫画を描いていることは知っていますが、作品が作品だけにちょっと聞きにくいという事情もあります(笑)。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132339j:plain

 

――なるほど、そのような苦労もあるのですね。

 

シンジョウタクヤ先生:
なにか聞きたいときは「身体の○○が悪いんですが、どうすれば改善しますか?」という具合に、自分の身体について聞く振りをしてこっそり参考にしたり(笑)。あとは妻の意見を聞いたりしますね。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132354j:plain

 

――先生の奥さんですか?

 

シンジョウタクヤ先生:
ハイ、実は妻も以前はバスケの選手だったんですよ。3人制バスケの国内リーグで去年までプレイしていたんですけどね。マッサージ店でアルバイトをしていた経験もあって、身体のケアについてはある程度の知識を持っているので彼女の意見も取り入れつつ。僕自身の経験に加えて、そういったスポーツに親しんでいる人間がまわりにいるというのも作品を描く上では助かっています。

 

●必殺の「肩甲骨はがし」で見えた、この先の道筋

――では、作品の設定において苦労した点を教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
作品の大まかな企画や方向性についてはすんなり決まったのですが、連載が始まるまでに苦労したのはヒロインとなる5人のキャラクターですね。僕はTikTokをよく見るんですけど、そこに出てくるような今風の女子にしたいと思っていたんです。それがプロトタイプになった『アロマちゃんはほぐされたい。』のヒロインでもある楠木アロマ(『アロマちゃんはほぐされたい。』では黒川アロマ名義)です。住吉いずみ、狭山ヶ丘ちよについては最初からクセの強い感じにしたかったので、キャラ設定はスムーズに進みました。一番苦労したのは北原あおばです。設定の時点ではどんなキャラになるのかなかなか掴めなかったんですが、結果的に一番積極的になりましたね。見た目こそ普通ですが、すごくキャラが立ってます。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132408j:plain

 

――お気に入りのエピソードを教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
印象的だったのは第4話です。この回であおばに対して「肩甲骨はがし」をするんですが、痛さと気持ちよさの絶妙なバランスが表現できたと思います。ここで「こうやってストーリーを展開していけばいいんだな」という方向性が見えましたね。「肩甲骨はがし」というワードがすごく強くて、インパクトがあって、必殺技的に使ってみたら作品がおもしろくなったんです。第4話は担当編集さんもおもしろいと言ってくれて、ちょっとエッチな要素を取り込んだマッサージが、上手く表現できた回ですね。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132425j:plain

 

――ちなみに、先生は肩甲骨はがしをされたことはありますか?

 

シンジョウタクヤ先生:
整骨院で週2回、ガシガシとやられてますね(笑)。最初はすごく不思議な感覚になるんです。「そんなところに指が入るわけないじゃん」って思うけど、なぜか入ってしまう。「これ、指が全部入ってるんじゃないか?」と思うときすらあります(笑)。無理しない範囲でやる分にはとても気持ちがいいですよ。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132443j:plain

 

――漫画家はデスクワークがメインなので、やはり肩や腰のメンテナンスには気を使っていますか?

 

シンジョウタクヤ先生:
以前、腰の調子を悪くしてそこから整骨院に通うようになりました。先生から「一生働けるようにしてあげるよ」と言われたので、信頼して今でも週2で通っています。腰痛の原因は腰そのものというより、身体のバランスが崩れて腰に影響が出るケースが多いみたいで。今は去年ケガをした膝以外に悪い部分はないですが、身体のケアに気を使ってます。

 

――漫画家において腰痛は職業病のようなイメージがありますが、先生は身体のケアもばっちりなんですね。

 

シンジョウタクヤ先生:
あとはバスケを今でも続けていることが大きいですね。20年ほど続けていますが、今がいちばん上手いと思ってますから(笑)。ただ、今はコロナの影響でバスケが満足にできない状況なんですよね。

 

――バスケの魅力はどんなところですか?

 

シンジョウタクヤ先生:
それはもう得点がいっぱい入るところです(笑)。その得点に自分が絡んでいけるのが、本当に楽しい。いつかマガジンでバスケ漫画を描いてみたいですね。

 

●『さわらないで小手指くん』は集大成ともいえる作品

――『さわらないで小手指くん』を描くにあたって、参考にした、影響を受けた作品を教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
子どもの頃に見ていた『ラブひな』の影響はありますね。あとは弓月光先生の『甘い生活』。この2作品を掛け合わせた作品とでも言いますか。『甘い生活』の主人公は下着メーカーで働く会社員なんですけど、女性の身体を触るだけでスリーサイズがわかってしまう特殊能力を持っているんですよ。そうやって女性の身体のサイズを測ってピッタリの下着を作っていくという。

 

f:id:magazine_pocket:20211005132502j:plain

 

――『さわらないで小手指くん』は、『ラブひな』と『甘い生活』のハイブリッドなんですね。

 

シンジョウタクヤ先生:
ラブコメというジャンルが好きになったのは、僕が子どもの頃に父親が買ってきたいろんな漫画の影響です。『ラブひな』も『甘い生活』も僕より少し上の世代がリアルタイムで読んでいた作品ですが、それらが源になってるんです。マッサージの有用性を強く出したのは、先輩漫画家の若林稔弥さんからのアドバイスです。2人で飲みに行ったときに「作品に有用性と共感性と意外性を組み合わせたらおもしろくなる」というアドバイスをいただいたんです。この作品ならその3つを全部満たせると思い、意識して有用性を出すようにしています。そんな意味でも、『さわらないで小手指くん』は僕の集大成的な一面のある作品なんです。

 

――気になる今後の展開を教えてください

 

シンジョウタクヤ先生:
そうですね、「肩甲骨はがし」に続く新技を出せたらいいなと思ってます。これからも一生懸命ふざけていくつもりです(笑)。

 

――そんな先生が「マガポケ」で気になる作品を教えてください。

 

シンジョウタクヤ先生:
「マガポケ」ってラブコメ作品が多いので、読者として楽しませてもらってます。これまで本格的には読んでこなかったので、勉強も兼ねて読んでます。気になる作品としては『転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます』ですね。漫画としてすごく上手いと思います。

 

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

 

シンジョウタクヤ先生:
僕の作品を読んでくれている読者には感謝しかないです。これからもちょっとエッチで、ちょっとカワイイ女の子が出てきて、ちょっと為になる漫画を描いていくつもりです。ぜひ、楽しんでもらいたいですね。

 

●『さわらないで小手指くん』単行本第1巻、絶賛発売中!!

kc.kodansha.co.jp

 

感想をツイートする

 

▼『さわらないで小手指くん』の記事はコチラでも!

pocket.shonenmagazine.com

pocket.shonenmagazine.com