“斎藤悠介”16歳。彼には、14年間の記憶がない。
高校入学直後に失踪した彼は、半年後、あまりにも異常な状態で発見される。
公園の池に浮かぶボートの上で、手足を拘束されていたのだ。
記憶を失った“斎藤悠介”
今の“斎藤悠介”は、どこにでもいる平凡な高校生だ。学校で友達とつるみ、環という可愛い彼女がいる。
環の尻に敷かれていると言っても良い。彼女の前ではタジタジだ。
彼女と初チュウの話題でからかわれるような、普通の男子高校生なのだ。
母は言う。中学までの“斎藤悠介”は自慢の一人息子だった、と。
だが、確かに存在するのは、拭えない違和感。
その手に残るは──
誰かを刃物で刺した感触。これは夢か? それとも記憶か?
今の“斎藤悠介”にはわからない。
突きつけられたのは、真実
バイト仲間で、友達のシュウ。彼の背中には大きな火傷の跡がある。
“斎藤悠介”はシュウの背中をまじまじと眺める。
仲が良い友達なら、気になるだろう。あんなに大きな傷が残る凄惨な過去とはいったいどのようなものなのか? 友達に何があったのか?
バイト後にシュウと話す“斎藤悠介”。自分の関係ない世界での出来事──そう思っていたシュウの話を聞く。
そして、突きつけられるのだ。
「加害者は、お前だ」と。
自身が犯した過去の罪を列挙される“斎藤悠介”。記憶のない彼には、実感が伴わない。シュウのことを友達だと思っている。
だが、シュウは知っている。「悪魔」だった頃の“斎藤悠介”を。その「悪魔」がしたこと、自身にされたことを。
過去からは、逃れられない
俺は何をした? 何者だった? 疑問は多々あるものの、何しろ記憶がない。どうすることもできない。
知らないものは仕方がない、と一旦は折り合いをつけ、普段通りの日常を過ごそうとする“斎藤悠介”の前に、一人の人物が現れる。
シュウと同じく“斎藤悠介”の過去を知る会澤だ。
右手に開いた大きな穴。今の、記憶を失った“斎藤悠介”が知り得るものとは、まったく別の世界で起こったような出来事を、会澤は「キミがやった」と語る。
そして会澤は、“斎藤悠介”の記憶を蘇らせようと動く。
会澤は、過去の“斎藤悠介”が自身の右手に開けた穴を通して今の“斎藤悠介”を見る。まるで、記憶を失った“斎藤悠介”など存在しないかのように。いつでも自分は過去の“斎藤悠介”だけを見ているのだ、とでも言いたげに。
そして、“斎藤悠介”は否が応にも自分の過去を知ることになるのだ。「悪魔」と呼ばれていた頃の、残虐非道な自分を。
“斎藤悠介”は一体何者なのか。
人が人を冗談でなく、本気で「悪魔」と呼称するなど、なかなかあることではない。 大抵の人間には良心が備わっていて、誰かを精神的にでも物理的にでも、傷つけたら自分もダメージを受ける。
「悪魔」と呼ばれるまで醜悪になれる人間は、ほとんどいない。
それでも“斎藤悠介”は確かに「悪魔」だった。人の背中に火傷を負わせ、人の右手に穴を開け、骨折させ、強姦し、誰かを殺した──
『君が僕らを悪魔と呼んだ頃』は謎が謎を呼ぶサスペンス劇。そして、これ以上なく狂った「加害者」と「被害者」の物語だ。
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