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『灰仭巫覡(カイジンフゲキ)』連載開始記念企画!! 大暮維人先生が今の思いを語る——。特別インタビュー!!

大暮維人先生が描く、待望のオリジナル最新作『灰仭巫覡(カイジンフゲキ)』が「週マガ」26号より連載スタート! 今回は、連載開始を記念した大暮維人先生、特別インタビューを大公開しちゃいます! さらに、大暮維人先生の大人気作品『エア・ギア』『化物語』が6月4日まで無料公開キャンペーンを実施中です!! この機会をぜひお見逃しなく!!

 

1995年にデビューして以降、常に走り続けてきた大暮維人。
『化物語』のコミカライズ、画集二冊同時発売、原画展の開催を経て、遂にオリジナル新連載が始動する。画業30周年を目前にした「今」の大暮維人に迫る!

 

●無心の境地が気持ちいい

今現在、漫画家という職業をどのように感じていますか?


 締め切りがなければ、すごく楽しい仕事だと思います。とはいえ、締め切りがなければ絶対にできない、と言うかやらないかもしれないので、ジレンマですね(笑)。あとは、やっぱり必要なのは体力だなぁと、しみじみ実感しています。


イラストの寄稿など、漫画以外の仕事で大切にしていることはありますか?


 大切にしているのは「裏切らない」ということです。僕に何かを期待して、誰かが仕事を依頼してくれているのと思うので、その期待を裏切らないものを描くということは、最低ラインだと思っています。また漫画以外の仕事は、普段と違う思考や勉強が必要なので刺激的ですね。漫画的に言えば、修行している感覚です(笑)。

 

仕事中に楽しいと感じるのはどんな時ですか?


 普段から音楽を聴きながら漫画を描いているんですけど、たまに漫画と音楽がシンクロすることがあるんです。“バチッ”とハマってフロー状態になるというか。あれは気持ちいいです。作業でいうなら無心で手を動かしている状態…キャラや背景の細かな描き込みをしている時が好きです。地味な作業ですが、たまに変にテンションが上がってくることがあったり。

 

■Q&A_01
Q. 漫画家を目指したきっかけは?
A. パチンコで作ってしまった借金を返済するために、漫画雑誌の賞に投稿しました(笑)。受賞はしましたが、賞品は現金ではなく10万円の図書券でした(笑)。

 

●絵が上手いとは「個性の表出」が上手いということ

漫画を描き続けてきて、時代や漫画の在り方の変化について実感していることはありますか?


 ここ最近、漫画業界にもAIが参入してきました。「かかってこいや、オラァ」と言いたいところですが、技術勝負をしたらとてもじゃないが敵わないなと。でも、今も昔も絵が上手い人が売れていたわけではないと思うんです。絵が上手い人というのは絵が上手いように見えているだけで、一番の才能は「個性の表出」なんだと思います。「絵が上手い」という個性を持っていて、それを表に出す力が優れている。逆に言うと、絵そのものは苦手でも売れている人もたくさんいるじゃないですか。だから絵に限ったことではなく、「自身の個性の表し方が上手い」ということが大切なんじゃないかと。
 AIが出てきて技術というものに意味がなくなる時代においては、自身の個性、自分だけの絵を表出する能力を持っている人こそが「絵が上手い」ということなのかなと思っています。

 

そのAIに勝つ秘策はありますか?


 結局はコミュニケーションになるのかな…。僕たちが話しをする時って相手がどういう感情で自分の言葉を受け取るか、ある程度予測するじゃないですか。そういった先取りのテレパシーのようなものが漫画を描く時にも必要なんじゃないかと。リアルの僕は話し下手ですが、漫画を通せば頑張れると思うんで(笑)。あと、現段階ではAIというものは人間を喜ばせる感情までは持ち合わせていないと思うんです。つまり、本当の意味での創作はできていないんじゃないかと思うんですけど…秘策がわかったら教えてください!


■Q&A_02
Q. アシスタント経験はありますか?
A. ありません。森田まさのり先生の職場に応募をしたことがありますが、返事が来ませんでした。当時、親には「受かった」と報告をして見栄を張っていました(笑)。また最近、森田先生がXでこのことについて触れてくれました。

 

●作家・大暮維人の変化
技術ではなく解釈の時代

先ほどの「個性」についてですが、大暮維人として大切にしていることはありますか?


 昔は技術さえ磨いていれば作家として長生き出来ると思っていました。それこそ「絵」が自分の一番の個性だったかもしれません。でも今は、解釈の時代なんだろうなと感じています。

 

解釈の時代というのは、どのような意味でしょうか?


 インプットとアウトプットの隙間に「個性」を挟んでギアチェンジしていくというのは今も昔も同じですけど、そのギアのあげ方だったりバイアスの掛け方により、強い「自分」というのが必要になっているんじゃないかと。年齢を重ねて中身も変化していますから、同じインプット情報でも20代と今では全く別のものが見えているし、揺り動かされる感情の場所も違ってたりします。
 30年も同じ仕事をしてきた今の自分、この年齢の自分にしかできない表現方法というものが必ずあるはずなんですよね。それを個性としてうまく漫画に表出できるかどうかは結局、自分の中の解釈力にかかってるんじゃないのかなぁと。

 

そのように考えるきっかけはありましたか?


 自分の中にある危機感だったと思います。今は漫画自体のレベルが上がり、さらにはAIも参入してきています。その中で続けていくためには、技術だけに頼っていては生き残れない時代に入ったと感じました。そこから〝技術ではなく解釈〟にシフトチェンジしなくちゃなって。

 

●今作の課題は読者とのコミュニケーション

お話しいただいた変化について、これまでの作品と今作では意識の違いなどはありますか?


 これまでの作品は全てテーマを決めて描いていました。『天上天下』なら「強さ」。インパクトの瞬間の見せ方やパワー重量の表現を。『エア・ギア』なら「空気」。風やスピード感といった目に見えないものをどうやって伝えるかとか。でも今回はそういうテクニカルなテーマではなく、“読者とのコミュニケーション”が一番大事かなって考えています。可処分時間をどれだけ振り分けてもらえるか。頂けたその時間をいかに楽しんでもらえるか。そのための解釈であり、対話なんでしょうね。

 

どのようにして読者とのコミュニケーションを取ろうと考えていますか?


 漫画を描いていると誰かの声を聞いているわけでもないのに、勝手に伝わってくる空気みたいなものがあって、なんとなく読者がどう受け取っているのかがわかるみたいなことがあったんですよ。勘というか、言うなれば僕の思い込みみたいなものです(笑)。でも今回は、作品を媒介として読者との対話ができればいいなって。
 作品を媒介としてというと、SNSを通してだとか、データを読み込んで傾向と対策を練ることをイメージしがちだと思いますが、それでは後追いになってしまって正直間に合わない。その頃にはもうとっくに、原稿描き終わっちゃってますからね(笑)。そうではなく、作業の中で誰が何を求めているのかを先読みしていく。今までは技術的な向上に振り分けていたエネルギーを、原稿の向こう側に向けていければ。
 それがいかに難しいことかはわかっていますが、読者との対話というか、言い換えれば時代との対話とも言えるのかな…。結局、僕自身も今この時代を生きているので、その自分の心と常に対話をし、自分が本当に描きたいものか、今描くべきものかを確かめ続けていくことが、同じ時代を生きる読者とのコミュニケーションになったらいいな……うーん、なんだか自分でも意味不明になってきた(汗)。


AIにはできない読者とのコミュニケーションがやはり大切になるんですね。


 今までの僕は“自分の心の中”のようなものはあまり出せていなかったのかもしれないです。今思えば無意識に出すのを嫌がっていた部分もありました。ただ今回はそれを出さなきゃいけない。技術や知識ではなくて、漫画というのは結局、作家の中身なんだと思うので。

 

■Q&A_03
Q. 「大暮維人」というペンネームの由来は?
A. ホットミルクで賞を受賞した後、友人といくつかペンネームの候補を話していました。でもいざ提出する時、「大暮維人」以外のものを全部忘れちゃったので、唯一覚えていたものにしました(笑)。

 

●100年後も読まれる作品に

最後に新連載『灰仭巫覡』に込めた思いを聞かせてください。


 今の精神状態はとてもニュートラルで、漫画家人生の中で初めてですね、こんなのは。気合はありますが気負いはないですし、準備もしっかりしてきました。自分にできること、考えてきたことをただ出してみよう、というシンプルな気持ちです。
人間はいつの時代も、自分が激動の時代を生きていると感じるらしいですが、今の時代ばっかりは掛け値なしで大きな曲がり角にきているんじゃないかな。僕も、みんなも、しばらくずっと忘れていたことがあるんじゃないか、そんな気がしています。今作は、そんな忘れかけていた大切な何かを少しずつみんなと一緒に思い出していきたい、そんな漫画です。多分。
 漫画界もまた大きな変革の時代に入っていますが、だからこそ、こんな時にこそ描ける漫画があるとも思っています。多くの漫画が100年後まで読み継がれていけるように、漫画文化が姿を変えても人々に読み継がれていけるように。僕も微力ながらその一助になれればなという、大それた気持ちで未来を夢見つつ今を頑張ってみます。

 

インタビューありがとうございました。

 

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