マガポケに『はじめの一歩』が初登場! 1月31日までの期間限定で、なんと1~60巻分を無料公開中! それを記念して、『はじめの一歩』の魅力を、ボクシング経験者のライターTが3回にわたって紹介。第1回は、主人公である幕之内一歩を語るに欠かせない名エピソードをピックアップしました! ボクシング漫画の新たな地平を切り拓いた名作に、ぜひ触れてみてください!!
『はじめの一歩』あらすじ
主人公の幕ノ内一歩は、気弱ないじめられっ子の高校生。そんな彼は、同級生にいじめられていたところ、たまたまロードワーク中に通りかかったプロボクサー、鷹村守に助けられる。それをきっかけに、一歩は鷹村が所属する鴨川ジムで、プロボクサーになることを決意。持ち前の頑張りで過酷な練習に耐え抜き、強くなっていく。数多の強敵との死闘を勝ち抜き、日本王者、そして遥かなる世界王者への道を歩んでいく——!
一歩の目標であり最大のライバル! 宮田との出会い
一歩の最大のライバルといわれる宮田との出会いは、鴨川ジムの入門時だった。プロボクサーを目指すため、鴨川ジムに入門するため扉をたたいた一歩。しかし、全く闘争心が感じられない一歩を、鴨川会長は見込みなしと判断し、一歩と同世代のボクシングエリート、宮田一郎とスパーリングをするように言われる。
当然ながら、ズブの素人である一歩と、元ボクサーでトレーナーの父から英才教育を受けてきた宮田では、勝負になるはずがない。ところが、一歩は、宮田からの攻撃に対し驚異的なタフネスぶりを発揮する。何度倒されても立ち上がり、鷹村から教わったばかりの左ジャブと右ストレートを必死に繰りだす!
初めは一歩をナメていた宮田も、中盤からは完全に本気となり、持てる技術を駆使して一歩を倒しにかかる!!
結果こそ惨敗だったものの、予想外の頑張りを見せた一歩はジムへの入門を許可される。このスパーリングで、一歩は同い年ながらプロ顔負けの技術を持つ宮田に憧れを抱く。一方の宮田は、一歩の天性のパンチ力に舌を巻き、ボクシングの奥深さを改めて実感。やがて一歩と宮田は、自他共に認めるライバルとなっていく――!!
私(ライターT)も少しばかりボクシングをたしなんでいるため、初めてのスパーリングの独特の感覚は想像がつく。ヘビーバッグやスピードバッグ、ミット打ちなどの十分な練習を重ねても、実際にリングで相手と対峙するのは全く別物だ。そんなスパーリングをぶっつけ本番で、いきなりやらされた一歩の緊張感は想像に難くない。
しかし、そんな中でも持ちこたえたタフネスぶり、その後の反撃で見せた、驚異的なスタミナとパンチ力。試合内容こそ一方的だったが、一歩の根性と可能性に胸を熱くさせられた。
この試合の後、一歩との対戦のために宮田はジムを移籍する。一歩と宮田のプロとしての対戦は、未だに対戦が叶っていない。私の『はじめの一歩』人生は、一歩と宮田の対戦を読むために生きていると言っても過言ではないかもしれない。
一歩と宮田の出会いは1巻をチェック!
熾烈な距離の奪い合い! “和製ヒットマン”間柴との闘い
後に一歩の彼女となる久美の兄・間柴。一歩と間柴との出会いはプロデビュー前だ。ボクシング誌の記者から、同じ階級でデビュー予定の将来有望な新人として眞柴を紹介された。
眞柴はいかつい風貌に口調も乱暴で無愛想。対戦相手には一切情けなどかけず、過剰なまでに叩きのめすスタイルの闘い方をする。しかしそれには、若くして両親を亡くし自分たちを色眼鏡で見る周囲を、ボクシングの成功によって見返したいという気持ちと、苦労をかけた妹にも楽をさせたいという、ハングリー精神が間柴の根底にあるのだ。
東日本新人王戦を勝ち進んだ一歩は、宮田との死闘を紙一重で制して勝ち上がってきた間柴と決勝で対戦することになる。一歩は間柴の事情や強さを認めつつも、彼が宮田戦で見せた卑怯ともいえる闘い方に納得できずにいた。一歩は、そんな間柴への複雑な思いを抱えながらリングに上がる――!!
間柴は長身痩躯のボクサーで、1980~90年代に実際に活躍していた選手“デトロイトのヒットマン”トーマス・ハーンズが得意としていたフリッカージャブの使い手。ムチのようにしなる切れ味鋭いジャブと、破壊力抜群の長身から繰りだされるチョッピングライト(打ち下ろしの右ストレート)は、ハーンズを彷彿とさせる。まさに間柴はまさに“和製ヒットマン”という印象だ。
そして、この一歩と間柴の対戦は、トーマス・ハーンズと、世界ミドル級統一王者、マービン・ハグラーとの対決を思い起こさせる。長身の間柴に対し、背の低い一歩はリスクを背負って愚直に前進する。その姿はハーンズ戦のハグラーと被る。間柴の秘策であるエルボーブロックで右拳を痛めながらも、一切かまわず右を連打する展開も実に熱い。さらに間柴が見せる勝利への飽くなき執念。次のことなど考えず、その瞬間に全てを賭ける。この闘いは、相反するスタイルの衝突だけではなく、ふたりの強い想いがぶつかり合った名勝負だ。
そして、この一歩との試合を経て、間柴の心は少しずつ変わっていく――。
一歩と間柴の闘いは9~10巻をチェック!
東西豪腕対決! “浪速のロッキー”千堂武士戦
全日本新人王決定戦で対戦が決まった一歩と千堂。西日本新人王の千堂武士が、ある日突然、鴨川ジムを訪問してきた。東日本を制した一歩だが、全治2ヶ月の重傷を負ったため、東西の王者が雌雄を決する全日本新人王決定戦は辞退する予定でいた。そんな一歩に、千堂は出場を直談判しにやってきたのだ。
かなり強引ではあるが、強敵と闘うことが心底好きだという千堂のストレートな想いに、一歩は好感を抱く。千堂の想いに応えたいと考えた一歩は、医師の治療を受け、全日本新人王戦に出場することを決意する。
性格は大きく異なるが、千堂は一歩と全く同タイプのインファイター。ディフェンスにやや甘さはあるものの、欠点を補って余りあるパンチ力で相手をねじ伏せるのが信条だ。互いに強打を誇るインファイター同士、緊迫感に満ちた接近戦が繰り広げられる!
千堂は実に気持ちのいいボクサーだ。とにかく強い相手と真っ向から殴り合いたいという、彼のピュアな想いには、好感を抱かずにはいられない。向こうっ気の強い言動と、華のある闘いぶりを兼ね備えた彼は、ボクシングファンの多くが応援したくなるような魅力に満ちている。互いにKOパンチを持つピュアなインファイター同士による、バチバチの殴り合いは、ボクシングファンならずとも興奮させる魅力に満ちている。
また、ボクサーには「かみ合う相手」というものが存在する。互いに相性が良く、何回闘っても名勝負になるような相手のことだ。実例を挙げると、マニー・パッキャオとファン・マヌエル・マルケス、マルコ・アントニオ・バレラとエリック・モラレスなどがそのような間柄だ。千堂は、一歩の試合のビデオを見て「恋人見つけた気分や」とつぶやいている。一歩と千堂は、単純なライバルという言葉を超えた、まさに運命の相手なのだ!!
一歩と千堂の闘いは11~13巻をチェック!
一歩の代名詞「デンプシーロール」開眼! タイの強豪との復帰戦!
日本フェザー級タイトルマッチで敗れた一歩は、自分にはまだまだ足りないものが多いことを痛感し、攻防一体の新たなファイトスタイルを模索していた。そのスタイルは「打たれる前に打つ」。一朝一夕にできるようなものではなく、鴨川会長のアドバイスと、憧れであり理想とするボクサー、マイク・タイソンのビデオを何度も見返し、地道に努力を重ねていった。
そして迎えた復帰戦。相手はタイの強豪、ポンチャイ・チュワタナ。戦績以外、資料のない不気味な相手である。リングで対峙したポンチャイは、攻撃的でタフな上に、しっかりした技術を持つボクサーだった。決して油断の出来る相手ではないはずだが、1ラウンド終了後、一歩は何と「次のラウンドで倒してきますから!!」と宣言。
第2ラウンド序盤、リズムに乗って連打を繰りだすポンチャイに、一歩は防戦一方だが、素早いウィービングで攻撃をかわし続ける。そして次の瞬間、一歩は怒濤の攻撃を炸裂させる。ウィービングによる高速のウェイトシフト(体重移動)の反動を利用した、嵐のような左右の連打。それは実在した伝説のヘビー級世界王者、ジャック・デンプシーの姿を彷彿とさせる連撃だった。これこそ、後に一歩の代名詞となる必殺技、デンプシーロール誕生の瞬間だ!
一歩は、これがデンプシーロールと呼ばれる技であることを知らず、試行錯誤を重ねる中で、独自にこの技を編み出していた。これ以降、一歩はデンプシーロールを武器に、さらなる飛躍を遂げていくこととなる――!!
デンプシーロールは、相手にある程度のダメージがある状態でこそ、真価を発揮する技。相手のガードを強引にこじ開け、フィニッシュに繋げる。その猛攻は豪快そのものだが、実際にやるとなると、とんでもなくキツイ。なにしろ、激しいウィービング動作の中で全力パンチを連打するのだ。並のボクサーであれば、10発も打たないうちに、かなり疲労してしまうだろう。一歩のような強靱な足腰と、化物じみたスタミナがあってこそ成立する技なのだ!
デンプシーロールを初披露した一歩の復帰戦は24巻をチェック!
文/ライターT
『はじめの一歩』の魅力はまだまだたくさん!
次回は、一歩と鴨川ジムの仲間たちのエピソードを紹介したいと思います。お楽しみに!
ぜひ周りの人にも教えてあげてください!