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「ムムの成長」が作品のテーマ! 『300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました』八木戸マト先生インタビュー

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八木戸マト先生自身のTwitterで作品を公開し、驚異の18万いいねを獲得した『300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました』(以下、『邪龍ちゃん』)。

 

女の子の姿で現世に召喚された伝説のドラゴンと、なんの変哲もない青年・陽太とのふれあいを描いたファンタジーコメディが現在「マガポケ」で連載中です!

 

▼『300年封印されし邪龍ちゃんと友達になりました』

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12月9日発売の単行本1巻は、過去に出版された同人版に100ページ以上を追加した特大ボリューム !

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今回は、漫画家デビュー前は研究者を目指す理系の大学院生だったという異色の経歴を持つ八木戸マト先生に、デビューまでの道のりから本作品に込めた思い、今後の展開まで徹底インタビューしてきました。

 

●大学院までのキャリアを手放し、漫画家の道へ

――先生が漫画家を目指したきっかけはなんですか?

 

八木戸マト先生:
実は、明確に「漫画家になりたい」とは思ったことはないんです。周りに流されて、気づいたら漫画家になっていたような感じですね。理系の大学に通っていたので、将来は研究職に就くつもりでした。ただ、大学に入ってからペンタブを買って、趣味として描いた絵をTwitterやpixivで発表していました。

 

――子どもの頃から絵を描くのはお好きだったんですか?

 

八木戸マト先生:
そうですね。ただ、子どもの頃はノートの端っこに見たモノを描く程度で、美術部やサークルに入った経験はなかったです。漫画もちょこちょこ描いていましたが、完結させたことはなくて。1、2話描いてぶん投げて終わりでした(笑)。

 

――本格的な漫画はまだ描かれていなかったんですね。

 

八木戸マト先生:
Twitterやpixivに絵をあげていたら、大学3、4年の時に、成人向け作品の出版社から声をかけていただいたんです。当時は漫画のノウハウなんて何もわからなかったので、最初は断っていたんですけど、「漫画のノウハウも教えるからやりましょう!」と言われて、興味本位で始めました。

 

――そこから漫画家になろうと。

 

八木戸マト先生:
働きたくない気持ちが大きかったんです(笑)。成人向け作品を描き始めてから、生計を立てられるくらいになっていたので、ひもじくて倒れることはないかなと。でも、漫画家で成功することはギャンブルに近いイメージなので、院生まで積んだキャリアを全部ぶん投げることについては悩みました。親からも「正気か?」と言われましたし(笑)。1~2年悩んだ末、漫画家か研究者のどちらになるかと考えたとき、やっぱり絵を描くことが好きだなと思ったので、やってみるかと。

 

――大学院まで通われていたんですね。どんな研究をされていたんですか?

 

八木戸マト先生:
簡単に言うとものづくりの研究です。未知の物質を作りだし、その物質の特徴を研究して、どんな分野で役立つかあれこれ探り出すのが目的です。基礎研究なので、同じ作業を毎日5~6時間繰り返していました。

 

――院生の時は、すでに漫画も描かれていたんですよね。研究と漫画家との両立は大変だと思うのですが、作業時間の配分はどうされていたんですか?

 

八木戸マト先生:
研究が忙しかったので、大半は研究に割いて、帰宅してから漫画を描いてました。割合は7:3くらいですね。

 

●Twitter漫画の縛りから抜けて商業漫画に挑戦

――『邪龍ちゃん』をはじめ、先生はインディーズで作品をいろいろ描かれていますよね。

 

八木戸マト先生:
Twitterで活動するうちにフォロワーも増えて、いろんな出版社からメールがたくさん来るようになって、編集者の方と会うようになり、商業漫画や業界のことについて、いろいろ話を聞いたりもしました。でも、当時は個人出版やKindleインディーズが盛り上がっていたので、すぐに出版社にお世話になることはなくて、個人でしばらく活動していました。

 

――それには何か理由があったんですか?

 

八木戸マト先生:
Twitter漫画と違って、商業媒体で一般向け作品を描くことはすごく勇気のいることだと思うんです。連載準備だけで半年とか1年は普通にかけるけど、それが実を結ぶかどうかはわからない。良い作品を作るには土台作りが必要というのは理解できるんですが、1年以上かけて準備する博打感があります。努力が報われるわけでもない業界なので、それが恐ろしかったんです。なので、個人で活動して生計を立てられるくらいになってから商業媒体で一般向け作品にチャレンジしようという、リスクマネジメントは考えていました。商業漫画が大コケしても、個人出版でなんとか生活できるくらいになってからにしようと思っていたんです。

 

――商業でやろうと思ったきっかけはなんですか?

 

八木戸マト先生:
Twitter漫画のフォーマットに飽きたというのが大きいです。Twitter漫画ってコンテンツとしては寿命が短くて、漫画としてできることの幅が少ないんですよ。起承転結をいじりたいけど、4ページの制約があるとどうしても難しい。そういった縛りに飽きたので、もっと多いページ数でやってみたかったという理由があります。

 

●最初は10だったいいね数が、地道に続けて18万に!

――『邪龍ちゃん』の1作目は、Twitterで18万以上の「いいね」が付いています。ものすごい反響でしたが、どんな心境でしたか?

 

▼当時のTwitter

 

八木戸マト先生:
「ああ、いったな~」くらいの気持ちでした(笑)。Twitterはけっこう流行り廃りがあり、当時はTwitter漫画の最後の波が残っている時期で。なんとか最後乗り込めた感じがしています。あのときだからこその数字だと思いますし、今だったら10万もいかないんじゃないかと。

 

――冷静に分析されますね。

 

八木戸マト先生:
ずっと理系だったので、いわゆるPDCA(※1)を回すのは日常的にやっていました。Twitterってアップしたらその場ですぐに結果がわかるんです。1作品4ページだから作品を投稿するコストも少なくて、PDCAのサイクルをめちゃくちゃ早く回せるんです。それを繰り返していけば、いずれはバズるだろうなという思いはありました。

 

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(※1)Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の頭文字。

 

――先生が最初にアップしたTwitter漫画の反響はどうだったんですか?

 

八木戸マト先生:
最初の作品は2~3万「いいね」でしたね。一般向け作品を描く前は成人向けのTwitterカウントで作品を発表してたので、そっちのフォロワーが反応してくれました。

 

――それまでの活動の蓄積があってこその数字なんですね。

 

八木戸マト先生:
ただ、成人向けのアカウントも最初はフォロワーが少なかったので、10とか20くらいしか「いいね」が付かなくて。当時は仲間とつながってワイワイできればいいな、くらいの感覚でした。コツコツ毎日続けるうちに、ハッシュタグから同じ趣味を持つ絵描きさんとつながるようになって、「いいね」数も100から200、300と増えていったんです。

 

●陽太とムムは作者自身の分身

――『邪龍ちゃん』の封印されていた邪龍を召喚して仲良くなる、という設定はどうやって考えられたんですか?

 

八木戸マト先生:
以前、僕が連載していた漫画サイトで知り合った作家さんの影響です。彼の作品に封印されたドラゴンの悲哀をギャグにして描いたものがあって。ただのドラゴンが閉じ込められているだけなんですけど、ちょっとした辛さを描いていてそれが面白くて。なので、そのドラゴンを女の子にしてみました。

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――ヒロインのムムにモデルはいますか?

 

八木戸マト先生:
強いて言うなら僕自身ですかね。僕にまったく友達がいないので、ムムも同じく友達がいません(笑)。自分の一部を切り取っているので、友達がいない気持ちは誰よりもよくわかります。

 

――主人公の陽太にはモデルはいますか?

 

八木戸マト先生:
陽太も僕自身ですね。友達に「人間的じゃない」と言われたことがあるんですが、陽太はその一面を反映しています。自分の機械的な部分をキャラにしたのが陽太ですね。

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――主人公とヒロインの2人が作者から分裂しているというのは珍しいですね。では、陽太の姉も先生から?

 

八木戸マト先生:
陽太の姉はただただ、都合のいいキャラです(笑)。彼女が話を動かしてくれます。

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ムムの過去には辛いエピソードがたくさんあるんですけど、それを陽太には話したがらないわけです。でも、そういった話が姉によって徐々に明らかになってくるという。

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――今のところ作品の舞台は、ほぼ陽太の家ですよね。外の世界が描かれていないのには何か狙いが?

 

八木戸マト先生:
はい。この作品で描きたいのはムムの成長なんです。これから友達を作って徐々に世界が広がっていくので、1巻分くらいまでは家にいてもらおうかなと。これはネタバレですけど、ムムって弱体化したとはいえ、まだ明かされてない強い力を持っているんです。存在しているだけで陽太の世界になにかしらの影響を及ぼす可能性があって、自分は危険な存在という認識があるから、家から出ないようにしているんです。2巻以降のストーリーでは外の世界に出て、友達ができたりします。そこからがようやくスタートラインですね。

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●癖の強い女の子ドラゴンが登場!?

――ずばり、ムムと陽太の関係はどうなっていくのでしょうか!

 

八木戸マト先生:
この作品って、思いっきりラブコメでもなくて、ほのぼの日常系でもなくて。現状、ムムは恋心を理解してない状態です。ムムの成長する先に陽太への恋心が芽生えるのか、純粋なムムと関わることで陽太がどう変化するのか。その終着がラブコメになるかどうか、僕もまだ決めていません。読者の皆さんもどんな作品なのか、考えながら楽しんでほしいと思います。

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――先生のお気に入りの回はありますか?

 

八木戸マト先生:
「週刊少年マガジン」に出張掲載した回ですね。ムムは陽太に頭をなでられると簡単に屈しちゃうので、自分は陽太の友達ではなくペットなのか!?と嘆くのですが、陽太から「ムムはペットでもあり、家族で友達」と言われ、友達でもあるなら、ペットであることも納得してしまうんです。コメディとしてキレイにまとまったので、お気に入りですね。

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――12月9日に単行本1巻が発売されました。見どころは?

 

八木戸マト先生:
単行本はとことん納得できる出来にしたかったので、自費出版の時よりも大幅にページが増えています。陽太の感情がよりわかりやすく伝わるよう描き下ろしを追加したりしているので、ぜひお楽しみください。

 

――最後に読者の方へのメッセージをお願いします!

 

八木戸マト先生:
今後、ムムとは違う新しいドラゴンが出てきます。その子が波乱を巻き起こすので、楽しみにしていてください。めちゃくちゃ癖の強い女の子なので、周りを巻き込んでどんどん面白くなっていくと約束します。

 

●『300年間封印されし邪龍ちゃんと友達になりました』単行本第1巻、好評発売中!

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