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【ムービーガイド】奈央先生もうなる”芸術家”が追体験できるこの1本!

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別冊少年マガジンで大好評連載中の「100万の命の上に俺は立っている」の奈央晃徳先生に映画を2本オススメしてもらいました! 後編では実在の人物をモデルにしたあの長編アニメ映画を紹介します!

  

☆ 前編はコチラ ☆

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奈央晃徳先生、2本目は

 

『風立ちぬ』である。

 

アニメーションの神様、宮崎駿監督がこれを最後に引退すると宣言し、初めて実在した人物を主人公にした長編アニメーションでもある。引退宣言は後に撤回され(ありがたい!!)、主人公、堀越二郎(日本の航空技術者)は実在するも、物語は監督の創作である。

 

冒頭は少年が夢でみている飛行シーンだ。

 

少年が操縦する飛行機は、機械というより、血の通った不思議な鳥のようである。美しい日本の風景の中を、気ままに飛び回る少年は、どこまでも自由だ。

 

だが、空にはやがて暗雲が立ち込め……少年は地上へ落ちていく……。

 

少年の名は堀越二郎。『風立ちぬ』は彼の半生を描いた作品である。

 

二郎が尊敬しているのは飛行機の設計家、イタリア人のカプローニ伯爵だ。彼はしばしば二郎の夢の中に現れて聞く

 

〝まだ風は吹いているか?〟

 

ある夜の夢で、二郎はカプローニに尋ねる

 

〝近眼でも飛行機の設計はできますか? 僕は近眼なので操縦はできません〟

 

すると彼は

 

〝私は飛行機の操縦は出来ない。パイロットに向いている人間は他にいる。少年よ、飛行機は戦争の道具ではなく、商売の手立てでもないのだ。飛行機は美しい夢だ。設計は夢に形を与えるのだ〟

 

と答える。

 

これを神の啓示と受け止めた二郎は、飛行機の設計士になる決心をする。

 

成人した二郎は、願い通り、飛行機の設計士になっていた。

 

夢の中では相変わらずカプローニから〝風は吹いているか?〟と聞かれ、〝はい! 大風が吹いています!!〟と二郎。

 

するとカプローニは

 

〝では、生きねばならん〟。

 

関東大震災、大恐慌を経て、時代は戦争へと向かい、飛行機も必要とされるのは戦闘機になってゆく。

 

航空技術者としてドイツに留学した二郎は、再びカプローニの夢を見る。

 

彼は言う

 

〝キミはピラミッドのある世界と、ピラミッドのない世界。どちらが好きかね。空を飛びたいという人類の夢は、呪われた夢でもある。飛行機は殺戮、破壊の道具になる宿命を背負っているのだ。それでも私はピラミッドのある世界を選んだ。キミはどちらを選ぶかね〟

 

それに答えて二郎は〝僕は美しい飛行機を作りたいと思います〟

 

〝創造的人生の持ち時間は10年だ。芸術家も設計家も同じだ。キミの10年を、力を尽くして生きなさい〟

 

そして二郎は戦闘機の設計を引き受けるのである。

 

ここで思うのは、二郎の矛盾である。

 

決して戦争を肯定する人間ではない二郎が、なぜ戦闘機を設計するのか? それは彼が戦闘機の美しさに抗えないからである。そして美しい飛行機(ゼロ戦)を完成させるのだが、パイロットたちは誰一人として戻ってこなかった。彼に残されるのは虚無なのか?

 

だが、最後に夢に現れたカプローニが指差す先には、二郎が誰よりも愛しながら、早世した妻、菜穂子がいた。

 

彼女の〝生きて〟という言葉に、うん、うんと頷く二郎。矛盾を抱えながらも、夢や美、芸術を追い求めずにはいられない人々(宮崎監督自身もそうだろう)を支えるのは、言い古された言葉かもしれないが、やはり愛なのだ。

 

そして、10年間しかない創造的人生を過ぎてもなお、夢の実現を求めてしまうのは、芸術家の業であり、祝福でもある。

 

(※この記事は別冊少年マガジン2017年11月号に収録されたものです)

 

☆ 前編はこちら ☆

 

▼『100万の命の上に俺は立っている』奈央晃徳推薦映画紹介!「別マガムービーガイド」(前編)はコチラ!

(前編を引用)

 

▼『100万の命の上に俺は立っている』第1話がWEBでも読める!

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(終わり)